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藤井ふじいシステム」のはんあいだ差分さぶん

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[[藤井ふじいたけし]]が考案こうあんした[[よんあいだ飛車ひしゃ]]の戦法せんぽうである。とくに[[きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま]]対策たいさくとしての藤井ふじいシステムは非常ひじょう注目ちゅうもくされ、藤井ふじい自身じしん第一人者だいいちにんしゃとして活躍かつやくした。
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後述こうじゅつのように[[美濃みのがこい#ひだり美濃みの|ひだり美濃みの]]対策たいさく藤井ふじいシステムと穴熊あなぐま対策たいさく藤井ふじいシステムとがある。後者こうしゃ特徴とくちょうは、相手あいて穴熊あなぐま目指めざせばそのまえたたかいを仕掛しかけ、穴熊あなぐま放棄ほうきして急戦きゅうせんとなったときはがこいのかたさで優位ゆういてることである。特定とくていこまうごきというよりは自陣じじん全体ぜんたい攻守こうしゅこまみに特徴とくちょうがあり(「戦法せんぽう」ではなく)「システム」とばれる由縁ゆえんでもある。
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従来じゅうらいは[[きょ飛車ひしゃ]]がわ作戦さくせんとして[[持久じきゅうせん]]を選択せんたくするさい、[[5すじ位取くらいどり]]・[[たまあたま位取くらいどり]]または[[ふねがこい]]から[[矢倉やくらがこい]]などへの発展はってんけいがこいを選択せんたくすることになり、とくよこからのいにはもろさがあった。しかしひだり美濃みのきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま発達はったつにより、きょ飛車ひしゃ同等どうとうかそれ以上いじょうかたさをれたため、飛車ひしゃ勝率しょうりつ極端きょくたんがった。トップ棋士きしになるとこの傾向けいこう顕著けんちょで、[[羽生はぶ善治よしはる]]・[[森内もりうち俊之としゆき]]・[[佐藤さとう康光やすみつ]]・[[渡辺わたなべあきら (棋士きし)|渡辺わたなべあきら]]がきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐましたときの勝率しょうりつ先後せんごべつ)は、佐藤さとう後手ごてばんで0.588をのぞいて7わり以上いじょうこう勝率しょうりつであり、羽生はぶ先後せんご合計ごうけいでの勝率しょうりつが9わりえていた<ref>[[勝又かつまた清和きよかず]]『最新さいしん戦法せんぽうはなし』(浅川あさがわ書房しょぼう、2007ねん、ISBN 978-4-86137-016-8)、108ページ。2006ねんはるまでのデータである。</ref>(通常つうじょう先手せんてばん勝率しょうりつは5わりすこ程度ていどといわれている)。
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2020ねん6がつ28にち (日)にち 14:03時点じてんにおけるはん

ごま
987654321 
こうかつら   きむぎんかつら いち
   ぎんきむ  おうこう
  かくさん
        よん
   ぎんかつら 
     ろく
かく    なな
     ぎん  はち
こうかつら きむたまきむ  こうきゅう

藤井ふじいシステム(ふじいシステム)は、将棋しょうぎ戦法せんぽうひとつ。よんあいだ飛車ひしゃ一種いっしゅである。プロ棋士きし藤井ふじいたけし考案こうあんした[1]。これにより藤井ふじいは1997ねん将棋しょうぎ大賞たいしょう升田ますだ幸三こうぞうしょう受賞じゅしょう[2]。また、さんあいだ飛車ひしゃにも応用おうようすることができる。

概要がいよう

藤井ふじいたけし考案こうあんしたよんあいだ飛車ひしゃ戦法せんぽうである。とくきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま対策たいさくとしての藤井ふじいシステムは非常ひじょう注目ちゅうもくされ、藤井ふじい自身じしん第一人者だいいちにんしゃとして活躍かつやくした。

後述こうじゅつのようにひだり美濃みの対策たいさく藤井ふじいシステムと穴熊あなぐま対策たいさく藤井ふじいシステムとがある。後者こうしゃ特徴とくちょうは、相手あいて穴熊あなぐま目指めざせばそのまえたたかいを仕掛しかけ、穴熊あなぐま放棄ほうきして急戦きゅうせんとなったときはがこいのかたさで優位ゆういてることである。特定とくていこまうごきというよりは自陣じじん全体ぜんたい攻守こうしゅこまみに特徴とくちょうがあり(「戦法せんぽう」ではなく)「システム」とばれる由縁ゆえんでもある。

従来じゅうらいきょ飛車ひしゃがわ作戦さくせんとして持久じきゅうせん選択せんたくするさい5すじ位取くらいどたまあたま位取くらいどまたはふねがこから矢倉やくらがこなどへの発展はってんけいがこいを選択せんたくすることになり、とくよこからのいにはもろさがあった。しかしひだり美濃みのきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま発達はったつにより、きょ飛車ひしゃ同等どうとうかそれ以上いじょうかたさをれたため、飛車ひしゃ勝率しょうりつ極端きょくたんがった。トップ棋士きしになるとこの傾向けいこう顕著けんちょで、羽生はぶ善治よしはる森内もりうち俊之としゆき佐藤さとう康光やすみつ渡辺わたなべあきらきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐましたときの勝率しょうりつ先後せんごべつ)は、佐藤さとう後手ごてばんで0.588をのぞいて7わり以上いじょうこう勝率しょうりつであり、羽生はぶ先後せんご合計ごうけいでの勝率しょうりつが9わりえていた[3]通常つうじょう先手せんてばん勝率しょうりつは5わりすこ程度ていどといわれている)。

そのため、ひだり美濃みのきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまたいしての対策たいさくちつつ、きょ飛車ひしゃ従来じゅうらいからあるみぎぎん急戦きゅうせんなどにもそなえた包括ほうかつてきかた必要ひつようとなった。藤井ふじいシステムにおいては、

  • ひだり美濃みのたいしては、理想りそうがたゆるさず、たまあたませんむのをねらう。
  • きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまたいしては、そもそも穴熊あなぐまませない、あるいはませるまえたたかいをこすのをねらう。穴熊あなぐまもうとする相手あいてきょだまのまま攻撃こうげきをしかけたり、飛車ひしゃからきょ飛車ひしゃもどしたり、あるいはすずめのようにはし勢力せいりょく集中しゅうちゅうさせるといったたたかかたふくむ。

小林こばやし健二けんじのスーパーよんあいだ飛車ひしゃ杉本すぎもと昌隆まさたか研究けんきゅうなども下敷したじきとなっている[4]

変遷へんせん

飛車ひしゃとう減少げんしょう

藤井ふじいシステムがひろられるようになるまえきょ飛車ひしゃがわたい飛車ひしゃせんにおいて急戦きゅうせん自信じしんがない場合ばあいひだり美濃みのきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまたまかたかこ戦法せんぽう有効ゆうこうとされていた。これらのがこいは飛車ひしゃがわ美濃みのがこかたさがおなじかそれ以上いじょうで、しかも持久じきゅうせん模様もようになるときょ飛車ひしゃがわからのみ仕掛しかけの権利けんりがあった。これにたいして飛車ひしゃがわ有力ゆうりょく対策たいさくがなく、飛車ひしゃ棋士きし減少げんしょうした。青野あおのあきらはこのころ状況じょうきょうを、森下もりしたたく言葉ことば引用いんようして「矢倉やぐら研究けんきゅういそがしいから、飛車ひしゃには穴熊あなぐまひだり美濃みの交互こうごにやってればいいんだ」と表現ひょうげんした[5]

飛車ひしゃとうよんあいだ飛車ひしゃとう)であった藤井ふじい飛車ひしゃ穴熊あなぐまひだり美濃みのへの対応たいおうには苦慮くりょし、たいひだり美濃みのせんにおいて飛車ひしゃがわぎんかんむりせて、そのがこいの途中とちゅう(2ななぎん・3きゅうたま・4ななきん・4きゅうきん状態じょうたい)で飛車ひしゃ右翼うよくもどしてひだり美濃みのたまあたま殺到さっとうする構想こうそうためしたことがある(1995ねん全日本ぜんにほんプロ将棋しょうぎトーナメント(のちの朝日あさひオープン将棋しょうぎ選手権せんしゅけん)、藤井ふじいたけしたい行方なみかた尚史ひさしせん)。この将棋しょうぎ河口かわぐち俊彦としひこの『しん対局たいきょく日誌にっし』にげられており、藤井ふじいはこの構想こうそう林葉はやしば直子なおこしていたものだとしている[6]。これは藤井ふじいシステムが登場とうじょうするまえ将棋しょうぎであるが、ひだり美濃みのたまあたまめる構想こうそう共通きょうつうしている。

たいひだり美濃みの藤井ふじいシステム

ごま なし
987654321 
こうかつら   きむかくかつらこういち
   きむ ぎん  
   ぎんおう さん
    よん
      
     ろく
かくぎん かつら  なな
   きむ ぎん  はち
こうかつら   きむたま こうきゅう

本来ほんらい藤井ふじいシステムはひだり美濃みの対抗たいこうするための研究けんきゅうであった。ひだり美濃みのとく天守閣てんしゅかく美濃みのは、その特異とくいかたちから飛車ひしゃにとって攻略こうりゃくむずかしかった。

飛車ひしゃさき突破とっぱしたのちよこからめることになるが、飛車ひしゃがわたまいちだんにいるのにたいして、きょ飛車ひしゃがわたまさんだんにいるため、いになると手数てかずけることがおおい。そこで天守閣てんしゅかく美濃みの攻略こうりゃくにあたり、よこからではなく、弱点じゃくてんであるたまあたまねらったたてからのめをぜるようになった。

先手せんて場合ばあいたまを3きゅう配置はいちさせてから▲4として相手あいて理想りそうてきな4まいだか美濃みのませないようにし、▲2ろくからたまあたまねらってめる。ただし▲2ろくはやめると△5さんかくからねらわれるので、周到しゅうとうさが必要ひつようである。しまあきらNHKはい後手ごて藤井ふじいシステムに▲5ななかくから強引ごういんこう美濃みのみ、かつらあたまねらって勝利しょうりしている。ここからよくあるかたちとしては▲5ろくき、さんあいだ飛車ひしゃ転換てんかんしたのち▲6はちかくいて相手あいてたまあたまきを直通ちょくつうさせ、みぎかつらとともにめる。たんに▲2どうどうかつらとする手段しゅだんきびしく、かくが3いちにいないとぎんを2けず(▲2よんがある)かくどうかよっているぶんきょ飛車ひしゃがわつね使つか展開てんかいになる。

これは非常ひじょう完成かんせいされた戦法せんぽうであり、たいよんあいだ飛車ひしゃひだり美濃みの自体じたいプロ対局たいきょくではあまりられなくなっている。

たい穴熊あなぐま藤井ふじいシステム

ごま なし
987654321 
こうかつら きむ きむぎんかつら いち
      おうこう
   さん
    ぎんかく よん
    かつら
       ろく
かく    なな
  ぎんきむ ぎん  はち
こうかつら  たまきむ  こうきゅう

現在げんざい藤井ふじいシステム」の主流しゅりゅう変化へんかとなっているものは、きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまへのあらたな研究けんきゅうとしてあらわれた、わばしんバージョンである。きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま完成かんせいするまえかくすじたよりにしたたてからのめをじくとして速攻そっこう仕掛しかける体勢たいせいと、きょ飛車ひしゃがわ急戦きゅうせんんだときの対策たいさくの、両方りょうほうそなえた作戦さくせんとなっている[7]

先手せんて場合ばあい、1すじとっきょだまのまま速攻そっこう仕掛しかける。△1こう穴熊あなぐまかこおうとしたら、▲2かつらから▲4かくすじとおしてめる。後手ごて急戦きゅうせん仕掛しかけてきたら▲4はちたまから▲3きゅうたま美濃みのがこいに移行いこうする。こまみが特徴とくちょうてきなため真似まねるのは容易よういであるとおもわれがちだが、ゆびしこなすのはプロでも非常ひじょうむずかしく「藤井ふじいでないと藤井ふじいシステムはせない」とわれることもある。

井上いのうえ慶太けいた ごま
987654321 
こうかつら   きむぎんかつら いち
   ぎんきむ  おうこう
  かくさん
        よん
   ぎんかつら 
     ろく
かく    なな
     ぎん  はち
こうかつら きむたまきむ  こうきゅう
羽生はぶ善治よしはる ごま なし
987654321 
こうかつら   きむぎんかつら いち
    かく おうこう
 ぎんきむ さん
      よん
    かつら 
       ろく
かくぎん  なな
   きむ ぎん  はち
こうかつら   きむたま こうきゅう

藤井ふじいはつ披露ひろうしたのは、1995ねん12月22にち順位じゅんいせんBきゅう2くみたい井上いのうえ慶太けいたせんであり、47たん手数てかず井上いのうえ投了とうりょうんだ(みぎ途中とちゅう)。しかしすぐに有名ゆうめいになることはなく、1997年度ねんどNHKはいせん屋敷やしき伸之のぶゆき羽生はぶ善治よしはるたいして類似るいじかたちしたときは、羽生はぶたまのコビンをめられおもうように飛車ひしゃ穴熊あなぐまめずに長考ちょうこうし、解説かいせつ田中たなか寅彦とらひこもうなったが、ようやくした羽生はぶつぎいちは△3たまもどであった[8]

1998ねん藤井ふじいはこの戦法せんぽうもちいて谷川たにがわ浩司こうじから竜王りゅうおうをストレートで奪取だっしゅする。飛車ひしゃ将棋しょうぎかいいきかえし、さらには、ほかの飛車ひしゃ戦法せんぽうされるようになった。

藤井ふじいシステム対策たいさく

藤井ふじいシステムは、きょ飛車ひしゃがわ穴熊あなぐまがこいでも急戦きゅうせん仕掛しかけてきても、どちらにも対応たいおうできる戦法せんぽうとして猛威もういをふるった。対抗たいこうさくとしてミレニアムがこなどのしん戦法せんぽう採用さいようされることもえたが、よんあいだ飛車ひしゃがわ互角ごかく以上いじょう対応たいおうだい流行りゅうこうすることはなかった。またきょ飛車ひしゃとう棋士きし有効ゆうこう対策たいさくいだせずに藤井ふじいたいしてあい飛車ひしゃ採用さいようする機会きかいえる[9]など、藤井ふじいシステムへの対策たいさくは2000ねん前後ぜんこうにおいてきょ飛車ひしゃとうにとってのおおきな課題かだいであった。

そこできょ飛車ひしゃがわは、穴熊あなぐまにするか急戦きゅうせん目指めざすかの態度たいどをぎりぎりまでめず、よんあいだ飛車ひしゃ藤井ふじいシステム)がわうごきによってどちらのこまみにするかをめるようになった。これにたいし、よんあいだ飛車ひしゃがわも▲6ななぎんと▲1保留ほりゅうし(▲7はちぎんと▲1ろくめる)、その2を▲4はちたまから▲3きゅうたまかこいにかけるようになる。このためこまみのうえでは藤井ふじいシステムの特徴とくちょうであった「端歩はしふとっし」「きょだま」がなくなり「藤井ふじいシステムはえた」とわれるようにもなった。

藤井ふじいシステムにたいする研究けんきゅう改良かいりょうくわわった結果けっか後手ごてばんでの藤井ふじいシステムは不利ふり先手せんてばんではほぼ互角ごかくたたかえるであろう、とする結論けつろんいたっていた[10]

藤井ふじい自身じしん模索もさくつづけており、2008ねんには矢倉やくら実戦じっせんためすようになった(ただし通常つうじょう矢倉やぐら定跡じょうせき手順てじゅんではなく、あい飛車ひしゃ視野しやれたものである)ため、当時とうじの『週刊しゅうかん将棋しょうぎに「矢倉やくらとう転向てんこう」と紹介しょうかいされたこともあった[11]藤井ふじい自身じしん藤井ふじいシステムを「ファームち」と表現ひょうげんしているが、藤井ふじいシステムをてたわけではなく「いつ一軍いちぐんげさせるか、わかりませんよ」としている[12]事実じじつ藤井ふじいは2012ねん先手せんて後手ごて双方そうほうふくすうかい藤井ふじいシステムをし、だい53王位おういせんでは、挑戦ちょうせんしゃ決定けっていリーグで高橋たかはし道雄みちお牧野まきの光則みつのりを、挑戦ちょうせんしゃ決定けっていせんでは渡辺わたなべあきらやぶって羽生はぶ王位おういへの挑戦ちょうせんけんた。2014ねん5がつ12にち王位おういせんきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま木村きむら終盤しゅうばんもたつきはあったものの撃破げきは。Aきゅうから陥落かんらくしたものの、研究けんきゅうおこたっていないところをせた。 その、2015ねんごろから後手ごてばん藤井ふじいシステムが復権ふっけん傾向けいこうにあり、2016ねんにはだい24銀河ぎんがせん藤井ふじい優勝ゆうしょうする原動力げんどうりょくとなり[13]だい64王座おうざせんばん勝負しょうぶだい2きょくなど、対局たいきょくでもあらわれるようになっている。

このような変遷へんせん現在げんざいでのよんあいだ飛車ひしゃ対策たいさくでは、穴熊あなぐま急戦きゅうせんくわ上述じょうじゅつのミレニアムがこいや飯島いいじまりゅうかく戦法せんぽう増田ますだ康宏やすひろ多用たよう注目ちゅうもくされたぎんかんむり穴熊あなぐまなどで藤井ふじいシステムを警戒けいかいすることもえている。あい飛車ひしゃ定跡じょうせき整備せいびされかくどうめる飛車ひしゃへの有力ゆうりょく対策たいさくとみなされるようになるなど、藤井ふじいシステム以前いぜん穴熊あなぐま一辺倒いっぺんとうだった時代じだいからくらべるとかなりの多様たようせている。

さんあいだ飛車ひしゃへの応用おうよう

久保くぼ利明としあき ごま なし
987654321 
こうかつら きむおうきむ かつらこういち
  ぎん     
   ぎんかくさん
     よん
       
  ぎん    ろく
   なな
  たまかくきむ   はち
こうかつらぎんきむ   かつらこうきゅう

また近年きんねんでは、本来ほんらいよんあいだ飛車ひしゃだけではなく、さんあいだ飛車ひしゃにおいてもだまのままたたか藤井ふじいシステム調ちょう戦法せんぽう採用さいようされることがある。

2009ねん8がつ30にち放映ほうえいされたNHKはいせんにおいて、後手ごてばんいた久保くぼ利明としあき採用さいようしたのが初号しょごうきょくみぎ)である。その佐藤さとう和俊かずとしが2016年度ねんどNHKはいせんにおいてこの戦法せんぽう採用さいよう屋敷やしき伸之のぶゆき羽生はぶ善治よしはる橋本はしもとたかしといった強豪きょうごう棋士きし相次あいついでたおじゅん優勝ゆうしょうしたことでおおきく注目ちゅうもくされた。佐藤さとうはその将棋しょうぎフォーカス講師こうしとして出演しゅつえんしこの戦法せんぽう解説かいせつした。

この戦法せんぽう特長とくちょうとしては、よんあいだ飛車ひしゃ藤井ふじいシステムにくらべてかくあたまねら急戦きゅうせんつよてん、および△5きんひだり保留ほりゅうすることにより展開てんかいによってはそで飛車ひしゃみぎよんあいだ飛車ひしゃちゅう飛車ひしゃなどへなおきょ飛車ひしゃ調ちょうたたかいへ転換てんかんすることが容易よういであるてんげられる。一方いっぽうで△4威力いりょくげんじていることや、ミレニアム模様もようで▲6八角はっかくと▲2よん仕掛しかけをねらわれた場合ばあいに△2けることを強要きょうようされる[14]などのデメリットがある。

脚注きゃくちゅう

  1. ^ 藤井ふじいは1998年度ねんどのNHK将棋しょうぎ講座こうざ本戦ほんせんほう解説かいせつおこない、その直後ちょくご谷川たにがわ浩司こうじから竜王りゅうおう無敗むはい奪取だっしゅ
  2. ^ 将棋しょうぎ大賞たいしょう受賞じゅしょうしゃ一覧いちらん棋士きしデータベース|日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい”. 日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい. 2018ねん9がつ16にち閲覧えつらん
  3. ^ 勝又かつまた清和きよかず最新さいしん戦法せんぽうはなし』(浅川あさがわ書房しょぼう、2007ねんISBN 978-4-86137-016-8)、108ページ。2006ねんはるまでのデータである。
  4. ^ たとえば、『将棋しょうぎ世界せかい』2014ねん11がつごう、「『ぼくはこうしてつよくなった』だい2かい藤井ふじいたけしきゅうだんまき」75~76ページで藤井ふじいはこうかたっている。「だい自分じぶんさんだん時代じだい杉本すぎもとさんの将棋しょうぎて、おもえがいた局面きょくめん。ここで▲2かつらんだらどうなるのか。平成へいせいねんがつ、それを銀河ぎんがせん神崎かんざきけんだん相手あいてためした。(中略ちゅうりゃくながれるような手順てじゅんすすんだだい先手せんて優勢ゆうせい。▲2かつらて、解説かいせつしゃ中村なかむらおさむきゅうだんが『ひぇーっ』とさけんだくらい。当時とうじとしては斬新ざんしん仕掛しかけだった。してみると実際じっさいにはむずかしいということもわかり、そのすことはなかったが、藤井ふじいシステムの原形げんけいとしておもれのあるいちきょくになった。」
  5. ^ 将棋しょうぎ世界せかい』2007ねん9がつごう、「新手あらてたましい」23ページ。青野あおのあきら勝又かつまた清和きよかず上野うえの裕和ひろかずによる対談たいだんより。
  6. ^ 河口かわぐち俊彦としひこしん対局たいきょく日誌にっし だいはちしゅう ななかん狂騒きょうそうきょくした)』(河出かわで書房しょぼう、2002ねんISBN 4-309-61438-8)、12 - 15ページ。
  7. ^ 藤井ふじいたけし最強さいきょう藤井ふじいシステム』(1999ねん)によれば、▲1はしに2かける急戦きゅうせん相手あいてだとなるしゅになるとかんがえられがちであるが、終盤しゅうばんたまひろい(はしみちおおきくいている、という意味いみ)ため、じゅうふんたたかえるとされている。
  8. ^ 田中たなか寅彦とらひこきょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま得意とくいとしていた)は、「なにへんだな」となんもうなった。羽生はぶの△3たまて、司会しかい・ききて藤森ふじもり奈津子なつこおもわず「あ!もどった!」とこえげた。
  9. ^ 1998年度ねんど竜王りゅうおうせんだい2きょく谷川たにがわなど。
  10. ^ 後手ごてばんについては勝又かつまた最新さいしん戦法せんぽうはなし』90 - 94ページ、先手せんてばんについては同書どうしょ118ページ。
  11. ^ 週刊しゅうかん将棋しょうぎ』2008ねん8がつ6にち、7ページ。
  12. ^ 勝又かつまた最新さいしん戦法せんぽうはなし』116ページ。
  13. ^ 決勝けっしょうトーナメントでは先手せんてばん後手ごてばんともにすべて藤井ふじいシステムをもちいた。
  14. ^ 初号しょごうきょくにおける佐藤さとうたかし対策たいさくでもある。その佐藤さとう康光やすみつが2016年度ねんどNHKはいせん決勝けっしょうにおいて類似るいじがた佐藤さとう和俊かずとしたいして採用さいようしたさい佐藤さとう和俊かずとしは△2けずにたたか不利ふりとなったが、のちに▲2よん仕掛しかけを失念しつねんしていたとかたった。

参考さんこう文献ぶんけん

  • 将棋しょうぎ世界せかい』2006ねん3がつごう勝又かつまた教授きょうじゅのこれならわかる! 最新さいしん戦法せんぽう講義こうぎ藤井ふじいシステムはどこにえた? のまき
  • 勝又かつまた清和きよかず最新さいしん戦法せんぽうはなし』(浅川あさがわ書房しょぼう、2007ねんISBN 978-4-86137-016-8
    将棋しょうぎ世界せかい』の連載れんさいをまとめたもの。藤井ふじいシステムについては2しょういて解説かいせつしている(だい3こう 後手ごて藤井ふじいシステムのはなし(57 - 94ページ)、だい4こう 先手せんて藤井ふじいシステムのはなし(95 - 118ページ))。
  • NHK将棋しょうぎ講座こうざ 2017ねん10がつごう 「カズトシりゅう主導しゅどうけんをにぎる飛車ひしゃ 後手ごてばん緩急かんきゅう自在じざいさんあいだ飛車ひしゃ藤井ふじいシステム」

関連かんれん項目こうもく

外部がいぶリンク