H5N1亜 あ 型 がた (エイチごエヌいちあがた、Influenza A virus subtype H5N1 )は、A型 がた インフルエンザウイルス の亜 あ 型 がた の一 ひと つであり、H5N1 、A(H5N1) とも表記 ひょうき される。H5N1亜 あ 型 がた 内 ない でも僅 わず かな抗原 こうげん 性 せい の違 ちが いによって少 すこ しずつ種類 しゅるい (クレード)の違 ちが うものであったりするが、一般 いっぱん 的 てき にH5N1亜 あ 型 がた の形質 けいしつ を保 たも っているものをまとめてH5N1と言 い う。
H5N1はトリ 、ヒト 、その他 た 多 おお くの動物 どうぶつ においてインフルエンザ を引 ひ き起 お こす[1] 。高 こう 病原 びょうげん 性 せい トリインフルエンザ (HPAI)を引 ひ き起 お こす株 かぶ はHPAI A(H5N1) と総称 そうしょう され、特 とく に東南 とうなん アジア の多 おお くのトリの間 あいだ でエピデミック (局地 きょくち 的 てき 流行 りゅうこう )を起 お こしている(「鳥 とり インフルエンザ 」も参照 さんしょう )。HPAI A(H5N1) の変異 へんい 株 かぶ の1つがアジア で出現 しゅつげん した後 のち 、現在 げんざい では世界中 せかいじゅう に広 ひろ がっている。また、ヒトの間 あいだ で爆発 ばくはつ 的 てき な感染 かんせん に繋 つな がる恐 おそ れのある新型 しんがた インフルエンザ への変異 へんい が懸念 けねん されている。なお、2009年 ねん に発生 はっせい した新型 しんがた インフルエンザはH1N1亜 あ 型 がた によるもので、これとは異 こと なる。
動物 どうぶつ 間 あいだ で流行 りゅうこう が起 お こった場合 ばあい 、感染 かんせん の疑 うたが いがある多 おお くのトリやその他 た の動物 どうぶつ を淘汰 とうた (殺 ころせ 処分 しょぶん )して流行 りゅうこう を食 く い止 と める[2] 。そのため、H5N1やトリインフルエンザはよくマスメディア に取 と り上 あ げられる[3] 。
H5N1は主 おも に野鳥 やちょう の間 あいだ で伝染 でんせん する。H5N1を含 ふく むA型 がた インフルエンザウイルス のいくつかの亜 あ 型 がた (H7N7 など)は鳥 とり インフルエンザ を引 ひ き起 お こす。トリインフルエンザは症状 しょうじょう の程度 ていど により、高 こう 病原 びょうげん 性 せい トリインフルエンザ(HPAI)と、低 てい 病原 びょうげん 性 せい トリインフルエンザ(LPAI)に分 わ けられる。宿主 しゅくしゅ である野生 やせい の水鳥 みずとり がHPAI株 かぶ に感染 かんせん した場合 ばあい でも発症 はっしょう することはないが、家禽 かきん に感染 かんせん した場合 ばあい は患畜の多 おお くが死亡 しぼう する。LPAI株 かぶ も主 おも に野鳥 やちょう の間 あいだ で伝染 でんせん するが、鳥類 ちょうるい に感染 かんせん した場合 ばあい の症状 しょうじょう は比較的 ひかくてき 軽 かる いか発症 はっしょう しない。その他 た にも、ネコ科 か の動物 どうぶつ 、イヌ 、ブタ などに感染 かんせん した例 れい がある。
1980年代 ねんだい になってから感染 かんせん 症 しょう は予防 よぼう 接種 せっしゅ や抗生 こうせい 剤 ざい の服用 ふくよう によって治療 ちりょう することができるという、一種 いっしゅ の危機 きき 感 かん の薄 うす れがあった。しかし、1997年 ねん 、香港 ほんこん で本来 ほんらい 人間 にんげん に感染 かんせん することはないとされていたH5N1型 がた のトリインフルエンザが人間 にんげん に感染 かんせん した。このウイルスに18名 めい が感染 かんせん し、うち6名 めい が死亡 しぼう した。その後 ご も、何 なん 度 ど か人間 にんげん に対 たい して感染 かんせん が起 お こっており、現在 げんざい HPAIを引 ひ き起 お こすアジア株 かぶ に感染 かんせん した場合 ばあい のヒトの死亡 しぼう 率 りつ は約 やく 60%である。世界 せかい 保健 ほけん 機関 きかん (WHO)によると、2021年 ねん 11月時点 じてん で累計 るいけい 863人 にん が感染 かんせん し456人 にん が死亡 しぼう している[4] 。感染 かんせん 者 しゃ は、ほぼ全 すべ てのケースにおいてトリと物理 ぶつり 的 てき 接触 せっしょく をしたことが確認 かくにん されている。ヒト同士 どうし の間 あいだ で伝染 でんせん 、もしくはヒトに空気 くうき 感染 かんせん すると言 い う証拠 しょうこ は発見 はっけん されていない。
また、その後 ご の研究 けんきゅう により過去 かこ のスペインかぜ (H1N1)、香港 ほんこん かぜ (H3N2)などのパンデミック はトリインフルエンザウイルスに由来 ゆらい するものであった可能 かのう 性 せい が高 たか いという証拠 しょうこ が発見 はっけん された。これは次 つぎ のパンデミックもトリインフルエンザウイルスの変異 へんい によって現 あら われる可能 かのう 性 せい が高 たか いということを表 あらわ している(ただしそれは強 つよ 毒 どく のH5N1ではない。H5N1は人間 にんげん 同士 どうし の感染 かんせん 力 りょく が弱 よわ いことが多 おお いので、パンデミックにはなりにくい)。
多 おお くのインフルエンザウイルスは増殖 ぞうしょく の過程 かてい で突然変異 とつぜんへんい しやすいものであり、H5N1も例外 れいがい ではない。さらに、このウイルスは同 おな じトリインフルエンザウイルスであるH9N2と比 くら べても世界 せかい 規模 きぼ で広範 こうはん に家禽 かきん に流行 りゅうこう しており、ウイルスの個体 こたい 数 すう から考 かんが えてもヒト感染 かんせん 型 がた の変異 へんい 体 たい の発生 はっせい の可能 かのう 性 せい はきわめて高 たか いと考 かんが えられる。
また、突然変異 とつぜんへんい でなくとも人間 にんげん に感染 かんせん したウイルスが体内 たいない でヒトインフルエンザウイルスと遺伝子 いでんし 再 さい 集合 しゅうごう をした場合 ばあい 、高 こう 病原 びょうげん 性 せい を保持 ほじ したまま人間 にんげん 同士 どうし での感染 かんせん 力 りょく の高 たか いウイルスが生 う まれる可能 かのう 性 せい がある。
2005年 ねん 9月 がつ 、トリインフルエンザのアウトブレイク により500万 まん から1億 おく 5000万 まん の死者 ししゃ が出 で る可能 かのう 性 せい があることが発表 はっぴょう された[5] [6] 。
トリインフルエンザウイルスは進化 しんか を続 つづ け、パンデミックを起 お こすことが予想 よそう されている。この進化 しんか のスピードは当初 とうしょ の予想 よそう よりずっと速 はや いものであった。
HPAI A(H5N1) はもともと致死 ちし 率 りつ が高 たか いことに加 くわ え、進化 しんか によって毒性 どくせい も高 たか くなりつつある。そのため、世界 せかい 的 てき なパンデミックに備 そな えた対策 たいさく が取 と られつつある[7] 。
流行 りゅうこう の際 さい の致死 ちし 率 りつ を下 さ げることを目的 もくてき として、プレパンデミック・ワクチンが開発 かいはつ された。しかし、プレパンデミック・ワクチンで感染 かんせん を確実 かくじつ に抑 おさ えることが出来 でき るかどうかは不明 ふめい であり、実際 じっさい に効果 こうか があるワクチン が製造 せいぞう 出来 でき るまでにはパンデミックが起 お こってから数 すう ヵ月 かげつ が必要 ひつよう である。変異 へんい 株 かぶ の出現 しゅつげん 後 ご 3か月 げつ 以内 いない に予防 よぼう ワクチンの本格 ほんかく 的 てき な生産 せいさん 開始 かいし が望 のぞ まれ、1年 ねん 以内 いない に10億 おく 人 にん 分 ぶん のワクチンを用意 ようい することが要求 ようきゅう されている[8] 。
H5N1はトリの間 あいだ で突然変異 とつぜんへんい を続 つづ けることにより、人間 にんげん の集団 しゅうだん 免疫 めんえき (Herd immunity)の限界 げんかい を超 こ えて複 ふく 数 すう 回 かい のパンデミックを起 お こす可能 かのう 性 せい がある[9] 。その遺伝子 いでんし 子孫 しそん によって起 お こるインフルエンザ・パンデミックでは、H5N1以外 いがい の亜 あ 型 がた を含 ふく むことも考 かんが えられる[10] 。
H5N1の遺伝子 いでんし 解析 かいせき の結果 けっか 、H5N1の遺伝子 いでんし 子孫 しそん によってパンデミックが起 お こった場合 ばあい はスペインかぜ より致死 ちし 率 りつ が高 たか くなると予想 よそう され、スペインかぜ以上 いじょう の大 だい 規模 きぼ なパンデミックになる可能 かのう 性 せい がある[11] 。
遺伝 いでん 学 がく 的 てき 解析 かいせき [ 編集 へんしゅう ]
ヘマグルチニン の分子 ぶんし モデル。H5N1のH はヘマグルチニンの種類 しゅるい を表 あらわ す。
HPAI A(H5N1) の最初 さいしょ に発見 はっけん された株 かぶ はA/chicken/Scotland/59 と呼 よ ばれ、1959年 ねん にスコットランド で2つのニワトリ の群 む れを病死 びょうし させた。しかし、この株 かぶ と現在 げんざい 流行 りゅうこう している高 こう 病原 びょうげん 性 せい 株 かぶ との違 ちが いは非常 ひじょう に大 おお きい。
2004年 ねん に主 おも に流行 りゅうこう したHPAI A(H5N1)は、1999年 ねん から2002年 ねん にかけてZ genotypeを持 も つように進化 しんか した[12] 。これはアジア型 がた HPAI A(H5N1)(Asian lineage HPAI A(H5N1))と呼 よ ばれている。
アジア型 がた HPAI A(H5N1)は抗原 こうげん 性 せい によって2つのクレード (clade)に分 わ けられる。
クレード 1
ベトナム 、タイ 、カンボジア でのヒトとトリからの分離 ぶんり 株 かぶ 、およびラオス 、マレーシア でのトリからの分離 ぶんり 株 かぶ 。
クレード 2
最初 さいしょ に中国 ちゅうごく 、インドネシア 、日本 にっぽん 、韓国 かんこく のトリから分離 ぶんり され、後 のち に中東 ちゅうとう 、ヨーロッパ 、アフリカ へ広 ひろ がった。
WHO の発表 はっぴょう では、2005年 ねん 後半 こうはん から2006年 ねん にかけてヒトへ感染 かんせん したH5N1は主 おも にクレード 2であった。
遺伝子 いでんし 解析 かいせき により、クレード 2はさらに6つのサブクレードに分 わ けられ、その内 うち の地理 ちり 的 てき に異 こと なった場所 ばしょ に分布 ぶんぷ している3つがヒトに感染 かんせん した。地図 ちず
サブクレード 1 - インドネシア
サブクレード 2 - ヨーロッパ、中東 ちゅうとう 、アフリカ(英語 えいご の頭文字 かしらもじ をとってEMA と呼 よ ばれる)
サブクレード 3 - 中国 ちゅうごく [9] [13] [14]
2007年 ねん 、EMAサブクレードの変異 へんい 株 かぶ についての研究 けんきゅう が行 おこな われた。36の変異 へんい 株 かぶ の全 ぜん ゲノム 配列 はいれつ が解析 かいせき され、現在 げんざい 存在 そんざい するH5N1の遺伝子 いでんし の解析 かいせき が進 すす んだ。この研究 けんきゅう が行 おこな われる前 まえ にも、2004-2006年 ねん のヨーロッパの5つの株 かぶ の全 ぜん ゲノム配列 はいれつ の解析 かいせき が行 おこな われていたが、中東 ちゅうとう と北 きた アフリカ の株 かぶ については全 ぜん ゲノムの解析 かいせき は行 おこな われていなかった。
解析 かいせき の結果 けっか 、全 すべ てのヨーロッパ、中東 ちゅうとう 、アフリカのサンプルは現代 げんだい アジアのクレードとは別 べつ のクレードに分 わ けられ、共通 きょうつう の祖先 そせん が1997年 ねん の香港 ほんこん 株 かぶ であることがわかった。図 ず 1(リンク先 さき )はHA(ヘマグルチニン )によって分 わ けられた系統 けいとう 発生 はっせい 樹 じゅ であり、3つの型 かた (lineage)が存在 そんざい することが示 しめ されている。クレードの内 うち 2つはベトナムの分離 ぶんり 株 かぶ のみであり、5つの分離 ぶんり 株 かぶ が含 ふく まれている小 ちい さいクレードはV1 、9つの分離 ぶんり 株 かぶ が含 ふく まれている大 おお きなクレードはV2 と名付 なづ けられた。残 のこ りの22株 かぶ はヨーロッパ、中東 ちゅうとう 、アフリカから分離 ぶんり されたものであり、EMAクレード に分類 ぶんるい される[15] 。
分離 ぶんり されたH5N1の変異 へんい 株 かぶ には一定 いってい の条件 じょうけん で名前 なまえ が付 つ けられる。例 れい として A/chicken/Nakorn-Patom/Thailand/CU-K2/04(H5N1) の命名 めいめい 法 ほう を説明 せつめい する。
A - インフルエンザウイルス の型 かた (A、B、C)
chicken - 変異 へんい 株 かぶ が発見 はっけん された動物 どうぶつ 種 しゅ
Nakorn-Patom/Thailand - 変異 へんい 株 かぶ が分離 ぶんり された場所 ばしょ
CU-K2 - 同 おな じ場所 ばしょ で分離 ぶんり された他 ほか の株 かぶ との区別 くべつ
04 - 発見 はっけん された年 とし (2004年 ねん )
H5 - ヘマグルチニン の種類 しゅるい
N1 - ノイラミニダーゼ の種類 しゅるい
他 ほか にも、A/duck/Hong Kong/308/78(H5N3)、A/avian/NY/01(H5N2)、A/chicken/Mexico/31381-3/94(H5N2)、A/shoveler/Egypt/03(H5N2)という風 ふう に命名 めいめい される[16] 。
他 た のトリインフルエンザ・ウイルスと同様 どうよう に、H5N1も高 こう 病原 びょうげん 性 せい (highly pathogenic:HP)と低 てい 病原 びょうげん 性 せい (low-pathogenic:LP)に分 わ けられる。HPAIを起 お こすウイルスの毒性 どくせい は非常 ひじょう に高 たか く、感染 かんせん した個体 こたい はほぼ100%死亡 しぼう する。LPAIウイルスの毒性 どくせい はそれほど高 たか くはないが、このウイルスはHPAIウイルスの祖先 そせん である可能 かのう 性 せい がある。
世界中 せかいじゅう でトリを死亡 しぼう させているH5N1はHPAI株 かぶ である。その他 た の株 かぶ はLPAI株 かぶ であり、病気 びょうき を引 ひ き起 お こさない北 きた アメリカ株 かぶ もこれに含 ふく まれる。現在 げんざい 確認 かくにん されているHPAI株 かぶ はH5亜 あ 型 がた かH7亜 あ 型 がた のものである。通常 つうじょう HPAIウイルスはヒトと野鳥 やちょう のどちらか片方 かたがた にのみ高 たか い毒性 どくせい を持 も っている。
遺伝子 いでんし 構造 こうぞう と亜 あ 型 がた [ 編集 へんしゅう ]
ノイラミニダーゼ のリボンモデル。H5N1のN はノイラミニダーゼの種類 しゅるい を表 あらわ す。
H5N1はオルトミクソウイルス科 か A型 がた インフルエンザウイルス属 ぞく の亜 あ 型 がた の一 ひと つであり、RNAウイルス である。ゲノムは8つの領域 りょういき (PB2、PB1、PA、HA、NP、NA、M、NS)があり、マイナス一本 いっぽん 鎖 くさり 型 がた RNA で構成 こうせい されている。
HAは抗原 こうげん 性 せい 糖 とう タンパク質 たんぱくしつ であるヘマグルチニン をコードしている。ヘマグルチニンはウイルスの表面 ひょうめん に存在 そんざい し、感染 かんせん する対象 たいしょう の細胞 さいぼう にウイルス結合 けつごう させる働 はたら きがある。NAはグリコシダーゼ の一種 いっしゅ であるノイラミニダーゼ をコードしている。ノイラミニダーゼは感染 かんせん 細胞 さいぼう からのウイルスの放出 ほうしゅつ に関係 かんけい している[17] 。
ヘマグルチニン(HA)やノイラミニダーゼ(NA)は抗 こう ウイルス薬 やく や抗体 こうたい のターゲットとなるため、医学 いがく 的 てき に重要 じゅうよう な要素 ようそ である。H5N1はH(ヘマグルチニン)とN(ノイラミニダーゼ)の種類 しゅるい を表 あらわ している。
A型 がた インフルエンザは度々 たびたび 多数 たすう の死者 ししゃ を出 だ す大 だい 流行 りゅうこう を繰 く り返 かえ してきた。これまでパンデミック および小規模 しょうきぼ な流行 りゅうこう を引 ひ き起 お こした、もしくは死者 ししゃ を出 だ した主 おも な亜 あ 型 がた を死者 ししゃ の多 おお い順 じゅん に並 なら べると以下 いか のようになる。
パンデミック
H1N1 - スペインかぜ を引 ひ き起 お こした。「Aソ連 それん 型 がた 」としても知 し られ、現在 げんざい は季 き 節 ぶし 性 せい インフルエンザを起 お こす。
H2N2 - アジアかぜ を引 ひ き起 お こした。
H3N2 - 香港 ほんこん かぜ を引 ひ き起 お こした。「A香港 ほんこん 型 がた 」としても知 し られ、現在 げんざい は季 き 節 ぶし 性 せい インフルエンザを起 お こす。
小規模 しょうきぼ な流行 りゅうこう
H7N9 - 2021年 ねん 11月時点 じてん で累計 るいけい 1568人 にん が感染 かんせん し616人 にん が死亡 しぼう している[18] 。現在 げんざい 、パンデミックが懸念 けねん されている(「H7N9鳥 ちょう インフルエンザの流行 りゅうこう 」も参照 さんしょう )。
H5N1 - 本 ほん 項目 こうもく で扱 あつか っている。2021年 ねん 11月時点 じてん で累計 るいけい 863人 にん が感染 かんせん し456人 にん が死亡 しぼう している[4] 。現在 げんざい 、パンデミックが懸念 けねん されている。
H7N7 - 1人 ひとり が死亡 しぼう した。
H1N2 - 現在 げんざい ヒトとブタ でエピデミックを起 お こしており、季 き 節 ぶし 性 せい インフルエンザを起 お こす。
H9N2 - 3人 にん に感染 かんせん した。
H7N2 - 2人 ふたり に感染 かんせん した。
H7N3 - 2人 ふたり に感染 かんせん した。
H10N7 - 2人 ふたり に感染 かんせん した。
低 てい 病原 びょうげん 性 せい H5N1[ 編集 へんしゅう ]
低 てい 病原 びょうげん 性 せい トリインフルエンザH5N1(LPAI H5N1)は北 きた アメリカ株 かぶ と呼 よ ばれ、野鳥 やちょう の間 あいだ で伝染 でんせん する。野鳥 やちょう に感染 かんせん した場合 ばあい の症状 しょうじょう は軽 かる いか、全 まった く出 で ないことが多 おお いが、ヒトに及 およ ぼす影響 えいきょう に関 かん しては分 わ かっていない。この株 かぶ が家禽 かきん の間 あいだ で伝染 でんせん するようになった場合 ばあい 、伝染 でんせん していく途中 とちゅう で突然変異 とつぜんへんい を起 お こす可能 かのう 性 せい も考 かんが えられる。
以前 いぜん は州 しゅう と大学 だいがく が野鳥 やちょう において調査 ちょうさ したLPAI H5とH7のことを報告 ほうこく する義務 ぎむ がなかったため、上 うえ のリストでは昔 むかし のLPAI株 かぶ のことが含 ふく まれていない可能 かのう 性 せい がある。後 のち に国際 こくさい 獣疫 じゅうえき 事務 じむ 局 きょく (OIE)はLPAI株 かぶ のことも報告 ほうこく するように義務付 ぎむづ けた。2006年 ねん 、OIEはLPAI H5とH7が突然変異 とつぜんへんい を起 お こす恐 おそ れがあるとして、確認 かくにん された全 すべ てのLPAI H5とH7を報告 ほうこく するように求 もと めた。そのため、USDA はあらゆる方面 ほうめん でこれらの株 かぶ のことを調査 ちょうさ している[19] 。
高 こう 病原 びょうげん 性 せい H5N1の伝染 でんせん 状 じょう 況 きょう
Highly pathogenic H5N1
→ H5N1によって家禽 かきん 、野鳥 やちょう が死亡 しぼう した国 くに
→ H5N1によってヒト、および家禽 かきん 、野鳥 やちょう が死亡 しぼう した国 くに
H5N1は野鳥 やちょう に感染 かんせん することによって世界中 せかいじゅう に広 ひろ がる可能 かのう 性 せい がある。H5N1は突然変異 とつぜんへんい と遺伝子 いでんし の再 さい 集合 しゅうごう を起 お こすことにより、今 いま まで感染 かんせん しなかったヒトなどの動物 どうぶつ に感染 かんせん するようになることも考 かんが えられる。
H5N1はトリの気道 きどう にあるガラクトース 受容 じゅよう 体 たい の一種 いっしゅ に結合 けつごう する。このガラクトース受容 じゅよう 体 たい はヒトには存在 そんざい しないタイプのものであるが、ヒトでは肺 はい 胞 の内外 ないがい でのみ増殖 ぞうしょく する。そのため、普通 ふつう の伝達 でんたつ ルートである咳 せき やくしゃみ によっては放出 ほうしゅつ されにくい[20] [21] [22] 。
H5N1は主 おも に家禽 かきん によって伝染 でんせん する。家禽 かきん が直接 ちょくせつ 移動 いどう した場合 ばあい 、鳥 とり 肉 にく 製品 せいひん として流通 りゅうつう した場合 ばあい 、鳥 とり 肉 にく が試料 しりょう や肥料 ひりょう として利用 りよう された場合 ばあい などに感染 かんせん が広 ひろ がると考 かんが えられている。
ヒトがH5N1に感染 かんせん した場合 ばあい は、トリから伝染 でんせん したケースがほとんどである。野生 やせい のカモ、アヒル 、白鳥 しらとり は発症 はっしょう することなくH5N1を運 はこ ぶことがある[23] [24] 。多 おお くの哺乳類 ほにゅうるい や鳥類 ちょうるい はHPAI A(H5N1)に感染 かんせん するが、水鳥 みずとり が宿主 しゅくしゅ としてどのような働 はたら きをしているかはわかっていない[25] 。WHO は、肥料 ひりょう の表面 ひょうめん に付着 ふちゃく したH5N1が世界中 せかいじゅう に広 ひろ がる可能 かのう 性 せい があることを報告 ほうこく した[26] 。
突然変異 とつぜんへんい によって様々 さまざま な毒性 どくせい を持 も つH5N1の株 かぶ が誕生 たんじょう した。一 ひと つの動物 どうぶつ 種 しゅ にしか病原 びょうげん 性 せい を持 も たないものや、様々 さまざま な種 たね に病原 びょうげん 性 せい を持 も つものなどが存在 そんざい する。抗原 こうげん ドリフト により、同 おな じクレードの中 なか でも様々 さまざま な毒性 どくせい をもつ高 こう 病原 びょうげん 性 せい 株 かぶ が数 すう 十 じゅう 種類 しゅるい 誕生 たんじょう したが、現在 げんざい 存在 そんざい するものは全 すべ てgenotype Zに属 ぞく する[27] [28] 。
1997年 ねん と2001年 ねん に香港 ほんこん で分離 ぶんり されたH5N1は、トリの間 あいだ で伝染 でんせん せず病気 びょうき も引 ひ き起 お こさない株 かぶ であった。2002年 ねん に香港 ほんこん のトリから新 あたら しい変異 へんい 株 かぶ が分離 ぶんり された。この株 かぶ はカモに対 たい して神経 しんけい 障害 しょうがい を起 お こして死亡 しぼう させた[29] 。Genotype Zは、2002年 ねん に既存 きそん の高 こう 病原 びょうげん 性 せい H5N1株 かぶ からの遺伝子 いでんし 再 さい 集合 しゅうごう によって誕生 たんじょう した[3] [30] [27] [28] 。Genotype Zにはヒトに感染 かんせん することができるクレードが2つ存在 そんざい し、東南 とうなん アジアのトリの間 あいだ でエンデミック を起 お こしている。突然変異 とつぜんへんい はこのgenotypeの中 なか で起 お こっている[31] 。
伝染 でんせん と宿主 しゅくしゅ [ 編集 へんしゅう ]
A型 がた インフルエンザウイルス の透過 とうか 型 がた 電子 でんし 顕微鏡 けんびきょう 写真 しゃしん (出典 しゅってん : Dr. Erskine Palmer, Centers for Disease Control and Prevention Public Health Image Library)
H5N1に感染 かんせん したトリは唾液 だえき 、鼻 はな の粘液 ねんえき 、糞 くそ 、血液 けつえき などによってウイルスを伝染 でんせん させる。他 た の動物 どうぶつ はこれらのものに直接 ちょくせつ 接触 せっしょく することによってH5N1に感染 かんせん すると思 おも われる。
H5N1は0℃で30日 にち 、37℃で6日 にち 、常温 じょうおん で数 すう 週間 しゅうかん 感染 かんせん 力 りょく を保 たも つことが出来 でき る。北極 ほっきょく のような環境 かんきょう でも変化 へんか することはほとんどない。渡 わた り鳥 どり はH5N1の宿主 しゅくしゅ の一 ひと つであり、世界中 せかいじゅう にウイルスを輸送 ゆそう する。H5N1はこれまで知 し られていた他 ほか の高 こう 病原 びょうげん 性 せい トリインフルエンザ・ウイルスと違 ちが い、家禽 かきん 以外 いがい の動物 どうぶつ によっても伝染 でんせん する。
2004年 ねん 10月 がつ 、H5N1はそれまでの予想 よそう よりずっと危険 きけん なウイルスであることがわかった。水鳥 みずとり が高 こう 病原 びょうげん 性 せい H5N1株 かぶ をニワトリ、カラス 、ハト などに伝染 でんせん させていることが判明 はんめい した。さらにウイルス自体 じたい も哺乳類 ほにゅうるい に対 たい する感染 かんせん 力 りょく を強 つよ めていった。パンデミックを遅 おく らせることは出来 でき るが、完全 かんぜん に止 と めることは不可能 ふかのう であると予想 よそう されている。
1997年 ねん 以降 いこう 、H5N1の抗原 こうげん 性 せい 、遺伝子 いでんし 座 ざ が進化 しんか し続 つづ けていることが判明 はんめい した。それによって、以前 いぜん より広範囲 こうはんい の鳥類 ちょうるい とネコ科 か の動物 どうぶつ にも感染 かんせん するようになった。病原 びょうげん 性 せい も強力 きょうりょく になり、実験 じっけん 用 よう のマウス とフェレット に全身 ぜんしん 症状 しょうじょう を引 ひ き起 お こした。さらに環境 かんきょう に対 たい する安定 あんてい 性 せい も増加 ぞうか している[32] 。
2007年 ねん 8月 がつ 22日 にち 、バリ島 ばりとう でのトリインフルエンザによる2人 ふたり 目 め の犠牲 ぎせい 者 しゃ として、28歳 さい のニワトリ業者 ぎょうしゃ のインドネシア人 じん が入院 にゅういん の4日 にち 後 ご に死亡 しぼう した。インドネシアにおける犠牲 ぎせい 者 しゃ は84人 にん となった。地元 じもと の研究所 けんきゅうじょ の検査 けんさ により、H5N1の陽性 ようせい 反応 はんのう が出 で た [33] 。
2007年 ねん 9月 がつ 29日 にち 、H5N1は妊 にん 婦 ふ の胎盤 たいばん を通過 つうか して胎児 たいじ に感染 かんせん する可能 かのう 性 せい があることが判明 はんめい した。さらに、ウイルスが肺 はい だけでなく消化 しょうか 管 かん 、脳 のう 、肝臓 かんぞう 、血球 けっきゅう など全身 ぜんしん に影響 えいきょう を与 あた えることもわかった
[34] 。
インフルエンザウイルス はRNAウイルス であるため、突然変異 とつぜんへんい 率 りつ が高 たか い。また、新 あら たな変種 へんしゅ が生 う まれる原因 げんいん には、同 おな じ宿主 しゅくしゅ に2種類 しゅるい のインフルエンザ・ウイルスが感染 かんせん した場合 ばあい 、ウイルス・ゲノム が分割 ぶんかつ されることによって遺伝子 いでんし 再 さい 集合 しゅうごう が起 お こり、遺伝子 いでんし 組 く み換 か え が起 お こることがある[27] [28] 。これにより、病原 びょうげん 性 せい のなかった株 かぶ がヒトに対 たい して病原 びょうげん 性 せい を持 も つようになる可能 かのう 性 せい がある。
ある種 しゅ の動物 どうぶつ にのみ感染 かんせん するという選択 せんたく 性 せい は、主 おも にウイルスが持 も っているヘマグルチニン の種類 しゅるい によって決 き まる。ヘマグルチニンのアミノ酸 あみのさん 配列 はいれつ が1つでも変化 へんか すると、標的 ひょうてき 細胞 さいぼう への感染 かんせん 能力 のうりょく に大 おお きな変化 へんか が起 お こる。トリインフルエンザにこのような変化 へんか が起 お こった場合 ばあい 、ヒトに容易 ようい に感染 かんせん するようになることも考 かんが えられる[35] 。
H3N2(豚 ぶた インフルエンザ )はベトナム のブタから発見 はっけん され、中国 ちゅうごく のブタの間 あいだ で感染 かんせん 流行 りゅうこう を起 お こしている。この亜 あ 型 がた は新 あら たな変異 へんい 種 しゅ が発生 はっせい する恐 おそ れがある。2006年 ねん 2月 がつ に流行 りゅうこう したH3N2はアマンタジン とリマンタジンに対 たい して耐 たい 性 せい を示 しめ した。H5N1とH3N2が、遺伝子 いでんし の再 さい 集合 しゅうごう によって遺伝子 いでんし 交換 こうかん を行 おこな うことが懸念 けねん されている。H5N1の中 なか で遺伝子 いでんし 再 さい 集合 しゅうごう が起 お こった場合 ばあい はH5N1亜 あ 型 がた のままであるか、亜 あ 型 がた がシフト(抗原 こうげん シフト )することも考 かんが えられる。H3N2はH2N2から抗原 こうげん シフトによって進化 しんか した。
H2N2とH3N2のパンデミックを起 お こした株 かぶ は、トリインフルエンザのRNA 領域 りょういき を持 も っている。1957年 ねん (H2N2)と1968年 ねん (H3N2)にパンデミックをおこした株 かぶ は、ヒト由来 ゆらい ウイルスとトリ由来 ゆらい ウイルスが遺伝子 いでんし 再 さい 集合 しゅうごう を行 おこな って誕生 たんじょう した株 かぶ であった。1918年 ねん にスペインかぜ を起 お こしたウイルスはトリ由来 ゆらい のものであったことが判明 はんめい している[12] 。
H5N1が最初 さいしょ にヒトに感染 かんせん したのは、香港 ほんこん のトリの間 あいだ で大 だい 流行 りゅうこう したのと同 おな じ時期 じき である。この時 とき は香港 ほんこん 市内 しない のトリを全 すべ て処分 しょぶん することで流行 りゅうこう を食 く い止 と めた。
感染 かんせん 経路 けいろ は、感染 かんせん した鳥 とり やその排泄 はいせつ 物 ぶつ 、死体 したい 、臓器 ぞうき などに濃厚 のうこう に接触 せっしょく することによってまれに感染 かんせん することがある。日本 にっぽん では発症 はっしょう した人 ひと は確認 かくにん されていない。[36]
トリインフルエンザウイルスのヘマグルチニン はα あるふぁ 2-3シアル酸 さん レセプターに結合 けつごう するが、ヒトインフルエンザウイルスのヘマグルチニンはα あるふぁ 2-6シアル酸 さん レセプターに結合 けつごう する。ヒト型 がた のH5N1は存在 そんざい しないため、H5N1に感染 かんせん したヒトは鳥 とり 型 がた のH5N1に感染 かんせん したことになる。
ヒトインフルエンザの一般 いっぱん 的 てき な症状 しょうじょう は、発熱 はつねつ 、咳 せき 、咽喉 いんこう 痛 やめ 、筋肉 きんにく 痛 つう 、結膜炎 けつまくえん などで、さらに重症 じゅうしょう 化 か した場合 ばあい は肺炎 はいえん などを起 お こし死 し に至 いた ることもある。症状 しょうじょう の重 おも さは感染 かんせん 者 しゃ の免疫 めんえき によって変化 へんか し、以前 いぜん どのタイプのウイルスに感染 かんせん したかによって大 おお きく変化 へんか する。
高 こう 病原 びょうげん 性 せい H5N1は従来 じゅうらい 型 がた のヒトインフルエンザと異 こと なりウイルスの増殖 ぞうしょく 部位 ぶい が呼吸 こきゅう 器 き 系 けい に限定 げんてい されず全身 ぜんしん の臓器 ぞうき において増殖 ぞうしょく する力 ちから がある。これは普通 ふつう はHA基 もと がヒトでは呼吸 こきゅう 器 き にしか存在 そんざい しないタンパク質 たんぱくしつ 分解 ぶんかい 酵素 こうそ によって開 ひらき 裂 きれ (かいれつ)と呼 よ ばれる2つに分 わ かれる過程 かてい が必要 ひつよう とされるが、高 こう 病原 びょうげん 性 せい H5N1ではヒトの全身 ぜんしん にあるタンパク質 たんぱくしつ 分解 ぶんかい 酵素 こうそ で開 ひらけ 裂 きれ が起 お きるためである。このことが、ヒトが高 こう 病原 びょうげん 性 せい H5N1に感染 かんせん した場合 ばあい の死亡 しぼう 率 りつ の高 たか さとなると考 かんが えられている[37] 。WHOの報告 ほうこく によると適切 てきせつ な治療 ちりょう を受 う けない場合 ばあい の致死 ちし 率 りつ は60%になるとされるが、トリインフルエンザに感染 かんせん し、治療 ちりょう を行 おこな わない場合 ばあい でも実際 じっさい の死亡 しぼう 率 りつ がWHOの報告 ほうこく より低 ひく い可能 かのう 性 せい がある[38] [39] 。あるケースでは、H5N1に感染 かんせん した男児 だんじ が風邪 かぜ のような症状 しょうじょう を示 しめ さず、速 すみ やかに下痢 げり を伴 ともな う昏睡 こんすい 状態 じょうたい に陥 おちい った[40] 。
H5N1がヒトのサイトカイン 濃度 のうど に影響 えいきょう を与 あた えることが報告 ほうこく された。感染 かんせん 部位 ぶい の組織 そしき の破壊 はかい と他 た のサイトカイン生産 せいさん に関係 かんけい するタンパク質 たんぱくしつ の一種 いっしゅ 、TNF-α あるふぁ (腫瘍 しゅよう 壊死 えし 因子 いんし α あるふぁ )の濃度 のうど がH5N1に感染 かんせん することによって高 たか くなる。インフルエンザ・ウイルスによってサイトカインの濃度 のうど が上 あ がることで、高 たか い発熱 はつねつ 、悪寒 おかん 、嘔吐 おうと 、頭痛 ずつう などが起 お こり、組織 そしき の損傷 そんしょう がひどい場合 ばあい は死 し に至 いた ることもある[5] 。このような免疫 めんえき 系 けい の正 せい のフィードバック によるサイトカインの過剰 かじょう 生産 せいさん はサイトカインストーム と呼 よ ばれ、H5N1に感染 かんせん した場合 ばあい は他 た のウイルスより激 はげ しく起 お こるのが特徴 とくちょう である[41] 。従来 じゅうらい のインフルエンザは高齢 こうれい 者 しゃ のみが致命 ちめい 的 てき なハイリスク・グループであるが、サイトカインストームによって、免疫 めんえき 力 りょく の強 つよ い若年 じゃくねん 層 そう でも多数 たすう が致命 ちめい 的 てき な症状 しょうじょう に至 いた る可能 かのう 性 せい が指摘 してき されている[37] 。しかし、スペインかぜではサイトカインストームは起 お きていなかったと言 い う研究 けんきゅう 者 しゃ もおり、若年 じゃくねん 層 そう で死亡 しぼう 率 りつ が高 たか い原因 げんいん はまだ十分 じゅうぶん に解明 かいめい されてはいない。
H5N1に対 たい する確実 かくじつ な治療 ちりょう 法 ほう は存在 そんざい しないが、オセルタミビル (タミフル)を投与 とうよ することによってウイルスの増殖 ぞうしょく を抑制 よくせい することができる。一部 いちぶ の国 くに と組織 そしき は、オセルタミビルをH5N1に対 たい する予防 よぼう 薬 やく として使用 しよう するかどうかを検討 けんとう した[42] 。
WHOの専門 せんもん 家 か によれば、オセルタミビルの実際 じっさい の効果 こうか はまだ調査 ちょうさ 中 ちゅう であり確実 かくじつ なことはわかっていない。ワクチンの製造 せいぞう も新 あたら しいウイルスの出現 しゅつげん から6-9か月 げつ はかかると予測 よそく されている。過去 かこ 90年 ねん の伝染 でんせん 病 びょう の例 れい を見 み ても、ワクチンによって流行 りゅうこう を止 と められるかどうかは疑 うたが わしい[43] 。
H5N1のいくつかの株 かぶ に対 たい するワクチンがすでに存在 そんざい する。しかしH5N1は継続 けいぞく 的 てき に変化 へんか し続 つづ けているため、ワクチンの使用 しよう は限 かぎ られている。
H5N1に対 たい するワクチンは由来 ゆらい とタイミングによって大 おお きく2種類 しゅるい があり、今 いま あるトリインフルエンザ・ウイルスを弱毒 じゃくどく 化 か するなどの手法 しゅほう で、実際 じっさい のヒトへの感染 かんせん 流行 りゅうこう 前 まえ にあらかじめ作 つく り置 お きしておく「プレパンデミックワクチン」と、ヒトへの感染 かんせん 流行 りゅうこう が始 はじ まってからそのウイルスそのものからワクチンを作 つく る「パンデミックワクチン」である。「プレ」ではヒトへの感染 かんせん 流行 りゅうこう に対 たい して最小 さいしょう の遅 おく れで提供 ていきょう でき、事前 じぜん に安全 あんぜん 確認 かくにん の時間 じかん も取 と れるなどの利点 りてん があるが、実際 じっさい に流行 りゅうこう するウイルス株 かぶ とは異 こと なるためにワクチンとしての効果 こうか は劣 おと ると考 かんが えられている[37] 。
H5N1が実際 じっさい にパンデミックを起 お こすまでワクチンを作 つく ることは出来 でき ないが、プレパンデミックワクチンが開発 かいはつ された。さらにワクチンの製造 せいぞう 会社 かいしゃ にも、ワクチンを現状 げんじょう より大量 たいりょう に速 はや く製造 せいぞう できるよう設備 せつび を拡大 かくだい することが求 もと められている[44] [45] [46] [47] 。
動物 どうぶつ 実験 じっけん により、ザナミビル (リレンザ)がH5N1に効果 こうか 的 てき であることがわかった。2000年 ねん にマウスを使 つか った実験 じっけん によって、ザナミビルが他 た のトリインフルエンザウイルスであるH6N1、H9N2に感染 かんせん した哺乳類 ほにゅうるい にも効果 こうか があることが判明 はんめい した[48] 。
ザナミビルがH5N1のパンデミックに対 たい して有効 ゆうこう かどうかは定 さだ かではないが、タミフルとともにザナミビルを備蓄 びちく しておくことはパンデミックの対策 たいさく になる可能 かのう 性 せい がある[49] 。
2006年 ねん 9月 がつ 、WHOはタミフルとアマンタジン に抵抗 ていこう を持 も った株 かぶ を確認 かくにん したことを発表 はっぴょう した[50] 。
近年 きんねん ロンドンの研究所 けんきゅうじょ で行 おこな われた実験 じっけん では、アイスランド の会社 かいしゃ Zymetechで開発 かいはつ された酵素 こうそ 混合 こんごう 物 ぶつ を使用 しよう することにより、H5N1の99%を無力 むりょく 化 か することに成功 せいこう した。この混合 こんごう 物 ぶつ は正常 せいじょう な細胞 さいぼう に影響 えいきょう を与 あた えず、5分 ふん 以内 いない にウイルスを無力 むりょく 化 か することができる[51] 。
薬品 やくひん 備蓄 びちく と医療 いりょう 体制 たいせい [ 編集 へんしゅう ]
2008年 ねん 初頭 しょとう 現在 げんざい 、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく では2,700万 まん 人 にん 分 ぶん のフランス サノフィパスツール社 しゃ が開発 かいはつ したプレパンデミック・ワクチン を用意 ようい しているが、さらにアジュバント と呼 よ ばれるグラクソ・スミスクライン 社 しゃ とノバルティス 社 しゃ が開発 かいはつ した物質 ぶっしつ によって必要 ひつよう な抗原 こうげん 量 りょう を12分 ぶん の1程度 ていど まで減 へ らせられる可能 かのう 性 せい がある。
2006年 ねん 5月 がつ にインドネシアで大 だい 流行 りゅうこう 直前 ちょくぜん まで事態 じたい が進展 しんてん した時点 じてん では、スイス のバーゼル にあるロシュ社 しゃ 本社 ほんしゃ と米国 べいこく ニュージャージー州 しゅう のWHO倉庫 そうこ にはWHOが保管 ほかん するタミフルがそれぞれ150万 まん 人 にん 分 ぶん 、計 けい 300万 まん 人 にん 分 ぶん が全 ぜん 世界 せかい に向 む けた分 ぶん として確保 かくほ されていた。これは、パンデミックの発生 はっせい 初期 しょき に短期間 たんきかん ・集中 しゅうちゅう 的 てき に大量 たいりょう 供給 きょうきゅう する事 こと で感染 かんせん を一 いち 地域 ちいき に閉 と じ込 こ めるため用意 ようい されている分 ぶん である。
日本 にっぽん では2008年 ねん 3月 がつ 現在 げんざい 、2,000万 まん 人 にん x2回分 かいぶん のプレパンデミック・ワクチンが原液 げんえき の状態 じょうたい で準備 じゅんび されている。2008年 ねん 内 ない に感染 かんせん 症 しょう 指定 してい の医療 いりょう 関係 かんけい 者 しゃ など5,561人 にん にこのワクチンが投与 とうよ され、内 うち 8人 にん が何 なん らかの異常 いじょう によって入院 にゅういん した。2009年度 ねんど からは安全 あんぜん 性 せい が確認 かくにん されればという条件 じょうけん 付 づけ ながら、パンデミック発生 はっせい と同時 どうじ に医療 いりょう 関係 かんけい 者 しゃ や公務員 こうむいん 、交通 こうつう 関係 かんけい 者 しゃ などのライフライン 従事 じゅうじ 者 しゃ を中心 ちゅうしん に1,000万 まん 人 にん に接種 せっしゅ されることが決定 けってい されている。また、これ以降 いこう の将来 しょうらい に全 ぜん 国民 こくみん に対 たい する接種 せっしゅ の必要 ひつよう 性 せい が検討 けんとう されている。この決定 けってい 以前 いぜん は、国内 こくない でのヒト-ヒト感染 かんせん が確認 かくにん されてから初 はじ めて接種 せっしゅ 準備 じゅんび を始 はじ めることとなっていたので、原液 げんえき の製剤 せいざい 化 か 、1人 ひとり 2回 かい の接種 せっしゅ と免疫 めんえき 獲得 かくとく までの2.5か月 げつ を考 かんが えれば、国際 こくさい 的 てき にもかなり進 すす んだ対策 たいさく となっている。ただ、実際 じっさい の大 だい 流行 りゅうこう 発生 はっせい 時 じ には、発熱 はつねつ している患者 かんじゃ を診察 しんさつ ・収容 しゅうよう する医療 いりょう 機関 きかん 側 がわ の準備 じゅんび が実 じつ 訓練 くんれん ではほとんど行 おこ なわれておらず、医療 いりょう 関係 かんけい 者 しゃ も感染 かんせん を防 ふせ ぐ対策 たいさく が自分 じぶん 自身 じしん で確実 かくじつ と実感 じっかん 出来 でき なければ参集 さんしゅう しないのではないかという懸念 けねん がある。国 くに や地方自治体 ちほうじちたい のレベルでもパンデミックに対 たい する対応 たいおう 準備 じゅんび は徐々 じょじょ に進 すす められている。米国 べいこく での一般 いっぱん 住民 じゅうみん を巻 ま き込 こ んだ大 だい 規模 きぼ な予行 よこう 演習 えんしゅう レベルと日本 にっぽん の現状 げんじょう ではまだ差 さ があり、薬 くすり 以外 いがい の準備 じゅんび は「構想 こうそう 」だけかごく小規模 しょうきぼ に行 おこ なわれた「予行 よこう 演習 えんしゅう 」に留 とど まっている。
米国 べいこく では、少 すく なくともプレワクチン接種 せっしゅ は広 ひろ い駐車 ちゅうしゃ 場 じょう に特設 とくせつ されたドライブスルー によって、接種 せっしゅ 者 しゃ 同士 どうし や医療 いりょう 関係 かんけい 者 しゃ の感染 かんせん リスクを最小 さいしょう にしながら10分 ふん 以内 いない ですべて終 お えて出 で てゆけるまでに準備 じゅんび が行 おこ なわれている。カリフォルニア州 しゅう では学校 がっこう に対 たい する、感染 かんせん の広 ひろ がり、学校 がっこう 閉鎖 へいさ の決定 けってい と伝達 でんたつ の手順 てじゅん や、生徒 せいと の退去 たいきょ 手順 てじゅん 、再開 さいかい の手順 てじゅん などが含 ふく まれる7時 じ 間 あいだ の研修 けんしゅう コースが行 おこ なわれており、WebとDVDでもガイドが提供 ていきょう されている。CDC は最大 さいだい 12週間 しゅうかん は生徒 せいと を学校 がっこう に集 あつ めないように警告 けいこく している。また、本格 ほんかく 的 てき な大 だい 流行 りゅうこう によって、救命 きゅうめい すべき患者 かんじゃ が医療 いりょう 機関 きかん の能力 のうりょく を越 こ えた時 とき のことを考慮 こうりょ して、2005年 ねん 11月に公表 こうひょう された米 べい 政府 せいふ の「高齢 こうれい 者 しゃ 優先 ゆうせん 救命 きゅうめい 」方針 ほうしん に対 たい して、全米 ぜんべい の一般 いっぱん 国民 こくみん の、特 とく に高齢 こうれい 者 しゃ を中心 ちゅうしん とする多数 たすう からの「そう遠 とお くない将来 しょうらい 自然 しぜん に老 お いて死 し ぬ我々 われわれ より、むしろ未来 みらい のある幼年 ようねん 者 しゃ ・若年 じゃくねん 者 しゃ を助 す けろ」という意見 いけん によって2007年 ねん 10月 がつ に方針 ほうしん が180度 ど 変更 へんこう された例 れい など、全米 ぜんべい 規模 きぼ でパンデミックに対 たい する理解 りかい と準備 じゅんび が進 すす んでいる。
日米 にちべい とおそらくその他 た の国 くに でも、人工 じんこう 呼吸 こきゅう 器 き が不足 ふそく する事 こと が現時点 げんじてん で明 あき らかになっているが、
数 すう 百 ひゃく 万 まん 人 にん や数 すう 千 せん 万 まん 人 にん 単位 たんい で発生 はっせい する患者 かんじゃ 分 ぶん の何 なん 割 わり 分 ぶん かの台数 だいすう の人工 じんこう 呼吸 こきゅう 器 き を用意 ようい することは限 かぎ られた医療 いりょう 予算 よさん では賄 まかな えないために、新規 しんき 購入 こうにゅう を増 ふ やす努力 どりょく は行 おこ なわれていても、依然 いぜん として不足 ふそく することは今 いま から明 あき らかである。仮 かり に、人数 にんずう 分 ぶん が製造 せいぞう ・購入 こうにゅう できても、それを操作 そうさ する医療 いりょう 従事 じゅうじ 者 しゃ がいないという別 べつ の制約 せいやく もある[37] 。
人間 にんげん 社会 しゃかい への影響 えいきょう [ 編集 へんしゅう ]
H5N1によってヒトや動物 どうぶつ が死亡 しぼう するケースが出 で たため、人間 にんげん 社会 しゃかい に与 あた えた影響 えいきょう は非常 ひじょう に大 おお きい。
H5N1のパンデミックに対 たい する研究 けんきゅう には数 すう 億 おく ドル の予算 よさん が費 つい やされている。H5N1の被害 ひがい によって10億 おく ドル以上 いじょう の損失 そんしつ があり、被害 ひがい を抑 おさ えるために2億 おく 羽 わ 以上 いじょう のトリが殺 ころせ 処分 しょぶん された。
パンデミック対策 たいさく に個人 こじん で備蓄 びちく を行 おこな う人 ひと も出 で てきた。日本 にっぽん においてもパンデミック対策 たいさく として、家 いえ から数 すう 週間 しゅうかん 出 で なくても生活 せいかつ できるように個人 こじん で食料 しょくりょう などを備蓄 びちく しておくことが推奨 すいしょう されている。
しかし、H5N1のパンデミックをそれほど重大 じゅうだい なことではないと考 かんが える意見 いけん もある。WHO公衆 こうしゅう 衛生 えいせい 当局 とうきょく 者 しゃ ロバート・ブラウンは次 つぎ のように語 かた っている。
これまでの
統計 とうけい と
比較 ひかく して、ヒトにおけるトリインフルエンザの
被害 ひがい は
大 おお きな
問題 もんだい にはならない。
HIV の
感染 かんせん 者 しゃ は
世界中 せかいじゅう に4000
万 まん 人 にん 存在 そんざい する。トリインフルエンザの
死者 ししゃ より
多 おお くの
人 ひと が、ベトナムでの
交通 こうつう 事故 じこ で
死亡 しぼう している。しかし、トリインフルエンザによる
被害 ひがい は
重要 じゅうよう な
点 てん である。トリインフルエンザの
高 たか い
死亡 しぼう 率 りつ 、
感染 かんせん の
広 ひろ がるスピード、
家禽 かきん 産業 さんぎょう に
与 あた える
影響 えいきょう は
極 きわ めて
大 おお きく、まさに
新興 しんこう 感染 かんせん 症 しょう である。
ブラウンは、H5N1についてはまだわかっていないことが多 おお くあると語 かた っている。まだ完全 かんぜん に研究 けんきゅう が完了 かんりょう したわけではないため、さらなる研究 けんきゅう と国際 こくさい 的 てき な連携 れんけい が必要 ひつよう である[52] 。
また、日本 にっぽん の北海道大学 ほっかいどうだいがく 喜田 きた 宏 ひろし 教授 きょうじゅ もパンデミックの可能 かのう 性 せい には否定 ひてい 的 てき である。
過去 かこ の3
回 かい のパンデミックはすべてブタからヒトへ
伝播 でんぱ しており
鳥 とり のウイルスがヒトに
広 ひろ がることは、ごく
限 かぎ られたケースでしか
起 お こらない。
問題 もんだい となっている
鳥 とり インフルエンザは
判 わか っているだけでも61
ヶ国 かこく に
広 ひろ がっており、4
年間 ねんかん に61
ヶ国 かこく の
内 うち のわずか380
人 にん の
感染 かんせん 者 しゃ しか
出 で ていないのは、ごく
特殊 とくしゅ な
遺伝子 いでんし を
持 も ったヒトのみが
感染 かんせん しているとしか
考 かんが えられない。わずかなヒト-ヒト
感染 かんせん のケースでもすべて
親子 おやこ 兄弟 きょうだい 間 あいだ だけであり、
遺伝子 いでんし が
異 こと なる
夫婦 ふうふ 間 あいだ での
感染 かんせん 伝播 でんぱ は
起 お こっていないのがそれを
裏 うら づけている。もし
鳥 とり インフルエンザがヒトに
流行 りゅうこう しても、
致死 ちし 率 りつ は0.5%を
越 こ えることはなく、
全身 ぜんしん でウイルス
増殖 ぞうしょく が
起 お こるとするのは
間違 まちが いで、
死亡 しぼう した
感染 かんせん 患者 かんじゃ の
全身 ぜんしん からウイルスが
検出 けんしゅつ されるのは
呼吸 こきゅう 器 き からあふれたウイルスの
破片 はへん である
[37] 。
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