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数学 すうがく 、特 とく に線型 せんけい 代数 だいすう 学 がく におけるベクトル空間 くうかん (ベクトルくうかん、英 えい : vector space )、または、線型 せんけい 空間 くうかん (せんけいくうかん、英 えい : linear space )は、ベクトル (英 えい : vector )と呼 よ ばれる元 もと からなる集 あつ まりの成 な す数学 すうがく 的 てき 構造 こうぞう である。
ベクトルには和 わ (wikidata ) が定義 ていぎ され、またスカラー と呼 よ ばれる数 かず による積 せき (スカラー乗法 じょうほう )を行 おこな える。スカラーは実数 じっすう とすることも多 おお いが、複素数 ふくそすう や有理数 ゆうりすう あるいは一般 いっぱん の可 か 換 かわ 体 からだ の元 もと によるスカラー乗法 じょうほう を持 も つベクトル空間 くうかん もある。ベクトルの和 わ とスカラー乗法 じょうほう の演算 えんざん は、「ベクトル空間 くうかん の公理 こうり 」と呼 よ ばれる特定 とくてい の条件 じょうけん (#定義 ていぎ 節 ふし を参照 さんしょう )を満足 まんぞく するものでなければならない。ベクトル空間 くうかん の一 ひと つの例 れい は、力 ちから のような物理 ぶつり 量 りょう を表現 ひょうげん するのに用 もち いられる空間 くうかん ベクトル の全体 ぜんたい である(同 おな じ種類 しゅるい の任意 にんい の二 ふた つの力 ちから は、加 くわ え合 あ わせて力 ちから の合成 ごうせい と呼 よ ばれる第 だい 三 さん の力 ちから のベクトルを与 あた える。また、力 ちから のベクトルを実 じつ 数 すう 倍 ばい したものはまた別 べつ の力 ちから のベクトルを表 あらわ す)。同 おな じ調子 ちょうし で、平面 へいめん や空間 くうかん での変位 へんい を表 あらわ すベクトルの全体 ぜんたい もやはりベクトル空間 くうかん を成 な す。
ベクトル空間 くうかん は線型 せんけい 代数 だいすう 学 がく における主題 しゅだい であり、ベクトル空間 くうかん はその次元 じげん (大雑把 おおざっぱ にいえばその空間 くうかん の独立 どくりつ な方向 ほうこう の数 かず を決 き めるもの)によって特徴 とくちょう づけられる。ベクトル空間 くうかん は、さらにノルム や内積 ないせき などの追加 ついか の構造 こうぞう を持 も つこともあり、そのようなベクトル空間 くうかん は解析 かいせき 学 がく において主 おも に関数 かんすう をベクトルとする無限 むげん 次元 じげん の関数 かんすう 空間 くうかん の形 かたち で自然 しぜん に生 しょう じてくる。解析 かいせき 学 がく 的 てき な問題 もんだい では、ベクトルの列 れつ が与 あた えられたベクトルに収束 しゅうそく するか否 ひ かを決定 けってい することもできなければならないが、これはベクトル空 そら 傍 はた 間 あいだ に追加 ついか の構造 こうぞう を考 かんが えることで実現 じつげん される。そのような空間 くうかん のほとんどは適当 てきとう な位相 いそう 空間 くうかん を備 そな えており、それによって近傍 きんぼう や連続 れんぞく といったことを考 かんが えることができる。こういた線型 せんけい 位相 いそう 空間 くうかん 、特 とく にバナッハ空間 くうかん やヒルベルト空間 くうかん については、豊 ゆた かな理論 りろん が存在 そんざい する。
歴史 れきし 的 てき な視点 してん では、ベクトル空間 くうかん の概念 がいねん の萌芽 ほうが は17世紀 せいき の解析 かいせき 幾何 きか 学 がく 、行列 ぎょうれつ 、線型 せんけい 方程式 ほうていしき 系 けい の理論 りろん 、ベクトルの概念 がいねん などにまで遡 さかのぼ れる。現代 げんだい 的 てき な、より抽象 ちゅうしょう 的 てき な取扱 とりあつか いが初 はじ めて定式 ていしき 化 か されるのは、19世紀 せいき 後半 こうはん 、ペアノ によるもので、それはユークリッド空間 くうかん よりも一般 いっぱん の対象 たいしょう が範疇 はんちゅう に含 ふく まれるものであったが、理論 りろん の大半 たいはん は(直線 ちょくせん や平面 へいめん あるいはそれらの高 こう 次元 じげん での対応 たいおう 物 ぶつ といったような)古典 こてん 的 てき な幾何 きか 学 がく 的 てき 概念 がいねん を拡張 かくちょう することに割 さ かれていた。
今日 きょう では、ベクトル空間 くうかん は数学 すうがく のみならず科学 かがく や工学 こうがく においても広 ひろ く応用 おうよう される。ベクトル空間 くうかん は線型 せんけい 方程式 ほうていしき 系 けい を扱 あつか うための適当 てきとう な概念 がいねん であり、例 たと えば画像 がぞう 圧縮 あっしゅく ルーチンで使 つか われるフーリエ級数 きゅうすう のための枠組 わくぐ みを提示 ていじ したり、あるいは偏 へん 微分 びぶん 方程式 ほうていしき の解法 かいほう に用 もち いることのできる環境 かんきょう を提供 ていきょう する。さらには、テンソル のような幾何 きか 学 がく 的 てき および物理 ぶつり 学 がく 的 てき な対象 たいしょう を、抽象 ちゅうしょう 的 てき に座標 ざひょう に依 よ らない (英 えい : coordinate-free ) で扱 あつか う方法 ほうほう を与 あた えてくれるので、そこからさらに線型 せんけい 化 か の手法 しゅほう を用 もち いて、多様 たよう 体 たい の局所 きょくしょ 的 てき 性質 せいしつ を説明 せつめい することもできるようになる。
ベクトル空間 くうかん の概念 がいねん は様々 さまざま な方法 ほうほう で一般 いっぱん 化 か され、幾何 きか 学 がく や抽象 ちゅうしょう 代 だい 数学 すうがく のより進 すす んだ概念 がいねん が導 みちび かれる。
ベクトル空間 くうかん の概念 がいねん について、特定 とくてい の二 ふた つの場合 ばあい を例 れい にとって簡単 かんたん に内容 ないよう を説明 せつめい する。
平面 へいめん 上 じょう の有向 ゆうこう 線分 せんぶん [ 編集 へんしゅう ]
ベクトル空間 くうかん の簡単 かんたん な例 れい は、一 ひと つの平面 へいめん 上 うえ の固定 こてい した点 てん を始点 してん とする矢印 やじるし (有向 ゆうこう 線分 せんぶん )全 すべ ての成 な す集合 しゅうごう で与 あた えられる。これは物理 ぶつり 学 がく で力 ちから や速度 そくど などを記述 きじゅつ するのにもつかわれる。そのような有向 ゆうこう 線分 せんぶん v と w が与 あた えられたとき、その二 ふた つの有向 ゆうこう 線分 せんぶん が張 は る平行四辺形 へいこうしへんけい にはその対角線 たいかくせん にもう一 ひと つ、原点 げんてん を始点 してん とする有向 ゆうこう 線分 せんぶん が含 ふく まれる。この新 あたら しい有向 ゆうこう 線分 せんぶん を、二 ふた つの有向 ゆうこう 線分 せんぶん の和 わ v + w と呼 よ ぶ。もう一 ひと つの演算 えんざん は有向 ゆうこう 線分 せんぶん を伸 の び縮 ちぢ み(スケール因子 いんし )させるもので、任意 にんい の正 せい の実数 じっすう a が与 あた えられたとき、v と向 む きは同 おな じで長 なが さだけを a の分 ぶん だけ拡大 かくだい (英 えい : dilate ) または縮小 しゅくしょう (英 えい : shrink ) した有向 ゆうこう 線分 せんぶん を、v の a -倍 ばい av と言 い う。a が負 まけ のときは av を今度 こんど は逆 ぎゃく 方向 ほうこう に伸 の び縮 ちぢ みさせることで同様 どうよう に定 さだ める。
いくつか実際 じっさい に図示 ずし すれば、例 たと えば a = 2 のとき、得 え られるベクトル aw は w と同 どう 方向 ほうこう で長 なが さが w の二 に 倍 ばい のベクトル (下図 したず 、右 みぎ の赤 あか ) であり、この 2w は和 わ w + w とも等 ひと しい。さらに (−1)v = −v は v と同 おな じ長 なが さで向 む きだけが v と逆 ぎゃく になる (下図 したず 、右 みぎ の青 あお )。
数 かず の順序 じゅんじょ 対 たい [ 編集 へんしゅう ]
もう一 ひと つ重要 じゅうよう な例 れい は、実数 じっすう x , y の対 たい によって与 あた えられる(x と y の対 たい は並 なら べる順番 じゅんばん が重要 じゅうよう であり、そのような対 たい を順序 じゅんじょ 対 たい という)。この対 たい を (x , y ) と書 か く。そのような対 たい ふたつの和 わ および実 じつ 数 すう 倍 ばい は
(x 1 , y 1 ) + (x 2 , y 2 ) = (x 1 + x 2 , y 1 + y 2 )
および
a (x , y ) = (ax , ay )
で定義 ていぎ される。
集合 しゅうごう V が、その上 うえ の二 に 項 こう 演算 えんざん + と、体 からだ F の V への作用 さよう ◦ をもち、これらが任意 にんい の u , v , w ∈ V ; a , b ∈ F [nb 1] に関 かん して次 つぎ の公理系 こうりけい を満 み たすとき、三 さん 組 くみ (V , +, ◦) は「体 からだ F 上 うえ のベクトル空間 くうかん 」と定義 ていぎ される[2] 。
公理 こうり
条件 じょうけん
加法 かほう の結合 けつごう 律 りつ
u
+
(
v
+
w
)
=
(
u
+
v
)
+
w
{\displaystyle {\boldsymbol {u}}+({\boldsymbol {v}}+{\boldsymbol {w}})=({\boldsymbol {u}}+{\boldsymbol {v}})+{\boldsymbol {w}}}
加法 かほう の可 か 換 かわ 律 りつ
u
+
v
=
v
+
u
{\displaystyle {\boldsymbol {u}}+{\boldsymbol {v}}={\boldsymbol {v}}+{\boldsymbol {u}}}
加法 かほう 単位 たんい 元 もと の存在 そんざい
零 れい ベクトル
0
∈
V
{\displaystyle {\boldsymbol {0}}\in V}
が存在 そんざい して、任意 にんい の
v
∈
V
{\displaystyle {\boldsymbol {v}}\in V}
に対 たい して
v
+
0
=
v
{\displaystyle {\boldsymbol {v}}+{\boldsymbol {0}}={\boldsymbol {v}}}
を満 み たす。
加法 かほう 逆 ぎゃく 元 もと の存在 そんざい
任意 にんい のベクトル
v
∈
V
{\displaystyle {\boldsymbol {v}}\in V}
に対 たい し、その加法 かほう 逆 ぎゃく 元 もと
−
v
∈
V
{\displaystyle -{\boldsymbol {v}}\in V}
が存在 そんざい して、
v
+
(
−
v
)
=
0
{\displaystyle {\boldsymbol {v}}+(-{\boldsymbol {v}})={\boldsymbol {0}}}
となる。
加法 かほう に対 たい するスカラー乗法 じょうほう の分配 ぶんぱい 律 りつ
a
(
u
+
v
)
=
a
u
+
a
v
{\displaystyle a({\boldsymbol {u}}+{\boldsymbol {v}})=a{\boldsymbol {u}}+a{\boldsymbol {v}}}
体 からだ の加法 かほう に対 たい するスカラー乗法 じょうほう の分配 ぶんぱい 律 りつ
(
a
+
b
)
v
=
a
v
+
b
v
{\displaystyle (a+b){\boldsymbol {v}}=a{\boldsymbol {v}}+b{\boldsymbol {v}}}
体 からだ の乗法 じょうほう とスカラーの乗法 じょうほう の両立 りょうりつ 条件 じょうけん
a
(
b
v
)
=
(
a
b
)
v
{\displaystyle a(b{\boldsymbol {v}})=(ab){\boldsymbol {v}}}
[nb 2]
スカラーの乗法 じょうほう の単位 たんい 元 もと の存在 そんざい
1
v
=
v
{\displaystyle 1{\boldsymbol {v}}={\boldsymbol {v}}}
(左辺 さへん の 1 は F の乗法 じょうほう 単位 たんい 元 もと )
ベクトル空間 くうかん の要素 ようそ はそれぞれ次 じ のように呼 よ ばれる。
体 からだ F : 係数 けいすう 体 たい (英 えい : coefficient field, scalar field )
V の元 もと : ベクトル (英 えい : vector )
F の元 もと : スカラー (英 えい : scalar ) あるいは 係数 けいすう (英 えい : coefficient )
二 に 項 こう 演算 えんざん +: V × V → V ; (v , w ) ↦ v + w : 加法 かほう
作用 さよう ◦: F × V → V ; (a , v ) ↦ av : スカラー乗法 じょうほう
公理系 こうりけい : ベクトル空間 くうかん の公理 こうり 系 けい
導入 どうにゅう 節 ぶし では始点 してん を固定 こてい した有向 ゆうこう 平面 へいめん 線分 せんぶん の全体 ぜんたい や実数 じっすう の順序 じゅんじょ 対 たい の全体 ぜんたい の成 な す集合 しゅうごう をベクトル空間 くうかん の例 れい として挙 あ げたが、これらはともに実数 じっすう 体 たい (実数 じっすう 全体 ぜんたい からなる体 からだ )上 じょう のベクトル空間 くうかん である。公理系 こうりけい はこのようなベクトルの性質 せいしつ を一般 いっぱん 化 か したものである。実際 じっさい 、二 に 番目 ばんめ の例 れい で二 ふた つの順序 じゅんじょ 対 たい の和 わ は、和 わ をとる順番 じゅんばん に依 よ らず
(x v , y v ) + (x w , y w ) = (x w , y w ) + (x v , y v )
を満 み たす。有向 ゆうこう 線分 せんぶん の例 れい でも
v + w = w + v となることは、和 わ を定義 ていぎ する平行四辺形 へいこうしへんけい が和 わ の順番 じゅんばん に依存 いぞん しないことから言 い える。他 た の公理 こうり も同様 どうよう の方法 ほうほう で満 み たすことがどちらの例 れい についてもいえる。故 ゆえ に、特定 とくてい の種類 しゅるい のベクトルが持 も つ具体 ぐたい 的 てき な特質 とくしつ というものは無視 むし して、この定義 ていぎ によって、先 さき の二 ふた つあるいはもっとほかの例 れい もひっくるめて、ベクトル空間 くうかん という一 ひと つの概念 がいねん として扱 あつか うのである。
ベクトル空間 くうかん は係数 けいすう 体 たい の種類 しゅるい に基 もと づき次 じ のように呼 よ ばれる:
実 じつ ベクトル空間 くうかん (英 えい : real vector space ):実数 じっすう 体 からだ R
複素 ふくそ ベクトル空間 くうかん (英 えい : complex vector space ):複素数 ふくそすう 体 からだ C
F -ベクトル空間 くうかん (英 えい : F -vector space )、F 上 うえ のベクトル空間 くうかん (英 えい : vector space over F ):任意 にんい の体 からだ F
体 からだ というのは本質 ほんしつ 的 てき に、四則 しそく 演算 えんざん が自由 じゆう にできる数 かず の集合 しゅうごう である[nb 3] 。例 たと えば有理数 ゆうりすう の全体 ぜんたい Q もまた体 からだ を成 な す。
平面 へいめん やより高次 こうじ の空間 くうかん におけるベクトルには、直観 ちょっかん 的 てき に、近 ちか さや角度 かくど や距離 きょり という概念 がいねん が存在 そんざい する。しかし、一般 いっぱん 的 てき なベクトル空間 くうかん においてはそれらの概念 がいねん は不要 ふよう であり、実際 じっさい 、そういうものが存在 そんざい しないベクトル空間 くうかん もある。これらの概念 がいねん は、一般 いっぱん 的 てき なベクトル空間 くうかん に追加 ついか 的 てき に定義 ていぎ される構造 こうぞう である (#付加 ふか 構造 こうぞう を備 そな えたベクトル空間 くうかん )。
別 べつ な定式 ていしき 化 か と初等 しょとう 的 てき な帰結 きけつ [ 編集 へんしゅう ]
ベクトルの加法 かほう やスカラー乗法 じょうほう は(二 に 項 こう 演算 えんざん の定義 ていぎ によって)閉性 と呼 よ ばれる性質 せいしつ を満 み たすものとなる(つまり V の各 かく 元 もと u , v および F の各 かく 元 もと a に対 たい して u + v および av が必 かなら ず V に属 ぞく する)。これをベクトル空間 くうかん の公理 こうり に独立 どくりつ した条件 じょうけん として加 くわ えている文献 ぶんけん もある。
抽象 ちゅうしょう 代 だい 数学 すうがく の言葉 ことば で言 い えば、先 さき の公理系 こうりけい の最初 さいしょ の四 よっ つは「ベクトルの全体 ぜんたい が加法 かほう に関 かん してアーベル群 ぐん を成 な す」という条件 じょうけん にまとめられる。残 のこ りの条件 じょうけん は「この群 ぐん が F 上 うえ の加 か 群 ぐん となる」という条件 じょうけん にまとめられる。あるいはこれを「体 からだ F からベクトル全体 ぜんたい の成 な す群 ぐん の自己 じこ 準 じゅん 同型 どうけい 環 たまき への環 かん 準 じゅん 同型 どうけい f が存在 そんざい すること」とい換 いか えることもできる。この場合 ばあい スカラー乗法 じょうほう は av ≔ (f (a ))(v ) で定 さだ められる[4] 。
ベクトル空間 くうかん の公理系 こうりけい から直接的 ちょくせつてき に分 わ かることがいくつかある。それらのうちのいくつかは群論 ぐんろん をベクトル全体 ぜんたい の成 な す加法 かほう 群 ぐん に適用 てきよう することで得 え られる。例 たと えば V の零 れい ベクトル 0 や各 かく 元 もと v に加法 かほう 逆 ぎゃく 元 もと −v が一意 いちい に存在 そんざい することなどはそれである。その方法 ほうほう で得 え られない性質 せいしつ は分配 ぶんぱい 法則 ほうそく から来 く るもので、例 たと えば av = 0 ⇔ a = 0 または v = 0 などがそうである。
ベクトル空間 くうかん は、平面 へいめん や空間 くうかん に座標 ざひょう 系 けい を導入 どうにゅう することを通 つう じて、アフィン空間 くうかん から生 しょう じる。1636年 ねん ごろ、ルネ・デカルト とピエール・ド・フェルマー は、二 に 変数 へんすう の方程式 ほうていしき の解 かい と平面 へいめん 曲線 きょくせん 上 うえ の点 てん とを等化 とうか して、解析 かいせき 幾何 きか 学 がく を発見 はっけん した。座標 ざひょう を用 もち いない幾何 きか 学 がく 的 てき な解 かい に到達 とうたつ するために、ベルナルト・ボルツァーノ は1804年 ねん に、点 てん 同士 どうし および点 てん と直線 ちょくせん の間 あいだ の演算 えんざん を導入 どうにゅう した。これはベクトルの前身 ぜんしん となる概念 がいねん である。ボルツァーノの研究 けんきゅう はアウグスト・フェルディナント・メビウス が1827年 ねん に提唱 ていしょう した重心 じゅうしん 座標 ざひょう 系 けい (英語 えいご 版 ばん ) (英 えい : barycentric coordinates ) の概念 がいねん を用 もち いて構築 こうちく されたものであった。ベクトルの定義 ていぎ の基礎 きそ となったのは、ジュスト・ベラヴィティス (英語 えいご 版 ばん ) の双 そう 点 てん (英 えい : bipoint ) の概念 がいねん で、これは一方 いっぽう の端点 たんてん を始点 してん 、他方 たほう の端点 たんてん を終点 しゅうてん とする有向 ゆうこう 線分 せんぶん である。ベクトルは、ジャン=ロベール・アルガン (英語 えいご 版 ばん ) とウィリアム・ローワン・ハミルトン により複素数 ふくそすう の表現 ひょうげん として見直 みなお され、後 ご の四 よん 元 げん 数 すう や双 そう 四 よん 元 げん 数 すう (英語 えいご 版 ばん ) の概念 がいねん へと繋 つな がっていく。これらの数 かず はそれぞれ R 2 , R 4 , R 8 の元 もと であり、これらに対 たい する線型 せんけい 結合 けつごう を用 もち いた取扱 とりあつか いは、1867年 ねん のエドモンド・ラゲール (彼 かれ は線型 せんけい 方程式 ほうていしき 系 けい も定義 ていぎ した)まで遡 さかのぼ れる。
1857年 ねん にアーサー・ケイリー は、線型 せんけい 写像 しゃぞう とよく馴染 なじ み記述 きじゅつ を簡素 かんそ 化 か できる、行列 ぎょうれつ を導入 どうにゅう した。同 おな じ頃 ごろ 、ヘルマン・グラスマン はメビウスの「重心 じゅうしん 計算 けいさん 」 (英 えい : the barycentric calculus ) を研究 けんきゅう していて、算法 さんぽう を伴 ともな う抽象 ちゅうしょう 的 てき 対象 たいしょう の成 な す集合 しゅうごう を構想 こうそう していた。グラスマンの研究 けんきゅう には、線型 せんけい 独立 どくりつ や次元 じげん あるいはドット積 せき などの概念 がいねん が含 ふく まれている。実際 じっさい 、グラスマンは1844年 ねん に、考案 こうあん した乗法 じょうほう を以ってベクトル空間 くうかん の枠組 わくぐ みを推 お し進 すす め、今日 きょう では「体 からだ 上 じょう の多元 たげん 環 たまき 」と呼 よ ばれる概念 がいねん に到達 とうたつ している。ジュゼッペ・ペアノ はベクトル空間 くうかん と線型 せんけい 写像 しゃぞう の現代 げんだい 的 てき な定義 ていぎ を与 あた えた最初 さいしょ の人 ひと で、それは1888年 ねん のことである。
ベクトル空間 くうかん の重要 じゅうよう な発展 はってん がアンリ・ルベーグ による函数 かんすう 空間 くうかん の構成 こうせい によって起 お こり、後 ご の1920年 ねん ごろにステファン・バナフ とダフィット・ヒルベルト によって定式 ていしき 化 か された。その当時 とうじ 、代数 だいすう 学 がく と新 あたら しい研究 けんきゅう 分野 ぶんや であった関数 かんすう 解析 かいせき 学 がく とが相互 そうご に影響 えいきょう し始 はじ め、 p -乗 の 可 か 積分 せきぶん 函数 かんすう の空間 くうかん Lp やヒルベルト空間 くうかん などの重要 じゅうよう な概念 がいねん が生 う み出 だ されることとなる[12] 。そうして無限 むげん 次元 じげん の場合 ばあい をも含 ふく むベクトル空間 くうかん の概念 がいねん は堅 かた く確立 かくりつ されたものとなり、多 おお くの数学 すうがく 分野 ぶんや において用 もち いられ始 はじ めた。
数 かず ベクトル空間 くうかん [ 編集 へんしゅう ]
体 からだ F 上 うえ のベクトル空間 くうかん のもっとも簡単 かんたん な例 れい は体 からだ F 自身 じしん (に、その標準 ひょうじゅん 的 てき な加法 かほう と乗法 じょうほう を考 かんが えたもの)である。これはふつう Fn と書 か かれる数 かず ベクトル空間 くうかん (英 えい : coordinate space ) の n = 1 の場合 ばあい である。この数 すう ベクトル空間 くうかん の元 もと は n (長 なが さ n の数列 すうれつ ):
(
a
1
,
a
2
,
…
,
a
n
)
{\displaystyle (a_{1},a_{2},\dotsc ,a_{n})}
で、各 かく ai が F の元 もと であるようなものである。F = R かつ n = 2 の場合 ばあい が上記 じょうき の#導入 どうにゅう 節 ふし で論 ろん じたものとなる。
複素数 ふくそすう 全体 ぜんたい の成 な す集合 しゅうごう C , つまり実数 じっすう x , y を用 もち いて x + iy の形 かたち に表 あらわ すことができる数 かず (ただし、
i
=
−
1
{\textstyle i={\sqrt {-1}}}
は虚数 きょすう 単位 たんい )の全体 ぜんたい は、x , y , a , b , c は何 いず れも実数 じっすう であるものとして、通常 つうじょう の和 わ (x + iy ) + (a + ib ) = (x + a ) + i (y + b ) と実 じつ 数 すう 倍 ばい c (x + iy ) = (cx ) + i (cy ) によって、実数 じっすう 体 たい 上 じょう のベクトル空間 くうかん になる(ベクトル空間 くうかん の公理 こうり は複素数 ふくそすう の算術 さんじゅつ が同 おな じ規則 きそく を満足 まんぞく するという事実 じじつ から従 したが う)。
実 じつ は、この複素数 ふくそすう 体 たい の例 れい は本質 ほんしつ 的 てき には(つまり、同型 どうけい の意味 いみ で)導入 どうにゅう 節 ぶし に挙 あ げた実数 じっすう の順序 じゅんじょ 対 たい の成 な すベクトル空間 くうかん の例 れい と同 おな じものである。即 すなわ ち、複素数 ふくそすう x + iy を複素 ふくそ 平面 へいめん において順序 じゅんじょ 対 たい (x , y ) を表 あらわ すものと考 かんが えると、複素数 ふくそすう 体 たい における和 わ とスカラーとの積 せき の規則 きそく が、先 さき の例 れい のそれらに対応 たいおう することが理解 りかい される。
より一般 いっぱん に、代数 だいすう 学 がく および代数 だいすう 的 てき 整数 せいすう 論 ろん における体 からだ の拡大 かくだい は、ベクトル空間 くうかん の例 れい の一類 いちるい を与 あた える。即 すなわ ち、体 からだ F を部分 ぶぶん 体 たい として含 ふく む体 からだ E は、E における加法 かほう と F の元 もと の E における乗法 じょうほう とに関 かん して F -ベクトル空間 くうかん になる。例 たと えば、複素数 ふくそすう 体 たい は R 上 うえ のベクトル空間 くうかん であり、拡大 かくだい 体 たい
Q
(
5
)
{\textstyle \mathbf {Q} ({\sqrt {5}})}
は Q 上 うえ のベクトル空間 くうかん である。特 とく に数 かず 論 ろん 的 てき に意味 いみ のある例 れい は、有理数 ゆうりすう 体 たい Q に一 ひと つの代数 だいすう 的 てき 複素数 ふくそすう α あるふぁ を添加 てんか する拡大 かくだい (代数 だいすう 体 たい )Q (α あるふぁ ) である(Q (α あるふぁ ) は Q と α あるふぁ とを含 ふく む最小 さいしょう の体 からだ になる)。
任意 にんい の一 ひと つの集合 しゅうごう Ω おめが から体 からだ F への函数 かんすう 全体 ぜんたい もまた、よくある点 てん ごとの和 わ とスカラー倍 ばい によって、ベクトル空間 くうかん を成 な す。即 すなわ ち、二 ふた つの函数 かんすう f , g の和 わ (f + g ) は
(
f
+
g
)
(
w
)
=
f
(
w
)
+
g
(
w
)
{\displaystyle (f+g)(w)=f(w)+g(w)}
で定義 ていぎ される函数 かんすう であり、スカラー倍 ばい も同様 どうよう である。そのような函数 かんすう 空間 くうかん は多 おお くの幾何 きか 学 がく 的 てき 状況 じょうきょう で生 しょう じる。例 たと えば Ω おめが が実数 じっすう 直線 ちょくせん R やその区間 くかん あるいは R の他 ほか の部分 ぶぶん 集合 しゅうごう などのときである。位相 いそう 空間 くうかん 論 ろん や解析 かいせき 学 がく における多 おお くの概念 がいねん 、例 たと えば連続 れんぞく 性 せい 、可 か 積分 せきぶん 性 せい や可 か 微分 びぶん 性 せい などは、線型 せんけい 性 せい に関 かん してよく振 ふ る舞 ま う。即 すなわ ち、そのような性質 せいしつ を満 み たす函数 かんすう の加算 かさん やスカラー倍 ばい もまた同 おな じ性質 せいしつ を持 も つ[15] 。従 したが って、そのような函数 かんすう 全体 ぜんたい の成 な す集合 しゅうごう もまたそれぞれベクトル空間 くうかん を成 な す。これら函数 かんすう 空間 くうかん は、函数 かんすう 解析 かいせき 学 がく の方法 ほうほう を用 もち いてかなり詳 くわ しく調 しら べられている(#付加 ふか 構造 こうぞう を備 そな えたベクトル空間 くうかん 節 ふし を参照 さんしょう )。代数 だいすう 学 がく 的 てき な制約 せいやく からもベクトル空間 くうかん を得 え ることができる。ベクトル空間 くうかん F [x ] は多項式 たこうしき 函数 かんすう
f
(
x
)
=
r
0
+
r
1
x
+
⋯
+
r
n
−
1
x
n
−
1
+
r
n
x
n
{\displaystyle f(x)=r_{0}+r_{1}x+\dotsb +r_{n-1}x^{n-1}+r_{n}x^{n}}
(ただし各 かく 係数 けいすう r 0 , ..., rn は F の元 もと )の全体 ぜんたい によって与 あた えられる。
線型 せんけい 方程式 ほうていしき の解 かい 空間 くうかん [ 編集 へんしゅう ]
斉 ひとし 次 じ 線型 せんけい 方程式 ほうていしき 系 けい はベクトル空間 くうかん と近 ちか しい関係 かんけい にある。例 たと えば方程式 ほうていしき 系 けい
a
+
3b
+
c
= 0
4a
+
2b
+
2c
= 0
の解 かい の全体 ぜんたい は、任意 にんい の a に対 たい して a , b = a /2, c = −5a /2 の三 みっ つ組 ぐみ として与 あた えられる。これらの三 み つ組 ぐみ の成分 せいぶん ごとの加算 かさん とスカラー倍 ばい はやはり同 おな じ比 ひ を持 も つ三 みっ つの変数 へんすう の組 くみ であるから、これも解 かい となり、解 かい の全体 ぜんたい はベクトル空間 くうかん を成 な す。行列 ぎょうれつ を使 つか えば上記 じょうき の複数 ふくすう の線型 せんけい 方程式 ほうていしき を簡略 かんりゃく 化 か して一 ひと つのベクトル方程式 ほうていしき 、つまり
A
x
=
0
,
A
=
[
1
3
1
4
2
2
]
{\displaystyle A{\boldsymbol {x}}={\boldsymbol {0}},\quad A={\begin{bmatrix}1&3&1\\4&2&2\end{bmatrix}}}
にすることができる。ここで A は与 あた えられた方程式 ほうていしき の係数 けいすう を含 ふく む行列 ぎょうれつ 、x はベクトル (a , b , c ) であり、Ax は行列 ぎょうれつ の乗法 じょうほう を、0 = (0, 0) は零 れい ベクトルをそれぞれ意味 いみ する。同様 どうよう の文脈 ぶんみゃく で、斉 ひとし 次 じ の線型 せんけい 微分 びぶん 方程式 ほうていしき の解 かい の全体 ぜんたい もまたベクトル空間 くうかん を成 な す。例 たと えば、
f
″
(
x
)
+
2
f
′
(
x
)
+
f
(
x
)
=
0
{\displaystyle f''(x)+2f'(x)+f(x)=0}
(1 )
を解 と けば、a , b を任意 にんい の定数 ていすう として
f (x ) = ae −x + bxe −x が得 え られる。ただし ex は指数 しすう 函数 かんすう である。
ベクトル空間 くうかん はいくつかのクラスに分類 ぶんるい できる。
有限 ゆうげん 次元 じげん ベクトル空間 くうかん (有限 ゆうげん ベクトル空間 くうかん ): 有限 ゆうげん 個 こ のベクトルの組 くみ で生成 せいせい される、あるいは {0 } である、ベクトル空間 くうかん [18]
無限 むげん 次元 じげん ベクトル空間 くうかん : 有限 ゆうげん 次元 じげん ベクトル空間 くうかん の定義 ていぎ を満 み たさないベクトル空間 くうかん [19]
R 2 のベクトル v (青 あお ) を異 こと なる基底 きてい によって表 あらわ したもの: R 2 の標準 ひょうじゅん 基底 きてい による v = xe 1 + ye 2 (黒 くろ ) と別 べつ の斜 はす 交基底 そこ による v = f 1 + f 2 (赤 あか )
基底 きてい は簡明 かんめい な方法 ほうほう でベクトル空間 くうかん の構造 こうぞう を明 あき らかにする。基底 きてい とは、適当 てきとう な添字 そえじ 集合 しゅうごう で添字 そえじ 付 つ けられたベクトルの(有限 ゆうげん または無限 むげん )集合 しゅうごう
B = {v i }i ∈ I であって、それが全体 ぜんたい 空間 くうかん を張 は るもののうちで極小 きょくしょう となるものを言 い う。この条件 じょうけん は、任意 にんい のベクトル v が、基底 きてい 元 もと の有限 ゆうげん 線型 せんけい 結合 けつごう
v
=
a
1
v
i
1
+
a
2
v
i
2
+
⋯
+
a
n
v
i
n
{\displaystyle v=a_{1}{\boldsymbol {v}}_{i_{1}}+a_{2}{\boldsymbol {v}}_{i_{2}}+\dotsb +a_{n}{\boldsymbol {v}}_{i_{n}}}
(ak がスカラーで v ik が基底 きてい B の元 もと
(k = 1, ..., n ) )として表 あらわ されることを意味 いみ し、また極小 きょくしょう 性 せい は B が線型 せんけい 独立 どくりつ 性 せい を持 も つようにするためのものである。ここでベクトルの集合 しゅうごう が線型 せんけい 独立 どくりつ であるというのは、その何 いず れの元 もと も残 のこ りの元 もと の線型 せんけい 結合 けつごう として表 あらわ されることがないときに言 い い、これはまた方程式 ほうていしき
a
1
v
i
1
+
a
2
v
i
2
+
⋯
+
a
n
v
i
n
=
0
{\displaystyle a_{1}{\boldsymbol {v}}_{i_{1}}+a_{2}{\boldsymbol {v}}_{i_{2}}+\dotsb +a_{n}{\boldsymbol {v}}_{i_{n}}={\boldsymbol {0}}}
が満 み たされるのが、全 すべ てのスカラー a 1 , ..., an が零 れい に等 ひと しい場合 ばあい に限 かぎ ると言 い っても同 おな じことである。基底 きてい の線型 せんけい 独立 どくりつ 性 せい は、V の任意 にんい のベクトルが基底 きてい ベクトルによる表示 ひょうじ (そのような表示 ひょうじ ができることは基底 きてい が全体 ぜんたい 空間 くうかん V を張 は ることから保証 ほしょう されている)が一意 いちい であることを保証 ほしょう する。このことは、基底 きてい ベクトルを R 3 における基本 きほん ベクトル x , y , z や高 こう 次元 じげん の場合 ばあい の同様 どうよう の対象 たいしょう を一般 いっぱん 化 か するものと見 み ることによって、ベクトル空間 くうかん の観点 かんてん での座標 ざひょう 付 づ けとして述 の べることができる。
基本 きほん ベクトル
e 1 = (1, 0, ..., 0) ,
e 2 = (0, 1, 0, ..., 0) , ...,
e n = (0, 0, ..., 0, 1) は Fn の標準 ひょうじゅん 基底 きてい と呼 よ ばれる基底 きてい を成 な す。これは任意 にんい のベクトル (x 1 , x 2 , ..., xn ) がこれらのベクトルの線型 せんけい 結合 けつごう として一意的 いちいてき に
(
x
1
,
x
2
,
…
,
x
n
)
=
x
1
(
1
,
0
,
…
,
0
)
+
x
2
(
0
,
1
,
0
,
…
,
0
)
+
⋯
+
x
n
(
0
,
…
,
0
,
1
)
=
x
1
e
1
+
x
2
e
2
+
⋯
+
x
n
e
n
{\displaystyle {\begin{aligned}(x_{1},x_{2},\dotsc ,x_{n})&=x_{1}(1,0,\dotsc ,0)+x_{2}(0,1,0,\dotsc ,0)+\dotsb +x_{n}(0,\dotsc ,0,1)\\&=x_{1}{\boldsymbol {e}}_{1}+x_{2}{\boldsymbol {e}}_{2}+\dotsb +x_{n}{\boldsymbol {e}}_{n}\end{aligned}}}
と表 あらわ されることによる。
任意 にんい のベクトル空間 くうかん が基底 きてい を持 も つことが、ツォルンの補題 ほだい から従 したが う。従 したが って、ツェルメロ=フレンケル集合 しゅうごう 論 ろん の公理 こうり が与 あた えられていれば、任意 にんい のベクトル空間 くうかん における基底 きてい の存在 そんざい 性 せい は選択 せんたく 公理 こうり と同値 どうち になる。また選択 せんたく 公理 こうり よりも弱 よわ い超 ちょう フィルター補題 ほだい (英語 えいご 版 ばん ) から、与 あた えられた一 ひと つのベクトル空間 くうかん V において任意 にんい の基底 きてい が同 おな じ数 すう の元 もと (あるいは濃度 のうど )を持 も つことが示 しめ され(ベクトル空間 くうかん の次元 じげん 定理 ていり (英語 えいご 版 ばん ) )、その濃度 のうど をベクトル空間 くうかん V の次元 じげん dim V と呼 よ ぶ。有限 ゆうげん 個 こ のベクトルで張 は られる空間 くうかん の場合 ばあい であれば、上記 じょうき の主張 しゅちょう は集合 しゅうごう 論 ろん 的 てき な基礎 きそ 付 づ けを抜 ぬ きにしても示 しめ せる。
数 かず ベクトル空間 くうかん Fn は、すでに示 しめ した基底 きてい によってその次元 じげん が n であることがわかる。#函数 かんすう 空間 くうかん 節 ふし で述 の べた多項式 たこうしき 環 たまき F [x ] の次元 じげん は可算 かさん 集合 しゅうごう (基底 きてい の一 ひと つは 1, x , x 2 , … で与 あた えられる)であり、ある(有界 ゆうかい または非 ひ 有界 ゆうかい な)区間 くかん 上 じょう の函数 かんすう 全体 ぜんたい の成 な す空間 くうかん など、もっと一般 いっぱん の函数 かんすう 空間 くうかん の次元 じげん は当然 とうぜん 無限 むげん 大 だい になる[nb 4] 。現 あらわ れる係数 けいすう に対 たい して適当 てきとう な正則 せいそく 性 せい 条件 じょうけん を課 か すものとして、斉 ひとし 次 つぎ 常微分 じょうびぶん 方程式 ほうていしき の解 かい 空間 くうかん の次元 じげん はその方程式 ほうていしき の階数 かいすう に等 ひと しい。例 たと えば、式 しき (1 )の解 かい 空間 くうかん は e −x と xe −x で生成 せいせい され、これら二 ふた つの函数 かんすう は R 上 うえ 線型 せんけい 独立 どくりつ であるから、この空間 くうかん の次元 じげん は 2 で、方程式 ほうていしき の階数 かいすう 2 と一致 いっち する。
有理数 ゆうりすう 体 たい Q 上 うえ の拡大 かくだい 体 たい Q (α あるふぁ ) の次元 じげん は α あるふぁ に依存 いぞん して決 き まる。α あるふぁ が有理数 ゆうりすう 係数 けいすう の代数 だいすう 方程式 ほうていしき
q
n
α あるふぁ
n
+
q
n
−
1
α あるふぁ
n
−
1
+
⋯
+
q
0
=
0
{\displaystyle q_{n}\alpha ^{n}+q_{n-1}\alpha ^{n-1}+\dotsb +q_{0}=0}
を満足 まんぞく する、すなわち α あるふぁ が代数 だいすう 的 てき 数 すう であるとき、次元 じげん は有限 ゆうげん である。より正確 せいかく には、その次元 じげん は α あるふぁ を根 ね に持 も つ最小 さいしょう 多項式 たこうしき の次数 じすう に等 ひと しい。例 たと えば、複素数 ふくそすう 体 たい C は実 じつ 二 に 次元 じげん のベクトル空間 くうかん で、1 と虚数 きょすう 単位 たんい i で生成 せいせい される。後者 こうしゃ は二 に 次 じ の方程式 ほうていしき i 2 + 1 = 0 を満足 まんぞく するから、このことからも C が二 に 次元 じげん R -ベクトル空間 くうかん であることが言 い える(また、任意 にんい の体 からだ がそうだが、C 自身 じしん の上 うえ のベクトル空間 くうかん として C は一 いち 次元 じげん である)。
他方 たほう 、α あるふぁ が代数 だいすう 的 てき でないならば、Q (α あるふぁ ) の Q 上 うえ の次元 じげん は無限 むげん 大 だい である。例 たと えば α あるふぁ = π ぱい とすれば、π ぱい を根 ね とする代数 だいすう 方程式 ほうていしき は存在 そんざい しない(別 べつ ない方 いかた をすれば、π ぱい は超越 ちょうえつ 数 すう である)。
線型 せんけい 写像 しゃぞう と行列 ぎょうれつ [ 編集 へんしゅう ]
二 ふた つのベクトル空間 くうかん の間 あいだ の関係 かんけい 性 せい は線型 せんけい 写像 しゃぞう あるいは線型 せんけい 変換 へんかん によって表 あらわ すことができる。これは、ベクトル空間 くうかん の構造 こうぞう を反映 はんえい した写像 しゃぞう 、即 すなわ ち任意 にんい の x , y ∈ V と任意 にんい の a ∈ F に対 たい して
f
(
x
+
y
)
=
f
(
x
)
+
f
(
y
)
,
f
(
a
x
)
=
a
f
(
x
)
{\displaystyle f({\boldsymbol {x}}+{\boldsymbol {y}})=f({\boldsymbol {x}})+f({\boldsymbol {y}}),\quad f(a{\boldsymbol {x}})=af({\boldsymbol {x}})}
を満 み たすという意味 いみ で和 わ とスカラーとの積 せき を保 たも つものである。
同型 どうけい 写像 しゃぞう とは、線型 せんけい 写像 しゃぞう f : V → W で逆 ぎゃく 写像 しゃぞう g : W → V , 即 すなわ ち写像 しゃぞう の合成 ごうせい (f ◦ g ): W → W および (g ◦ f ): V → V がともに恒等 こうとう 写像 しゃぞう となるものが存在 そんざい するものを言 い う。同 おな じことだが、f は一対一 いちたいいち (単 たん 射 い )かつ上 うえ への(全 ぜん 射 い )線型 せんけい 写像 しゃぞう である。V と W の間 あいだ に同型 どうけい 写像 しゃぞう が存在 そんざい するとき、これらは互 たが いに同型 どうけい であるという。このとき、V において成 な り立 た つ任意 にんい の関係 かんけい 式 しき が f を通 つう じて W における関係 かんけい 式 しき に写 うつ され、また逆 ぎゃく も g を通 つう じて行 おこな えるという意味 いみ で、これら本質 ほんしつ 的 てき に同 おな じベクトル空間 くうかん と見 み 做すことができる。
矢印 やじるし ベクトル v をその座標 ざひょう x と y で記述 きじゅつ することはベクトル空間 くうかん の同型 どうけい である
例 たと えば、「平面 へいめん 上 じょう の有向 ゆうこう 線分 せんぶん (矢印 やじるし )」の成 な すベクトル空間 くうかん と「数 かず の順序 じゅんじょ 対 たい 」の成 な すベクトル空間 くうかん は同型 どうけい である。つまり、ある(固定 こてい された)座標 ざひょう の原点 げんてん を始点 してん とする平面 へいめん 上 じょう の有向 ゆうこう 線分 せんぶん は、図 ず に示 しめ すように、線分 せんぶん の x -成分 せいぶん と y -成分 せいぶん を考 かんが えることにより、順序 じゅんじょ 対 たい として表 あらわ すことができる。逆 ぎゃく に順序 じゅんじょ 対 たい (x , y ) が与 あた えられてとき、x だけ右 みぎ に(x が負 まけ のときは |x | だけ左 ひだり に)行 い って、かつ y だけ上 うえ に(y が負 まけ のときは |y | だけ下 した に)行 い く有向 ゆうこう 線分 せんぶん として v が得 え られる。
固定 こてい されたベクトル空間 くうかん の間 あいだ の線型 せんけい 写像 しゃぞう V → W の全体 ぜんたい は、それ自体 じたい が線型 せんけい 空間 くうかん を成 な し、HomF (V, W ) や L(V, W ) などで表 あらわ される。V から係数 けいすう 体 たい F への線型 せんけい 写像 しゃぞう 全体 ぜんたい の成 な す空間 くうかん は、V の双対 そうつい ベクトル空間 くうかん V ∗ と呼 よ ばれる。自然 しぜん 変換 へんかん V → V ∗∗ を通 つう じて、任意 にんい のベクトル空間 くうかん はその二 に 重 じゅう 双対 そうつい へ埋 う め込 こ むことができる。この写像 しゃぞう が同型 どうけい となるのは空間 くうかん が有限 ゆうげん 次元 じげん のときであり、かつその時 とき に限 かぎ る。
V の基底 きてい を一 ひと つ選 えら ぶと、V の任意 にんい の元 もと は基底 きてい ベクトルの線型 せんけい 結合 けつごう として一意的 いちいてき に表 あらわ されるから、線型 せんけい 写像 しゃぞう f : V → W は基底 きてい ベクトルの行 い き先 さき を決 き めることで完全 かんぜん に決定 けってい される。
dim V = dim W ならば、V と W の基底 きてい を固定 こてい するとき、その間 あいだ の全 ぜん 単 たん 射 しゃ から V の各 かく 基底 きてい 元 もと を W の対応 たいおう する基底 きてい 元 もと へ写 うつ すような線型 せんけい 写像 しゃぞう が生 しょう じるが、これは定義 ていぎ により同型 どうけい 写像 しゃぞう となる。従 したが って、二 ふた つのベクトル空間 くうかん が同型 どうけい となるのは、それらの次元 じげん が一致 いっち するときであり、逆 ぎゃく もまた成 な り立 た つ。これは、別 べつ ない方 いかた をすれば、任意 にんい のベクトル空間 くうかん はその次元 じげん により(違 ちが いを除 のぞ いて )「完全 かんぜん に分類 ぶんるい されている」ということである。特 とく に任意 にんい の n -次元 じげん F -ベクトル空間 くうかん V は Fn に同型 どうけい である。しかし、「標準 ひょうじゅん 的 てき 」あるいはあらかじめ用意 ようい された同型 どうけい というものは存在 そんざい しない。実際 じっさい の同型 どうけい φ ふぁい : Fn → V は、Fn の標準 ひょうじゅん 基底 きてい を V に φ ふぁい で写 うつ すことにより、V を選 えら ぶことと等価 とうか である。適当 てきとう な基底 きてい を選 えら ぶ自由 じゆう 度 ど があることは、無限 むげん 次元 じげん の場合 ばあい の文脈 ぶんみゃく で特 とく に有効 ゆうこう である(後述 こうじゅつ )。
典型 てんけい 的 てき な行列 ぎょうれつ
行列 ぎょうれつ (英 えい : matrix ) は線型 せんけい 写像 しゃぞう の情報 じょうほう を記述 きじゅつ するのに有効 ゆうこう な概念 がいねん である。行列 ぎょうれつ は、図 ず のように、スカラーの矩形 くけい 配列 はいれつ として書 か かれる。任意 にんい の m × n 行列 ぎょうれつ A は Fn から Fm への線型 せんけい 写像 しゃぞう を
x
=
(
x
1
,
x
2
,
…
,
x
n
)
↦
(
∑
j
=
1
n
a
1
j
x
j
,
∑
j
=
1
n
a
2
j
x
j
,
…
,
∑
j
=
1
n
a
m
j
x
j
)
{\displaystyle {\boldsymbol {x}}=(x_{1},x_{2},\dotsc ,x_{n})\mapsto {\biggl (}\sum _{j=1}^{n}a_{1j}x_{j},\sum _{j=1}^{n}a_{2j}x_{j},\dotsc ,\sum _{j=1}^{n}a_{mj}x_{j}{\biggr )}}
として生 しょう じる(∑ は総和 そうわ を表 あらわ す)。これはまた行列 ぎょうれつ A と座標 ざひょう ベクトル x との行列 ぎょうれつ の乗法 じょうほう を用 もち いて
x ↦ Ax
と書 か くこともできる。さらに言 い えば、V と W の基底 きてい を選 えら ぶことで、任意 にんい の線型 せんけい 写像 しゃぞう f : V → W は同様 どうよう の方法 ほうほう で行列 ぎょうれつ によって一意的 いちいてき に表 あらわ される。
この平行 へいこう 六面体 ろくめんたい の体積 たいせき はベクトル r 1 , r 2 , r 3 の成 な す 3 × 3 行列 ぎょうれつ の行列 ぎょうれつ 式 しき の絶対 ぜったい 値 ち に一致 いっち する。
正方 まさかた 行列 ぎょうれつ A の行列 ぎょうれつ 式 しき det (A ) は、A に対応 たいおう する線型 せんけい 写像 しゃぞう が同型 どうけい か否 ひ かを測 はか るスカラーである(同型 どうけい となるには、行列 ぎょうれつ 式 しき の値 ね が 0 でないことが必要 ひつよう かつ十分 じゅうぶん である)。n × n 実 じつ 行列 ぎょうれつ に対応 たいおう する R n の線型 せんけい 変換 へんかん が向 む き を保 たも つには、その行列 ぎょうれつ 式 しき が正 せい となることが必要 ひつよう 十分 じゅうぶん である。
固有値 こゆうち ・固有 こゆう ベクトル[ 編集 へんしゅう ]
自己 じこ 準 じゅん 同型 どうけい 、即 すなわ ち線型 せんけい 写像 しゃぞう f : V → V は、この場合 ばあい ベクトル v とその f による像 ぞう f (v ) とを比較 ひかく することができるから、特 とく に重要 じゅうよう である。
任意 にんい の零 れい でないベクトル v が、スカラー λ らむだ に対 たい して
λ らむだ v = f (v ) を満足 まんぞく するとき、これを f の固有値 こゆうち (英 えい : eigenvalue ) λ らむだ に属 ぞく する固有 こゆう ベクトル (英 えい : eigenvector ) という[nb 5] 。同 おな じことだが、固有 こゆう ベクトル v は差 さ f − λ らむだ · Id の核 かく の元 もと である(ここで Id は恒等 こうとう 写像 しゃぞう V → V )。V が有限 ゆうげん 次元 じげん ならば、これは行列 ぎょうれつ 式 しき を使 つか ってい換 いか えることができる。つまり、f が固有値 こゆうち λ らむだ を持 も つことは
det
(
f
−
λ らむだ
⋅
Id
)
=
0
{\displaystyle \det(f-\lambda \cdot \operatorname {Id} )=0}
となることと同値 どうち である。行列 ぎょうれつ 式 しき の定義 ていぎ を書 か き下 くだ すことにより、この式 しき の左辺 さへん は λ らむだ を変数 へんすう とする多項式 たこうしき と見 み ることができて、これを f の固有 こゆう 多項式 たこうしき と呼 よ ぶ。係数 けいすう 体 たい F がこの多項式 たこうしき の根 ね を含 ふく む程度 ていど に大 おお きい(F = C のように、F が代数 だいすう 的 てき 閉体 ならばこの条件 じょうけん は自動的 じどうてき に満 み たされる)ならば任意 にんい の線型 せんけい 写像 しゃぞう は少 すく なくとも一 ひと つの固有 こゆう ベクトルを持 も つ。
ベクトル空間 くうかん V は固有 こゆう 基底 きてい (英語 えいご 版 ばん ) (固有 こゆう ベクトルからなる基底 きてい )を持 も つかもしれないし持 も たないかもしれないが、それがどちらであるかは写像 しゃぞう のジョルダン標準 ひょうじゅん 形 がた によって制御 せいぎょ される[nb 6] 。f の特定 とくてい の固有値 こゆうち λ らむだ に属 ぞく する固有 こゆう ベクトル全体 ぜんたい の成 な す集合 しゅうごう は、固有値 こゆうち λ らむだ (と f )に対応 たいおう する固有 こゆう 空間 くうかん と呼 よ ばれるベクトル空間 くうかん を成 な す。無限 むげん 次元 じげん の場合 ばあい の対応 たいおう する主張 しゅちょう であるスペクトル定理 ていり に達 たっ するには、函数 かんすう 解析 かいせき 学 がく の道具立 どうぐだ てが必要 ひつよう である。
基本 きほん 的 てき な構成 こうせい 法 ほう [ 編集 へんしゅう ]
上記 じょうき 具体 ぐたい 例 れい に加 くわ えて、与 あた えられたベクトル空間 くうかん から別 べつ のベクトル空間 くうかん を得 え る標準 ひょうじゅん 的 てき な線型 せんけい 代数 だいすう 学 がく 的 てき 構成 こうせい がいくつか存在 そんざい する。それらは以下 いか に述 の べる定義 ていぎ に加 くわ えて普遍 ふへん 性 せい と呼 よ ばれる、線型 せんけい 空間 くうかん X を X から他 た の任意 にんい の線型 せんけい 空間 くうかん への線型 せんけい 写像 しゃぞう によって特定 とくてい することができるという性質 せいしつ によっても特徴 とくちょう づけられる。
部分 ぶぶん 空間 くうかん と商 しょう 空間 くうかん [ 編集 へんしゅう ]
R 3 の原点 げんてん を通 とお る直線 ちょくせん (青 あお 細 ほそ ) は線型 せんけい 部分 ぶぶん 空間 くうかん である。これは二 ふた つの平面 へいめん (緑 みどり 、黄 き ) の交 まじ わりである。
ベクトル空間 くうかん V の空 そら でない部分 ぶぶん 集合 しゅうごう W が加法 かほう とスカラー乗法 じょうほう の下 した で閉 と じている(従 したが ってまた、V の零 れい ベクトルを含 ふく む)ならば、V の部分 ぶぶん 空間 くうかん であるという。V の部分 ぶぶん 空間 くうかん は、それ自体 じたい が(同 おな じ体 たい 上 じょう の)ベクトル空間 くうかん を成 な す。ベクトルからなる集合 しゅうごう S に対 たい して、それを含 ふく む部分 ぶぶん 空間 くうかん すべての交 まじ わりは S の線型 せんけい 包 つつみ 合 ごう S を含 ふく む最小 さいしょう の V の部分 ぶぶん 空間 くうかん を成 な す。属 ぞく する元 もと の言葉 ことば で言 い えば、S の張 は る空間 くうかん は S の元 もと の線型 せんけい 結合 けつごう 全体 ぜんたい の成 な す部分 ぶぶん 空間 くうかん である。
部分 ぶぶん 空間 くうかん に相対 そうたい する概念 がいねん として、商 しょう 空間 くうかん がある。任意 にんい の部分 ぶぶん 空間 くうかん W ⊂ V に対 たい して、(「V を W で割 わ った」)商 しょう 空間 くうかん V /W は以下 いか のように定義 ていぎ される。
まず集合 しゅうごう として V /W は、v を V の任意 にんい のベクトルとして
v + W = {v + w | w ∈ W } なる形 かたち の集合 しゅうごう 全 すべ てからなる。その二 ふた つの元 もと v 1 + W および v 2 + W の和 わ は (v 1 + v 2 ) + W で、またスカラー倍 ばい の積 せき は
a (v + W ) = (av ) + W で与 あた えられる。この定義 ていぎ の鍵 かぎ は
v 1 + W = v 2 + W となる同値 どうち が v 1 と v 2 との差 さ が W に入 はい ることである[nb 7] 。この方法 ほうほう で商 しょう 空間 くうかん は、部分 ぶぶん 空間 くうかん W に含 ふく まれる情報 じょうほう を「忘却 ぼうきゃく 」したものとなる。
線型 せんけい 写像 しゃぞう f : V → W の核 かく ker(f ) は W の零 れい ベクトル 0 へ写 うつ されるベクトル v からなる。核 かく および像 ぞう im(f ) = {f (v ) | v ∈ V } はともにそれぞれ V および W の部分 ぶぶん 空間 くうかん である。核 かく と像 ぞう の存在 そんざい は(固定 こてい した体 からだ F )上 じょう の加 か 群 ぐん の圏 けん がアーベル圏 けん (つまり、数学 すうがく 的 てき 対象 たいしょう とそれらの間 あいだ の構造 こうぞう を保 たも つ写像 しゃぞう の集 あつ まり、即 すなわ ち圏 けん 、であってアーベル群 ぐん の圏 けん と非常 ひじょう によく似 に た振 ふ る舞 ま いをするもの)を成 な すことの要件 ようけん の一部 いちぶ である。これにより、同型 どうけい 定理 ていり (線型 せんけい 代数 だいすう 学 がく 的 てき ない方 いかた をすれば階数 かいすう ・退化 たいか 次数 じすう の定理 ていり )
V
/
ker
(
f
)
≅
im
(
f
)
{\displaystyle V/{\ker(f)}\cong \operatorname {im} (f)}
や第 だい 二 に 、第 だい 三 さん の同型 どうけい 定理 ていり が群論 ぐんろん における相当 そうとう の定理 ていり と同様 どうよう な仕方 しかた できちんと定式 ていしき 化 か と証明 しょうめい をすることができる。
重要 じゅうよう な例 れい は、適当 てきとう に固定 こてい した行列 ぎょうれつ A に対 たい する線型 せんけい 写像 しゃぞう x ↦ Ax の核 かく である。この写像 しゃぞう の核 かく は Ax = 0 を満 み たすベクトル x 全体 ぜんたい の成 な す部分 ぶぶん 空間 くうかん であり、これは A に属 ぞく する斉 ひとし 次 じ 線型 せんけい 方程式 ほうていしき 系 けい の解 かい 空間 くうかん に他 た ならない。この考 かんが え方 かた は線型 せんけい 微分 びぶん 方程式 ほうていしき
a
0
f
+
a
1
d
f
d
x
+
a
2
d
2
f
d
x
2
+
⋯
+
a
n
d
n
f
d
x
n
=
0
{\displaystyle a_{0}f+a_{1}{\frac {df}{dx}}+a_{2}{\frac {d^{2}f}{dx^{2}}}+\cdots +a_{n}{\frac {d^{n}f}{dx^{n}}}=0}
(各 かく 係数 けいすう ai も x の函数 かんすう )に対 たい しても拡張 かくちょう できる。対応 たいおう する線型 せんけい 写像 しゃぞう
f
↦
D
(
f
)
=
∑
i
=
0
n
a
i
d
i
f
d
x
i
{\displaystyle f\mapsto D(f)=\sum _{i=0}^{n}a_{i}{\frac {d^{i}f}{dx^{i}}}}
は函数 かんすう f の導 しるべ 函数 かんすう が(例 たと えば f ′′(x )2 のような項 こう が現 あらわ れないという意味 いみ で)線型 せんけい に現 あらわ れている。微分 びぶん は線型 せんけい である(即 すなわ ち
(f + g )′ = f ′ + g ′ および定数 ていすう c について
(cf )′ = cf ′ が成 な り立 た つ)から、上記 じょうき 作用素 さようそ の値 ね も線型 せんけい である(線型 せんけい 微分 びぶん 作用素 さようそ と言 い う)。特 とく に、この微分 びぶん 方程式 ほうていしき
D (f ) = 0 の解 かい の全体 ぜんたい は(R または C 上 うえ の)ベクトル空間 くうかん となる。
直積 ちょくせき と直和 なおかず [ 編集 へんしゅう ]
I
{\textstyle I}
で添字 そえじ 付 つ けられたベクトル空間 くうかん の族 ぞく
V
i
{\textstyle V_{i}}
の直積 ちょくせき
∏
i
∈
I
V
i
{\textstyle \prod _{i\in I}V_{i}}
とは、順序 じゅんじょ 組 ぐみ
(
v
i
)
i
∈
I
=
(
v
1
,
v
2
,
…
)
(
v
i
∈
V
i
)
{\textstyle ({\boldsymbol {v}}_{i})_{i\in I}=({\boldsymbol {v}}_{1},{\boldsymbol {v}}_{2},\dotsc )\quad ({\boldsymbol {v}}_{i}\in V_{i})}
全体 ぜんたい の成 な す集合 しゅうごう に、加法 かほう とスカラー乗法 じょうほう を成分 せいぶん ごとの演算 えんざん によって定 さだ めたものである。この構成 こうせい の変種 へんしゅ として、直和 なおかず
⨁
i
∈
I
V
i
{\textstyle \bigoplus _{i\in I}V_{i}}
(あるいは余 よ 積 せき
∐
i
∈
I
V
i
{\textstyle \coprod _{i\in I}V_{i}}
)は先 さき の順序 じゅんじょ 組 ぐみ において有限 ゆうげん 個 こ の例外 れいがい を除 のぞ く全 すべ ての成分 せいぶん が零 れい ベクトルであるようなものだけを許 ゆる して得 え られるものである。添字 そえじ 集合 しゅうごう
I
{\textstyle I}
が有限 ゆうげん ならばこの二 ふた つの構成 こうせい は一致 いっち するが、そうでないならば違 ちが うものを与 あた える。
同 おな じ体 たい F 上 うえ の二 ふた つのベクトル空間 くうかん V と W のテンソル積 せき (英 えい : tensor product ) V ⊗F W あるいは単 たん に V ⊗ W は、線型 せんけい 写像 しゃぞう を多 た 変数 へんすう にするような概念 がいねん の拡張 かくちょう を扱 あつか う多重 たじゅう 線型 せんけい 代数 だいすう における中心 ちゅうしん 的 てき な概念 がいねん のひとつである。写像 しゃぞう g : V × W → X ; (v , w ) ↦ g (v , w ) が双 そう 線型 せんけい 写像 しゃぞう であるとは、g が両 りょう 変数 へんすう v , w の何 いず れについても線型 せんけい であることを言 い う。これはつまり、w を固定 こてい したとき写像 しゃぞう v ↦ g (v , w ) が線型 せんけい であり、かつ v を固定 こてい した時 とき も同様 どうよう であることを意味 いみ する。
テンソル積 せき は以下 いか のような意味 いみ で、双 そう 線型 せんけい 写像 しゃぞう を普遍 ふへん 的 てき に受 う け入 い れる特別 とくべつ のベクトル空間 くうかん である。それはテンソル と呼 よ ばれる記号 きごう の(形式 けいしき 的 てき な)有限 ゆうげん 和 わ
v
1
⊗
w
1
+
v
2
⊗
w
2
+
⋯
+
v
n
⊗
w
n
{\displaystyle {\boldsymbol {v}}_{1}\otimes {\boldsymbol {w}}_{1}+{\boldsymbol {v}}_{2}\otimes {\boldsymbol {w}}_{2}+\dotsb +{\boldsymbol {v}}_{n}\otimes {\boldsymbol {w}}_{n}}
の全体 ぜんたい からなる線型 せんけい 空間 くうかん で、これらの元 もと は a をスカラーとして
a
(
v
⊗
w
)
=
(
a
v
)
⊗
w
=
v
⊗
(
a
w
)
{\displaystyle a({\boldsymbol {v}}\otimes {\boldsymbol {w}})=(a{\boldsymbol {v}})\otimes {\boldsymbol {w}}={\boldsymbol {v}}\otimes (a{\boldsymbol {w}})}
v
1
+
v
2
⊗
w
=
v
1
⊗
w
+
v
2
⊗
w
{\displaystyle {\boldsymbol {v}}_{1}+{\boldsymbol {v}}_{2}\otimes {\boldsymbol {w}}={\boldsymbol {v}}_{1}\otimes {\boldsymbol {w}}+{\boldsymbol {v}}_{2}\otimes {\boldsymbol {w}}}
v
⊗
(
w
1
+
w
2
)
=
v
⊗
w
1
+
v
⊗
w
2
{\displaystyle {\boldsymbol {v}}\otimes ({\boldsymbol {w}}_{1}+{\boldsymbol {w}}_{2})={\boldsymbol {v}}\otimes {\boldsymbol {w}}_{1}+{\boldsymbol {v}}\otimes {\boldsymbol {w}}_{2}}
なる規則 きそく で縛 しば られている。
テンソル積 せき の普遍 ふへん 性 せい を表 あらわ す可 か 換 かわ 図式 ずしき
これらの規則 きそく は、写像 しゃぞう f : V × W → V ⊗ W ; (v , w ) ↦ v ⊗ w が双 そう 線型 せんけい となることを保証 ほしょう するものである。テンソル積 せき の普遍 ふへん 性 せい とは
任意 にんい の ベクトル空間 くうかん X と任意 にんい の双 そう 線型 せんけい 写像 しゃぞう g : V × W → X が与 あた えられたとき、写像 しゃぞう u : V ⊗ W → X が一意的 いちいてき に存在 そんざい して、上記 じょうき の写像 しゃぞう f との合成 ごうせい u ◦ f が g に等 ひと しくなるようにすることができる ( u (v ⊗ w ) = g (v , w ) )[48]
というものである。テンソル積 せき の普遍 ふへん 性 せい は対象 たいしょう を、その対象 たいしょう からの、あるいはその対象 たいしょう への写像 しゃぞう によって間接 かんせつ 的 てき に定義 ていぎ するという(進 すす んだ抽象 ちゅうしょう 代数 だいすう 学 がく ではよく用 もち いられる)手法 しゅほう の一 いち 例 れい である。
付加 ふか 構造 こうぞう を備 そな えたベクトル空間 くうかん [ 編集 へんしゅう ]
線型 せんけい 代数 だいすう 学 がく の観点 かんてん からは、任意 にんい のベクトル空間 くうかん が(同型 どうけい を除 のぞ いて)その次元 じげん によって特徴 とくちょう づけられるという意味 いみ で、ベクトル空間 くうかん については完全 かんぜん に分 わ かっている。しかしベクトル空間 くうかん というものは「本質 ほんしつ 的 てき に」、函 はこ 数列 すうれつ が別 べつ の函数 かんすう に収束 しゅうそく するか否 ひ かという(解析 かいせき 学 がく では重要 じゅうよう な)問題 もんだい について取 と り扱 あつか う枠組 わくぐ みを提供 ていきょう していないし、同様 どうよう に加法 かほう 演算 えんざん が有限 ゆうげん 項 こう の和 わ のみを許 ゆる す線型 せんけい 代数 だいすう 学 がく では無限 むげん 級数 きゅうすう を扱 あつか うのには適当 てきとう でない。従 したが って、函数 かんすう 解析 かいせき 学 がく ではベクトル空間 くうかん に更 さら なる構造 こうぞう を考 かんが える必要 ひつよう が求 もと められる。ほとんど同様 どうよう に、付加 ふか 的 てき な情報 じょうほう を持 も つベクトル空間 くうかん が有効 ゆうこう に働 はたら く部分 ぶぶん を抽象 ちゅうしょう 的 てき に見 み つけだすことで、公理 こうり 的 てき 取扱 とりあつか いからベクトル空間 くうかん の持 も つ代数 だいすう 学 がく 的 てき に本質 ほんしつ 的 てき な特徴 とくちょう を浮 う き彫 ぼ りにすることができる[要 よう 出典 しゅってん ] 。
付加 ふか 構造 こうぞう の一 ひと つの例 れい は、順序 じゅんじょ 集合 しゅうごう ≤ で、これによりベクトルの比較 ひかく が行 おこな えるようになる。例 たと えば、実 みのる n -次元 じげん 空間 くうかん R n は、ベクトルを成分 せいぶん ごとに比較 ひかく することで順序 じゅんじょ づけることができる。また、ルベーグ積分 せきぶん は函数 かんすう を二 ふた つの正 せい 値 ね 函数 かんすう の差 さ
f
=
f
+
−
f
−
{\displaystyle f=f^{+}-f^{-}}
として(f + は f の正 せい 部分 ぶぶん で f − は負 ふ 部分 ぶぶん )表 あらわ すことができることに依拠 いきょ しているから、順序 じゅんじょ 線型 せんけい 空間 くうかん (英語 えいご 版 ばん ) (例 たと えばリース空間 くうかん )はルベーグ積分 せきぶん において基本 きほん 的 てき である。
ノルム空間 くうかん および内積 ないせき 空間 くうかん [ 編集 へんしゅう ]
ベクトルの「測度 そくど 」は、ベクトルの長 なが さを測 はか るノルム や、ベクトルの間 あいだ の角 かく を測 はか る内積 ないせき を決 き めることによって与 あた えられる。ノルムが定義 ていぎ されたベクトル空間 くうかん をノルム空間 くうかん とよび、ノルムを |v | のように表 あらわ す。内積 ないせき が定義 ていぎ されたベクトル空間 くうかん を内積 ないせき 空間 くうかん と呼 よ び、 内積 ないせき は⟨v , w ⟩ のように表 あらわ す。内積 ないせき 空間 くうかん は付随 ふずい するノルム
|
v
|
:=
⟨
v
,
v
⟩
{\displaystyle |{\boldsymbol {v}}|:={\sqrt {\langle {\boldsymbol {v}},{\boldsymbol {v}}\rangle }}}
を持 も つ。
数 かず ベクトル空間 くうかん Fn は標準 ひょうじゅん 内積 ないせき
x
⋅
y
=
x
1
y
1
+
⋯
+
x
n
y
n
{\displaystyle {\boldsymbol {x}}\cdot {\boldsymbol {y}}=x_{1}y_{1}+\dotsb +x_{n}y_{n}}
を備 そな えている。これは R 2 においてよくある二 ふた つのベクトル x , y の成 な す角 かく θ しーた の概念 がいねん を余弦 よげん 定理 ていり
x
⋅
y
=
|
x
|
|
y
|
cos
(
θ しーた
)
{\displaystyle {\boldsymbol {x}}\cdot {\boldsymbol {y}}={\mathopen {|}}{\boldsymbol {x}}{\mathclose {|}}{\mathopen {|}}{\boldsymbol {y}}{\mathclose {|}}\cos(\theta )}
によって反映 はんえい するものである。これにより、x · y = 0 を満 み たす二 ふた つのベクトル x , y は互 たが いに直交 ちょっこう すると言 い われる。この標準 ひょうじゅん 内積 ないせき の重要 じゅうよう な変形 へんけい 版 ばん として、ミンコフスキー空間 くうかん R 4 = R 3,1 はローレンツ積 つもる
⟨
x
∣
y
⟩
=
x
1
y
1
+
x
2
y
2
+
x
3
y
3
−
x
4
y
4
{\displaystyle \langle {\boldsymbol {x}}\mid {\boldsymbol {y}}\rangle =x_{1}y_{1}+x_{2}y_{2}+x_{3}y_{3}-x_{4}y_{4}}
を備 そな える。標準 ひょうじゅん 内積 ないせき との大 おお きな違 ちが いは、ローレンツ積 つもる が正 せい 定値 ていち でないこと、つまり ⟨x |x ⟩ は負 まけ の値 ね を取 と り得 え る(例 たと えば x = (0,0,0,1) のとき)ことである。(三 みっ つの空間 くうかん 的 てき な座標 ざひょう とは異 こと なり、時間 じかん に対応 たいおう する)第 だい 四 よん の座標 ざひょう を考 かんが えることは特殊 とくしゅ 相対性理論 そうたいせいりろん の数学 すうがく 的 てき 取扱 とりあつか いにおいて有効 ゆうこう である。
線型 せんけい 位相 いそう 空間 くうかん [ 編集 へんしゅう ]
収束 しゅうそく 性 せい の問題 もんだい は、ベクトル空間 くうかん V に両立 りょうりつ する位相 いそう (近 ちか さを記述 きじゅつ することを可能 かのう にする構造 こうぞう )を入 い れることによって扱 あつか われる。。 ここでいう「両立 りょうりつ 」とは、加法 かほう とスカラー乗法 じょうほう がともに連続 れんぞく 写像 しゃぞう となるという意味 いみ で、大雑把 おおざっぱ に言 い えば、x , y ∈ V と a ∈ F が限 かぎ られた範囲 はんい の中 なか にあれば、x + y と ax も限 かぎ られた範囲 はんい に留 と まるということである[nb 8] 。スカラーについてこの議論 ぎろん がきちんと意味 いみ を持 も つようにするためには、この文脈 ぶんみゃく において体 からだ F にも位相 いそう が定 さだ められていなければならない。よく用 もち いられるのが実数 じっすう 体 たい や複素数 ふくそすう 体 たい である。
このような線型 せんけい 位相 いそう 空間 くうかん ではベクトル項 こう 級数 きゅうすう を考 かんが えることができて、V の元 もと からなる列 れつ (fi )i ∈ N の無限 むげん 和 わ
∑
i
=
0
∞
f
i
{\displaystyle \sum _{i=0}^{\infty }f_{i}}
とは、対応 たいおう する有限 ゆうげん 部分 ぶぶん 和 わ の極限 きょくげん を表 あらわ すものである。例 たと えば fi が、ある(実 じつ または複素 ふくそ )函数 かんすう 空間 くうかん に属 ぞく する函数 かんすう であるとすると、この場合 ばあい の級数 きゅうすう は函数 かんすう 項 こう 級数 きゅうすう と呼 よ ばれる。函数 かんすう 項 こう 級数 きゅうすう の収束 しゅうそく の様態 ようたい (英語 えいご 版 ばん ) は、函数 かんすう 空間 くうかん に課 か された位相 いそう に依存 いぞん する。そのような様態 ようたい の中 なか でも各 かく 点 てん 収束 しゅうそく と一様 いちよう 収束 しゅうそく の二 ふた つは特 とく に際立 きわだ った例 れい である。
R 2 の「単位 たんい 球面 きゅうめん 」はノルム 1 の平面 へいめん ベクトルからなる。図 ず は、異 こと なる p -ノルム に関 かん する単位 たんい 球面 きゅうめん を p = 1, 2, ∞ の場合 ばあい に描 えが いたもの。また大 おお きな菱形 ひしがた は 1 -ノルムが √ 2 に等 ひと しいような点 てん を描 えが いたものである。
ある種 しゅ の無限 むげん 級数 きゅうすう の極限 きょくげん の存在 そんざい を保証 ほしょう する方法 ほうほう の一 ひと つは、考 かんが える空間 くうかん を任意 にんい のコーシー列 れつ が収束 しゅうそく するようなものに限 かぎ って考 かんが えることである。そのようなベクトル空間 くうかん は完備 かんび 距離 きょり 空間 くうかん であるという。大 おお まかに言 い えば、ベクトル空間 くうかん が完備 かんび というのは必要 ひつよう な極限 きょくげん をすべて含 ふく むということである。例 たと えば単位 たんい 区間 くかん [0, 1] 上 うえ の多項式 たこうしき 函数 かんすう 全体 ぜんたい の成 な すベクトル空間 くうかん に一様 いちよう 収束 しゅうそく 位相 いそう を入 い れたものは完備 かんび でない。これは [0, 1] 上 うえ の任意 にんい の連続 れんぞく 函数 かんすう が、多項式 たこうしき 函 はこ 数列 すうれつ で一様 いちよう に近似 きんじ することができるというストーン=ワイエルシュトラスの定理 ていり による。対照 たいしょう 的 てき に、区間 くかん [0, 1] 上 うえ の連続 れんぞく 函数 かんすう 全体 ぜんたい の成 な す空間 くうかん に同 おな じ位相 いそう を入 い れたものは完備 かんび になる。ノルムからは、ベクトル列 れつ v n が v に収束 しゅうそく する必要 ひつよう 十 じゅう 分 ふん 条件 じょうけん を
lim
n
→
∞
|
v
n
−
v
|
=
0
{\displaystyle \lim _{n\to \infty }|{\boldsymbol {v}}_{n}-{\boldsymbol {v}}|=0}
で定 さだ めることによって、空間 くうかん に位相 いそう が入 はい る。バナッハ空間 くうかん およびヒルベルト空間 くうかん は、それぞれノルムおよび内積 ないせき から定 さだ まる位相 いそう に関 かん して完備 かんび な位相 いそう 空間 くうかん である。函数 かんすう 解析 かいせき 学 がく で重要 じゅうよう になるそれらの研究 けんきゅう は、有限 ゆうげん 次元 じげん 位相 いそう 線型 せんけい 空間 くうかん 上 じょう のノルムはどれも同 おな じ収束 しゅうそく 性 せい の概念 がいねん を定 さだ めるから、無限 むげん 次元 じげん ベクトル空間 くうかん に焦点 しょうてん があてられる。図 ず は R 2 上 うえ の 1 ノルムと ∞ ノルムとの同値 どうち 性 せい を示 しめ すものである。単位 たんい 「球体 きゅうたい 」は互 たが いに他 た に囲 かこ まれているから、列 れつ が 1 ノルムに関 かん して 0 に収束 しゅうそく することと、その列 れつ が ∞ ノルムに関 かん して収束 しゅうそく することとが同値 どうち になる。しかし無限 むげん 次元 じげん 空間 くうかん の場合 ばあい には、一般 いっぱん には互 たが いに同値 どうち でないような位相 いそう が存在 そんざい しおり、そのことが位相 いそう 線型 せんけい 空間 くうかん の研究 けんきゅう を、付加 ふか 構造 こうぞう を持 も たない純 じゅん 代数 だいすう 的 てき なベクトル空間 くうかん の理論 りろん よりも豊 ゆた かなものとしているのである。
概念的 がいねんてき な観点 かんてん では、位相 いそう 線型 せんけい 空間 くうかん に関 かん する全 すべ ての概念 がいねん は位相 いそう とうまく合 あ うものでなければならない。例 たと えば、位相 いそう 線型 せんけい 空間 くうかん の間 あいだ の線型 せんけい 写像 しゃぞう (あるいは線型 せんけい 汎 ひろし 函数 かんすう )V → W は連続 れんぞく であるものと仮定 かてい される。特 とく に、(位相 いそう 的 てき )双対 そうつい 空間 くうかん V ∗ は連続 れんぞく 汎 ひろし 函数 かんすう V → R (or C ) からなるものとする。基礎 きそ を成 な すハーン-バナッハの定理 ていり は、適当 てきとう な位相 いそう 線型 せんけい 空間 くうかん を連続 れんぞく 汎 ひろし 函数 かんすう によって部分 ぶぶん 空間 くうかん に分 わ けることに関係 かんけい するものである。
ステファン・バナフ の導入 どうにゅう したバナッハ空間 くうかん とは、完備 かんび ノルム空間 くうかん のことである。一 ひと つの例 れい として、
ℓ
p
{\displaystyle \ell ^{p}}
(1 ≤ p ≤ ∞) は、実数 じっすう を成分 せいぶん とする無限 むげん 次元 じげん ベクトル x = (x 1 , x 2 , ...) であって、p < ∞ に対 たい して
|
x
|
p
:=
(
∑
i
|
x
i
|
p
)
1
/
p
{\displaystyle |{\boldsymbol {x}}|_{p}:={\biggl (}\sum _{i}|x_{i}|^{p}{\biggr )}^{1/p}}
または p = ∞ に対 たい して
|
x
|
∞
:=
sup
i
|
x
i
|
{\displaystyle |{\boldsymbol {x}}|_{\infty }:=\sup _{i}|x_{i}|}
で定義 ていぎ される p -ノルムが有限 ゆうげん となるようなもの全体 ぜんたい の成 な すベクトル空間 くうかん である。無限 むげん 次元 じげん 空間 くうかん
ℓ
p
{\displaystyle \ell ^{p}}
の位相 いそう は、異 こと なる p に対 たい しては同値 どうち でない。例 たと えばベクトルの列 れつ x n = (2−n , 2−n , ..., 2−n , 0, 0, ...) , つまり各項 かくこう が最初 さいしょ の 2n -個 こ の成分 せいぶん が 2−n で残 のこ りはすべて 0 となるような無限 むげん 次元 じげん ベクトルとなるようなベクトル列 れつ は p = ∞ のときは零 れい ベクトル に収束 しゅうそく するが、p = 1 のときはそうならない。式 しき にすれば
|
x
n
|
∞
=
sup
(
2
−
n
,
0
)
=
2
−
n
→
0
{\displaystyle |x_{n}|_{\infty }=\sup(2^{-n},0)=2^{-n}\to 0}
だが
|
x
n
|
1
=
∑
i
=
1
2
n
2
−
n
=
2
n
⋅
2
−
n
=
1
{\displaystyle |x_{n}|_{1}=\sum _{i=1}^{2^{n}}2^{-n}=2^{n}\cdot 2^{-n}=1}
である。
実 じつ 数列 すうれつ よりも一般 いっぱん の函数 かんすう f : Ω おめが → R は、上記 じょうき の和 わ のところをルベーグ積分 せきぶん に置 お き換 か えた
|
f
|
p
:=
(
∫
Ω おめが
|
f
(
x
)
|
p
d
x
)
1
/
p
{\displaystyle |f|_{p}:=\left(\int _{\Omega }{\bigl |}f(x){\bigr |}^{p}\,dx\right)^{1/p}}
をノルムとして備 そな えている。与 あた えられた領域 りょういき Ω おめが (例 たと えば区間 くかん )上 じょう の |f |p < ∞ を満足 まんぞく する可 か 積分 せきぶん 函数 かんすう の空間 くうかん に、このノルムを入 い れたものはルベーグ空間 くうかん Lp (Ω おめが ) と呼 よ ばれる[nb 9] 。ルベーグ空間 くうかん は何 いず れも完備 かんび になる(が、もし上記 じょうき の積分 せきぶん をリーマン積分 せきぶん としたならば、空間 くうかん は完備 かんび にならない。これがルベーグ積分 せきぶん 論 ろん を考 かんが えることの正当 せいとう 性 せい の一 ひと つとして挙 あ げられる理由 りゆう の一 ひと つである[nb 10] )。具体 ぐたい 的 てき に書 か けば、任意 にんい の可 か 積分 せきぶん 函 はこ 数列 すうれつ f 1 , f 2 , ... で
|f n |p < ∞ となるものが、条件 じょうけん
lim
k
,
n
→
∞
∫
Ω おめが
|
f
k
(
x
)
−
f
n
(
x
)
|
p
d
x
=
0
{\displaystyle \lim _{k,\ n\to \infty }\int _{\Omega }{\bigl |}f_{k}(x)-f_{n}(x){\bigr |}^{p}\,dx=0}
を満足 まんぞく するならば、適当 てきとう な函数 かんすう f (x ) でベクトル空間 くうかん Lp (Ω おめが ) に属 ぞく するものが存在 そんざい して
lim
k
→
∞
∫
Ω おめが
|
f
(
x
)
−
f
k
(
x
)
|
p
d
x
=
0
{\displaystyle \lim _{k\to \infty }\int _{\Omega }{\bigl |}f(x)-f_{k}(x){\bigr |}^{p}\,dx=0}
を満 み たすようにすることができる。
函数 かんすう 自体 じたい だけでなくその導 しるべ 函数 かんすう にも有界 ゆうかい 性 せい 条件 じょうけん を課 か すことでソボレフ空間 くうかん の概念 がいねん が導 みちび かれる。
正弦 せいげん 函数 かんすう (赤 あか ) の有限 ゆうげん 和 わ によって、周期 しゅうき 函数 かんすう (青 あお ) を近似 きんじ する様子 ようす を、初 はつ 項 こう から 5-項 こう までの和 わ を順 じゅん に示 しめ すことによって示 しめ したもの。
完備 かんび な内積 ないせき 空間 くうかん はダフィット・ヒルベルト に因 ちな んでヒルベルト空間 くうかん (英 えい : Hilbert space ) と呼 よ ばれる。自乗 じじょう 可 か 積分 せきぶん 函数 かんすう の空間 くうかん L 2 (Ω おめが ) に
⟨
f
,
g
⟩
=
∫
Ω おめが
f
(
x
)
g
(
x
)
¯
d
x
{\displaystyle \langle f,g\rangle =\int _{\Omega }f(x){\overline {g(x)}}\,dx}
で定義 ていぎ される内積 ないせき (ただし g (x ) は g (x ) の複素 ふくそ 共役 きょうやく とする)[nb 11] を入 い れたものは主要 しゅよう なヒルベルト空間 くうかん の例 れい である。
定義 ていぎ によりヒルベルト空間 くうかん における任意 にんい のコーシー列 れつ は極限 きょくげん を持 も つから、逆 ぎゃく に与 あた えられた極限 きょくげん 函数 かんすう を近似 きんじ するという適当 てきとう な性質 せいしつ を持 も つ函 はこ 数列 すうれつ fn を求 もと めることが重要 じゅうよう になる。初期 しょき の解析 かいせき 学 がく では、テイラー近似 きんじ の形 かたち で可 か 微分 びぶん 函数 かんすう f の多項式 たこうしき 列 れつ による近似 きんじ が確立 かくりつ された。ストーン=ヴァイアシュトラスの定理 ていり により、[a , b ] 上 うえ の任意 にんい の連続 れんぞく 函数 かんすう は適当 てきとう な多項式 たこうしき 列 れつ によりいくらでも近 ちか く近似 きんじ できる。三角 さんかく 関数 かんすう を用 もち いた同様 どうよう の近似 きんじ 法 ほう は一般 いっぱん にフーリエ展開 てんかい と呼 よ ばれ、工学 こうがく において広 ひろ く応用 おうよう される(#フーリエ変換 へんかん 節 ふし を参照 さんしょう )。より一般 いっぱん に、またより概念的 がいねんてき に言 い えば、これらの定理 ていり は「基本 きほん 函数 かんすう 族 ぞく 」とは何 なに であるかということを端的 たんてき に記述 きじゅつ するものになっている。あるいは抽象 ちゅうしょう ヒルベルト空間 くうかん においてどのような基本 きほん ベクトル族 ぞく が、ヒルベルト空間 くうかん H を位相 いそう 的 てき に生成 せいせい するに十分 じゅうぶん であるかをいうものである。ここで、位相 いそう 的 てき に生成 せいせい する(あるいは単 たん に生成 せいせい する)とは、それらの位相 いそう 的 てき 線型 せんけい 包 つつみ と呼 よ ばれる、線型 せんけい 包 つつみ の閉包 へいほう (即 すなわ ち、有限 ゆうげん 線型 せんけい 結合 けつごう およびその極限 きょくげん )が、全体 ぜんたい 空間 くうかん に一致 いっち することである。そのような函数 かんすう の集合 しゅうごう は H の基底 きてい (あるいはヒルベルト基底 きてい )と呼 よ ばれ、基底 きてい の濃度 のうど はヒルベルト空間 くうかん H のヒルベルト次元 じげん と呼 よ ばれる[nb 12] 。これらの定理 ていり は適当 てきとう な基底 きてい 函数 かんすう 族 ぞく が近似 きんじ の目的 もくてき で十分 じゅうぶん 性 せい を示 しめ すことのみならず、グラム・シュミットの正規 せいき 直交 ちょっこう 化 か 法 ほう を用 もち いて正規 せいき 直交 ちょっこう 基底 きてい が得 え られることも意味 いみ している。そのような直交 ちょっこう 基底 きてい は、有限 ゆうげん 次元 じげん ユークリッド空間 くうかん における座標軸 ざひょうじく をヒルベルト空間 くうかん に対 たい して一般 いっぱん 化 か したものと考 かんが えることができる。
様々 さまざま な微分 びぶん 方程式 ほうていしき に対 たい して、その解 かい をヒルベルト空間 くうかん の言葉 ことば で解釈 かいしゃく することができる。例 たと えば物理 ぶつり 学 がく や工学 こうがく におけるかなり多 おお くの分野 ぶんや でそのような方程式 ほうていしき が導 みちび かれ、特定 とくてい の物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ を持 も つ解 かい が(しばしば直交 ちょっこう する)基底 きてい 函数 かんすう 族 ぞく としてよく扱 あつか われる。物理 ぶつり 学 がく からの例 れい として、量子力学 りょうしりきがく における時間 じかん 依存 いぞん シュレーディンガー方程式 ほうていしき は、その解 かい が波動 はどう 関数 かんすう と呼 よ ばれる偏 へん 微分 びぶん 方程式 ほうていしき として、物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ の時間 じかん 的 てき な変化 へんか を記述 きじゅつ する。。エネルギーやモーメントのような物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ に対 たい する明確 めいかく な値 ね は、ある種 しゅ の線型 せんけい 微分 びぶん 作用素 さようそ の固有値 こゆうち とそれに属 ぞく する固有 こゆう 状態 じょうたい と呼 よ ばれる波動 はどう 函数 かんすう に対応 たいおう する。スペクトル定理 ていり は、函数 かんすう に作用 さよう する線型 せんけい コンパクト作用素 さようそ を、それらの固有値 こゆうち と固有 こゆう 函数 かんすう を用 もち いて分解 ぶんかい することを述 の べるものである。
体 からだ 上 じょう の多元 たげん 環 たまき [ 編集 へんしゅう ]
方程式 ほうていしき xy = 1 で与 あた えられる双曲線 そうきょくせん 。この双曲線 そうきょくせん 上 じょう の函数 かんすう の座標 ざひょう 環 たまき は R [x , y ] / (xy − 1) で与 あた えられ、R 上 うえ 無限 むげん 次元 じげん のベクトル空間 くうかん になる。
一般 いっぱん のベクトル空間 くうかん は、ベクトルの間 あいだ の乗法 じょうほう を持 も たない。二 ふた つのベクトルの乗法 じょうほう を定 さだ める双 そう 線型 せんけい 写像 しゃぞう を付加 ふか 的 てき に備 そな えたベクトル空間 くうかん は、体 からだ 上 じょう の多元 たげん 環 たまき と言 い う。主 おも な多元 たげん 環 たまき は、何 なん らかの幾何 きか 学 がく 的 てき な対象 たいしょう の上 うえ の函数 かんすう の空間 くうかん から生 しょう じる。体 からだ に値 ね をとる函数 かんすう は、点 てん ごとの乗法 じょうほう を持 も ち、それら函数 かんすう の全体 ぜんたい が多元 たげん 環 たまき を成 な すのである。例 たと えば、ストーン=ヴァイアシュトラスの定理 ていり は、バナッハ空間 くうかん にも多元 たげん 環 たまき にもなっているバナッハ環 たまき において成立 せいりつ する。
可 か 換 かわ 多元 たげん 環 たまき は一 いち 変数 へんすう または多 た 変数 へんすう の多項式 たこうしき 環 たまき を使 つか ってたくさん作 つく れる。可 か 換 かわ 多元 たげん 環 たまき の乗法 じょうほう は可 か 換 かわ かつ結合 けつごう 的 てき である。これらの環 たまき およびその剰余 じょうよ 環 たまき は、それが代数 だいすう 幾何 きか 的 てき 対象 たいしょう 上 じょう の函数 かんすう の環 たまき となることから、代数 だいすう 幾何 きか 学 がく の基礎 きそ を成 な している。
別 べつ の重要 じゅうよう な例 れい はリー環 たまき である。リー環 たまき の乗法 じょうほう (x , y の積 せき を [x , y ] と書 か く)は可 か 換 かわ でも結合 けつごう 的 てき でもないが、そうなることは制約 せいやく 条件 じょうけん
反対称 はんたいしょう 性 せい : [x , y ] = −[y , x ]
ヤコビの等式 とうしき : [x , [y , z ]] + [y , [z , x ]] + [z , [x , y ]] = 0
によって制限 せいげん されている。リー環 たまき の例 れい には、n -次 じ 正方 せいほう 行列 ぎょうれつ 全体 ぜんたい の成 な すベクトル空間 くうかん に、行列 ぎょうれつ の交換 こうかん 子 こ
[x , y ] = xy − yx を積 せき としたものや、R 3 にクロス積 せき を入 い れたものなどが含 ふく まれる。
テンソル代数 だいすう T(V ) は任意 にんい のベクトル空間 くうかん に積 せき を導入 どうにゅう して多元 たげん 環 たまき を得 え るための形式 けいしき 的 てき な方法 ほうほう である。T(V ) はベクトル空間 くうかん としては、単純 たんじゅん テンソル あるいは分解 ぶんかい 可能 かのう 型 がた テンソルと呼 よ ばれる記号 きごう
v
1
⊗
v
2
⊗
⋯
⊗
v
n
{\displaystyle {\boldsymbol {v}}_{1}\otimes {\boldsymbol {v}}_{2}\otimes \dotsb \otimes {\boldsymbol {v}}_{n}}
によって生成 せいせい される(ただし、テンソルの階数 かいすう (英語 えいご 版 ばん ) n は任意 にんい に動 うご かすものとする)。乗法 じょうほう は二 ふた つのベクトル空間 くうかん に対 たい してテンソル積 せき を定義 ていぎ するときとほとんど同 おな じで、基底 きてい 元 もと についてはそれらの記号 きごう をテンソル積 せき ⊗ で結合 けつごう することで与 あた え、一般 いっぱん には加法 かほう に対 たい する分配 ぶんぱい 法則 ほうそく を以って基底 きてい 元 もと に対 たい する積 せき を延長 えんちょう する。スカラー倍 ばい の積 せき は ⊗ と可 か 換 かわ であるものとする。こうして得 え られる T(V ) においては、一般 いっぱん に v 1 ⊗ v 2 と v 2 ⊗ v 1 との間 あいだ には何 なん の関係 かんけい も成立 せいりつ しない。この二 ふた つの元 もと を強制 きょうせい 的 てき に等 ひと しいものと定 さだ めると対称 たいしょう 代数 だいすう S(V ) が、あるいは強制 きょうせい 的 てき に
v 1 ⊗ v 2 = − v 2 ⊗ v 1 と置 お けば外積 がいせき 代数 だいすう
⋀
(
V
)
{\textstyle \bigwedge (V)}
がそれぞれ得 え られる。
基礎 きそ とする体 からだ F を明示 めいじ したい場合 ばあい には、F -多元 たげん 環 たまき あるいは F -代数 だいすう という言葉 ことば がよく用 もち いられる。
ベクトル空間 くうかん の多様 たよう 体 たい に対 たい する応用 おうよう は様々 さまざま な状況 じょうきょう で生 しょう じてくる。つまり多様 たよう 体 たい 上 じょう で定義 ていぎ され、ある体 からだ に値 ね をとる函数 かんすう を考 かんが えれば、そこにはベクトル空間 くうかん が生 しょう じるのである。そのようなベクトル空間 くうかん を考 かんが えれば、解析 かいせき 学 がく や幾何 きか 学 がく における問題 もんだい を取 と り扱 あつか う枠組 わくぐ みが提供 ていきょう される。またそういったベクトル空間 くうかん はフーリエ変換 へんかん などにおいても利用 りよう される。ここで挙 あ げた例 れい は網羅 もうら 的 てき なものではなく、例 たと えば数理 すうり 最適 さいてき 化 か など、ほかにももっと多 おお くの応用 おうよう が存在 そんざい する。ゲーム理論 りろん のミニマックス法 ほう は全 すべ てのプレイヤーが最適 さいてき な試行 しこう を行 おこな うことができるならば一意的 いちいてき なペイが得 え られることを述 の べるもので、これはベクトル空間 くうかん 法 ほう を用 もち いて証明 しょうめい できる。表現 ひょうげん 論 ろん は、よく分 わ かっている線型 せんけい 代数 だいすう 学 がく およびベクトル空間 くうかん に関 かん する内容 ないよう を、群論 ぐんろん など他 た の領域 りょういき に実 みの り豊 ゆた かに引 ひ き写 うつ すものである[77] 。
シュワァルツ超 ちょう 函数 かんすう [ 編集 へんしゅう ]
シュヴァルツ超 ちょう 函数 かんすう (英 えい : distribution ) は、各 かく 「試験 しけん 」函数 かんすう (典型 てんけい 的 てき には、関数 かんすう の台 だい を持 も つ滑 なめ らかな関数 かんすう )に数 かず を連続 れんぞく 的 てき な仕方 しかた で割 わ り当 あ てる線型 せんけい 写像 しゃぞう をいう。即 すなわ ち、シュヴァルツ超 ちょう 函数 かんすう の空間 くうかん は、試験 しけん 函数 かんすう の空間 くうかん の(連続 れんぞく 的 てき )双対 そうつい である。後者 こうしゃ の空間 くうかん には、試験 しけん 函数 かんすう f それ自体 じたい のみならずその高階 たかしな 導 しるべ 函数 かんすう までを考慮 こうりょ するような位相 いそう が入 はい っている。シュヴァルツ超 ちょう 函数 かんすう の典型 てんけい 的 てき な例 れい はある領域 りょういき Ω おめが 上 うえ で試験 しけん 函数 かんすう f を積分 せきぶん する作用素 さようそ
I
(
f
)
=
∫
Ω おめが
f
(
x
)
d
x
{\displaystyle I(f)=\int _{\Omega }f(x)\,dx}
である。Ω おめが が一 いち 点 てん 集合 しゅうごう {p } のとき、これは試験 しけん 函数 かんすう f に点 てん p における値 ね を割 わ り当 あ てるディラックのデルタ関数 かんすう δ でるた を定 さだ める(δ でるた (f ) = f (p ) )。
シュヴァルツ超 ちょう 函数 かんすう は微分 びぶん 方程式 ほうていしき を解 と くための強力 きょうりょく な道具 どうぐ である。微分 びぶん は線型 せんけい であるといったような、解析 かいせき 学 がく の標準 ひょうじゅん 的 てき な概念 がいねん は、自然 しぜん にシュヴァルツ超 ちょう 函数 かんすう の空間 くうかん へ延長 えんちょう することができるから、従 したが って問題 もんだい の方程式 ほうていしき をシュヴァルツ超 ちょう 函数 かんすう の空間 くうかん へ引 ひ き写 うつ すことができて、しかもシュヴァルツ超 ちょう 函数 かんすう の空間 くうかん はもとの函数 かんすう 空間 くうかん よりも大 おお きいから、方程式 ほうていしき を解 と くためにより柔軟 じゅうなん な方法 ほうほう が利用 りよう できる(例 たと えば、グリーン関数 かんすう 法 ほう )。
また、基本 きほん 解 かい は真 しん の函数 かんすう でなくシュヴァルツ超 ちょう 函数 かんすう 解 かい (弱 じゃく 解 かい )となるのがふつうであり、弱 じゃく 解 かい から所期 しょき の境界 きょうかい 条件 じょうけん を満 み たす方程式 ほうていしき の真 しん の解 かい を求 もと めるには、見 み つかった弱 じゃく 解 かい が実際 じっさい に真 しん の函数 かんすう となることを確 たし かめればよく、証明 しょうめい できた場合 ばあい にはそれがもとの方程式 ほうていしき の真 しん の解 かい である(例 たと えばリースの表現 ひょうげん 定理 ていり の帰結 きけつ である弱 じゃく 形式 けいしき が利用 りよう できる)。
熱 ねつ 方程式 ほうていしき は、冷 つめ たい環境 かんきょう におかれた熱源 ねつげん の温度 おんど の低下 ていか のような、時間 じかん とともに散逸 さんいつ する物理 ぶつり 的 てき 性質 せいしつ を記述 きじゅつ したものである。(黄色 おうしょく は赤 あか よりも冷 つめ たい領域 りょういき を表 あらわ す)
周期 しゅうき 関数 かんすう をフーリエ級数 きゅうすう を成 な す三角 さんかく 関数 かんすう の和 わ に分解 ぶんかい することは物理 ぶつり 学 がく や工学 こうがく においてよく用 もち いられる手法 しゅほう である[nb 13] [80] 。台 だい となるベクトル空間 くうかん は、ふつうはヒルベルト空間 くうかん L 2 (0, 2π ぱい ) であり、函数 かんすう 族 ぞく sin mx および cos mx (m は整数 せいすう ) が正規 せいき 直交 ちょっこう 基底 きてい を与 あた える。L 2 -函数 かんすう f のフーリエ展開 てんかい は
a
0
2
+
∑
m
=
1
∞
[
a
m
cos
(
m
x
)
+
b
m
sin
(
m
x
)
]
{\displaystyle {\frac {a_{0}}{2}}+\sum _{m=1}^{\infty }{\bigl [}a_{m}\cos(mx)+b_{m}\sin(mx){\bigr ]}}
である。係数 けいすう am , bm は f のフーリエ係数 けいすう と呼 よ ばれ、公式 こうしき
a
m
=
1
π ぱい
∫
0
2
π ぱい
f
(
t
)
cos
(
m
t
)
d
t
,
b
m
=
1
π ぱい
∫
0
2
π ぱい
f
(
t
)
sin
(
m
t
)
d
t
{\displaystyle a_{m}={\frac {1}{\pi }}\int _{0}^{2\pi }f(t)\cos(mt)dt,\quad b_{m}={\frac {1}{\pi }}\int _{0}^{2\pi }f(t)\sin(mt)dt}
で求 もと められる。
物理 ぶつり 学 がく の言葉 ことば で言 い えば、函数 かんすう は正弦 せいげん 波 は の重 かさ ね合 あわ せとして表 あらわ され、その係数 けいすう は函数 かんすう の周波数 しゅうはすう スペクトル についての情報 じょうほう を与 あた えるということになる。複素 ふくそ 型 がた のフーリエ級数 きゅうすう も広 ひろ く用 もち いられる。
上記 じょうき の具体 ぐたい 的 てき な公式 こうしき は、より一般 いっぱん のポントリャーギン双対 そうつい と呼 よ ばれる双対 そうつい からの帰結 きけつ である。加法 かほう 群 ぐん R にこの双対 そうつい 性 せい を適用 てきよう すれば古典 こてん 的 てき なフーリエ変換 へんかん が得 え られる。また物理 ぶつり 学 がく では逆 ぎゃく 格子 こうし に応用 おうよう される。これは有限 ゆうげん 次元 じげん 実線 じっせん 型 がた 空間 くうかん に付加 ふか 的 てき なデータとして原子 げんし や結晶 けっしょう の位置 いち を符号 ふごう 化 か した束 たば を与 あた えたものを基礎 きそ の群 ぐん として双対 そうつい 性 せい を適用 てきよう したものである。
フーリエ級数 きゅうすう は偏 へん 微分 びぶん 方程式 ほうていしき の境界 きょうかい 値 ち 問題 もんだい を解 と くのにも利用 りよう される。1822年 ねん にジョゼフ・フーリエ が初 はじ めてこの方法 ほうほう を熱 ねつ 方程式 ほうていしき を解 と くために用 もち いた。フーリエ級数 きゅうすう の離散 りさん 版 ばん は標本 ひょうほん 化 か において、函数 かんすう 値 ち が等間隔 とうかんかく に並 なら んだ有限 ゆうげん 個 こ の点 てん でしかわかっていないところで用 もち いられる。この場合 ばあい 、フーリエ級数 きゅうすう は有限 ゆうげん 項 こう で、その値 ね は全 すべ ての点 てん で標本 ひょうほん 値 ち に等 ひと しい。また、係数 けいすう 全体 ぜんたい の成 な す集合 しゅうごう は、与 あた えられた標本 ひょうほん 列 れつ の離散 りさん フーリエ変換 へんかん (英 えい : DFT : Discrete Fourier Transformation ) と呼 よ ばれる。この DFT は(レーダー や音声 おんせい 符号 ふごう 化 か や画像 がぞう 圧縮 あっしゅく などに応用 おうよう を持 も つ)デジタル信号 しんごう 処理 しょり の重要 じゅうよう な道具 どうぐ の一 ひと つである。画像 がぞう フォーマットJPEG は、近 ちか しい関係 かんけい にある離散 りさん コサイン変換 へんかん の応用 おうよう である。
高速 こうそく フーリエ変換 へんかん は離散 りさん フーリエ変換 へんかん を高速 こうそく に計算 けいさん するアルゴリズムである。これはフーリエ係数 けいすう の計算 けいさん だけでなく、畳 たた み込 こ み を用 もち いて、二 ふた つの有限 ゆうげん 列 れつ の畳 たた み込 こ みを計算 けいさん するのにも利用 りよう できる。また、ディジタルフィルタ や、巨大 きょだい な整数 せいすう や多項式 たこうしき の高速 こうそく な掛 か け算 ざん アルゴリズム(英語 えいご 版 ばん ) (ショーンハーゲ・ストラッセン法 ほう )にも応用 おうよう できる。
二 に 次元 じげん 球面 きゅうめん のある点 てん における接 せっ 空間 くうかん とは、この点 てん で球面 きゅうめん に接 せっ する無限 むげん 平面 へいめん である。
曲面 きょくめん のある点 てん における接 せっ 平面 へいめん は、自然 しぜん に接点 せってん を原点 げんてん と同一 どういつ 視 し したベクトル空間 くうかん になる。接 せっ 平面 へいめん は接点 せってん における曲面 きょくめん の最適 さいてき 線型 せんけい 近似 きんじ あるいは線型 せんけい 性 せい である[nb 14] 。三 さん 次元 じげん ユークリッド空間 くうかん の場合 ばあい でさえ、接 せっ 平面 へいめん の基底 きてい を指定 してい する自然 しぜん な方法 ほうほう は点綴 てんてい 的 てき には存在 そんざい せず、またそれゆえに接 せっ 平面 へいめん は、実数 じっすう ベクトル空間 くうかん というよりはむしろ抽象 ちゅうしょう ベクトル空間 くうかん として考 かんが えられる。接 せっ 空間 くうかん はより高 こう 次元 じげん の可 か 微分 びぶん 多様 たよう 体 たい への一般 いっぱん 化 か である。
リーマン多様 たよう 体 たい はその接 せっ 空間 くうかん が適当 てきとう な内積 ないせき を備 そな えた多様 たよう 体 たい である[97] 。そこから得 え られるリーマン曲 きょく 率 りつ テンソル は、それ一 ひと つでその多様 たよう 体 たい の全 すべ ての曲 きょく 率 りつ を表 あらわ すことができるもので、一般 いっぱん 相対性理論 そうたいせいりろん では例 たと えば時空 じくう の質量 しつりょう とエネルギー定数 ていすう を記述 きじゅつ するアインシュタインテンソル などに応用 おうよう がある[98] 。リー群 ぐん の接 せっ 空間 くうかん は自然 しぜん にリー環 たまき の構造 こうぞう を持 も ち、コンパクト群 ぐん の分類 ぶんるい に用 もち いることができる。
メビウスの帯 おび 。これは局所 きょくしょ 的 てき には U × R に同相 どうしょう である。
ベクトル束 たば は位相 いそう 空間 くうかん X によって連続 れんぞく 的 てき に径 みち 数 すう 付 つ けられたベクトル空間 くうかん の族 ぞく である。より明確 めいかく に言 い えば、X 上 うえ のベクトル束 たば とは、位相 いそう 空間 くうかん E であって、連続 れんぞく 写像 しゃぞう
π ぱい
:
E
→
X
{\displaystyle \pi \colon E\to X}
を持 も ち、X の各 かく 点 てん x においてファイバー V = π ぱい −1 (x ) がベクトル空間 くうかん を成 な すようなものを言 い う。dim V = 1 ならば直線 ちょくせん 束 たば という。任意 にんい のベクトル空間 くうかん V に対 たい し、射影 しゃえい X × V → X は直積 ちょくせき X × V をファイバー束 たば にする。X 上 うえ のベクトル束 たば は、局所 きょくしょ 性 せい のある(固定 こてい された)ベクトル空間 くうかん V と X との直積 ちょくせき でなければならない。つまり、X の各 かく 点 てん x に対 たい して x の適当 てきとう な近傍 きんぼう U を選 えら んで、π ぱい の π ぱい −1 (U ) への制限 せいげん が自明 じめい 束 たば U × V → U に同型 どうけい となるようにすることができる[nb 15] 。これらの局所 きょくしょ 自明 じめい 性 せい にもかかわらず、ベクトル束 たば は巨視的 きょしてき には(台 だい となる位相 いそう 空間 くうかん X の形 かたち に依存 いぞん して)「捻 ね じれ」ているのである。つまり、ベクトル束 たば は自明 じめい 束 たば X × V (と大域 たいいき 的 てき に同型 どうけい )である必要 ひつよう はない。例 たと えば、メビウスの帯 おび は(円周 えんしゅう を実数 じっすう 直線 ちょくせん 上 じょう の半開 はんかい 区間 くかん と同一 どういつ 視 し することによって)円周 えんしゅう S 1 上 うえ の線 せん 束 たば と見 み 做すことができるが、しかしこれは円筒 えんとう S 1 × R とは異 こと なる。後者 こうしゃ は向 む き付 づ け可能 かのう 性 せい だが、前者 ぜんしゃ はそうではない。
ある種 しゅ のベクトル束 たば の性質 せいしつ は、台 たい となる位相 いそう 空間 くうかん についての情報 じょうほう を提供 ていきょう する。例 たと えば、接 せっ 空間 くうかん の集 あつ まりからなる接 せっ 束 たば は可 か 微分 びぶん 多様 たよう 体 たい の点 てん によって径 みち 数 すう 付 つ けられる。円周 えんしゅう S 1 の接 せっ 束 たば は、S 1 上 うえ に大域 たいいき 的 てき な非 ひ 零 れい ベクトル場 じょう が存在 そんざい するから、大域 たいいき 的 てき に S 1 × R に同型 どうけい である[nb 16] 。対照 たいしょう 的 てき に、毛 もう 玉 たま の定理 ていり (英語 えいご 版 ばん ) により、二 に 次元 じげん 球面 きゅうめん S 2 上 うえ の接 せっ ベクトル場 じょう で至 いた る所 ところ 消 き えていない者 もの は存在 そんざい しない。K -理論 りろん は同 おな じ位相 いそう 空間 くうかん 上 じょう の全 すべ てのベクトル束 たば の同型 どうけい 類 るい について研究 けんきゅう するものである。深 ふか い位相 いそう 的 てき かつ幾何 きか 学 がく 的 てき な観察 かんさつ に加 くわ えて、この理論 りろん には実 じつ 有限 ゆうげん 次元 じげん 多元 たげん 体 たい の分類 ぶんるい (そのようなものは R , C のほかは四 よん 元 げん 数 すう 体 からだ H と八 はち 元 げん 数 すう 体 からだ O しかない)というような純 じゅん 代数 だいすう 学 がく 的 てき な帰結 きけつ も存在 そんざい する(フルヴィッツの定理 ていり (英語 えいご 版 ばん ) を参照 さんしょう )。
可 か 微分 びぶん 多様 たよう 多 た の余 よ 接 せっ 束 たば は、多様 たよう 体 たい の各 かく 点 てん において接 せっ 空間 くうかん の双対 そうつい である余 よ 接 せっ 空間 くうかん が対応 たいおう するベクトル束 たば である。余 よ 接 せっ 束 たば の切断 せつだん は1-形式 けいしき (1 -form) と呼 よ ばれる。
ベクトル空間 くうかん が体 からだ に対 たい するものであるように、加 か 群 ぐん (英 えい : modules ) の概念 がいねん は環 たまき に対 たい するものである。これはベクトル空間 くうかん の公理 こうり において体 からだ F とするところを環 たまき R で置 お き換 か えることで得 え られる。加 か 群 ぐん の理論 りろん はベクトル空間 くうかん のそれと比 くら べて(環 たまき の元 もと に必 かなら ずしも逆 ぎゃく 元 もと が存在 そんざい しないことで)より複雑 ふくざつ なものになっている。例 たと えば加 か 群 ぐん は、Z -加 か 群 ぐん (つまりアーベル群 ぐん )としての Z /2Z のように、必 かなら ずしも基底 きてい を持 も たない。基底 きてい を持 も つような加 か 群 ぐん (ベクトル空間 くうかん もそう)は自由 じゆう 加 か 群 ぐん と呼 よ ばれる。にも拘 かか わらずベクトル空間 くうかん は、係数 けいすう 環 たまき が体 からだ であるような加 か 群 ぐん として簡単 かんたん に定義 ていぎ することができて、その元 もと をベクトルと呼 よ ぶ。可 か 換 かわ 環 たまき の代数 だいすう 幾何 きか 学 がく 的 てき 解釈 かいしゃく は、それらの環 たまき のスペクトル を通 つう じて、ベクトル束 たば の代数 だいすう 的 てき な対応 たいおう 物 ぶつ である局所 きょくしょ 自由 じゆう 加 か 群 ぐん の概念 がいねん などを展開 てんかい することを可能 かのう にする。
アフィン空間 くうかん および射影 しゃえい 空間 くうかん [ 編集 へんしゅう ]
R 3 内 うち のアフィン平面 へいめん (水色 みずいろ ): これは二 に 次元 じげん の線型 せんけい 部分 ぶぶん 空間 くうかん をベクトル x (赤 あか ) でずらしたものである。
大雑把 おおざっぱ に言 い うと、アフィン空間 くうかん (英 えい : affine space ) というのはベクトル空間 くうかん からその原点 げんてん をわからなくしたものである。より正確 せいかく には、アフィン空間 くうかん とは自由 じゆう かつ推移 すいい 的 てき なベクトル空間 くうかん の群 ぐん 作用 さよう を備 そな えた集合 しゅうごう を言 い う。特 とく にベクトル空間 くうかん は、写像 しゃぞう
V
×
V
→
V
;
(
v
,
a
)
↦
a
+
v
{\displaystyle V\times V\to V;({\boldsymbol {v}},{\boldsymbol {a}})\mapsto {\boldsymbol {a}}+{\boldsymbol {v}}}
を考 かんが えることによって、自身 じしん の上 うえ のアフィン空間 くうかん となる。W をベクトル空間 くうかん とするとき、W のアフィン部分 ぶぶん 空間 くうかん とは、固定 こてい したベクトル x ∈ W によって線型 せんけい 部分 ぶぶん 空間 くうかん V を平行 へいこう 移動 いどう することによって得 え られるものを言 い う。この空間 くうかん は x + V (V による W の剰余 じょうよ 類 るい )であり、v ∈ V に対 たい する x + v の形 かたち のベクトル全 すべ てからなる。重要 じゅうよう な例 れい は、非 ひ 斉 ひとし 次 じ の線型 せんけい 方程式 ほうていしき 系 けい
A
x
=
b
{\displaystyle A{\boldsymbol {x}}={\boldsymbol {b}}}
の解 かい 空間 くうかん である。これは斉 ひとし 次 つぎ の場合 ばあい 、つまり
b = 0 の場合 ばあい を一般 いっぱん 化 か するものである。この解 かい 空間 くうかん は、方程式 ほうていしき の特殊 とくしゅ 解 かい x と、付随 ふずい する斉 ひとし 次 じ 方程式 ほうていしき の解 かい 空間 くうかん (つまり A の核 かく 空間 くうかん )V に対 たい するアフィン部分 ぶぶん 空間 くうかん x + V である。
固定 こてい された有限 ゆうげん 次元 じげん ベクトル空間 くうかん V の一 いち 次元 じげん 線型 せんけい 部分 ぶぶん 空間 くうかん 全体 ぜんたい の成 な す集合 しゅうごう は射影 しゃえい 空間 くうかん と呼 よ ばれる。これは平行 へいこう 線 せん が無限 むげん 遠 とお において交 まじ わるという概念 がいねん の定式 ていしき 化 か に用 もち いられる。グラスマン多様 たよう 体 たい (英語 えいご 版 ばん ) および旗 はた 多様 たよう 体 たい (英語 えいご 版 ばん ) はそれぞれ、決 き まった次元 じげん k の線型 せんけい 部分 ぶぶん 空間 くうかん および旗 はた (英語 えいご 版 ばん ) と呼 よ ばれる線型 せんけい 部分 ぶぶん 空間 くうかん の包含 ほうがん 列 れつ を径 みち 数 すう 付 つ けることによる、射影 しゃえい 空間 くうかん の概念 がいねん の一般 いっぱん 化 か である。
n -次元 じげん 単体 たんたい は標準 ひょうじゅん 凸 とつ 集合 しゅうごう で、任意 にんい の多面体 ためんたい へ写 うつ り、また、標準 ひょうじゅん (n + 1) -次元 じげん アフィン超 ちょう 平面 へいめん (標準 ひょうじゅん アフィン空間 くうかん )と標準 ひょうじゅん (n + 1) -次元 じげん 象限 しょうげん (標準 ひょうじゅん 錐 きり 体 たい )との交 まじ わりになっている。
順序 じゅんじょ 体 たい (特 とく に実数 じっすう 体 たい )上 じょう で、凸 とつ 解析 かいせき の概念 がいねん を考 かんが えることができる。最 もっと も基本 きほん 的 てき なものは、非負 ひふ 線型 せんけい 結合 けつごう 全体 ぜんたい からなる錐 きり 、および和 わ が 1 となる非負 ひふ 線型 せんけい 結合 けつごう 全体 ぜんたい からなる凸 とつ 集合 しゅうごう である。凸 とつ 集合 しゅうごう はアフィン空間 くうかん の公理 こうり と錐 きり 体 たい の公理 こうり を組 く み合 あ わせたものとして見 み ることができ、これは凸 とつ 集合 しゅうごう の標準 ひょうじゅん 空間 くうかん である n -単体 たんたい が超 ちょう 平面 へいめん と象限 しょうげん との交 まじ わりであることを反映 はんえい したものになっている。このような空間 くうかん は特 とく に線型 せんけい 計画 けいかく 問題 もんだい において用 もち いられる。
普遍 ふへん 代数 だいすう 学 がく の言葉 ことば で言 い えば、ベクトル空間 くうかん はベクトルの有限 ゆうげん 和 わ に対応 たいおう する係数 けいすう の有限 ゆうげん 列 れつ 全体 ぜんたい の成 な す普遍 ふへん ベクトル空間 くうかん K ∞ 上 うえ の代数 だいすう であるが、一方 いっぽう アフィン空間 くうかん はここでいう(和 わ が 1 の有限 ゆうげん 列 れつ 全体 ぜんたい の成 な す)普遍 ふへん アフィン超 ちょう 平面 へいめん 上 じょう の代数 だいすう であり、また錐 きり 体 たい は普遍 ふへん 象限 しょうげん 上 じょう の代数 だいすう 、凸 とつ 集合 しゅうごう は普遍 ふへん 単体 たんたい 上 じょう の代数 だいすう である。これは、「座標 ざひょう に対 たい する(可能 かのう な)制限 せいげん 和 わ 」を用 もち いて公理 こうり を幾何 きか 化 か したものである。
線型 せんけい 代数 だいすう 学 がく における多 おお くの概念 がいねん は凸 とつ 解析 かいせき における対応 たいおう する概念 がいねん があって、基本 きほん 的 てき なものとしては基底 きてい や(凸 とつ 包 つつみ のような形 かたち での)生成 せいせい 概念 がいねん など、また重要 じゅうよう なものとしては(双対 そうつい 多角 たかく 形 がた 、双対 そうつい 錐 きり と極 ごく 錐 きり 、双対 そうつい 問題 もんだい のような)双対 そうつい 性 せい などが含 ふく まれる。しかし線型 せんけい 代数 だいすう 学 がく において任意 にんい のベクトル空間 くうかん やアフィン空間 くうかん が標準 ひょうじゅん 空間 くうかん に同型 どうけい となるのとは異 こと なり、任意 にんい の凸 とつ 集合 しゅうごう や錐 きり 体 たい が単体 たんたい や象限 しょうげん に同型 どうけい となるわけではない。むしろ単体 たんたい から多面体 ためんたい の上 うえ へ の写像 しゃぞう が一般 いっぱん 化 か された重心 じゅうしん 座標 ざひょう 系 けい (英語 えいご 版 ばん ) によって常 つね に存在 そんざい し、またその双対 そうつい 写像 しゃぞう として多面体 ためんたい から(面 めん の数 かず と等 ひと しい次元 じげん の)象限 しょうげん の中 なか への写像 しゃぞう がスラック変数 へんすう (英語 えいご 版 ばん ) によって存在 そんざい するが、これらが同型 どうけい となることは稀 まれ である(ほとんどの多面体 ためんたい は単体 たんたい でも象限 しょうげん でもない)。
^ ここではベクトルをスカラーから区別 くべつ するために、ベクトルは太字 ふとじ で表 あらわ す。あるいは、特 とく に物理 ぶつり 学 がく で、矢印 やじるし を上 うえ に載 の せる記法 きほう も広 ひろ く用 もち いられる。「ベクトルをラテンアルファベット で表 あらわ し、スカラーはグリークアルファベット (ギリシャ文字 もじ )で表 あらわ す」などの流儀 りゅうぎ や、場合 ばあい によってはまったく文字種 もじしゅ の区別 くべつ をしないこともある。
^ この公理 こうり は演算 えんざん の結合 けつごう 性 せい を仮定 かてい するものではない。ここでは二 に 種類 しゅるい の乗法 じょうほう 、つまりスカラーの乗法 じょうほう bv と体 からだ の乗法 じょうほう ab との関係 かんけい 性 せい を考 かんが えているからである。
^ 文献 ぶんけん によっては(例 たと えば Brown 1991 )係数 けいすう 体 たい を R か C に制限 せいげん するものあるが、理論 りろん の大 だい 部分 ぶぶん は変更 へんこう なしに任意 にんい の体 からだ 上 じょう で成 な り立 た つものである
^ 例 たと えば、(無数 むすう に存在 そんざい する)区間 くかん の指示 しじ 函数 かんすう はどれも線型 せんけい 独立 どくりつ である。
^ この術語 じゅつご は、「自身 じしん の」とか「固有 こゆう の」という意味 いみ のドイツ語 ご „eigen “ に由来 ゆらい する。
^ Roman 2005 , p. 140, ch. 8. ジョルダン・シュバレー分解 ぶんかい (英語 えいご 版 ばん ) も参照 さんしょう 。
^ 書籍 しょせき によっては(Roman 2005 など)この同値 どうち 関係 かんけい から話 はなし を始 はじ めて、それを使 つか って V /W の具体 ぐたい 形 がた を導 みちび き出 だ す形 かたち をとるものもある
^ この仮定 かてい からは、得 え られる位相 いそう が一様 いちよう 構造 こうぞう を持 も つことが導 みちび かれる。Bourbaki 1989 , ch. II
^ |•|p に関 かん する三角 さんかく 不等式 ふとうしき はミンコフスキーの不等式 ふとうしき から得 え られる。技術 ぎじゅつ 的 てき な理由 りゆう から、この文脈 ぶんみゃく ではほとんど至 いた る所 ところ 一致 いっち する函数 かんすう は互 たが いに同一 どういつ 視 し する。こうすれば上記 じょうき の「ノルム」は半 はん ノルム なだけでなく本当 ほんとう にノルム を与 あた える。
^ 「L 2 に属 ぞく する多 おお くの函数 かんすう はルベーグ測度 そくど が有界 ゆうかい でなく、古典 こてん 的 てき なリーマン積分 せきぶん では積分 せきぶん することができない。故 ゆえ にリーマン可 か 積分 せきぶん 函数 かんすう の空間 くうかん は L 2 -ノルムに関 かん して完備 かんび にならず、また それらに対 たい する直交 ちょっこう 分解 ぶんかい も適用 てきよう できない。これはルベーグ積分 せきぶん の優位 ゆうい 性 せい を示 しめ すものである」Dudley 1989 , p. 125, sect. 5.3
^ p ≠ 2 のとき L p (Ω おめが ) はヒルベルト空間 くうかん でない。
^ ヒルベルト空間 くうかん の基底 きてい というのは、既 すで に述 の べた線型 せんけい 代数 だいすう 学 がく 的 てき な意味 いみ での基底 きてい と同 おな じものを意味 いみ しない。区別 くべつ のためには、後者 こうしゃ はハメル基底 きてい と呼 よ ばれる。
^ フーリエ級数 きゅうすう は周期 しゅうき 的 てき だが、この手法 しゅほう は任意 にんい の区間 くかん 上 じょう の L 2 -函数 かんすう に対 たい して、函数 かんすう を区間 くかん の外側 そとがわ へ周期 しゅうき 的 てき に延長 えんちょう することによって適用 てきよう できる。Kreyszig 1988 , p. 601
^ これは BSE-3 2001 が言 い うには、接点 せってん P を通 とお る平面 へいめん であって、曲面 きょくめん 上 じょう の点 てん P 1 とこの平面 へいめん との距離 きょり が、曲面 きょくめん に沿 そ って P 1 を P に近 ちか づけた極限 きょくげん での P 1 と P との距離 きょり よりも無限 むげん に小 ちい さい ようなものである。
^ つまり、π ぱい −1 (U ) から V × U への準 じゅん 同型 どうけい で、その制限 せいげん がファイバーの間 あいだ の同型 どうけい となるものが存在 そんざい する。
^ S 1 の接 せっ 束 たば のような線 せん 束 たば が自明 じめい となる必要 ひつよう 十 じゅう 分 ふん 条件 じょうけん は、至 いた る所 ところ 消 き えていない切断 せつだん が存在 そんざい することである(Husemoller 1994 , Corollary 8.3 を参照 さんしょう )。接 せっ 束 たば の切断 せつだん というのは、ベクトル場 じょう に他 た ならない。
^ “ベクトル空間 くうかん とは、集合 しゅうごう V と次 つぎ の公理 こうり (A1)-(A4) と (M1)-(M4) を満 み たす写像 しゃぞう +: V × V → V , ◦: R × V → V からなる三 さん 組 くみ (V , +, ◦) である。” 名古屋大学 なごやだいがく 『線形 せんけい 代数 だいすう 学 がく IⅠ 授業 じゅぎょう 1: ベクトル空間 くうかん 』2014年 ねん 。https://www.math.nagoya-u.ac.jp/~larsh/teaching/F2014_LA/lecture1.pdf 。
^ Bourbaki 1998 , Section II .1.1. ブルバキ は群 ぐん 準 じゅん 同型 どうけい f (a ) を「相似 そうじ 」(英 えい : homothety ) と総称 そうしょう している。
^ Dorier 1995 ; Moore 1995
^ 例 たと えば Lang 1993 , p. 335, ch. XII .3.
^ “ベクトル空間 くうかん V が V の有限 ゆうげん 個 こ のベクトルの組 くみ で生成 せいせい されるか, または {0 } のとき, V は 有限 ゆうげん 次元 じげん (又 また は有限 ゆうげん 生成 せいせい ) であるといい” 東京工業大学 とうきょうこうぎょうだいがく 『基底 きてい の存在 そんざい と次元 じげん 』2013年 ねん 。http://www.ocw.titech.ac.jp/?q=201321151&sort=date 。
^ “有限 ゆうげん 次元 じげん ... そうでないとき 無限 むげん 次元 じげん であるという” 東京工業大学 とうきょうこうぎょうだいがく 『基底 きてい の存在 そんざい と次元 じげん 』2013年 ねん 。http://www.ocw.titech.ac.jp/?q=201321151&sort=date 。
^ Roman 2005 , Th. 14.3. 米田 よねだ の補題 ほだい も参照 さんしょう 。
^ representation theory および群論 ぐんろん を参照 さんしょう 。
^ Folland 1992 , p. 349 ff .
^ Jost 2005 . ローレンツ多様 たよう 体 たい も参照 さんしょう 。
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