宗教しゅうきょう法人ほうじん

宗教しゅうきょう法人ほうじん（しゅうきょうほうじん）は、宗教しゅうきょう者ものと信者しんじゃで構成こうせいされる、法人ほうじん格かくを取得しゅとくした宗教しゅうきょう団体だんたいの事ことである。持分もちぶんが全まったくなく、営利えいり（剰余じょうよ金きん配当はいとう、残余ざんよ財産ざいさん分配ぶんぱいを出だすこと）を目的もくてきとしない非ひ営利えいり団体だんたい（収支しゅうし相しょう償つぐなえ）で、文部もんぶ科学かがく大臣だいじんもしくは知事ちじが所轄しょかつ庁ちょうである広義こうぎの公益こうえき法人ほうじんの一ひとつ。

また、境内けいだい地ちなどは公共こうきょう施設しせつでもあり、さらには社会しゃかい的てき慣習かんしゅう、儀式ぎしき及および祭礼さいれい行事ぎょうじを始はじめとして、口承こうしょうによる伝承でんしょう及および表現ひょうげんや庭園ていえん、建築けんちく物ぶつ、芸能げいのう、自然しぜん及および万物ばんぶつに関かんする知識ちしき及および慣習かんしゅう、伝統でんとう工芸こうげい技術ぎじゅつなどの分野ぶんやにおいて国際こくさい連合れんごう教育きょういく科学かがく文化ぶんか機関きかん（ユネスコ）の無形むけい文化ぶんか遺産いさんや世界せかい遺産いさん、文化ぶんか遺産いさんなどへ該当がいとうしたり、加くわえて日本にっぽん国こくの文化財ぶんかざい保護ほご法ほうに示しめされる数々かずかずの文化財ぶんかざいや、その上うえに経済けいざい産業さんぎょう大臣だいじん指定してい伝統でんとう的てき工芸こうげい品ひん等ひとしも数多かずおおく承継しょうけいしたり、宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほう第だい18条じょうでは法規ほうきに反はんしない範囲はんいで宗教しゅうきょう上うえの規約きやく、規律きりつ、慣習かんしゅう及および伝統でんとうを十分じゅうぶんに考慮こうりょするよう求もとめられている団体だんたいでもある。

税法ぜいほう上じょうの扱あつかいは公益こうえき法人ほうじん等とう（法人ほうじん税法ぜいほう 別表べっぴょう第だい二に）。公益こうえき法人ほうじん等とうの範疇はんちゅうに置おかれる根拠こんきょのひとつとして「超自然ちょうしぜん的てきなものへの信仰しんこうがあり、それを信しんじる者ものが『信者しんじゃ』になり、信者しんじゃの心しんの拠より所どころになるということで、公益こうえき性せいが認みとめられる」（第だい134回かい通常つうじょう国会こっかいにおける文化庁ぶんかちょう長官ちょうかん答弁とうべん）が挙あげられる。

概説がいせつ

法人ほうじん格かくの付与ふよ

宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほう（昭和しょうわ26年ねん4月がつ3日にち法律ほうりつ第だい126号ごう）（民法みんぽう第だい33条じょうに基もとづく特別とくべつ法ほう）にもとづいて宗教しゅうきょう団体だんたいに附与ふよされる。宗教しゅうきょう団体だんたいに法人ほうじん格かくを与あたえる目的もくてきを、この法律ほうりつでは、「宗教しゅうきょう団体だんたいが、礼拝れいはいの施設しせつその他たの財産ざいさんを所有しょゆうし、これを維持いじ運用うんようし、その他たの目的もくてき達成たっせいのための業務ぎょうむ及および事業じぎょうを運営うんえいすることに資しするため、宗教しゅうきょう団体だんたいに法律ほうりつ上じょうの能力のうりょくを与あたえること」（法ほう第だい1条じょう第だい1項こう）と規定きていする。また「礼拝れいはいの施設しせつその他たの財産ざいさんを所有しょゆうし、これを維持いじ運用うんようし、その他たの目的もくてき達成たっせいのための業務ぎょうむ及および事業じぎょうを運営うんえいすること」を「事務じむ処理しょり」といい、その処理しょり経過けいかを記載きさいする帳簿ちょうぼを「事務じむ処理しょり簿ぼ」という。

なお、宗教しゅうきょう法人ほうじんとなったからといって、宗教しゅうきょう団体だんたいとしての格かくが上あがるというわけではなく、不動産ふどうさん等ひとしを所有しょゆうする権利けんり主体しゅたいになれるだけである。また、法人ほうじん格かくを取得しゅとくしていなくとも、宗教しゅうきょう団体だんたいとして宗教しゅうきょう活動かつどうを行おこなうことは自由じゆうである。い換いかえれば、日本にっぽん国内こくないに存在そんざいする宗教しゅうきょう活動かつどうグループの全すべてが法人ほうじん格かくを有ゆうするとは限かぎらず、宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほうによって付与ふよされる権利けんり、及および課かせられる義務ぎむ・制約せいやくを持もつとも限かぎらない。

宗教しゅうきょう法人ほうじんは設立せつりつに際さいして、法人ほうじんの定款ていかんに類るいする根本こんぽん規則きそくとして「規則きそく」を作成さくせいし、その規則きそくについて所轄しょかつ庁ちょうの認証にんしょうを受うけることを必要ひつようとし（法ほう第だい12条じょう第だい1項こう）、認証にんしょう申請しんせいの少すくなくとも1か月げつ前まえに、信者しんじゃその他たの利害りがい関係かんけい人じんに対たいし、規則きそくの案あんの要旨ようしを示しめして、宗教しゅうきょう法人ほうじんを設立せつりつしようとする旨むねを公告こうこくしなければならない（法ほう第だい12条じょう第だい3項こう）。

所轄しょかつ庁ちょうによる規則きそくの認証にんしょう書しょの交付こうふを受うけた日ひから2週間しゅうかん以内いないに、以下いかの事項じこうについて登記とうきし（法ほう第だい52条じょう）、宗教しゅうきょう法人ほうじんの成立せいりつ後ごは、遅滞ちたいなく、登記とうき事項じこう証明しょうめい書しょを添そえて、その旨むねを所轄しょかつ庁ちょうに届とどけ出でることを要ようする（法ほう第だい9条じょう）。

• 目的もくてき（公益こうえき事業じぎょうや公益こうえき事業じぎょう以外いがいの事業じぎょうを行おこなう場合ばあいには、その事業じぎょうの種類しゅるいを含ふくむ）
• 名称めいしょう
• 事務所じむしょの所在しょざい場所ばしょ
• 当該とうがい宗教しゅうきょう法人ほうじんを包括ほうかつする宗教しゅうきょう団体だんたいがある場合ばあいには、その名称めいしょう及および宗教しゅうきょう法人ほうじん非ひ宗教しゅうきょう法人ほうじんの別べつ
• 基本きほん財産ざいさんがある場合ばあいには、その総額そうがく
• 代表だいひょう権けんを有ゆうする者ものの氏名しめい、住所じゅうしょ及および資格しかく
• 規則きそくで境内けいだい建物たてもの若もしくは境内けいだい地ちである不動産ふどうさん又または財産ざいさん目録もくろくに掲かかげる宝物ほうもつに係かかる、財産ざいさん処分しょぶん等とうの公告こうこくに関かんする事項じこうを定さだめた場合ばあいには、その事項じこう
• 規則きそくで解散かいさんの事由じゆうを定さだめた場合ばあいには、その事由じゆう
• 公告こうこくの方法ほうほう

宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほうでは宗教しゅうきょう法人ほうじんに対たいして名称めいしょうに特定とくていの文字もじを含ふくめることを義務付ぎむづける規定きていを設もうけていない。そのため、正式せいしき名称めいしょうに「宗教しゅうきょう法人ほうじん」の文字もじが入はいっていないケースもある。

所轄しょかつ庁ちょうは、新規しんきの設立せつりつ認証にんしょう申請しんせい、規則きそくの変更へんこう認証にんしょう申請しんせいいずれにおいても、可否かひの決定けっていを申請しんせいの受理じゅりから3か月げつ以内いないに行おこなわなければならない（法ほう第だい14条じょう4項こう）。

単位たんい宗教しゅうきょう法人ほうじんと包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじん

宗教しゅうきょう法人ほうじんには、単位たんい宗教しゅうきょう法人ほうじん（たんいしゅうきょうほうじん）と包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじん（ほうかつしゅうきょうほうじん）がある。

さらに単位たんい宗教しゅうきょう法人ほうじんは、被ひ包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじん（ひほうかつしゅうきょうほうじん）と単たん立たて宗教しゅうきょう法人ほうじん（たんりつしゅうきょうほうじん）に分類ぶんるいされる。

単位たんい宗教しゅうきょう法人ほうじんとは神社じんじゃ、寺院じいん、教会きょうかいのような境内けいだい建物たてもの（法ほう第だい3条じょう）を有ゆうする宗教しゅうきょう法人ほうじんであり、法ほう第だい2条じょう第だい1号ごうに該当がいとうする団体だんたいである。包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじんは単位たんい宗教しゅうきょう法人ほうじんあるいは非ひ法人ほうじんの単位たんい宗教しゅうきょう団体だんたいを包括ほうかつする宗教しゅうきょう法人ほうじんであり、法ほう第だい2条じょう第だい2号ごうに該当がいとうする。例たとえば、仏教ぶっきょうでは宗派しゅうは（宗むね団だん）が包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじんに、末寺まつじが被ひ包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじんにあたる。

また、単位たんい宗教しゅうきょう法人ほうじんのうち、包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじんもしくは非ひ法人ほうじんの包括ほうかつ宗教しゅうきょう団体だんたいの傘下さんかにあるものを被ひ包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじんといい、そうではないものを単たん立だて宗教しゅうきょう法人ほうじんという。被ひ包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじんが規則きそくの変更へんこう手続てつづきによって、包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじんから独立どくりつして（被ひ包括ほうかつ関係かんけいを解消かいしょうして）単たん立たて宗教しゅうきょう法人ほうじんとなることもでき（法ほう第だい26条じょう第だい1項こう）、その場合ばあい、包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじんはその独立どくりつを妨害ぼうがいしてはならない（法ほう第だい78条じょう）。

所轄しょかつする官庁かんちょう

宗教しゅうきょう法人ほうじんの所轄しょかつ庁ちょうは、その主しゅたる事務所じむしょを所管しょかんする都道府県とどうふけん知事ちじとされるが、以下いかについては文部もんぶ科学かがく大臣だいじんの所轄しょかつとなる（法ほう第だい5条じょう）。但ただし、文部もんぶ科学かがく省しょうは国くにとしての宗教しゅうきょう法人ほうじん政策せいさく実務じつむを担当たんとうする部署ぶしょを直下ちょっかに持もたず、文化庁ぶんかちょう宗務しゅうむ課かがそれを担になう（文部もんぶ科学かがく省しょう設置せっち法ほう第だい19条じょう）。

• 他たの都道府県とどうふけん内うちに境内けいだい建物たてものを備そなえる宗教しゅうきょう法人ほうじん
• 上記じょうきの宗教しゅうきょう法人ほうじんを包括ほうかつする宗教しゅうきょう法人ほうじん
• 他たの都道府県とどうふけん内ないにある宗教しゅうきょう法人ほうじんを包括ほうかつする宗教しゅうきょう法人ほうじん

事業じぎょう活動かつどう

宗教しゅうきょう法人ほうじんは、公益こうえき事業じぎょうを行おこなうことができ（法ほう第だい6条じょう第だい1項こう）、ほとんどの場合ばあい、寺社じしゃや教会きょうかいといった宗教しゅうきょう施設しせつを有ゆうする。法人ほうじんによっては、淀川よどがわキリスト教きりすときょう病院びょういん（在ざい日本にっぽん南みなみプレスビテリアンミッション）といった病院びょういんや神宮じんぐう幼稚園ようちえん（伊勢神宮いせじんぐう）のような学校がっこう、鞍馬山くらまやま鋼索こうさく鉄道てつどう（鞍馬あんば寺てら）といった鉄道てつどうも運営うんえいしている場合ばあいがある。

また、その目的もくてきに反はんしない限かぎり、公益こうえき事業じぎょう以外いがいの事業じぎょうをも行おこなうことができる（法ほう第だい6条じょう第だい2項こう）。もっとも、収益しゅうえきが生しょうじたときは、自己じこ又または関係かんけいのある宗教しゅうきょう法人ほうじん若もしくは公益こうえき事業じぎょうのために使用しようしなければならない。

宗教しゅうきょう法人ほうじんの役員やくいん

宗教しゅうきょう法人ほうじんには、「規則きそく」で定さだめるところにより、3人にん以上いじょうの責任せきにん役員やくいんをおき、そのうち1人ひとりを代表だいひょう役員やくいんとする（法ほう第だい18条じょう第だい1項こう）。代表だいひょう役員やくいんは規則きそくに定さだめがないときは、責任せきにん役員やくいんの互選ごせんによって定さだめる（法ほう第だい18条じょう第だい2項こう）。代表だいひょう役員やくいんは当該とうがい宗教しゅうきょう法人ほうじんを代表だいひょうして、全ぜん事務じむを総理そうりし（法ほう第だい18条じょう第だい3項こう）、「規則きそく」で定さだめるところにより、宗教しゅうきょう法人ほうじんの事務じむを決定けっていする（法ほう第だい18条じょう第だい4項こう）。しかし、これらの役員やくいんの法人ほうじんの事務じむに関かんする権限けんげんは、宗教しゅうきょう上じょうの機能きのうに対たいするいかなる支配しはい権けんその他たの権限けんげんをも含ふくむものではない（法ほう第だい18条じょう第だい6項こう）。

つまり、代表だいひょう役員やくいんは必かならずしも宗教しゅうきょう団体だんたいの主宰しゅさい者しゃである必要ひつようはなく、教団きょうだん事務じむの責任せきにん者しゃが代表だいひょう役員やくいんを務つとめる宗教しゅうきょう団体だんたい（浄土真宗じょうどしんしゅう本願寺ほんがんじ派は、真宗しんしゅう大谷おおや派は、天理教てんりきょうなど）も多おおい。『宗教しゅうきょう年鑑ねんかん』の文部もんぶ科学かがく大臣だいじん所轄しょかつ包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじん一覧いちらんには、備考びこう欄らんに代表だいひょう役員やくいんではない宗教しゅうきょう団体だんたいの主宰しゅさい者しゃの氏名しめいが掲載けいさいされている。すなわち「法人ほうじんの代表だいひょう権けん者しゃ」と「宗教しゅうきょう活動かつどう従事じゅうじ者しゃの最さい上位じょういにある者もの」は必かならずしも同どう一人物いちじんぶつにならない。

代表だいひょう役員やくいん又または責任せきにん役員やくいんが死亡しぼうその他たの事由じゆうで欠員けついんが生しょうじた場合ばあいにおいて、速すみやかに後任こうにん者しゃを選えらぶことができないとき、または代表だいひょう役員やくいん又または責任せきにん役員やくいんが病気びょうきその他たの事由じゆうにより3か月げつ以上いじょうその職務しょくむを行おこなうことができないときは、規則きそくで定さだめるところにより、代務だいむ者しゃを置おかなければならない（法ほう第だい20条じょう第だい1項こう）。代務だいむ者しゃは、規則きそくで定さだめるところにより、代表だいひょう役員やくいん又または責任せきにん役員やくいんの職務しょくむを代行だいこうする（法ほう第だい20条じょう第だい2項こう）。

代表だいひょう役員やくいんは、宗教しゅうきょう法人ほうじんと利益りえきが相反あいはんする事項じこうについては代表だいひょう権けんを持もたず、規則きそくで定さだめるところにより、仮かり代表だいひょう役員やくいんを選えらばなければならない（法ほう第だい21条じょう第だい1項こう）。責任せきにん役員やくいんは、当人とうにんと特別とくべつの利害りがい関係かんけいがある事項じこうについては議決ぎけつ権けんを持もたず、規則きそくに別段べつだんの定じょうがなければ、議決ぎけつ権けんを有ゆうする責任せきにん役員やくいんの員数いんずうが責任せきにん役員やくいんの定数ていすうの過半数かはんすうに満みたないこととなったときは、規則きそくで定さだめるところにより、その過半数かはんすうに達たっするまでの員数いんずう以上いじょうの仮かり責任せきにん役員やくいんを選えらばなければならない（法ほう第だい21条じょう第だい2項こう）。

「未成年みせいねん者ものは宗教しゅうきょう法人ほうじんの代表だいひょう役員やくいん、責任せきにん役員やくいん、代務だいむ者しゃ、仮かり代表だいひょう役員やくいん又または仮かり責任せきにん役員やくいんになれない（法ほう第だい22条じょう第だい1項こう第だい1号ごう）」とされており、現在げんざいは18歳さい以上いじょうしか代表だいひょう役員やくいん、責任せきにん役員やくいん、代務だいむ者しゃ、仮かり代表だいひょう役員やくいん又または仮かり責任せきにん役員やくいんになれない。また「心身しんしんの故障こしょうによりその職務しょくむを行おこなうに当とうたつて必要ひつようとなる認知にんち、判断はんだん及および意思いし疎通そつうを適切てきせつに行おこなうことができない者もの（法ほう第だい22条じょう第だい1項こう第だい2号ごう）」や「禁錮きんこ以上いじょうの刑けいに処しょせられ、その執行しっこうを終おわるまで又または執行しっこうを受うけることがなくなるまでの者もの（法ほう第だい22条じょう第だい1項こう第だい3号ごう）」も、欠格けっかく事項じこうに該当がいとうする。

他た種たねの公益こうえき法人ほうじんと異ことなり、宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほうでは「現げんに反はん社会しゃかい的てき勢力せいりょくに所属しょぞくしている、または離脱りだつしてから一定いってい期間きかんが未いまだ経過けいかしていない」ことを役員やくいん就任しゅうにんの欠格けっかく事由じゆうに定さだめていない。この状況じょうきょうについて、地域ちいき内ないに大だい規模きぼな暴力団ぼうりょくだんを抱かかえる福岡ふくおか県けんや兵庫ひょうご県けんその他たの合あわせて9県けんが、「脱税だつぜいやマネーロンダリング目的もくてきで休眠きゅうみん状態じょうたいの宗教しゅうきょう法人ほうじんを乗のっ取とり、悪用あくようする懸念けねんがある」として宗教しゅうきょう法人ほうじんの役員やくいん資格しかくにも暴排条項じょうこうを織おり込こむよう内閣ないかく府ふに提言ていげんしているが、内閣ないかく府ふは「少すくなくとも最近さいきん10年間ねんかんで実例じつれいが無なく、規定きていを設もうけても実効じっこう性せいに乏とぼしい」として、具体ぐたい的てきな対応たいおうを行おこなっていない。これに対たいし近畿大学きんきだいがくの田近たぢか肇はじめ教授きょうじゅは「暴力団ぼうりょくだん員いんにも信教しんきょうの自由じゆうはあるが、法人ほうじん役員やくいんの欠格けっかく事由じゆうに暴排規定きていを追加ついかするための足あしかせにはならない」と主張しゅちょうし、暴排条項じょうこうの新設しんせつは暴力団ぼうりょくだん員いん個人こじんとしての信教しんきょうの自由じゆうを侵害しんがいする理由りゆうにならないと指摘してきしている。

法律ほうりつ的てき能力のうりょく

• 権利けんり能力のうりょく

宗教しゅうきょう法人ほうじんは法令ほうれいの規定きていに従したがい、規則きそくで定さだめる目的もくてきの範囲はんい内ないにおいて、権利けんりを有ゆうし、義務ぎむを負おう（法ほう第だい10条じょう）。人格じんかく権けんは持もたないとされるが、名称めいしょう権けんや名誉めいよ権けん、精神せいしん的てき自由じゆう権けんなどは宗教しゅうきょう法人ほうじんが享有きょうゆうでき、また、財産ざいさん権けんについては権利けんり能力のうりょくを具備ぐびしているため、宗教しゅうきょう法人ほうじんが営利えいり企業きぎょうの株主かぶぬし、設立せつりつ時じの発起人ほっきにんになることは可能かのうである。

• 行為こうい能力のうりょく

実行じっこう行為こういは自然人しぜんじんが行おこなうため、その責任せきにんの所在しょざいを明確めいかくにするため、代表だいひょう役員やくいんが行おこなった行為こういが法人ほうじんの目的もくてきの範囲はんい内ないのものであれば、当該とうがい宗教しゅうきょう法人ほうじんが行おこなったものとみなされる。つまり、宗教しゅうきょう法人ほうじんの行為こうい能力のうりょくは規則きそくに定さだめる目的もくてきの範囲はんい内ないに限定げんていされることになる。

• 不法ふほう行為こうい能力のうりょく

宗教しゅうきょう法人ほうじんは、代表だいひょう役員やくいんその他たの代表だいひょう者しゃがその職務しょくむを行おこなうにつき第三者だいさんしゃに加くわえた損害そんがいを賠償ばいしょうする責任せきにんを負おう（法ほう第だい11条じょう第だい1項こう）。宗教しゅうきょう法人ほうじんの目的もくてきの範囲はんい外がいの行為こういによって第三者だいさんしゃに損害そんがいを加くわえた場合ばあいは、その行為こういをした代表だいひょう役員やくいんその他たの代表だいひょう者しゃ及およびその事項じこうの決議けつぎに賛成さんせいした責任せきにん役員やくいん、その代務だいむ者しゃ又または仮かり責任せきにん役員やくいんは、連帯れんたいしてその損害そんがいを賠償ばいしょうする責任せきにんを負おう（法ほう第だい11条じょう第だい2項こう）。

会計かいけいの公開こうかい

宗教しゅうきょう法人ほうじんは、規則きそく認証にんしょうや合併がっぺいによる設立せつりつ時じに財産ざいさん目録もくろくを、また毎年まいとしの会計かいけい年度ねんどが終了しゅうりょうしてから3カ月かげつ以内いないに財産ざいさん目録もくろくと収支しゅうし計算けいさん書しょを作成さくせいしなければならない（法ほう第だい25条じょう第だい1項こう）。また、信者しんじゃ及およびその利害りがい関係かんけい者しゃから当該とうがい書類しょるいの閲覧えつらんを求もとめられた際さいに、要求ようきゅうが不当ふとうな目的もくてきを伴ともなっているものと認みとめられない限かぎりは、請求せいきゅうを拒絶きょぜつできない（法ほう第だい25条じょう第だい3項こう）。

さらに、収益しゅうえき事業じぎょうを行おこなっている場合ばあいや、年間ねんかんの総そう収益しゅうえきが8000万まん円えんを超こえている場合ばあいは、収支しゅうし計算けいさん書しょを税務署ぜいむしょにも提出ていしゅつしなければならない（租税そぜい特別とくべつ措置そち法ほう第だい68条じょうの6）。

但ただし、以下いかの全すべての条件じょうけんを満みたす法人ほうじんに限かぎっては、収支しゅうし計算けいさん書しょの作成さくせいが当面とうめんの間あいだに限かぎり任意にんいとなる（宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほう附則ふそく第だい23号ごう、平成へいせい8年ねん9月2日にち文部もんぶ事務次官じむじかん通達つうたつ）。これは、収支しゅうし計算けいさん書しょの提出ていしゅつ義務ぎむが平成へいせい8年度ねんどの宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほう改正かいせいによって新設しんせつされたものであるため、法ほう改正かいせい以前いぜんから存在そんざいする法人ほうじんに配慮はいりょした経過けいか措置そちとしての意味合いみあいがある。

• 平成へいせい8年ねん9月15日にち以前いぜんに法人ほうじん格かくを取得しゅとくしている。
• 公益こうえき事業じぎょう以外いがいの事業じぎょうを何なんら行いっていない。
• 年間ねんかんの総そう収益しゅうえきが8000万まん円えん以内いないである。

なお、貸借たいしゃく対照たいしょう表ひょうの作成さくせいは全すべての宗教しゅうきょう法人ほうじんにおいて任意にんいと扱あつかわれるが、財産ざいさん目録もくろくに資産しさん及および負債ふさいが記載きさいされているため、実務じつむ上じょうは財産ざいさん目録もくろくで代用だいようされる。

宗教しゅうきょう法人ほうじん事務所じむしょへの常備じょうびが義務付ぎむづけられる書類しょるい等とう

1. 規則きそく及および認証にんしょう書類しょるい（法ほう第だい25条じょう第だい2項こう第だい1号ごう）
2. 役員やくいん名簿めいぼ（法ほう第だい25条じょう第だい2項こう第だい2号ごう）
3. 財産ざいさん目録もくろく及および収支しゅうし計算けいさん書しょ並ならびに貸借たいしゃく対照たいしょう表ひょうを作成さくせいしている場合ばあいの貸借たいしゃく対照たいしょう表ひょう（法ほう第だい25条じょう第だい2項こう第だい3号ごう）
4. 境内けいだい建物たてもの（財産ざいさん目録もくろくに記載きさいされているものを除のぞく）に関かんする書類しょるい（法ほう第だい25条じょう第だい2項こう第だい4号ごう）
5. 責任せきにん役員やくいんその他た規則きそくで定さだめる機関きかんの議事ぎじに関かんする書類しょるい及および事務じむ処理しょり簿ぼ（法ほう第だい25条じょう第だい2項こう第だい5号ごう）
6. 事業じぎょうを行おこなう場合ばあいの関連かんれん書類しょるい（法ほう第だい25条じょう第だい2項こう第だい6号ごう）

このうち、2、3、4、6については、会計かいけい年度ねんど終了しゅうりょうから4ケ月かげつ経過けいかするときまでに、その写本しゃほん等とうを所轄しょかつ庁ちょうに提出ていしゅつしなければならず（法ほう第だい25条じょう第だい4項こう）、正当せいとうな理由りゆうなくこれを怠おこたった場合ばあいは、宗教しゅうきょう法人ほうじんの代表だいひょう機関きかん（代表だいひょう役員やくいん、その代務だいむ者しゃ、仮かり代表だいひょう役員やくいん又または清算せいさん人じんら）は、10万まん円えん以下いかの過料かりょうに処しょせられる（法ほう第だい88条じょう第だい5項こう）。

所轄しょかつ庁ちょうは提出ていしゅつされた書類しょるいの取とり扱あつかいに際さいして、宗教しゅうきょう法人ほうじんの宗教しゅうきょう上じょうの特性とくせい及および慣習かんしゅうを尊重そんちょうし、信教しんきょうの自由じゆうを妨さまたげることがないように特とくに留意りゅういしなければならない（法ほう第だい25条じょう第だい5項こう）。

報告ほうこく及および質問しつもん

所轄しょかつ庁ちょうは、以下いかに該当がいとうする場合ばあいは、宗教しゅうきょう法人ほうじん審議しんぎ会かいの意見いけんを聞きいた上うえで、当該とうがい宗教しゅうきょう法人ほうじんに対たいし報告ほうこくを求もとめ、又または所轄しょかつ庁ちょうの職員しょくいんに当該とうがい宗教しゅうきょう法人ほうじんの代表だいひょう役員やくいん、責任せきにん役員やくいんその他たの関係かんけい者しゃに対たいし質問しつもんさせることができる。所轄しょかつ庁ちょうの職員しょくいんが質問しつもんするために当該とうがい宗教しゅうきょう法人ほうじんの施設しせつに立たち入いるときは、当該とうがい宗教しゅうきょう法人ほうじんの代表だいひょう役員やくいん、責任せきにん役員やくいんその他たの関係かんけい者しゃの同意どういを得えなければならない（法ほう第だい78条じょう2第だい1項こう）。

• 公益こうえき事業じぎょう以外いがいの事業じぎょうの収益しゅうえきが、公益こうえき・宗教しゅうきょう事業じぎょう以外いがいに使つかわれている疑義ぎぎがある
• 認証にんしょうの取とり消けし事由じゆうに該当がいとうする疑義ぎぎがある
• 解散かいさん命令めいれいの請求せいきゅう事由じゆうに該当がいとうする疑義ぎぎがある

所轄しょかつ庁ちょうは報告ほうこく徴収ちょうしゅう・質問しつもんに際さいして、宗教しゅうきょう法人ほうじんの宗教しゅうきょう上じょうの特性とくせい及および慣習かんしゅうを尊重そんちょうし、信教しんきょうの自由じゆうを妨さまたげることがないように特とくに留意りゅういしなければならない（法ほう第だい78条じょう2第だい4項こう）。また報告ほうこく徴収ちょうしゅう・質問しつもんは犯罪はんざい捜査そうさのために認みとめられたものと解釈かいしゃくしてはならない（法ほう第だい78条じょう2第だい6項こう）。

所轄しょかつ庁ちょうが宗教しゅうきょう法人ほうじんに報告ほうこくを求もとめ、また質問しつもんした際さいに、当該とうがい宗教しゅうきょう法人ほうじんが報告ほうこくをせず、若もしくは虚偽きょぎの報告ほうこくをし、また所轄しょかつ庁ちょうの職員しょくいんの質問しつもんに対たいして答弁とうべんをせず、若もしくは虚偽きょぎの答弁とうべんをした場合ばあいは、宗教しゅうきょう法人ほうじんの代表だいひょう機関きかんは、10万まん円えん以下いかの過料かりょうに処しょせられる（法ほう第だい88条じょう第だい10項こう）。

宗教しゅうきょう法人ほうじんの解散かいさん

宗教しゅうきょう法人ほうじんは、任意にんいに解散かいさんすることができるほか（法ほう第だい43条じょう第だい1項こう）、以下いかの事由じゆうが発生はっせいした場合ばあいに解散かいさんする。

• 規則きそくで定さだめる解散かいさん事由じゆうの発生はっせい（法ほう第だい43条じょう第だい2項こう第だい1号ごう）
• 合併がっぺいによる消滅しょうめつ（法ほう第だい43条じょう第だい2項こう第だい2号ごう）
• 破産はさん手続てつづき開始かいしの決定けってい（法ほう第だい43条じょう第だい2項こう第だい3号ごう）
• 所轄しょかつ庁ちょうの認証にんしょうの取消とりけし（法ほう第だい43条じょう第だい2項こう第だい4号ごう）
• 裁判所さいばんしょの解散かいさん命令めいれい（法ほう第だい43条じょう第だい2項こう第だい5号ごう）
• 包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじんにおける被ひ包括ほうかつ宗教しゅうきょう法人ほうじんの欠かけ亡ほろび（法ほう第だい43条じょう第だい2項こう第だい6号ごう）

裁判所さいばんしょは、以下いかの事由じゆうに該当がいとうする宗教しゅうきょう法人ほうじんに対たいし、所轄しょかつ庁ちょう・利害りがい関係かんけい人じん・検察官けんさつかんの請求せいきゅうまたは裁判所さいばんしょの職権しょっけんに基もとづき、解散かいさんを命めいずることができる（法ほう第だい81条じょう）。

• 法令ほうれいに違反いはんし、著いちじるしく公共こうきょうの福祉ふくしを害がいしている
• 宗教しゅうきょう団体だんたいの目的もくてきを著いちじるしく逸脱いつだつした行為こういをしている、または宗教しゅうきょう団体だんたいの目的もくてきを1年ねん以上いじょう行いっていない
• 礼拝れいはい施設しせつがない
• 代表だいひょう者しゃが1年ねん以上いじょういない
• 宗教しゅうきょう法人ほうじんの要件ようけんを満みたさない（認証にんしょう書しょを交付こうふした日ひから1年ねんを経過けいかしている場合ばあい）

宗教しゅうきょう法人ほうじんに関かんする統計とうけい

文化庁ぶんかちょう宗務しゅうむ課かは『宗教しゅうきょう年鑑ねんかん』を発行はっこうしており、これは日本にっぽん国内こくないにおける宗教しゅうきょう法人ほうじんの動静どうせいを説明せつめいする唯一ゆいいつの公的こうてき機関きかん資料しりょうである。以下いかのとおりの三さん部ぶ構成こうせいが取とられている。

• 第だい1部ぶ「日本にっぽんの宗教しゅうきょうの概要がいよう」
• 第だい2部ぶ「宗教しゅうきょう統計とうけい」
• 第だい3部ぶ「宗教しゅうきょう団体だんたい一覧いちらん」

平成へいせい7年版ねんばん（1995年ねん）以降いこうの発行はっこう分ぶんは文化庁ぶんかちょうのホームページからダウンロードできる。なお、平成へいせい26年版ねんばん（2014年ねん）以降いこうは冊子さっし媒体ばいたいでの頒布はんぷを行おこなっておらず、ダウンロードのためのページを設定せっていすることによって公開こうかいとしている。

統計とうけい上じょうの分類ぶんるい

宗教しゅうきょう法人ほうじんは統計とうけい上じょう、神道しんとう系けい・仏教ぶっきょう系けい・キリスト教きりすときょう系けい・諸しょ教きょうに分類ぶんるいされる。「諸しょ教きょう」とは、それ以外いがいの3つに分類ぶんるいされないあらゆる宗教しゅうきょう（例たとえば、イスラム教いすらむきょう（宗教しゅうきょう法人ほうじん日本にっぽんムスリム協会きょうかい）など）のことである。ただし、これらの分類ぶんるいは当該とうがい宗教しゅうきょう法人ほうじんからの届とどけに基もとづくものであり、いずれかの宗教しゅうきょうの影響えいきょうを強つよく受うけているにもかかわらず「諸しょ教きょう」に分類ぶんるいされているものも少すくなくない。

• 神道しんとう系けい包括ほうかつ団体だんたい一覧いちらん
• 仏教ぶっきょう系けい包括ほうかつ団体だんたい一覧いちらん
• キリスト教きりすときょう系けい包括ほうかつ団体だんたい一覧いちらん

問題もんだい点てん

法人ほうじんに所属しょぞくする宗教しゅうきょう者しゃの労働ろうどう者しゃ性せい　

宗教しゅうきょう者しゃは、「宗教しゅうきょう上じょうの儀式ぎしき、布教ふきょう等とうに従事じゅうじする者もの、教師きょうし、僧職そうしょく等とうで修行しゅぎょう中ちゅうの者もの、信者しんじゃであって何なに等とうの給与きゅうよを受うけず奉仕ほうしする者もの等とうは労働ろうどう基準きじゅん法ほう上じょうの労働ろうどう者しゃではない」を根拠こんきょとし、一般いっぱんの企業きぎょうの労働ろうどう者しゃと同様どうように労働ろうどう契約けいやくに基もとづき賃金ちんぎんを受うける場合ばあいを除のぞいては雇用こよう保険ほけん及および労災ろうさい保険ほけんのいずれからも除外じょがいされる。一方いっぽうで当該とうがい通達つうたつは、具体ぐたい的てきな労働ろうどう条件じょうけん等とうを一般いっぱん企業きぎょうと比較ひかくし個々ここの事例じれいについて実情じつじょうに即そくして判断はんだんすることも求もとめているため、同おなじ法人ほうじんに属ぞくする他ほかの宗教しゅうきょう者しゃから儀式ぎしきの執行しっこうや布教ふきょう活動かつどうに関かんし恒常こうじょう的てきに指揮しき命令めいれいを受うけている場合ばあいにおいて労働ろうどう紛争ふんそうが生しょうじた際さい、紛争ふんそうの当事とうじ者しゃに労働ろうどう者しゃとしての権利けんりがある前提ぜんていで対処たいしょすべきかが曖昧あいまいな状況じょうきょうとなる。

活動かつどう実態じったい不明ふめいの宗教しゅうきょう法人ほうじんの急増きゅうぞう

宗教しゅうきょう法人ほうじんとは宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほう第だい2条じょうに謳うたわれているとおり、「宗教しゅうきょうの教義きょうぎをひろめ、儀式ぎしき行事ぎょうじを行おこない、及および信者しんじゃを強化きょうか育成いくせいすることを主しゅたる目的もくてきとする宗教しゅうきょう団体だんたいへ法人ほうじん格かくを与あたえたもの」であり、宗教しゅうきょう、公益こうえき活動かつどうを団体だんたいとして常時じょうじ行おこなっていることが鉄則てっそくである。さらには宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほうなどのとおり、所轄しょかつ庁ちょう等とうへ毎年まいとし活動かつどう実態じったいなどを報告ほうこくする義務ぎむもあるが、ここ数すう年間ねんかん、無む報告ほうこくや不ふ活動かつどうな宗教しゅうきょう法人ほうじんが倍増ばいぞうしている（2004年ねん以降いこう）。

中なかには、インターネット上じょうで堂々どうどうと宗教しゅうきょう法人ほうじんの法人ほうじん格かくが売買ばいばいされるケースもある。

そこで、宗教しゅうきょう行政ぎょうせいの主管しゅかんである文部もんぶ科学かがく省しょうや文化庁ぶんかちょうは、法ほう第だい81条じょうなどに基もとづき「不ふ活動かつどう宗教しゅうきょう法人ほうじん」の合併がっぺいや解散かいさんを進すすめるよう都道府県とどうふけんや自治体じちたい、各かく宗教しゅうきょう法人ほうじんへ指導しどうしているが、地域ちいきの長ながい伝統でんとう風習ふうしゅうや人情にんじょう、数々かずかずな諸しょ事情じじょうにより合併がっぺいや解散かいさんへは多おおくの困難こんなんが伴ともなって長丁場ながちょうばとなっている。

政教せいきょう分離ぶんり原則げんそく

政教せいきょう分離ぶんり原則げんそくは次つぎの3項こうの禁止きんしを定さだめる。

• 特権とっけん付与ふよの禁止きんし - 特定とくていの宗教しゅうきょう団体だんたいに特権とっけんを付与ふよすること。宗教しゅうきょう団体だんたい全すべてに対たいし他ほかの団体だんたいと区別くべつして特権とっけんを与あたえること。
• 宗教しゅうきょう団体だんたいの「政治せいじ的てき権力けんりょく」行使こうしの禁止きんし
• 国くにの宗教しゅうきょう的てき活動かつどうの禁止きんし - 宗教しゅうきょうの布教ふきょう、教化きょうか、宣伝せんでんの活動かつどう、宗教しゅうきょう上じょうの祝典しゅくてん、儀式ぎしき、行事ぎょうじなど。

しかし、公明党こうめいとう（創価学会そうかがっかい）、幸福こうふく実現じつげん党とう（幸福こうふくの科学かがく）、統一とういつ協会きょうかい、神道しんとう政治せいじ連盟れんめい（神社じんじゃ本庁ほんちょう）、日本にっぽん会議かいぎ（神社じんじゃ本庁ほんちょうなど）、立正佼成会りっしょうこうせいかい等ひとし、宗教しゅうきょう団体だんたいを母体ぼたいとしたり、深ふかく関与かんよする政党せいとう・政治せいじ団体だんたいが多おおく存在そんざいする。

内閣ないかく法制ほうせい局きょくの見解けんかいは、以下いかである。

「憲法けんぽうの政教せいきょう分離ぶんりの原則げんそくとは、信教しんきょうの自由じゆうの保障ほしょうを実質じっしつ的てきなものとするため、国くにおよびその機関きかんが国権こっけん行使こうしの場面ばめんにおいて宗教しゅうきょうに介入かいにゅうし、または関与かんよすることを排除はいじょする趣旨しゅしである。それを超こえて、宗教しゅうきょう団体だんたいが政治せいじ的てき活動かつどうをすることをも排除はいじょしている趣旨しゅしではない。」

以上いじょうの公式こうしき見解けんかいのように現在げんざい、政教せいきょう分離ぶんり原則げんそくに抵触ていしょくするのは国くにや地方ちほう公共こうきょう団体だんたい・公的こうてき機関きかんが宗教しゅうきょう活動かつどうをすることであり、靖国神社やすくにじんじゃ参拝さんぱいも公務こうむとして参拝さんぱいすると違法いほうになる。宗教しゅうきょう団体だんたいは私設しせつ団体だんたいであり、宗教しゅうきょう団体だんたいが政治せいじ活動かつどうをしてはいけないというものではないし、公務員こうむいんではない宗教しゅうきょう者しゃが政治せいじ活動かつどうに関与かんよしたり政治せいじ思想しそうに関かんする発言はつげんを公おおやけの場ばで行おこなったりすることも当然とうぜんながら政教せいきょう分離ぶんりの問題もんだいとは何なんらの関連かんれん性せいも無ない。

法律ほうりつ論ろんとして解わかりやすく述のべると
・「△議院ぎいん議員ぎいん ○○」が「××寺院じいん・神社じんじゃ・教会きょうかい」を、公的こうてき身分みぶんで公務こうむとしての参拝さんぱいは許ゆるされない。
　逆説ぎゃくせつ的てきに「△議院ぎいん議員ぎいん ○○」を名乗なのっていても、プライベートタイムで私費しひで参拝さんぱいしている場合ばあいは法律ほうりつ上じょうの問題もんだいは生しょうじ得えない。

・また「××寺院じいん・神社じんじゃ・教会きょうかい」の信者しんじゃ・信徒しんとである「〇〇議員ぎいん」を、同輩どうはいである「××寺院じいん・神社じんじゃ・教会きょうかいの信徒しんと・信者しんじゃ」が支持しじ応援おうえんするのは「当然とうぜんの権利けんり」であり、そこに直接ちょくせつ・間接かんせつ問とわず組織そしき的てき圧力あつりょく等とうが無なければ、法律ほうりつ上じょうの問題もんだいは無ない。

宗教しゅうきょう法人ほうじんの課税かぜいの仕組しくみ

まず、法人ほうじん税法ぜいほうがいう「儲もうけ」とは「配当はいとう金きん」のことであり、法人ほうじん税ぜいなどは、その法人ほうじんの株主かぶぬしなどへ支払しはらわれる剰余じょうよ金きん配当はいとう（配当はいとう金きん）と、残余ざんよ財産ざいさん分配ぶんぱい（みなし配当はいとう）に対たいして課税かぜいされている。

また、日本にっぽんは法人ほうじん擬制ぎせい説せつの立場たちばで税法ぜいほうが運用うんようされていて、法人ほうじん税ぜいなどは法人ほうじん自体じたいに課税かぜいされたものという見解けんかいは法人ほうじん実在じつざい説せつに立たったもので誤あやまりであり、実際じっさいは配当はいとう金きんを貰もらう個人こじんに対たいして課税かぜいされているのである。

しかし、税法ぜいほうで公益こうえき法人ほうじん等とうに分類ぶんるいされる宗教しゅうきょう法人ほうじんは持分もちぶんが全まったくないため、公益こうえき事業じぎょう（公益こうえき・宗教しゅうきょう事業じぎょう）以外いがいの事業じぎょうにおいて「儲もうけ」が出でた場合ばあいには、法人ほうじん税ぜい等とうが課税かぜいされる。

このように「本来ほんらい事業じぎょうは剰余じょうよ金きん配当はいとうと残余ざんよ財産ざいさん分配ぶんぱいができないから非課税ひかぜい、収益しゅうえき事業じぎょうは納税のうぜい義務ぎむを持もつ」という構造こうぞうは、宗教しゅうきょう法人ほうじんに限かぎらず法人ほうじん税法ぜいほうにて「公益こうえき法人ほうじん等とう」に設定せっていされた法人ほうじん全すべてに共通きょうつうする。ゆえに、宗教しゅうきょう法人ほうじんへの収益しゅうえきに対たいする課税かぜいを主張しゅちょうするのは、上記じょうきの法人ほうじん税制ぜいせいの基本きほん原則げんそくと矛盾むじゅんするい分いぶんに過すぎず、論理ろんりが破綻はたんしている。

宗教しゅうきょう法人ほうじんの収益しゅうえき事業じぎょうで「儲もうけ」が出でた場合ばあいは、その総すべてを公益こうえき事業じぎょう（公益こうえき・宗教しゅうきょう事業じぎょう）へ使つかわなければならず（法ほう第だい6条じょう第だい2項こう）、一般いっぱん企業きぎょうのように個人こじんへ配当はいとうすることは出来できないので、その点てんで軽減けいげん税率ぜいりつが適用てきようされている。そして、法人ほうじん収益しゅうえきは公益こうえき事業じぎょう（公益こうえき・宗教しゅうきょう活動かつどう・文化財ぶんかざいの保護ほご・伝統でんとうと慣習かんしゅうの承継しょうけい等とうの本来ほんらい事業じぎょう）に、法規ほうきどおり使つかわなければいけない。

ちなみに、公益こうえき法人ほうじんである宗教しゅうきょう法人ほうじんの役職やくしょく員いんは、通常つうじょうの場合ばあい給与きゅうよを受うけており、これは一般いっぱん勤労きんろう者しゃと同おなじく所得しょとく税ぜいや住民じゅうみん税ぜいなどを課税かぜいされている。さらに、僧侶そうりょ・神官しんかん等とうの宗教しゅうきょう者しゃが個人こじん資産しさんとして、不動産ふどうさん・自動車じどうしゃ等ひとしの動産どうさんを所有しょゆうしている場合ばあいは、相続そうぞく税ぜいを始はじめ普通ふつうに課税かぜいされる。また自動車じどうしゃ関係かんけいの道路どうろ特定とくてい財源ざいげん制度せいど諸税しょぜいについては、宗教しゅうきょう法人ほうじんが公益こうえき・宗教しゅうきょう事業じぎょう用ように自動車じどうしゃを所有しょゆうする場合ばあいでも、自動車じどうしゃ税ぜいや自動車じどうしゃ重量じゅうりょう税ぜいなどの課税かぜいがなされる。また、固定こてい資産しさん税ぜいが一定いってい条件下じょうけんかで減免げんめんされることもあるが、地方ちほう税法ぜいほうでは固定こてい資産しさん税ぜいの減免げんめん対象たいしょうになる事例じれいが鉄道てつどう用地ようちなど他ほかにも多おおく列挙れっきょされており、いかにも宗教しゅうきょう法人ほうじんであるゆえの特権とっけんのように論ろんじるのは詭弁きべん（チェリー・ピッキングの論法ろんぽう）に過すぎない。

なお、宗教しゅうきょう法人ほうじんを含ふくむ公益こうえき法人ほうじんへも、国税庁こくぜいちょうの税務ぜいむ調査ちょうさは普通ふつうに行おこなわれる。そして、所轄しょかつ官庁かんちょうや税務署ぜいむしょへ財産ざいさん目録もくろくなどの法定ほうてい書類しょるいを毎年まいとし確定かくてい申告しんこくする必要ひつようもあり、税務ぜいむ申告しんこくに問題もんだいがあれば指導しどうもなされる。したがって「宗教しゅうきょう法人ほうじんには一切いっさい課税かぜいがされない」ことはない。その証左しょうさとして、宗教しゅうきょう法人ほうじん会計かいけいに特とく化か、あるいは強つよい税理士ぜいりし事務所じむしょが複数ふくすう存在そんざいする。

但ただし、公益こうえき財団ざいだん法人ほうじんや公益社こうえきしゃ団だん法人ほうじん等ひとしが運営うんえいする収益しゅうえき事業じぎょうの税率ぜいりつと、宗教しゅうきょう法人ほうじんを含ふくむ広義こうぎの公益こうえき法人ほうじんが運営うんえいする収益しゅうえき事業じぎょうの税率ぜいりつとの間あいだに減額げんがくされていることなどから、宗教しゅうきょう法人ほうじんに対たいしても租税そぜいの公平こうへい性せいを確保かくほするため、収益しゅうえき事業じぎょうに対たいする税率ぜいりつの統一とういつを求もとめる声こえは多おおい。

宗教しゅうきょう法人ほうじんが公益こうえき法人ほうじんとして課税かぜいの優遇ゆうぐう措置そちを受うけていることを逆手さかてに取とり、宗教しゅうきょう法人ほうじんが運営うんえいする寺院じいんの住職じゅうしょくが宗教しゅうきょう法人ほうじんの収入しゅうにゅうを私的してき流用りゅうようしていたことが、税務ぜいむ調査ちょうさで指摘してきされた例れいがある。しかし、法人ほうじん運営うんえいの主導しゅどう的てき立場たちばにある者ものが地位ちいを悪用あくようして財産ざいさんを流用りゅうようする不祥事ふしょうじは他た種たねの法人ほうじんでも生しょうじることであり、上記じょうきの事例じれいを宗教しゅうきょう法人ほうじん特有とくゆうの問題もんだいとしてあげることは失当しっとうである。

公称こうしょう信者しんじゃ数すうの不ふ確実かくじつ性せい

前述ぜんじゅつの『宗教しゅうきょう年鑑ねんかん』には各かく宗教しゅうきょう法人ほうじんの信徒しんと数すうも統計とうけい項目こうもくのひとつとして掲載けいさいされているが、文化庁ぶんかちょうやその他たの所轄しょかつ官庁かんちょうは、憲法けんぽうの保障ほしょうする内心ないしんの自由じゆうに触ふれるため実数じっすう調査ちょうさを行おこなっておらず、あくまでも各かく法人ほうじんが調査ちょうさ票ひょうに記載きさいした自己じこ申告しんこくの人数にんずうである。従したがって、公表こうひょうされている数値すうちを単純たんじゅん合計ごうけいすると日本にっぽんの総そう人口じんこうを優ゆうに超こえる値ねとなる（菩提寺ぼだいじの檀まゆみ信徒しんととしてのみならず、地域ちいきの神社じんじゃの氏子うじことしても重複じゅうふく登録とうろくされている人ひとが多おおいため）。しかしながら、既すんで述じゅつの通とおり公的こうてき機関きかんによる統計とうけい資料しりょうは他たに存在そんざいしないため、厳密げんみつな意味いみで正確せいかくな信者しんじゃの人数にんずう、その中なかでも恒常こうじょう的てきに活動かつどうに参加さんかしている者ものの数かずを確定かくていすることは事実じじつ上じょう困難こんなんである。

個人こじん情報じょうほうの取とり扱あつかい

宗教しゅうきょう法人ほうじんは宗教しゅうきょう活動かつどうの用ように供きょうする目的もくてきに限かぎり、個人こじん情報じょうほう保護ほご法ほう第だい57条じょうの規定きていにより、個人こじん情報じょうほう取扱とりあつかい事業じぎょう者しゃの義務ぎむの適用てきよう除外じょがいとなり、主務しゅむ大臣だいじんから勧告かんこくや命令めいれいを受うけることはない。そのため、信者しんじゃ・檀家だんか等とうのプライバシーの尊重そんちょうに十分じゅうぶん配慮はいりょすることが求もとめられる。 また、宗教しゅうきょう者しゃとしての業務ぎょうむによって得えた情報じょうほうに関かんする守秘しゅひ義務ぎむは、捜索そうさく差押さしおさえ令状れいじょうに対たいしても（対象たいしょう者しゃ本人ほんにんの承諾しょうだくがある場合ばあいを除のぞき）拒否きょひ権けんを認みとめられている（刑事けいじ訴訟そしょう法ほう第だい105条じょう）こともあり、極きわめて厳重げんじゅうに履行りこうされなければならない。

備考びこう

銀行ぎんこう振込ふりこみで使つかう略称りゃくしょうは「シユウ」。

記号きごう

Unicodeに宗教しゅうきょう法人ほうじんを表あらわす「(宗むね)」を一文字ひともじにした記号きごうは含ふくまれていないが、丸まる囲かこみ文字もじが含ふくまれている。

記号きごう	Unicode	JIS X 0213	文字もじ参照さんしょう	名称めいしょう
㊪	U+32AA	-	㊪ ㊪	丸まる宗はじめ CIRCLED IDEOGRAPH RELIGION

参考さんこう文献ぶんけん

• 『Q&A改正かいせい宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほう』（文化庁ぶんかちょう文化ぶんか部ぶ宗務しゅうむ課内かない宗教しゅうきょう法人ほうじん研究けんきゅう会かい編著へんちょ、ぎょうせい、1997年ねん）
• 『逐条ちくじょう解説かいせつ宗教しゅうきょう法人ほうじん法ほう　第だい4次じ改訂かいてい版ばん』（渡部わたなべ蓊著しる、ぎょうせい、2009年ねん）
• 『図解ずかい宗教しゅうきょう法人ほうじんの法務ほうむ・会計かいけい・税務ぜいむ』（日本にっぽんテンプルヴァン株式会社かぶしきがいしゃ編へん、中央経済社ちゅうおうけいざいしゃ、2011年ねん）
• 『実務じつむがわかる宗教しゅうきょう法人ほうじん会計かいけい・税務ぜいむ』（税理士ぜいりし法人ほうじんゆびすい著しる、出版しゅっぱん文化ぶんか社しゃ、2018年ねん）

関連かんれん項目こうもく

• 宗教しゅうきょう法人ほうじん一覧いちらん
• 財団ざいだん法人ほうじん
• 社団しゃだん法人ほうじん
• 特定とくてい非ひ営利えいり活動かつどう法人ほうじん
• 学校がっこう法人ほうじん
• 社会しゃかい福祉ふくし法人ほうじん

外部がいぶリンク

• 宗教しゅうきょう法人ほうじんと宗務しゅうむ行政ぎょうせい 文化庁ぶんかちょう
• 概要がいよう 宗教しゅうきょう法人ほうじんとは 宗教しゅうきょう法人ほうじん数すう 文化庁ぶんかちょう
• 宗教しゅうきょう年鑑ねんかん 文化庁ぶんかちょう