河津かわづ掛かけ

河津かわづ掛かけ（かわづがけ）とは、相撲すもうの決きまり手しゅ、柔道じゅうどうの投とう技わざのひとつである。講道館こうどうかんや国際こくさい柔道じゅうどう連盟れんめい (IJF) での正式せいしき表記ひょうきは河津かわづ掛かけ。旧きゅう表記ひょうきは蛙かえる掛かけ（かわずがけ）。IJF略号りゃくごうKWA/P26。

相撲すもうでの河津かわづ掛かけ

相手あいてが外そと掛かけや切きり返かえしで攻せめてきたところを逆ぎゃくに相手あいての脚あしを内側うちがわから掛かけていき、足あしの甲かぶとを相手あいての脚あしに引ひっ掛かけ、腕うでを相手あいての首くびに巻まいて自分じぶんの後方こうほうに倒たおす。

大相撲おおずもうでは、あまり見みることの無ない、珍めずらしい決きまり手しゅの一ひとつだが、関脇せきわけ陸奥むつ嵐あらし（1975年ねん7月がつ場所ばしょ11日にち目め、対たい大関おおぜき魁さきがけ傑すぐる戦せん）や、大関おおぜき貴ノ浪たかのなみが得意とくいとしていた技わざだった。

2012年ねん3月がつ場所ばしょ5日にち目めで、前頭まえがしら16枚まい目め隆りゅうの山やまが同どう14枚まい目め勢いきおいに勝かった一番いちばんがある。なお隆たかしの山やまは十じゅう両りょうだった2013年ねん名古屋なごや場所ばしょでも佐田さたの海うみにこの技わざで勝かっている。

十じゅう両りょうの取組とりくみでもあまり見みかけない技わざであり、2014年ねん3月がつ場所ばしょ2日にち目めに9枚まい目め蒼あお国こく来らいが10枚まい目め青あお狼おおかみに対たいして決きめたのが、3年ねんぶりの十じゅう両りょうにおける河津かわづ掛かけの記録きろくだった。

2022年ねん11月場所ばしょ5日にち目めで、関脇せきわけ豊昇ほうしょう龍りゅうが西にし前頭まえがしら3枚まい目め翠みどり富士ふじにこの技わざで勝かった。

特とくに貴ノ浪たかのなみの場合ばあい、大相撲おおずもう注目ちゅうもくの大だい一番いちばんで2度どもこの決きまり手しゅで勝利しょうりしている。1度目どめは1994年ねん1月がつ場所ばしょ、当時とうじ関脇せきわけだった貴ノ浪たかのなみが、まだ一いち度ども勝かてていなかった横綱よこづな曙あけぼのに対たいし、土俵どひょう際さいで奇襲きしゅうの河津かわづ掛かけを打うつと曙あけぼのが思おもわず横転おうてん、初はじめて曙あけぼのに勝利しょうりした。この場所ばしょ貴ノ浪たかのなみは13勝しょう2敗はいの好成績こうせいせきをおさめ、場所ばしょ後ご大関おおぜき昇進しょうしんを果はたした。2度目どめは1996年ねん1月がつ場所ばしょ千秋楽せんしゅうらく、同おなじ二子山ふたごやま部屋へやの横綱よこづな貴乃花たかのはなとの優勝ゆうしょう決定けってい戦せんで、貴乃花たかのはなの外そと掛かけを土俵どひょうギリギリに詰つまりながらも左ひだり脚あし一本いっぽんで残のこし、捨すて身みの右みぎ河津かわづ掛かけによって貴乃花たかのはなに勝利しょうり、貴ノ浪たかのなみ自身じしん初はじめての幕内まくうち優勝ゆうしょうを果はたした。

1960年ねん、大相撲おおずもうの決きまり手しゅが70手てになった時とき、切きり返かえしから独立どくりつした。

アマチュア相撲すもうの小学生しょうがくせい、中学生ちゅうがくせいでは危険きけん防止ぼうしのため禁きんじ技わざになっており、用もちいられた場合ばあいは直ただちに競技きょうぎは中止ちゅうしされ取直とりなおしとなる。同どう一いち選手せんしゅが二に度ど用もちいた場合ばあいは審判しんぱん員いんの協議きょうぎののち負まけとなる。

柔道じゅうどうでの河津かわづ掛かけ

柔道じゅうどうでの河津かわづ掛かけは投とう技わざの横よこ捨身しゃしん技わざに分類ぶんるいされるが、試合しあいでは講道館こうどうかんルール、IJFルール共どもに禁止きんし技わざである。1955年ねん5月がつに禁止きんしされた。理由りゆうは速はやく強つよく掛かけると掛かけられた方ほうは膝ひざを負傷ふしょうすることが多おおいためである。1982年ねん10月の講道館こうどうかん柔道じゅうどう技わざ名称めいしょう投とう技わざ発表はっぴょう時じ、1995年ねんのIJF技わざ名称めいしょう発表はっぴょう時じ、ともに禁止きんし技わざにもかかわらず技わざ名称めいしょうに含ふくまれていた。

試合しあいで見みられる例れいとしては大内おおうち刈かりや内股うちまたなど相手あいての股下またしたに脚あしを差さし入いれる技わざを掛かけた時ときに脚あしが絡からんでしまい、そのまま後のちに倒たおれ込こむケースである。

河津かわづ掛かけは即座そくざに反則はんそく負まけとなる重大じゅうだいな反則はんそくであるので、これらの技わざを掛かける時ときには脚あしが絡からんで河津かわづ掛かけの形かたちにならないよう注意ちゅういしなければならない。

柔道じゅうどうの正式せいしきな技わざ名めいは送おくり仮名がなを送おくらないことになっているので、正式せいしき名めいは「河津かわづ掛かけ」。

試合しあいでの実例じつれい

• グランドスラム・バクー2015男子だんし73 kg級きゅう3回戦かいせん

〇ミクローシュ・ウングバリ（ハンガリー）　（02:57 反則はんそく/河津かわづ掛かけ）　フセイン・ラヒンル（アゼルバイジャン）×　IJFサイト映像えいぞう

一いち度どはラヒンルの投なげによる一本いっぽん勝がちが宣せんせられたが河津かわづ掛かけによる反則はんそく負まけに変更へんこうされた。

サンボ、レスリングでの河津かわづ掛かけ

柔道じゅうどうでは、禁きんじ手しゅとなり、技わざとしての進化しんかが止とまってしまったが、柔道じゅうどうを源流げんりゅうとするサンボにおいては、独自どくじの進化しんかを遂とげた。

サンボの河津かわづ掛かけは大内おおうち刈かりのように脚あしを絡からめたあと、相手あいてと向むき合あう形かたちに踏ふみ込こみ、反そるように投なげる。

この進化しんかした河津かわづ掛かけの技術ぎじゅつはフリースタイルレスリングでも応用おうようされている。

プロレスでの河津かわづ掛かけ

プロレスでは相撲すもう出身しゅっしんの力道山りきどうざんがルー・テーズのバックドロップを河津かわづ掛かけで防ふせいだ。後のちにジャイアント馬場ばばによって河津かわづ掛かけを掛かけながら相手あいてもろとも後うしろに倒たおれ込こむ河津かわづ落おとし（かわづおとし）と呼よばれる技わざが編あみ出だされ、日本人にっぽんじんレスラー以外いがいにも使用しよう者しゃがいる。

詳細しょうさいは「河津かわづ落おとし」を参照さんしょう

名称めいしょうの由来ゆらい

書籍しょせき『大相撲おおずもう大だい事典じてん』によると名称めいしょうは脚あしの形状けいじょうからカエル（かわず）に由来ゆらいし、かつては「蛙かえる掛かけ」（かわずがけ）と呼よばれていた。「河津かわづ」の表記ひょうきにかわったのは、『曽我そが物語ものがたり』にある河津かわづ祐ゆう泰やすしと俣野またの景けい久ひさしが相撲すもうを取とった話はなしで、俣野またのが河津かわづ祐ゆう泰たいに今いまでいう河津かわづ掛かけを繰くり出だしたが、江戸えど時代じだいの草子そうしにおいて「かわずがけ」という名称めいしょうに掛かけた洒落しゃれによって、逆ぎゃくに河津かわづ祐ゆう泰たいが俣野またのに掛かけている絵えが流行はやり、それが由来ゆらいではないかと推測すいそくできるが、よくわからないとしている。

一方いっぽう、書籍しょせき『日本にっぽん擬人ぎじん名めい辞典じてん』は『曽我そが物語ものがたり』で河津かわづ祐ゆう泰やすしが俣野またの景けい久ひさしに繰くり出だしたことに由来ゆらいするとしている。

参考さんこう文献ぶんけん

和かず良りょうコウイチ『ロシアとサンボ -国家こっか権力けんりょくに魅入みいられた格闘技かくとうぎ秘史ひし』(2010年ねん6月がつ、晋すすむ遊ゆう舎しゃ) ISBN 978-4863911345

関連かんれん項目こうもく

• 河津かわづ町まち
• 大相撲おおずもうの決きまり手しゅ一覧いちらん
• 外そと掛かけ
• 内うち掛かけ

外部がいぶリンク

• 河津かわづ掛かけ｜柔道じゅうどうチャンネル