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「藤井ふじいシステム」の版はん間あいだの差分さぶん

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|▲持もち駒ごま なし<br />藤井ふじいシステムの一いち例れい}}
|▲持もち駒ごま なし<br>藤井ふじいシステムの一いち例れい}}
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'''藤井ふじいシステム'''（ふじいシステム）は、[[将棋しょうぎの戦法せんぽう]]の一ひとつ。[[四よん間あいだ飛車ひしゃ]]の一種いっしゅである。[[棋士きし (将棋しょうぎ)|プロ棋士きし]]の[[藤井ふじい猛たけし]]が考案こうあんした<ref group="注ちゅう">藤井ふじいは1998年度ねんどのNHK[[将棋しょうぎ講座こうざ (NHK)|将棋しょうぎ講座こうざ]]で本戦ほんせん法ほうの解説かいせつを行おこない、その直後ちょくごに[[谷川たにがわ浩司こうじ]]から[[竜王りゅうおう戦せん|竜王りゅうおう位い]]を無敗むはいで奪取だっしゅ。</ref>。これにより藤井ふじいは1997年ねんの[[将棋しょうぎ大賞たいしょう]]の升田ますだ幸三こうぞう賞しょうを受賞じゅしょう<ref>{{cite web |url=https://www.shogi.or.jp/player/winner03.html |title=将棋しょうぎ大賞たいしょう受賞じゅしょう者しゃ一覧いちらん｜棋士きしデータベース｜日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい |publisher=[[日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい]] |accessdate=2018-09-16 }}</ref>。また、[[三さん間あいだ飛車ひしゃ]]にも応用おうようすることができる。
'''藤井ふじいシステム'''（ふじいシステム）は、[[将棋しょうぎの戦法せんぽう]]の一ひとつ。[[四よん間あいだ飛車ひしゃ]]の一種いっしゅである。[[棋士きし (将棋しょうぎ)|プロ棋士きし]]の[[藤井ふじい猛たけし]]が考案こうあんした<ref group="注ちゅう">藤井ふじいは1998年度ねんどのNHK[[将棋しょうぎ講座こうざ (NHK)|将棋しょうぎ講座こうざ]]で本戦ほんせん法ほうの解説かいせつを行おこない、その直後ちょくごに[[谷川たにがわ浩司こうじ]]から[[竜王りゅうおう戦せん|竜王りゅうおう位い]]を無敗むはいで奪取だっしゅ。</ref>。これにより藤井ふじいは1997年ねんの[[将棋しょうぎ大賞たいしょう]]の升田ますだ幸三こうぞう賞しょうを受賞じゅしょう<ref>{{Cite web|和書わしょ|url=https://www.shogi.or.jp/player/winner03.html |title=将棋しょうぎ大賞たいしょう受賞じゅしょう者しゃ一覧いちらん｜棋士きしデータベース｜日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい |publisher=[[日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい]] |accessdate=2018-09-16 }}</ref>。また、[[三さん間あいだ飛車ひしゃ]]にも応用おうようすることができる。


== 概要がいよう ==
== 概要がいよう ==
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『将棋しょうぎ世界せかい』2007年ねん9月がつ号ごうの企画きかく「現役げんえき棋士きしが選えらぶ衝撃しょうげきの新手あらて新しん戦法せんぽうベスト10!」で第だい1位いとなる。獲得かくとく票数ひょうすうが他たを圧倒あっとうしており、投票とうひょう総数そうすうの45%がこの戦法せんぽうに投票とうひょうしている<ref group="注ちゅう">「画期的かっきてき。この戦法せんぽうがすごいのは、藤井ふじいさんがひとりでシステムを構築こうちくしたこと」(佐藤さとう康光やすみつ)「右みぎの銀ぎん桂香けいかを攻せめに使つかうという画期的かっきてきな構想こうそう。将棋しょうぎ界かいの流ながれを大おおきく変かえた戦法せんぽう」(谷川たにがわ浩司こうじ)「凄すごい発想はっそう。創世そうせい期きには藤井ふじいさんとよく当あたり、負まかされました(笑)かっこわらい。優秀ゆうしゅうさを身みをもって体感たいかん」(深浦ふかうら康やすし市し)「振ふり飛車ひしゃ側がわが居きょ玉だまで戦たたかうという発想はっそうは思おもいつかなかった居きょ飛車ひしゃ側がわの急戦きゅうせん策さくや、その他たの持久じきゅう戦せんに対応たいおうするアイデアをひとりで作つくり上あげたのは驚異きょうい的てきだ」(室岡むろおか克彦かつひこ)「連れん常つねの新しん戦法せんぽうは誰だれかのアイデアに対たいし、追つい走者そうしゃが現あらわれることで構築こうちくされていきます。藤井ふじいシステムの特異とくいな点てんは、第だい1期き竜王りゅうおう戦せんに見みられるように、すでに完成かんせいされたひとつの分野ぶんやとして提示ていじされたことです。藤井ふじいさん独自どくじの研究けんきゅう量りょう·新手あらての多おおさでも際立きわだっており、今後こんごこのような新しん研究けんきゅうは現あらわれないのではないでしょうか」(飯塚いいづか祐紀ゆうき)などで、若手わかて棋士きしに振ふり飛車ひしゃ党とうが多おおいのは、間違まちがいなくこの戦法せんぽうの影響えいきょうである、という指摘してきも数多かずおおく寄よせられた。「奨励しょうれい会かい有段者ゆうだんしゃ時代じだいに大だい流行りゅうこうしていた戦法せんぽう。おかげさまで卒業そつぎょうすることができました」(島本しまもと亮あきら)「振ふり飛車ひしゃの大だい革命かくめい。この戦法せんぽうのおかげでプロになった棋士きしも多おおいはずです」 (長岡ながおか裕也ゆうや)
『将棋しょうぎ世界せかい』2007年ねん9月がつ号ごうの企画きかく「現役げんえき棋士きしが選えらぶ衝撃しょうげきの新手あらて新しん戦法せんぽうベスト10!」で第だい1位いとなる。獲得かくとく票数ひょうすうが他たを圧倒あっとうしており、投票とうひょう総数そうすうの45%がこの戦法せんぽうに投票とうひょうしている<ref group="注ちゅう">「画期的かっきてき。この戦法せんぽうがすごいのは、藤井ふじいさんがひとりでシステムを構築こうちくしたこと」(佐藤さとう康光やすみつ)「右みぎの銀ぎん桂香けいかを攻せめに使つかうという画期的かっきてきな構想こうそう。将棋しょうぎ界かいの流ながれを大おおきく変かえた戦法せんぽう」(谷川たにがわ浩司こうじ)「凄すごい発想はっそう。創世そうせい期きには藤井ふじいさんとよく当あたり、負まかされました(笑)かっこわらい。優秀ゆうしゅうさを身みをもって体感たいかん」(深浦ふかうら康やすし市し)「振ふり飛車ひしゃ側がわが居きょ玉だまで戦たたかうという発想はっそうは思おもいつかなかった居きょ飛車ひしゃ側がわの急戦きゅうせん策さくや、その他たの持久じきゅう戦せんに対応たいおうするアイデアをひとりで作つくり上あげたのは驚異きょうい的てきだ」(室岡むろおか克彦かつひこ)「連れん常つねの新しん戦法せんぽうは誰だれかのアイデアに対たいし、追つい走者そうしゃが現あらわれることで構築こうちくされていきます。藤井ふじいシステムの特異とくいな点てんは、第だい1期き竜王りゅうおう戦せんに見みられるように、すでに完成かんせいされたひとつの分野ぶんやとして提示ていじされたことです。藤井ふじいさん独自どくじの研究けんきゅう量りょう·新手あらての多おおさでも際立きわだっており、今後こんごこのような新しん研究けんきゅうは現あらわれないのではないでしょうか」(飯塚いいづか祐紀ゆうき)などで、若手わかて棋士きしに振ふり飛車ひしゃ党とうが多おおいのは、間違まちがいなくこの戦法せんぽうの影響えいきょうである、という指摘してきも数多かずおおく寄よせられた。「奨励しょうれい会かい有段者ゆうだんしゃ時代じだいに大だい流行りゅうこうしていた戦法せんぽう。おかげさまで卒業そつぎょうすることができました」(島本しまもと亮あきら)「振ふり飛車ひしゃの大だい革命かくめい。この戦法せんぽうのおかげでプロになった棋士きしも多おおいはずです」 (長岡ながおか裕也ゆうや)
「世代せだいが大おおきな影響えいきょうを受うけた戦法せんぽう。みんな、狂くるいそうなほど研究けんきゅうしました。将棋しょうぎの才能さいのうという面めんでは、藤井ふじい九きゅう段だんが現役げんえきで一番いちばんではないかと思おもいます」(大平おおひら武洋たけひろ)</ref>。
「世代せだいが大おおきな影響えいきょうを受うけた戦法せんぽう。みんな、狂くるいそうなほど研究けんきゅうしました。将棋しょうぎの才能さいのうという面めんでは、藤井ふじい九きゅう段だんが現役げんえきで一番いちばんではないかと思おもいます」(大平おおひら武洋たけひろ)</ref><ref>『将棋しょうぎ年鑑ねんかん2018　棋士きし名鑑めいかんアンケート』の「登場とうじょうしたときに最もっともびっくりした戦法せんぽうはなんですか?」でも多数たすうの棋士きしが「藤井ふじいシステム」を挙あげている。{{Cite web|和書わしょ|url=https://book.mynavi.jp/shogi/detail/id=115501|title=棋士きしをも驚愕きょうがくさせた新しん戦法せんぽうとは！？|accessdate=2023-02-04|publisher=マイナビ将棋しょうぎ情報じょうほう局きょく}}</ref>。


後述こうじゅつのように[[左ひだり美濃みの]]対策たいさくの藤井ふじいシステムと穴熊あなぐま対策たいさくの藤井ふじいシステムとがある。後者こうしゃの特徴とくちょうは、相手あいてが穴熊あなぐまを目指めざせばその前まえに戦たたかいを仕掛しかけ、穴熊あなぐまを放棄ほうきして急戦きゅうせんとなったときは囲がこいの堅かたさで優位ゆういに立たてることである。特定とくていの駒こまの動うごきというよりは自陣じじん全体ぜんたいの攻守こうしゅの駒こま組ぐみに特徴とくちょうがあり（「戦法せんぽう」ではなく）「システム」と呼よばれる由縁ゆえんでもある。
後述こうじゅつのように[[左ひだり美濃みの]]対策たいさくの藤井ふじいシステムと穴熊あなぐま対策たいさくの藤井ふじいシステムとがある。後者こうしゃの特徴とくちょうは、相手あいてが穴熊あなぐまを目指めざせばその前まえに戦たたかいを仕掛しかけ、穴熊あなぐまを放棄ほうきして急戦きゅうせんとなったときは囲がこいの堅かたさで優位ゆういに立たてることである。特定とくていの駒こまの動うごきというよりは自陣じじん全体ぜんたいの攻守こうしゅの駒こま組ぐみに特徴とくちょうがあり（「戦法せんぽう」ではなく）「システム」と呼よばれる由縁ゆえんでもある。
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そのため、左ひだり美濃みの・居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいしての対策たいさくを持もちつつ、居きょ飛車ひしゃの従来じゅうらいからある[[右みぎ銀ぎん急戦きゅうせん]]などにも備そなえた包括ほうかつ的てきな指さし方かたが必要ひつようとなった。藤井ふじいシステムにおいては、
そのため、左ひだり美濃みの・居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいしての対策たいさくを持もちつつ、居きょ飛車ひしゃの従来じゅうらいからある[[右みぎ銀ぎん急戦きゅうせん]]などにも備そなえた包括ほうかつ的てきな指さし方かたが必要ひつようとなった。藤井ふじいシステムにおいては、
*左ひだり美濃みのに対たいしては、理想りそう形がたを許ゆるさず、玉たま頭あたま戦せんに持もち込こむのを狙ねらう。
* 左ひだり美濃みのに対たいしては、理想りそう形がたを許ゆるさず、玉たま頭あたま戦せんに持もち込こむのを狙ねらう。
*居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいしては、そもそも穴熊あなぐまに組くませない、あるいは組くませる前まえに戦たたかいを起おこすのを狙ねらう。穴熊あなぐまに組くもうとする相手あいてに[[居きょ玉だま]]のまま攻撃こうげきをしかけたり、振ふり飛車ひしゃから居きょ飛車ひしゃに戻もどしたり、あるいは[[雀すずめ刺ざし]]のように端はしに勢力せいりょくを集中しゅうちゅうさせるといった戦たたかい方かたも含ふくむ。
* 居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいしては、そもそも穴熊あなぐまに組くませない、あるいは組くませる前まえに戦たたかいを起おこすのを狙ねらう。穴熊あなぐまに組くもうとする相手あいてに[[居きょ玉だま]]のまま攻撃こうげきをしかけたり、振ふり飛車ひしゃから居きょ飛車ひしゃに戻もどしたり、あるいは[[雀すずめ刺ざし]]のように端はしに勢力せいりょくを集中しゅうちゅうさせるといった戦たたかい方かたも含ふくむ。


[[小林こばやし健二けんじ (将棋しょうぎ棋士きし)|小林こばやし健二けんじ]]のスーパー四よん間あいだ飛車ひしゃや[[杉本すぎもと昌隆まさたか]]の研究けんきゅうなども下敷したじきとなっている。たとえば、『[[将棋しょうぎ世界せかい]]』2014年ねん11月がつ号ごう、「『ぼくはこうして強つよくなった』第だい2回かい、藤井ふじい猛たけし九きゅう段だんの巻まき」75～76ページで藤井ふじいはこう語かたっている。「第だい３図ず。自分じぶんが三さん段だん時代じだいに杉本すぎもとさんの将棋しょうぎを見みて、思おもい描えがいた局面きょくめん。ここで▲２五ご桂かつらと跳とんだらどうなるのか。平成へいせい４年ねん９月がつ、それを銀河ぎんが戦せんで神崎かんざき健けん二に五ご段だんを相手あいてに試ためした。（中略ちゅうりゃく）流ながれるような手順てじゅんで進すすんだ第だい４図ずは先手せんて優勢ゆうせい。▲２五ご桂かつらを見みて、解説かいせつ者しゃの中村なかむら修おさむ九きゅう段だんが『ひぇーっ』と叫さけんだくらい。当時とうじとしては斬新ざんしんな仕掛しかけだった。指さしてみると実際じっさいには難むずかしいということもわかり、その後ご指さすことはなかったが、藤井ふじいシステムの原形げんけいとして思おもい入いれのある一いち局きょくになった。」。
[[小林こばやし健二けんじ (将棋しょうぎ棋士きし)|小林こばやし健二けんじ]]のスーパー四よん間あいだ飛車ひしゃや[[杉本すぎもと昌隆まさたか]]の研究けんきゅうなども下敷したじきとなっている。たとえば、『[[将棋しょうぎ世界せかい]]』2014年ねん11月がつ号ごう、「『ぼくはこうして強つよくなった』第だい2回かい、藤井ふじい猛たけし九きゅう段だんの巻まき」75～76ページで藤井ふじいはこう語かたっている。「第だい３図ず。自分じぶんが三さん段だん時代じだいに杉本すぎもとさんの将棋しょうぎを見みて、思おもい描えがいた局面きょくめん。ここで▲２五ご桂かつらと跳とんだらどうなるのか。平成へいせい４年ねん９月がつ、それを銀河ぎんが戦せんで神崎かんざき健けん二に五ご段だんを相手あいてに試ためした。（中略ちゅうりゃく）流ながれるような手順てじゅんで進すすんだ第だい４図ずは先手せんて優勢ゆうせい。▲２五ご桂かつらを見みて、解説かいせつ者しゃの中村なかむら修おさむ九きゅう段だんが『ひぇーっ』と叫さけんだくらい。当時とうじとしては斬新ざんしんな仕掛しかけだった。指さしてみると実際じっさいには難むずかしいということもわかり、その後ご指さすことはなかったが、藤井ふじいシステムの原形げんけいとして思おもい入いれのある一いち局きょくになった。」。
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{{shogi diagram|tright
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|△神崎かんざき 持もち駒ごま なし
|△神崎かんざき 持もち駒ごま なし
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|▲藤井ふじい 持もち駒ごま なし<br />参考さんこう：藤井ふじい対たい神崎かんざき戦せん(1992年ねん銀河ぎんが戦せん)<br /> 図ずは▲4五ご歩ほまで}}
|▲藤井ふじい 持もち駒ごま なし<br>参考さんこう：藤井ふじい対たい神崎かんざき戦せん(1992年ねん銀河ぎんが戦せん)<br> 図ずは▲4五ご歩ほまで}}
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|△近藤こんどう 持もち駒ごま なし
|△近藤こんどう 持もち駒ごま なし
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|▲杉本すぎもと 持もち駒ごま なし<br />例れい：杉本すぎもと対たい[[近藤こんどう正和まさかず]]戦せん(1990年ねん三さん段だんリーグ)<br /> 図ずは▲3六ろく歩ほまで}}
|▲杉本すぎもと 持もち駒ごま なし<br>例れい：杉本すぎもと対たい[[近藤こんどう正和まさかず]]戦せん(1990年ねん三さん段だんリーグ)<br> 図ずは▲3六ろく歩ほまで}}
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|▲持もち駒ごま なし<br />参考さんこう局面きょくめん1}}
|▲持もち駒ごま なし<br>参考さんこう局面きょくめん1}}
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{{Shogi diagram|tright
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97行ぎょう目め: 97行ぎょう目め:
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|▲持もち駒ごま 飛ひ角かく銀ぎん歩ふ<br />参考さんこう局面きょくめん2}}
|▲持もち駒ごま 飛ひ角かく銀ぎん歩ふ<br>参考さんこう局面きょくめん2}}
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参考さんこう局面きょくめん1は左ひだり美濃みの対たい四よん間あいだ飛車ひしゃの一いち変化へんかで、初出しょしゅつは1993年ねん10月がつ1日にちのJT将棋しょうぎ杯はい 日本にっぽんシリーズ、先手せんて郷田ごうだ真しん隆たかし対たい後手ごて羽生はぶ善治よしはる戦せんである。後手ごて羽生はぶの△7三さん桂かつら-7一いち玉たま型がたに、先手せんて郷田ごうだが▲7五ご歩ほと仕掛しかけた有名ゆうめいな局面きょくめん。△同どう歩ふとさせてから▲2四よん歩ほ△同どう歩ふ▲同どう角かくとし、以下いかの手順てじゅんを示しめすと、△2二に飛ひ▲3三角みすみ成しげる△2八はち飛ひ成なり▲1一いち馬うま△7四よん飛ひ▲7六ろく歩ほ△同どう歩ふ▲同どう銀ぎん△7五ご歩ほ▲同どう銀ぎん△同どう飛ひ▲7六ろく歩ほ△7四よん飛ひ▲7五ご香こう△同どう飛ひ▲同どう歩ふ△2九きゅう竜りゅう▲7四よん歩ほ△7五ご桂かつら▲7七なな玉たま△8七なな銀ぎん▲6八はち玉たま△7八はち銀ぎん成なり▲同どう金かね△8九きゅう竜りゅう▲8三さん銀ぎん以下いか、先手せんての郷田ごうだが勝かつ。長手ながて数すう示しめしても、一連いちれんの手順てじゅんはほぼ変化へんかの余地よちがないとされ、この一いち局きょくは局きょく後ごの検討けんとうでも、その後ごの研究けんきゅうでも、先手せんて勝がちと結論けつろんづけられたというが「この結論けつろんを覆くつがえさない限かぎり、後手ごて番ばんで左ひだり美濃みの相手あいてに指さす手てがない」と藤井ふじいは振ふり返かえっており、この将棋しょうぎを詰つみまで研究けんきゅうした結果けっか、1年ねん後ごの94年ねん10月がつ2日にちに新手あらてを現あらわした。棋聖きせい戦せんの先手せんて室岡むろおか克彦かつひこ対たい藤井ふじい猛たけし戦せんで、藤井ふじいは前記ぜんき手順てじゅんの△8九きゅう竜りゅうに代かえて研究けんきゅう手しゅ△7六ろく香こうと打うち（参考さんこう局面きょくめん2）、以下いか▲7七なな桂かつら△6九きゅう銀ぎん▲7三さん歩ほ成しげる△同どう銀ぎん▲5五ご馬うま△7二に歩ほ▲7四よん桂かつら△7八はち銀ぎん成なり▲5七なな玉たま△8三さん金きん以下いか、後手ごて藤井ふじいが勝かっている。最後さいごの△8三さん金きんも藤井ふじいの研究けんきゅう手しゅで、その後ご、図ずの局面きょくめんは公式こうしき戦せんで現あらわれていない。
参考さんこう局面きょくめん1は左ひだり美濃みの対たい四よん間あいだ飛車ひしゃの一いち変化へんかで、初出しょしゅつは1993年ねん10月がつ1日にちのJT将棋しょうぎ杯はい 日本にっぽんシリーズ、先手せんて郷田ごうだ真しん隆たかし対たい後手ごて羽生はぶ善治よしはる戦せんである。後手ごて羽生はぶの△7三さん桂かつら-7一いち玉たま型がたに、先手せんて郷田ごうだが▲7五ご歩ほと仕掛しかけた有名ゆうめいな局面きょくめん。△同どう歩ふとさせてから▲2四よん歩ほ△同どう歩ふ▲同どう角かくとし、以下いかの手順てじゅんを示しめすと、△2二に飛ひ▲3三角みすみ成しげる△2八はち飛ひ成なり▲1一いち馬うま△7四よん飛ひ▲7六ろく歩ほ△同どう歩ふ▲同どう銀ぎん△7五ご歩ほ▲同どう銀ぎん△同どう飛ひ▲7六ろく歩ほ△7四よん飛ひ▲7五ご香こう△同どう飛ひ▲同どう歩ふ△2九きゅう竜りゅう▲7四よん歩ほ△7五ご桂かつら▲7七なな玉たま△8七なな銀ぎん▲6八はち玉たま△7八はち銀ぎん成なり▲同どう金かね△8九きゅう竜りゅう▲8三さん銀ぎん以下いか、先手せんての郷田ごうだが勝かつ。長手ながて数すう示しめしても、一連いちれんの手順てじゅんはほぼ変化へんかの余地よちがないとされ、この一いち局きょくは局きょく後ごの検討けんとうでも、その後ごの研究けんきゅうでも、先手せんて勝がちと結論けつろんづけられたというが「この結論けつろんを覆くつがえさない限かぎり、後手ごて番ばんで左ひだり美濃みの相手あいてに指さす手てがない」と藤井ふじいは振ふり返かえっており、この将棋しょうぎを詰つみまで研究けんきゅうした結果けっか、1年ねん後ごの94年ねん10月がつ2日にちに新手あらてを現あらわした。棋聖きせい戦せんの先手せんて室岡むろおか克彦かつひこ対たい藤井ふじい猛たけし戦せんで、藤井ふじいは前記ぜんき手順てじゅんの△8九きゅう竜りゅうに代かえて研究けんきゅう手しゅ△7六ろく香こうと打うち（参考さんこう局面きょくめん2）、以下いか▲7七なな桂かつら△6九きゅう銀ぎん▲7三さん歩ほ成しげる△同どう銀ぎん▲5五ご馬うま△7二に歩ほ▲7四よん桂かつら△7八はち銀ぎん成なり▲5七なな玉たま△8三さん金きん以下いか、後手ごて藤井ふじいが勝かっている。最後さいごの△8三さん金きんも藤井ふじいの研究けんきゅう手しゅで、その後ご、図ずの局面きょくめんは公式こうしき戦せんで現あらわれていない。


この一いち局きょくを[[島しま朗あきら]]九きゅう段だんが当時とうじの将棋しょうぎ雑誌ざっし に「藤井ふじい君くんが指さす四よん間あいだ飛車ひしゃは'''藤井ふじいシステム'''といえる」と書かいた。藤井ふじいシステムという言葉ことばが現あらわれた瞬間しゅんかんとして知しられる。その後ご藤井ふじいシステム一いち号ごう局きょくとされる後述こうじゅつの藤井ふじい猛たけし対たい井上いのうえ慶太けいた戦せん、95年ねん12月22日にちの順位じゅんい戦せんB級きゅう2組くみにつづく。
この一いち局きょくを[[島しま朗あきら]]九きゅう段だんが当時とうじの将棋しょうぎ雑誌ざっしに「藤井ふじい君くんが指さす四よん間あいだ飛車ひしゃは'''藤井ふじいシステム'''といえる」と書かいた。藤井ふじいシステムという言葉ことばが現あらわれた瞬間しゅんかんとして知しられる。その後ご藤井ふじいシステム一いち号ごう局きょくとされる後述こうじゅつの藤井ふじい猛たけし対たい井上いのうえ慶太けいた戦せん、95年ねん12月22日にちの順位じゅんい戦せんB級きゅう2組くみにつづく。


{{Shogi diagram|tright
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|▲持もち駒ごま なし<br />対たい左ひだり美濃みのの藤井ふじいシステム}}
|▲持もち駒ごま なし<br>対たい左ひだり美濃みのの藤井ふじいシステム}}


=== 対たい左ひだり美濃みのの藤井ふじいシステム ===
=== 対たい左ひだり美濃みのの藤井ふじいシステム ===

前述ぜんじゅつのとおり本来ほんらいの藤井ふじいシステムは左ひだり美濃みのに対抗たいこうするための研究けんきゅうであった。左ひだり美濃みの、特とくに天守閣てんしゅかく美濃みのは、その特異とくいな形かたちから振ふり飛車ひしゃにとって攻略こうりゃくが難むずかしかった。
前述ぜんじゅつのとおり本来ほんらいの藤井ふじいシステムは左ひだり美濃みのに対抗たいこうするための研究けんきゅうであった。左ひだり美濃みの、特とくに天守閣てんしゅかく美濃みのは、その特異とくいな形かたちから振ふり飛車ひしゃにとって攻略こうりゃくが難むずかしかった。


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=== 対たい穴熊あなぐまの藤井ふじいシステム ===
=== 対たい穴熊あなぐまの藤井ふじいシステム ===

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|▲持もち駒ごま なし<br />対たい穴熊あなぐまの藤井ふじいシステム<br />▲4五ご歩ほまで}}
|▲持もち駒ごま なし<br>対たい穴熊あなぐまの藤井ふじいシステム<br>▲4五ご歩ほまで}}
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|▲藤井ふじい猛たけし 持もち駒ごま なし<br />1995年度ねんどB級きゅう2組くみ順位じゅんい戦せん<br />第だい29手て▲2五ご桂かつらまで}}
|▲藤井ふじい猛たけし 持もち駒ごま なし<br>1995年度ねんどB級きゅう2組くみ順位じゅんい戦せん<br>第だい29手て▲2五ご桂かつらまで}}
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藤井ふじいは相手あいての穴熊あなぐま模様もようの将棋しょうぎにおいて杉本すぎもとの指さし方かたをヒントに前述ぜんじゅつの1992年ねん銀河ぎんが戦せんの神崎かんざき戦せんで、▲3九きゅう玉たま-3八はち銀ぎん型がたに構かまえて▲3七なな桂かつらから2五ご桂かつら、そして▲4五ご歩ほと角かくの利ききで攻せめる指さし方かたを披露ひろうしているが、こうした藤井ふじいシステムに類似るいじした居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいする振ふり飛車ひしゃの仕掛しかけでは、[[羽生はぶ善治よしはる]]の例れいが知しられる。1995年ねん10月がつの全日本ぜんにほんプロトーナメント、▲[[真田さなだ圭一けいいち]]対たい△羽生はぶ戦せんで、後手ごての羽生はぶは四よん間あいだ飛車ひしゃ△7一いち玉たま-7二に銀ぎん型がたから△7三さん桂かつらに構かまえ、△4五ご歩ほ～6五ご歩ほの急戦きゅうせんを仕掛しかけている。また、[[出雲いずも大社たいしゃ]]で行おこなわれた 1995年ねん11月の[[竜王りゅうおう戦せん]]第だい3局きょく、▲[[佐藤さとう康光やすみつ]]対たい△羽生はぶ戦せんでは前記ぜんき同様どうようの△7一いち玉たま-7二に銀ぎん型がたに△9三さん桂かつら～8五ご桂かつらで7七ななの角かくをどかして戦端せんたんを開ひらく指さし方かたをみせている。
藤井ふじいは相手あいての穴熊あなぐま模様もようの将棋しょうぎにおいて杉本すぎもとの指さし方かたをヒントに前述ぜんじゅつの1992年ねん銀河ぎんが戦せんの神崎かんざき戦せんで、▲3九きゅう玉たま-3八はち銀ぎん型がたに構かまえて▲3七なな桂かつらから2五ご桂かつら、そして▲4五ご歩ほと角かくの利ききで攻せめる指さし方かたを披露ひろうしているが、こうした藤井ふじいシステムに類似るいじした居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいする振ふり飛車ひしゃの仕掛しかけでは、[[羽生はぶ善治よしはる]]の例れいが知しられる。1995年ねん10月がつの全日本ぜんにほんプロトーナメント、▲[[真田さなだ圭一けいいち]]対たい△羽生はぶ戦せんで、後手ごての羽生はぶは四よん間あいだ飛車ひしゃ△7一いち玉たま-7二に銀ぎん型がたから△7三さん桂かつらに構かまえ、△4五ご歩ほ～6五ご歩ほの急戦きゅうせんを仕掛しかけている。また、[[出雲いずも大社たいしゃ]]で行おこなわれた 1995年ねん11月の[[竜王りゅうおう戦せん]]第だい3局きょく、▲[[佐藤さとう康光やすみつ]]対たい△羽生はぶ戦せんでは前記ぜんき同様どうようの△7一いち玉たま-7二に銀ぎん型がたに△9三さん桂かつら～8五ご桂かつらで7七ななの角かくをどかして戦端せんたんを開ひらく指さし方かたをみせている。
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|▲屋敷やしき伸之のぶゆき 持もち駒ごま なし<br />1997年度ねんどNHK杯はい戦せん<br />第だい31手て▲4五ご歩ほまで}}
|▲屋敷やしき伸之のぶゆき 持もち駒ごま なし<br>1997年度ねんどNHK杯はい戦せん<br>第だい31手て▲4五ご歩ほまで}}


しかしすぐに有名ゆうめいになることはなく、1997年度ねんどの[[NHK杯はいテレビ将棋しょうぎトーナメント|NHK杯はい戦せん]]で[[屋敷やしき伸之のぶゆき]]が[[羽生はぶ善治よしはる]]に対たいして類似るいじの形かたちを指さしたときは、羽生はぶが自じ玉たまのコビンを攻せめられ思おもうように居い飛車ひしゃ穴熊あなぐまに組くめずに長考ちょうこうし、解説かいせつの[[田中たなか寅彦とらひこ]]もうなったが、ようやく指さした羽生はぶの次つぎの一いち手ては△3二に玉たまと戻もどす手てであった<ref group="注ちゅう">[[田中たなか寅彦とらひこ]]（居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまを得意とくいとしていた）は、「何なにか変へんだな」と何なん度どもうなった。羽生はぶの△3二に玉たまを見みて、司会しかい・き手きての[[藤森ふじもり奈津子なつこ]]は思おもわず「あ！戻もどった！」と声こえを上あげた。</ref>。
しかしすぐに有名ゆうめいになることはなく、1997年度ねんどの[[NHK杯はいテレビ将棋しょうぎトーナメント|NHK杯はい戦せん]]で[[屋敷やしき伸之のぶゆき]]が[[羽生はぶ善治よしはる]]に対たいして類似るいじの形かたちを指さしたときは、羽生はぶが自じ玉たまのコビンを攻せめられ思おもうように居い飛車ひしゃ穴熊あなぐまに組くめずに長考ちょうこうし、解説かいせつの[[田中たなか寅彦とらひこ]]もうなったが、ようやく指さした羽生はぶの次つぎの一いち手ては△3二に玉たまと戻もどす手てであった<ref group="注ちゅう">[[田中たなか寅彦とらひこ]]（居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまを得意とくいとしていた）は、「何なにか変へんだな」と何なん度どもうなった。羽生はぶの△3二に玉たまを見みて、司会しかい・き手きての[[藤森ふじもり奈津子なつこ]]は思おもわず「あ！戻もどった！」と声こえを上あげた。</ref>。
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|▲ 持もち駒ごま 歩ふ<br />対たい藤井ふじいシステム急戦きゅうせん例れい<br />△3三さん銀ぎんまで}}
|▲ 持もち駒ごま なし<br>対たい藤井ふじいシステム急戦きゅうせん例れい<br>△3三さん銀ぎんまで}}
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|▲ 持もち駒ごま なし<br />対たい藤井ふじいシステム急戦きゅうせん例れい<br />△7四よん歩ほまで}}
|▲ 持もち駒ごま なし<br>対たい藤井ふじいシステム急戦きゅうせん例れい<br>△7四よん歩ほまで}}
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藤井ふじいシステムは、[[居きょ飛車ひしゃ]]側がわが[[穴熊あなぐま囲がこい]]でも急戦きゅうせんを仕掛しかけてきても、どちらにも対応たいおうできる戦法せんぽうとして猛威もういをふるった。対抗たいこう策さくとして[[ミレニアム囲がこい]]などの新しん戦法せんぽうが採用さいようされることも増ふえたが、[[四よん間あいだ飛車ひしゃ]]側がわも互角ごかく以上いじょうの対応たいおうを見みせ大だい流行りゅうこうすることはなかった。また居きょ飛車ひしゃ党とうの棋士きしが有効ゆうこうな対策たいさくを見みいだせずに藤井ふじいに対たいして[[相あい振ふり飛車ひしゃ]]を採用さいようする機会きかいが増ふえる<ref>1998年度ねんど竜王りゅうおう戦せん第だい2局きょくの谷川たにがわなど。</ref>など、藤井ふじいシステムへの対策たいさくは2000年ねん前後ぜんこうにおいて居きょ飛車ひしゃ党とうにとっての大おおきな課題かだいであった。
藤井ふじいシステムは、[[居きょ飛車ひしゃ]]側がわが[[穴熊あなぐま囲がこい]]でも急戦きゅうせんを仕掛しかけてきても、どちらにも対応たいおうできる戦法せんぽうとして猛威もういをふるった。対抗たいこう策さくとして[[ミレニアム囲がこい]]などの新しん戦法せんぽうが採用さいようされることも増ふえたが、[[四よん間あいだ飛車ひしゃ]]側がわも互角ごかく以上いじょうの対応たいおうを見みせ大だい流行りゅうこうすることはなかった。また居きょ飛車ひしゃ党とうの棋士きしが有効ゆうこうな対策たいさくを見みいだせずに藤井ふじいに対たいして[[相あい振ふり飛車ひしゃ]]を採用さいようする機会きかいが増ふえる<ref>1998年度ねんど竜王りゅうおう戦せん第だい2局きょくの谷川たにがわなど。</ref>など、藤井ふじいシステムへの対策たいさくは2000年ねん前後ぜんこうにおいて居きょ飛車ひしゃ党とうにとっての大おおきな課題かだいであった。
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|▲ 持もち駒ごま 歩ふ<br />対たい藤井ふじいシステム急戦きゅうせん例れい<br />△4五ご歩ほまで}}
|▲ 持もち駒ごま 歩ふ<br>対たい藤井ふじいシステム急戦きゅうせん例れい<br>△4五ご歩ほまで}}


藤井ふじい自身じしんも模索もさくを続つづけており、2008年ねんには[[矢倉やくら囲がこい|矢倉やくら]]も実戦じっせんで試ためすようになった（ただし通常つうじょうの矢倉やぐらの定跡じょうせき手順てじゅんではなく、[[相あい振ふり飛車ひしゃ]]も視野しやに入いれたものである）ため、当時とうじの『[[週刊しゅうかん将棋しょうぎ]]』紙しに「矢倉やくら党とうに転向てんこう」と紹介しょうかいされたこともあった<ref>『[[週刊しゅうかん将棋しょうぎ]]』2008年ねん8月がつ6日にち、7ページ。</ref>。藤井ふじい自身じしん、藤井ふじいシステムを「ファーム落おち」と表現ひょうげんしているが、藤井ふじいシステムを捨すてたわけではなく「いつ一軍いちぐんで投なげさせるか、わかりませんよ」としている<ref>勝又かつまた『最新さいしん戦法せんぽうの話はなし』116ページ。</ref>。事実じじつ、藤井ふじいは2012年ねんに先手せんて後手ごての双方そうほうで複ふく数すう回かい藤井ふじいシステムを指さし、第だい53期き[[王位おうい戦せん (将棋しょうぎ)|王位おうい戦せん]]では、挑戦ちょうせん者しゃ決定けっていリーグで[[高橋たかはし道雄みちお]]と[[牧野まきの光則みつのり]]を、挑戦ちょうせん者しゃ決定けってい戦せんでは[[渡辺わたなべ明あきら_(棋士きし)|渡辺わたなべ明あきら]]を破やぶって羽生はぶ王位おういへの挑戦ちょうせん権けんを得えた。2014年ねん5月がつ12日にちの王位おうい戦せんで居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまの木村きむらを終盤しゅうばんもたつきはあったものの撃破げきは。A級きゅうから陥落かんらくしたものの、研究けんきゅうは怠おこたっていないところを見みせた。
藤井ふじい自身じしんも模索もさくを続つづけており、2008年ねんには[[矢倉やくら囲がこい|矢倉やくら]]も実戦じっせんで試ためすようになった（ただし通常つうじょうの矢倉やぐらの定跡じょうせき手順てじゅんではなく、[[相あい振ふり飛車ひしゃ]]も視野しやに入いれたものである）ため、当時とうじの『[[週刊しゅうかん将棋しょうぎ]]』紙しに「矢倉やくら党とうに転向てんこう」と紹介しょうかいされたこともあった<ref>『[[週刊しゅうかん将棋しょうぎ]]』2008年ねん8月がつ6日にち、7ページ。</ref>。藤井ふじい自身じしん、藤井ふじいシステムを「ファーム落おち」と表現ひょうげんしているが、藤井ふじいシステムを捨すてたわけではなく「いつ一軍いちぐんで投なげさせるか、わかりませんよ」としている<ref>勝又かつまた『最新さいしん戦法せんぽうの話はなし』116ページ。</ref>。事実じじつ、藤井ふじいは2012年ねんに先手せんて後手ごての双方そうほうで複ふく数すう回かい藤井ふじいシステムを指さし、第だい53期き[[王位おうい戦せん (将棋しょうぎ)|王位おうい戦せん]]では、挑戦ちょうせん者しゃ決定けっていリーグで[[高橋たかはし道雄みちお]]と[[牧野まきの光則みつのり]]を、挑戦ちょうせん者しゃ決定けってい戦せんでは[[渡辺わたなべ明あきら_(棋士きし)|渡辺わたなべ明あきら]]を破やぶって羽生はぶ王位おういへの挑戦ちょうせん権けんを得えた。2014年ねん5月がつ12日にちの王位おうい戦せんで居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまの木村きむらを終盤しゅうばんもたつきはあったものの撃破げきは。A級きゅうから陥落かんらくしたものの、研究けんきゅうは怠おこたっていないところを見みせた。
その後ご、2015年ねん頃ごろから後手ごて番ばん藤井ふじいシステムが復権ふっけん傾向けいこうにあり、2016年ねんには第だい24期き銀河ぎんが戦せんで藤井ふじいが優勝ゆうしょうする原動力げんどうりょくとなり<ref group="注ちゅう">決勝けっしょうトーナメントでは先手せんて番ばん、後手ごて番ばん共ともにすべて藤井ふじいシステムを用もちいた。</ref>、第だい64期き王座おうざ戦せん五ご番ばん勝負しょうぶ第だい2局きょくなど、他たの対局たいきょくでも現あらわれるようになっている。
その後ご、2015年ねん頃ごろから後手ごて番ばん藤井ふじいシステムが復権ふっけん傾向けいこうにあり、2016年ねんには第だい24期き銀河ぎんが戦せんで藤井ふじいが優勝ゆうしょうする原動力げんどうりょくとなり<ref group="注ちゅう">決勝けっしょうトーナメントでは先手せんて番ばん、後手ごて番ばん共ともにすべて藤井ふじいシステムを用もちいた。</ref>、第だい64期き王座おうざ戦せん五ご番ばん勝負しょうぶ第だい2局きょく<ref group="注ちゅう">後手ごて番ばんの羽生はぶ善治よしはる王座おうざが挑戦ちょうせん者しゃの[[糸谷いとたに哲郎てつろう]]八はち段だんに対たいし採用さいよう。糸谷いとたにが巧たくみに対応たいおうし一いち時じは優位ゆういに立たったが、終盤しゅうばんで羽生はぶが逆転ぎゃくてん勝がちをおさめた。</ref>など、他たの対局たいきょくでも現あらわれるようになっている。


このような変遷へんせんを経へた現在げんざいでの四よん間あいだ飛車ひしゃ対策たいさくでは、穴熊あなぐまや急戦きゅうせんに加くわえ上述じょうじゅつのミレニアム囲がこいや[[増田ますだ康宏やすひろ]]が多用たようし注目ちゅうもくされた銀ぎん冠かんむり穴熊あなぐまなどで藤井ふじいシステムを警戒けいかいすることで開発かいはつされた戦法せんぽうが増ふえている。特とくに高たかく構かまえる左ひだり美濃みのでは2五ご歩ほから4五ご歩ほで攻せめの取とっ掛かかりを与あたえることになるので、陣形じんけいの不備ふびを補おぎなう手段しゅだんとして[[飯島いいじま栄治えいじ#飯島いいじま流りゅう引びき角かく戦法せんぽう|飯島いいじま流りゅう引びき角かく戦法せんぽう]]をはじめ陣形じんけいを低ひくく構かまえる角すみ道みち不ふ突左美濃みの型がたが開発かいはつされていった。この他た相しょう振ふり飛車ひしゃも定跡じょうせきが整備せいびされ角かく道どうを止とめる振ふり飛車ひしゃへの有力ゆうりょくな対策たいさくとみなされるようになるなど、藤井ふじいシステム以前いぜんの穴熊あなぐま一辺倒いっぺんとうだった時代じだいから比くらべるとかなりの多様たよう化かを見みせている。
このような変遷へんせんを経へた現在げんざいでの四よん間あいだ飛車ひしゃ対策たいさくでは、穴熊あなぐまや急戦きゅうせんに加くわえ上述じょうじゅつのミレニアム囲がこいや[[増田ますだ康宏やすひろ]]が多用たようし注目ちゅうもくされた銀ぎん冠かんむり穴熊あなぐまなどで藤井ふじいシステムを警戒けいかいすることで開発かいはつされた戦法せんぽうが増ふえている。特とくに高たかく構かまえる左ひだり美濃みのでは2五ご歩ほから4五ご歩ほで攻せめの取とっ掛かかりを与あたえることになるので、陣形じんけいの不備ふびを補おぎなう手段しゅだんとして[[飯島いいじま栄治えいじ#飯島いいじま流りゅう引びき角かく戦法せんぽう|飯島いいじま流りゅう引びき角かく戦法せんぽう]]をはじめ陣形じんけいを低ひくく構かまえる角すみ道みち不ふ突左美濃みの型がたが開発かいはつされていった。この他た相しょう振ふり飛車ひしゃも定跡じょうせきが整備せいびされ角かく道どうを止とめる振ふり飛車ひしゃへの有力ゆうりょくな対策たいさくとみなされるようになるなど、藤井ふじいシステム以前いぜんの穴熊あなぐま一辺倒いっぺんとうだった時代じだいから比くらべるとかなりの多様たよう化かを見みせている。
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|▲佐藤さとう天たかし彦 持もち駒ごま なし<br />2009年度ねんどNHK杯はい戦せん<br />第だい23手て▲6八はち角かくまで}}
|▲佐藤さとう天たかし彦 持もち駒ごま なし<br>2009年度ねんどNHK杯はい戦せん<br>第だい23手て▲6八はち角かくまで}}
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また近年きんねんでは、本来ほんらいの四よん間あいだ飛車ひしゃだけではなく、三さん間あいだ飛車ひしゃにおいても居い玉だまのまま戦たたかう藤井ふじいシステム調ちょうの戦法せんぽうが採用さいようされることがある。
また近年きんねんでは、本来ほんらいの四よん間あいだ飛車ひしゃだけではなく、三さん間あいだ飛車ひしゃにおいても居い玉だまのまま戦たたかう藤井ふじいシステム調ちょうの戦法せんぽうが採用さいようされることがある。
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この戦法せんぽうの特長とくちょうとしては、[[四よん間あいだ飛車ひしゃ]]藤井ふじいシステムに比くらべて角かく頭あたまを狙ねらう急戦きゅうせんに強つよい点てん、および△5二に金きん左ひだりを保留ほりゅうすることにより展開てんかいによっては[[袖そで飛車ひしゃ]]・[[右みぎ四よん間あいだ飛車ひしゃ]]・[[中ちゅう飛車ひしゃ]]などへ振ふり直なおし[[居きょ飛車ひしゃ]]調ちょうの戦たたかいへ転換てんかんすることが容易よういである点てんが挙あげられる。一方いっぽうで△4五ご歩ほの威力いりょくが減げんじていることや、ミレニアム模様もようで▲6八角はっかくと▲2四よん歩ほの仕掛しかけを狙ねらわれた場合ばあいに△2二に飛ひと受うけることを強要きょうようされる<ref group="注ちゅう">初号しょごう局きょくにおける[[佐藤さとう天たかし彦]]の対策たいさくでもある。その後ご[[佐藤さとう康光やすみつ]]が2016年度ねんどNHK杯はい戦せん決勝けっしょうにおいて類似るいじ形がたを佐藤さとう和俊かずとしに対たいして採用さいようした際さい、佐藤さとう和俊かずとしは△2二に飛ひと受うけずに戦たたかい不利ふりとなったが、後のちに▲2四よん歩ほの仕掛しかけを失念しつねんしていたと語かたった。</ref>などのデメリットがある。
この戦法せんぽうの特長とくちょうとしては、[[四よん間あいだ飛車ひしゃ]]藤井ふじいシステムに比くらべて角かく頭あたまを狙ねらう急戦きゅうせんに強つよい点てん、および△5二に金きん左ひだりを保留ほりゅうすることにより展開てんかいによっては[[袖そで飛車ひしゃ]]・[[右みぎ四よん間あいだ飛車ひしゃ]]・[[中ちゅう飛車ひしゃ]]などへ振ふり直なおし[[居きょ飛車ひしゃ]]調ちょうの戦たたかいへ転換てんかんすることが容易よういである点てんが挙あげられる。一方いっぽうで△4五ご歩ほの威力いりょくが減げんじていることや、ミレニアム模様もようで▲6八角はっかくと▲2四よん歩ほの仕掛しかけを狙ねらわれた場合ばあいに△2二に飛ひと受うけることを強要きょうようされる<ref group="注ちゅう">初号しょごう局きょくにおける[[佐藤さとう天たかし彦]]の対策たいさくでもある。その後ご[[佐藤さとう康光やすみつ]]が2016年度ねんどNHK杯はい戦せん決勝けっしょうにおいて類似るいじ形がたを佐藤さとう和俊かずとしに対たいして採用さいようした際さい、佐藤さとう和俊かずとしは△2二に飛ひと受うけずに戦たたかい不利ふりとなったが、後のちに▲2四よん歩ほの仕掛しかけを失念しつねんしていたと語かたった。</ref>などのデメリットがある。


5筋すじの歩ふを突つかない居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいして、角かく筋すじで相手あいて玉だまを睨にらみつつ右みぎ側がわの桂馬けいまと銀ぎんを繰くり出だし一気いっきに端はし攻ぜめを狙ねらう三さん間あいだ飛車ひしゃは「トマホーク」として知しられる。2016年ねんに奨励しょうれい会かいの三さん段だんリーグで[[山本やまもと博志ひろし]]が[[藤井ふじい聡さとし太ふとし]]に対たいして採用さいようし快勝かいしょうした例れいなどがある。
5筋すじの歩ふを突つかない居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいして、角かく筋すじで相手あいて玉だまを睨にらみつつ自じ玉たま側がわの桂馬けいまと香車きょうしゃで一気いっきに端はし攻ぜめを狙ねらう三さん間あいだ飛車ひしゃは「トマホーク」として知しられる。2016年ねんに奨励しょうれい会かいの三さん段だんリーグで[[山本やまもと博志ひろし]]が[[藤井ふじい聡さとし太ふとし]]に対たいして採用さいようし快勝かいしょうした例れいなどがある。


::{{see also|トマホーク (将棋しょうぎ)}}
::{{see also|トマホーク (将棋しょうぎ)}}


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== 藤井ふじいシステムのエピソード ==
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|△ 持もち駒ごま なし
* 藤井ふじい猛たけしは「重要じゅうようなのは動機どうきがあるかどうかなんです。私わたしは新しん戦法せんぽうを編あみ出だしたくて『藤井ふじいシステム』を指さしたわけではないです。相手あいてに勝かつために、必要ひつよう性せいがあって『藤井ふじいシステム』を考かんがえたのです。竜王りゅうおうになった時ときに『絶対ぜったい的てきな強つよさは求もとめない』と話はなしているように、相手あいてに勝かつためにはどうすればいいのか、という思想しそうで指さしてきたので、（藤井ふじいシステムには）コンピュータ的てきな強つよさは求もとめないです。」とインタビューで語かたっている<ref name="hochi1114">{{Cite web|和書わしょ|title=元もと竜王りゅうおう・藤井ふじい猛たけし九きゅう段だん、藤井ふじい聡さとし太ふとし新しん竜王りゅうおうを語かたる「藤井ふじいさんに新しん戦法せんぽうは要いらない」 |url=https://hochi.news/articles/20211113-OHT1T51233.html |website=スポーツ報知ほうち |date=2021-11-14 |access-date=2023-10-29 |language=ja}}</ref>。
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* 今後こんご、[[藤井ふじい聡さとし太ふとし]]と対戦たいせんすることになったら、藤井ふじい猛たけしは「藤井ふじいシステムを指さそうと思おもいます」と語かたっている<ref name="hochi1114"/>。
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|▲ 持もち駒ごま 歩ふ<br />対たい藤井ふじいシステム急戦きゅうせん例れい<br />▲1九きゅう飛ひまで}}
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== 脚注きゃくちゅう ==
== 脚注きゃくちゅう ==
314行ぎょう目め: 303行ぎょう目め:
== 外部がいぶリンク ==
== 外部がいぶリンク ==
* [https://web.archive.org/web/20030305213226/http://www.kansai-shogi.com/senpou/fujii.htm 関西かんさい将棋しょうぎ会館かいかん ビギナーズ戦法せんぽう事典じてん 藤井ふじいシステム]
* [https://web.archive.org/web/20030305213226/http://www.kansai-shogi.com/senpou/fujii.htm 関西かんさい将棋しょうぎ会館かいかん ビギナーズ戦法せんぽう事典じてん 藤井ふじいシステム]
* [http://www.shogitown.com/book/consi/05fujii.html 将棋しょうぎタウン 勝手かってに考察こうさつ文ぶん 藤井ふじいシステム]
* {{Wayback|url=http://www.shogitown.com/book/consi/05fujii.html |title=将棋しょうぎタウン 勝手かってに考察こうさつ文ぶん 藤井ふじいシステム|date=20120414110850}}


{{将棋しょうぎの戦法せんぽう}}
{{将棋しょうぎの戦法せんぽう}}

2024年ねん4月がつ27日にち (土)ど 18:15時点じてんにおける最新さいしん版ばん

将棋しょうぎ > 将棋しょうぎの戦法せんぽう > 振ふり飛車ひしゃ > 四よん間あいだ飛車ひしゃ > 藤井ふじいシステム
△持もち駒ごま 歩ふ
987654321 
香こう桂かつら   金きむ銀ぎん桂かつら 一いち
   銀ぎん金きむ  王おう香こう二に
歩ふ 歩ふ歩ふ 歩ふ角かく歩ふ歩ふ三さん
 飛ひ       四よん
 歩ふ  歩ふ銀ぎん歩ふ桂かつら 五ご
  歩ふ歩ふ 歩ふ  歩ふ六ろく
歩ふ歩ふ角かく 歩ふ  歩ふ 七なな
   飛ひ  銀ぎん  八はち
香こう桂かつら 金きむ玉たま金きむ  香こう九きゅう
▲持もち駒ごま なし
藤井ふじいシステムの一いち例れい

藤井ふじいシステム（ふじいシステム）は、将棋しょうぎの戦法せんぽうの一ひとつ。四よん間あいだ飛車ひしゃの一種いっしゅである。プロ棋士きしの藤井ふじい猛たけしが考案こうあんした[注ちゅう 1]。これにより藤井ふじいは1997年ねんの将棋しょうぎ大賞たいしょうの升田ますだ幸三こうぞう賞しょうを受賞じゅしょう[1]。また、三さん間あいだ飛車ひしゃにも応用おうようすることができる。

概要がいよう

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藤井ふじい猛たけしが考案こうあんした四よん間あいだ飛車ひしゃの戦法せんぽうである。特とくに居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐま対策たいさくとしての藤井ふじいシステムは非常ひじょうに注目ちゅうもくされ、藤井ふじい自身じしんも第一人者だいいちにんしゃとして活躍かつやくした。

『将棋しょうぎ世界せかい』2007年ねん9月がつ号ごうの企画きかく「現役げんえき棋士きしが選えらぶ衝撃しょうげきの新手あらて新しん戦法せんぽうベスト10!」で第だい1位いとなる。獲得かくとく票数ひょうすうが他たを圧倒あっとうしており、投票とうひょう総数そうすうの45%がこの戦法せんぽうに投票とうひょうしている[注ちゅう 2][2]。

後述こうじゅつのように左ひだり美濃みの対策たいさくの藤井ふじいシステムと穴熊あなぐま対策たいさくの藤井ふじいシステムとがある。後者こうしゃの特徴とくちょうは、相手あいてが穴熊あなぐまを目指めざせばその前まえに戦たたかいを仕掛しかけ、穴熊あなぐまを放棄ほうきして急戦きゅうせんとなったときは囲がこいの堅かたさで優位ゆういに立たてることである。特定とくていの駒こまの動うごきというよりは自陣じじん全体ぜんたいの攻守こうしゅの駒こま組ぐみに特徴とくちょうがあり（「戦法せんぽう」ではなく）「システム」と呼よばれる由縁ゆえんでもある。

従来じゅうらいは居きょ飛車ひしゃ側がわが作戦さくせんとして持久じきゅう戦せんを選択せんたくする際さい、5筋すじ位取くらいどり・玉たま頭あたま位取くらいどりまたは船ふね囲がこいから矢倉やくら囲がこいなどへの発展はってん系けいの囲がこいを選択せんたくすることになり、特とくに横よこからの寄よせ合あいには脆もろさがあった。しかし左ひだり美濃みの・居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまの発達はったつにより、居きょ飛車ひしゃが振ふり飛車ひしゃと同等どうとうかそれ以上いじょうの玉たまの堅かたさを手てに入いれたため、振ふり飛車ひしゃの勝率しょうりつが極端きょくたんに下さがった。トップ棋士きしになるとこの傾向けいこうが顕著けんちょで、羽生はぶ善治よしはる・森内もりうち俊之としゆき・佐藤さとう康光やすみつ・渡辺わたなべ明あきらが居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまを指さしたときの勝率しょうりつ（先後せんご別べつ）は、佐藤さとうの後手ごて番ばんでの0.588を除のぞいて7割わり以上いじょうの高こう勝率しょうりつであり、羽生はぶは先後せんご合計ごうけいでの勝率しょうりつが9割わりを超こえていた[3]（通常つうじょう、先手せんて番ばんの勝率しょうりつは5割わりを少すこし超こす程度ていどといわれている）。

そのため、左ひだり美濃みの・居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいしての対策たいさくを持もちつつ、居きょ飛車ひしゃの従来じゅうらいからある右みぎ銀ぎん急戦きゅうせんなどにも備そなえた包括ほうかつ的てきな指さし方かたが必要ひつようとなった。藤井ふじいシステムにおいては、

  • 左ひだり美濃みのに対たいしては、理想りそう形がたを許ゆるさず、玉たま頭あたま戦せんに持もち込こむのを狙ねらう。
  • 居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいしては、そもそも穴熊あなぐまに組くませない、あるいは組くませる前まえに戦たたかいを起おこすのを狙ねらう。穴熊あなぐまに組くもうとする相手あいてに居きょ玉だまのまま攻撃こうげきをしかけたり、振ふり飛車ひしゃから居きょ飛車ひしゃに戻もどしたり、あるいは雀すずめ刺ざしのように端はしに勢力せいりょくを集中しゅうちゅうさせるといった戦たたかい方かたも含ふくむ。

小林こばやし健二けんじのスーパー四よん間あいだ飛車ひしゃや杉本すぎもと昌隆まさたかの研究けんきゅうなども下敷したじきとなっている。たとえば、『将棋しょうぎ世界せかい』2014年ねん11月がつ号ごう、「『ぼくはこうして強つよくなった』第だい2回かい、藤井ふじい猛たけし九きゅう段だんの巻まき」75～76ページで藤井ふじいはこう語かたっている。「第だい３図ず。自分じぶんが三さん段だん時代じだいに杉本すぎもとさんの将棋しょうぎを見みて、思おもい描えがいた局面きょくめん。ここで▲２五ご桂かつらと跳とんだらどうなるのか。平成へいせい４年ねん９月がつ、それを銀河ぎんが戦せんで神崎かんざき健けん二に五ご段だんを相手あいてに試ためした。（中略ちゅうりゃく）流ながれるような手順てじゅんで進すすんだ第だい４図ずは先手せんて優勢ゆうせい。▲２五ご桂かつらを見みて、解説かいせつ者しゃの中村なかむら修おさむ九きゅう段だんが『ひぇーっ』と叫さけんだくらい。当時とうじとしては斬新ざんしんな仕掛しかけだった。指さしてみると実際じっさいには難むずかしいということもわかり、その後ご指さすことはなかったが、藤井ふじいシステムの原形げんけいとして思おもい入いれのある一いち局きょくになった。」。

△神崎かんざき 持もち駒ごま なし
987654321 
香こう桂かつら   金きむ銀ぎん桂かつら 一いち
 飛ひ     王おう香こう二に
歩ふ 歩ふ歩ふ銀ぎん金きむ 歩ふ歩ふ三さん
    歩ふ歩ふ歩ふ角かく 四よん
 歩ふ 歩ふ 歩ふ 桂かつら 五ご
  歩ふ   歩ふ  六ろく
歩ふ歩ふ角かく銀ぎん歩ふ  歩ふ歩ふ七なな
   飛ひ金きむ 銀ぎん  八はち
香こう桂かつら   金きむ玉たま 香こう九きゅう
▲藤井ふじい 持もち駒ごま なし
参考さんこう：藤井ふじい対たい神崎かんざき戦せん(1992年ねん銀河ぎんが戦せん)
図ずは▲4五ご歩ほまで
△近藤こんどう 持もち駒ごま なし
987654321 
香こう桂かつら   金きむ銀ぎん桂かつら香こう一いち
 飛ひ  金きむ 王おう角かく 二に
歩ふ 歩ふ歩ふ銀ぎん歩ふ 歩ふ歩ふ三さん
 歩ふ  歩ふ 歩ふ  四よん
         五ご
  歩ふ歩ふ 歩ふ歩ふ  六ろく
歩ふ歩ふ角かく 歩ふ  歩ふ歩ふ七なな
  銀ぎん飛ひ  銀ぎん  八はち
香こう桂かつら 金きむ 金きむ玉たま桂かつら香こう九きゅう
▲杉本すぎもと 持もち駒ごま なし
例れい：杉本すぎもと対たい近藤こんどう正和まさかず戦たたかえ(1990年ねん三さん段だんリーグ)
図ずは▲3六ろく歩ほまで

変遷へんせん

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振ふり飛車ひしゃ党とうの減少げんしょう

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藤井ふじいシステムが広ひろく知しられるようになる前まえ、居きょ飛車ひしゃ側がわは対たい振ふり飛車ひしゃ戦せんにおいて急戦きゅうせんに自信じしんがない場合ばあい、左ひだり美濃みの・居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまで玉たまを固かたく囲かこう戦法せんぽうが有効ゆうこうとされていた。これらの囲がこいは振ふり飛車ひしゃ側がわの美濃みの囲がこいと堅かたさが同おなじかそれ以上いじょうで、しかも持久じきゅう戦せん模様もようになると居きょ飛車ひしゃ側がわからのみ仕掛しかけの権利けんりがあった。これに対たいして振ふり飛車ひしゃ側がわの有力ゆうりょくな対策たいさくがなく、振ふり飛車ひしゃを指さす棋士きしが減少げんしょうした。青野あおの照あきら市しはこの頃ころの状況じょうきょうを、森下もりした卓たくの言葉ことばを引用いんようして「矢倉やぐらの研究けんきゅうが忙いそがしいから、振ふり飛車ひしゃには穴熊あなぐまと左ひだり美濃みのを交互こうごにやってればいいんだ」と表現ひょうげんした[4]。藤井ふじい自身じしんも「居きょ飛車ひしゃ党とうは矢倉やぐらの研究けんきゅうが忙いそがしいので、振ふり飛車ひしゃには左ひだり美濃みのと居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまを交互こうごにやっておけばいい、という言葉ことばがあったくらいだ」と当時とうじを回顧かいこし述懐じゅっかいしている。

振ふり飛車ひしゃ（四よん間あいだ飛車ひしゃ）党とうであった藤井ふじいも居い飛車ひしゃ穴熊あなぐまと左ひだり美濃みのへの対応たいおうには苦慮くりょし、対たい左ひだり美濃みの戦せんにおいて振ふり飛車ひしゃ側がわも銀ぎん冠かんむりを見みせて、その囲がこいの途中とちゅう（2七なな銀ぎん・3九きゅう玉たま・4七なな金きん・4九きゅう金きんの状態じょうたい）で飛車ひしゃを右翼うよくに戻もどして左ひだり美濃みのの玉たま頭あたまに殺到さっとうする構想こうそうを試ためしたことがある（1995年ねん全日本ぜんにほんプロ将棋しょうぎトーナメント(のちの朝日あさひオープン将棋しょうぎ選手権せんしゅけん)、藤井ふじい猛たけし対たい行方なみかた尚史ひさし戦せん）。この将棋しょうぎは河口かわぐち俊彦としひこの『新しん対局たいきょく日誌にっし』に取とり上あげられており、藤井ふじいはこの構想こうそうを林葉はやしば直子なおこが指さしていたものだとしている[5]。これは藤井ふじいシステムが登場とうじょうする前まえの将棋しょうぎであるが、左ひだり美濃みのの玉たま頭あたまを攻せめる構想こうそうは共通きょうつうしている。

△持もち駒ごま なし
987654321 
香こう 王おう金きむ   桂かつら香こう一いち
  銀ぎん 金きむ飛ひ   二に
  桂かつら 歩ふ銀ぎん角かく歩ふ歩ふ三さん
歩ふ歩ふ歩ふ   歩ふ  四よん
  歩ふ歩ふ 歩ふ 歩ふ 五ご
歩ふ歩ふ  歩ふ 歩ふ  六ろく
 玉たま銀ぎん歩ふ 歩ふ  歩ふ七なな
  銀ぎん 金きむ  飛ひ 八はち
香こう桂かつら角かく金きむ   桂かつら香こう九きゅう
▲持もち駒ごま なし
参考さんこう局面きょくめん1
△持もち駒ごま 銀ぎん歩ふ3
987654321 
香こう 王おう金きむ   桂かつら馬うま一いち
  銀ぎん 金きむ飛ひ   二に
  桂かつら 歩ふ銀ぎん  歩ふ三さん
歩ふ歩ふ歩ふ   歩ふ  四よん
  桂かつら歩ふ 歩ふ   五ご
歩ふ歩ふ香こう 歩ふ 歩ふ  六ろく
   歩ふ 歩ふ  歩ふ七なな
  金きむ玉たま金きむ    八はち
香こう桂かつら     龍りゅう香こう九きゅう
▲持もち駒ごま 飛ひ角かく銀ぎん歩ふ
参考さんこう局面きょくめん2

参考さんこう局面きょくめん1は左ひだり美濃みの対たい四よん間あいだ飛車ひしゃの一いち変化へんかで、初出しょしゅつは1993年ねん10月がつ1日にちのJT将棋しょうぎ杯はい 日本にっぽんシリーズ、先手せんて郷田ごうだ真しん隆たかし対たい後手ごて羽生はぶ善治よしはる戦せんである。後手ごて羽生はぶの△7三さん桂かつら-7一いち玉たま型がたに、先手せんて郷田ごうだが▲7五ご歩ほと仕掛しかけた有名ゆうめいな局面きょくめん。△同どう歩ふとさせてから▲2四よん歩ほ△同どう歩ふ▲同どう角かくとし、以下いかの手順てじゅんを示しめすと、△2二に飛ひ▲3三角みすみ成しげる△2八はち飛ひ成なり▲1一いち馬うま△7四よん飛ひ▲7六ろく歩ほ△同どう歩ふ▲同どう銀ぎん△7五ご歩ほ▲同どう銀ぎん△同どう飛ひ▲7六ろく歩ほ△7四よん飛ひ▲7五ご香こう△同どう飛ひ▲同どう歩ふ△2九きゅう竜りゅう▲7四よん歩ほ△7五ご桂かつら▲7七なな玉たま△8七なな銀ぎん▲6八はち玉たま△7八はち銀ぎん成なり▲同どう金かね△8九きゅう竜りゅう▲8三さん銀ぎん以下いか、先手せんての郷田ごうだが勝かつ。長手ながて数すう示しめしても、一連いちれんの手順てじゅんはほぼ変化へんかの余地よちがないとされ、この一いち局きょくは局きょく後ごの検討けんとうでも、その後ごの研究けんきゅうでも、先手せんて勝がちと結論けつろんづけられたというが「この結論けつろんを覆くつがえさない限かぎり、後手ごて番ばんで左ひだり美濃みの相手あいてに指さす手てがない」と藤井ふじいは振ふり返かえっており、この将棋しょうぎを詰つみまで研究けんきゅうした結果けっか、1年ねん後ごの94年ねん10月がつ2日にちに新手あらてを現あらわした。棋聖きせい戦せんの先手せんて室岡むろおか克彦かつひこ対たい藤井ふじい猛たけし戦せんで、藤井ふじいは前記ぜんき手順てじゅんの△8九きゅう竜りゅうに代かえて研究けんきゅう手しゅ△7六ろく香こうと打うち（参考さんこう局面きょくめん2）、以下いか▲7七なな桂かつら△6九きゅう銀ぎん▲7三さん歩ほ成しげる△同どう銀ぎん▲5五ご馬うま△7二に歩ほ▲7四よん桂かつら△7八はち銀ぎん成なり▲5七なな玉たま△8三さん金きん以下いか、後手ごて藤井ふじいが勝かっている。最後さいごの△8三さん金きんも藤井ふじいの研究けんきゅう手しゅで、その後ご、図ずの局面きょくめんは公式こうしき戦せんで現あらわれていない。

この一いち局きょくを島しま朗あきら九きゅう段だんが当時とうじの将棋しょうぎ雑誌ざっしに「藤井ふじい君くんが指さす四よん間あいだ飛車ひしゃは藤井ふじいシステムといえる」と書かいた。藤井ふじいシステムという言葉ことばが現あらわれた瞬間しゅんかんとして知しられる。その後ご藤井ふじいシステム一いち号ごう局きょくとされる後述こうじゅつの藤井ふじい猛たけし対たい井上いのうえ慶太けいた戦せん、95年ねん12月22日にちの順位じゅんい戦せんB級きゅう2組くみにつづく。

△持もち駒ごま なし
987654321 
香こう桂かつら   金きむ角かく桂かつら香こう一いち
 飛ひ  金きむ 銀ぎん  二に
歩ふ  歩ふ 歩ふ銀ぎん王おう 三さん
  歩ふ 歩ふ 歩ふ歩ふ歩ふ四よん
 歩ふ 歩ふ 歩ふ   五ご
  歩ふ   歩ふ歩ふ歩ふ六ろく
歩ふ歩ふ角かく銀ぎん歩ふ 桂かつら  七なな
   飛ひ金きむ 銀ぎん  八はち
香こう桂かつら   金きむ玉たま 香こう九きゅう
▲持もち駒ごま なし
対たい左ひだり美濃みのの藤井ふじいシステム

対たい左ひだり美濃みのの藤井ふじいシステム

[編集へんしゅう]

前述ぜんじゅつのとおり本来ほんらいの藤井ふじいシステムは左ひだり美濃みのに対抗たいこうするための研究けんきゅうであった。左ひだり美濃みの、特とくに天守閣てんしゅかく美濃みのは、その特異とくいな形かたちから振ふり飛車ひしゃにとって攻略こうりゃくが難むずかしかった。

飛車ひしゃ先さきを突破とっぱした後のちは横よこから攻せめることになるが、振ふり飛車ひしゃ側がわの玉たまが一いち・二に段だん目めにいるのに対たいして、居きょ飛車ひしゃ側がわの玉たまは三さん段だん目めにいるため、攻せめ合あいになると手数てかずで負まけることが多おおい。そこで天守閣てんしゅかく美濃みのの攻略こうりゃくにあたり、横よこからではなく、弱点じゃくてんである玉たま頭あたまを狙ねらった縦たてからの攻せめを織おり交まぜるようになった。

先手せんての場合ばあい、玉たまを3九きゅうに配置はいちさせてから▲4五ご歩ほとして相手あいてに理想りそう的てきな4枚まい高だか美濃みのに組くませないようにし、▲2六ろく歩ほから玉たま頭あたまを狙ねらって攻せめる。ただし▲2六ろく歩ほを早はやく決きめてしまうと△5三さん角かくから狙ねらわれるので、振ふり飛車ひしゃ側がわとしては周到しゅうとうさが必要ひつようである。例たとえば島しま朗あきらがNHK杯はいで後手ごて藤井ふじいシステムに▲5七なな角かくから強引ごういんに高こう美濃みのに組くみ、桂かつら頭あたまを狙ねらって勝利しょうりしている。

振ふり飛車ひしゃ側がわとしては右みぎ図ずからよくある形かたちでは▲5六ろく歩ほと突つき、三さん間あいだ飛車ひしゃに転換てんかんした後のち▲6八はち角かくと引ひいて相手あいての玉たま頭あたまに利ききを直通ちょくつうさせ、右みぎ桂かつらとともに攻せめる。

この他ほかに7七なな角かくのままで単たんに▲2五ご歩ほ△同どう歩ふ▲同どう桂かつらとする手段しゅだんも実じつは厳きびしく、角かくが3一いちにいないと銀ぎんを2二にに引ひけず（▲2四よん歩ほがある）角かく道どうが通かよっている分ぶん、居きょ飛車ひしゃ側がわが常つねに気きを使つかう展開てんかいになる。この順じゅんでは先手せんて振ふり飛車ひしゃ側がわも4五ごの位いを取とらずに後手ごて居きょ飛車ひしゃ側がわに△4三さん金きん型がたの高こう美濃みのに組くませた方ほうが▲2五ご歩ほ△同どう歩ふ▲同どう桂かつら△2二に銀ぎんにそこで▲4五ご歩ほ△同どう歩ふ▲4四よん歩ほの際さいに当あたりがちかくなって厳きびしい。

これは非常ひじょうに完成かんせいされた戦法せんぽうであり、対たい四よん間あいだ飛車ひしゃに高たかく構かまえる左ひだり美濃みの自体じたいがプロの対局たいきょくではあまり見みられなくなっている。

対たい穴熊あなぐまの藤井ふじいシステム

[編集へんしゅう]
△持もち駒ごま なし
987654321 
香こう桂かつら 金きむ 金きむ銀ぎん桂かつら 一いち
 飛ひ     王おう香こう二に
歩ふ 歩ふ歩ふ 歩ふ 歩ふ歩ふ三さん
    歩ふ銀ぎん歩ふ角かく 四よん
 歩ふ 歩ふ 歩ふ 桂かつら歩ふ五ご
  歩ふ   歩ふ  六ろく
歩ふ歩ふ角かく 歩ふ  歩ふ 七なな
  銀ぎん飛ひ金きむ 銀ぎん  八はち
香こう桂かつら  玉たま金きむ  香こう九きゅう
▲持もち駒ごま なし
対たい穴熊あなぐまの藤井ふじいシステム
▲4五ご歩ほまで
△井上いのうえ慶太けいた 持もち駒ごま 歩ふ
987654321 
香こう桂かつら   金きむ銀ぎん桂かつら 一いち
   銀ぎん金きむ  王おう香こう二に
歩ふ 歩ふ歩ふ 歩ふ角かく歩ふ歩ふ三さん
 飛ひ       四よん
 歩ふ  歩ふ銀ぎん歩ふ桂かつら 五ご
  歩ふ歩ふ 歩ふ  歩ふ六ろく
歩ふ歩ふ角かく 歩ふ  歩ふ 七なな
   飛ひ  銀ぎん  八はち
香こう桂かつら 金きむ玉たま金きむ  香こう九きゅう
▲藤井ふじい猛たけし 持もち駒ごま なし
1995年度ねんどB級きゅう2組くみ順位じゅんい戦せん
第だい29手て▲2五ご桂かつらまで

藤井ふじいは相手あいての穴熊あなぐま模様もようの将棋しょうぎにおいて杉本すぎもとの指さし方かたをヒントに前述ぜんじゅつの1992年ねん銀河ぎんが戦せんの神崎かんざき戦せんで、▲3九きゅう玉たま-3八はち銀ぎん型がたに構かまえて▲3七なな桂かつらから2五ご桂かつら、そして▲4五ご歩ほと角かくの利ききで攻せめる指さし方かたを披露ひろうしているが、こうした藤井ふじいシステムに類似るいじした居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいする振ふり飛車ひしゃの仕掛しかけでは、羽生はぶ善治よしはるの例れいが知しられる。1995年ねん10月がつの全日本ぜんにほんプロトーナメント、▲真田さなだ圭一けいいち対たい△羽生はぶ戦せんで、後手ごての羽生はぶは四よん間あいだ飛車ひしゃ△7一いち玉たま-7二に銀ぎん型がたから△7三さん桂かつらに構かまえ、△4五ご歩ほ～6五ご歩ほの急戦きゅうせんを仕掛しかけている。また、出雲いずも大社たいしゃで行おこなわれた 1995年ねん11月の竜王りゅうおう戦せん第だい3局きょく、▲佐藤さとう康光やすみつ対たい△羽生はぶ戦せんでは前記ぜんき同様どうようの△7一いち玉たま-7二に銀ぎん型がたに△9三さん桂かつら～8五ご桂かつらで7七ななの角かくをどかして戦端せんたんを開ひらく指さし方かたをみせている。

この他ほか、藤井ふじいが穴熊あなぐまに対たいしてシステムを指さす前まえに、久保くぼ利明としあきが井上いのうえ慶太けいた相手あいてに類似るいじの戦型せんけいを一いち週間しゅうかん前まえに指さしており、久保くぼは奨励しょうれい会かい時代じだいに▲4八はち玉たま型がたで▲2五ご桂かつらからの端はし攻ぜめを愛用あいようしていたという。

藤井ふじいが穴熊あなぐま相手あいてに初はつ披露ひろうしたのは、1995年ねん12月22日にちの順位じゅんい戦せんB級きゅう2組くみ対たい・井上いのうえ慶太けいた戦せんであり、47手ての短たん手数てかずで井上いのうえを投了とうりょうに追おい込こんだ（右みぎ図ずは途中とちゅう図ず）[注ちゅう 3]。この時とき穴熊あなぐまは早はやくの▲3七なな桂かつら上あがりから▲4五ご桂かつらの筋すじを警戒けいかいした△6二に銀ぎん型がたで、この穴熊あなぐまについて藤井ふじいは独自どくじに研究けんきゅうをしていた。

△羽生はぶ善治よしはる 持もち駒ごま なし
987654321 
香こう桂かつら   金きむ銀ぎん桂かつら 一いち
 飛ひ   角かく 王おう香こう二に
歩ふ 歩ふ歩ふ銀ぎん金きむ 歩ふ歩ふ三さん
    歩ふ歩ふ歩ふ  四よん
 歩ふ 歩ふ 歩ふ 桂かつら 五ご
  歩ふ   歩ふ  六ろく
歩ふ歩ふ角かく銀ぎん歩ふ  歩ふ歩ふ七なな
   飛ひ金きむ 銀ぎん  八はち
香こう桂かつら   金きむ玉たま 香こう九きゅう
▲屋敷やしき伸之のぶゆき 持もち駒ごま なし
1997年度ねんどNHK杯はい戦せん
第だい31手て▲4五ご歩ほまで

しかしすぐに有名ゆうめいになることはなく、1997年度ねんどのNHK杯はい戦せんで屋敷やしき伸之のぶゆきが羽生はぶ善治よしはるに対たいして類似るいじの形かたちを指さしたときは、羽生はぶが自じ玉たまのコビンを攻せめられ思おもうように居い飛車ひしゃ穴熊あなぐまに組くめずに長考ちょうこうし、解説かいせつの田中たなか寅彦とらひこもうなったが、ようやく指さした羽生はぶの次つぎの一いち手ては△3二に玉たまと戻もどす手てであった[注ちゅう 4]。

1998年ねん、藤井ふじいはこの戦法せんぽうを用もちいて谷川たにがわ浩司こうじから竜王りゅうおう位いをストレートで奪取だっしゅする。振ふり飛車ひしゃは将棋しょうぎ界かいで息いきを吹ふき返かえし、さらには、ほかの振ふり飛車ひしゃの戦法せんぽうも指さされるようになった。

現在げんざい「藤井ふじいシステム」で主流しゅりゅうとなっている変化へんかは、居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまへの新あらたな研究けんきゅうとして現あらわれた、言いわば新しんバージョンである。居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまが完成かんせいする前まえに角かく筋すじを頼たよりにした縦たてからの攻せめを軸じくとして速攻そっこうを仕掛しかける体勢たいせいと、居きょ飛車ひしゃ側がわが急戦きゅうせんに持もち込こんだときの対策たいさくの、両方りょうほうを兼かね備そなえた作戦さくせんとなっている[注ちゅう 5]。先手せんての場合ばあい、1筋すじの歩ふを突とっき越ごし居きょ玉だまのまま速攻そっこうを仕掛しかける体制たいせいを整ととのえ、△1二に香こうと穴熊あなぐまに囲かこおうとしたら、▲2五ご桂かつらから▲4五ご歩ほと角かく筋すじを通とおして攻せめるが、後手ごてが急戦きゅうせんを仕掛しかけてきたら▲4八はち玉たまから▲3九きゅう玉たまと美濃みの囲がこいに移行いこうするというものである。

ここまでの順じゅんは駒こま組ぐみが特徴とくちょう的てきなため、真似まねるのは容易よういであると思おもわれがちだが、指ゆびしこなすのはプロでも非常ひじょうに難むずかしく「藤井ふじいでないと藤井ふじいシステムは指させない」と言いわれることもある。

藤井ふじいシステム対策たいさく

[編集へんしゅう]
△ 持もち駒ごま なし
987654321 
香こう桂かつら   金きむ 桂かつら香こう一いち
 飛ひ 銀ぎん金きむ 王おう角かく 二に
歩ふ 歩ふ歩ふ 歩ふ銀ぎん歩ふ歩ふ三さん
    歩ふ 歩ふ  四よん
 歩ふ      歩ふ五ご
  歩ふ歩ふ     六ろく
歩ふ歩ふ角かく銀ぎん歩ふ歩ふ歩ふ歩ふ 七なな
   飛ひ金きむ 銀ぎん  八はち
香こう桂かつら  玉たま金きむ 桂かつら香こう九きゅう
▲ 持もち駒ごま なし
対たい藤井ふじいシステム急戦きゅうせん例れい
△3三さん銀ぎんまで
△ 持もち駒ごま 歩ふ
987654321 
香こう桂かつら   金きむ 桂かつら香こう一いち
 飛ひ 銀ぎん金きむ 王おう角かく 二に
歩ふ  歩ふ 歩ふ 歩ふ 三さん
  歩ふ 歩ふ 歩ふ 香こう四よん
 歩ふ       五ご
  歩ふ歩ふ     六ろく
歩ふ歩ふ角かく銀ぎん歩ふ歩ふ歩ふ歩ふ歩ふ七なな
   飛ひ金きむ 銀ぎん銀ぎん 八はち
香こう桂かつら   金きむ玉たま桂かつら 九きゅう
▲ 持もち駒ごま なし
対たい藤井ふじいシステム急戦きゅうせん例れい
△7四よん歩ほまで

藤井ふじいシステムは、居きょ飛車ひしゃ側そくが穴熊あなぐま囲がこいでも急戦きゅうせんを仕掛しかけてきても、どちらにも対応たいおうできる戦法せんぽうとして猛威もういをふるった。対抗たいこう策さくとしてミレニアム囲がこいなどの新しん戦法せんぽうが採用さいようされることも増ふえたが、四よん間あいだ飛車ひしゃ側がわも互角ごかく以上いじょうの対応たいおうを見みせ大だい流行りゅうこうすることはなかった。また居きょ飛車ひしゃ党とうの棋士きしが有効ゆうこうな対策たいさくを見みいだせずに藤井ふじいに対たいして相あい振ふり飛車ひしゃを採用さいようする機会きかいが増ふえる[6]など、藤井ふじいシステムへの対策たいさくは2000年ねん前後ぜんこうにおいて居きょ飛車ひしゃ党とうにとっての大おおきな課題かだいであった。

そこで居きょ飛車ひしゃ側がわは、穴熊あなぐまにするか急戦きゅうせん（特とくに4六ろく銀ぎん右みぎ戦法せんぽう）を目指めざすかの態度たいどをぎりぎりまで決きめず、四よん間あいだ飛車ひしゃ（藤井ふじいシステム）側がわの動うごきによってどちらの駒こま組ぐみにするかを決きめるようになった。

これに対たいし、四よん間あいだ飛車ひしゃ側がわも▲6七なな銀ぎんと▲1五ご歩ほを保留ほりゅうし（▲7八はち銀ぎんと▲1六ろく歩ほで止とめる）、その2手てを▲4八はち玉たまから▲3九きゅう玉たまと囲かこいにかけるようになる。

この他ほか、瀬川せかわ晶司しょうじらがアマ時代じだいによくやっていた戦法せんぽうが後手ごての時ときに図ずのように△3三さん銀ぎんとし、▲4八はち玉たま△2四よん銀ぎん▲3九きゅう玉たまに△1五ご銀ぎんと端歩はしふをもぎ取とり、以下いか▲1五ご同どう香こう△1四よん歩ほ▲同どう香こう△同どう香こう▲1七なな歩ほ△1一いち香こう▲2八はち銀ぎん△7四よん歩ほが一いち例れいで、すぐに決きまるわけではないが、1筋すじの関係かんけいは後手ごてが得とくとなり、△1八はち歩ほから攻せめる手てもできる。またいきなり△1七なな香こう成なりもあって、かなりのプレッシャーになり、先手せんて玉だまが4八はちでも嫌いやな局面きょくめんである。▲1五ご歩ほが早はやい時ときに端はし棒ぼう銀ぎんは有力ゆうりょくとなっていった。このとき早はやめに▲2六ろく歩ほ～▲2七なな銀ぎんと備そなえられても、△3一角いっかくから今度こんどは右みぎ銀ぎんを棒ぼう銀ぎんに出だす指さし方かたもあり、臨機応変りんきおうへんに対応たいおうできるのが特徴とくちょうである[7]。

このため駒こま組ぐみの上うえでは藤井ふじいシステムの特徴とくちょうであった「端歩はしふの突とっき越ごし」「居きょ玉だま」がなくなり「藤井ふじいシステムは消きえた」と言いわれるようにもなった。

藤井ふじいシステムに対たいする研究けんきゅうと改良かいりょうが加くわわった結果けっか、後手ごて番ばんでの藤井ふじいシステムは不利ふり、先手せんて番ばんではほぼ互角ごかくに戦たたかえるであろう、とする結論けつろんに至いたっていた[8]。

一いち例れいとして図ずの対たい藤井ふじいシステム急戦きゅうせん例れいのように、先手せんて▲5六ろく銀ぎんには後手ごてが穴熊あなぐまにせず直ただちに△8六ろく歩ほ▲同どう歩ふ△4五ご歩ほと仕掛しかける激はげしい手段しゅだんなどがあり、先手せんての応手おうしゅは手てとしては▲4五ご同どう桂かつらと▲8八はち飛ひ、▲3三角みすみ成しげる△同どう桂かつら▲7七なな角かくの三さん通とおりであるが、『イメージと読よみの将棋しょうぎ観かん』（2008、日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい）では羽生はぶ善治よしはるはこの局面きょくめんを先手せんてが誘導ゆうどうしてやるなら何なにかしらの対策たいさくが必要ひつようであるとしている。佐藤さとう康光やすみつは▲4五ご同どう桂かつらでは以下いか△7七なな角かく成しげる▲同どう桂かつらで△4四よん銀ぎんなら▲8五ご歩ほ、△8六ろく飛ひならば▲5三さん桂かつら成しげる△同どう金かねは先手せんてがかなりリスクを冒おかしているとしており、森内もりうち俊之としゆきも▲4五ご同どう桂かつらは強気つよきにいくならで以下いか△7七なな角かく成しげる▲同どう桂かつら△8六ろく飛ひ▲5三さん桂かつら成しげる△同どう金かね▲8八はち歩ほ△4三さん金きん寄よせから△5五ご歩ほとなると、あまり先手せんてが良よくないとしている。一方いっぽうで▲8八はち飛ひであれば△4六ろく歩ほ▲8五ご歩ほ△7七なな角かく成しげる▲同どう桂かつら△5五ご歩ほ▲6七なな銀ぎん△8三さん歩ほ▲6八はち玉たま△2八はち角かく▲1八はち香こう△1九きゅう角かく成しげる▲8四よん歩ほ△同どう歩ふ▲8三さん歩ほ△同どう飛ひ▲7二に角かく△8二に飛ひ▲6三さん角かく成なりで後手ごて自信じしんがないとしている。谷川たにがわ浩司こうじも▲8八はち飛ひに△7七なな角かく成しげる▲同どう桂かつら△4六ろく歩ほ▲8五ご歩ほと、後手ごては手てを作つくるのが難むずかしいとしているが、渡辺わたなべ明あきらは▲8八はち飛ひに△4六ろく歩ほ▲8五ご歩ほ△7七なな角かく成しげる▲同どう桂かつら△5五ご歩ほ▲6七なな銀ぎんとなると、先手せんても自信じしんがないとしている。

▲2五ご桂かつらの跳はねる前まえに動うごくこの局面きょくめんは2003年ねん以降いこうに現あらわれ、▲4八はち玉たま型がたに比くらべて居きょ玉だまの分ぶん先手せんてが勝かちにくいとされている。2008年ねんまでの公式こうしき戦せんで10局きょく指さされて先手せんてが3勝しょう7敗はい、後手ごてが8筋すじを突つき捨すてない将棋しょうぎも11局きょく指さされ、こちらは先手せんて6勝しょう5敗はいとなっているという。

△ 持もち駒ごま なし
987654321 
香こう桂かつら    銀ぎん桂かつら香こう一いち
 飛ひ    金きむ王おう 二に
歩ふ 歩ふ歩ふ銀ぎん金きむ角かく歩ふ歩ふ三さん
    歩ふ 歩ふ  四よん
   歩ふ 歩ふ  歩ふ五ご
 歩ふ歩ふ 銀ぎん歩ふ歩ふ  六ろく
歩ふ 角かく 歩ふ 桂かつら歩ふ 七なな
   飛ひ金きむ 銀ぎん  八はち
香こう桂かつら  玉たま金きむ  香こう九きゅう
▲ 持もち駒ごま 歩ふ
対たい藤井ふじいシステム急戦きゅうせん例れい
△4五ご歩ほまで

藤井ふじい自身じしんも模索もさくを続つづけており、2008年ねんには矢倉やくらも実戦じっせんで試ためすようになった（ただし通常つうじょうの矢倉やぐらの定跡じょうせき手順てじゅんではなく、相あい振ふり飛車ひしゃも視野しやに入いれたものである）ため、当時とうじの『週刊しゅうかん将棋しょうぎ』紙しに「矢倉やくら党とうに転向てんこう」と紹介しょうかいされたこともあった[9]。藤井ふじい自身じしん、藤井ふじいシステムを「ファーム落おち」と表現ひょうげんしているが、藤井ふじいシステムを捨すてたわけではなく「いつ一軍いちぐんで投なげさせるか、わかりませんよ」としている[10]。事実じじつ、藤井ふじいは2012年ねんに先手せんて後手ごての双方そうほうで複ふく数すう回かい藤井ふじいシステムを指さし、第だい53期き王位おうい戦せんでは、挑戦ちょうせん者しゃ決定けっていリーグで高橋たかはし道雄みちおと牧野まきの光則みつのりを、挑戦ちょうせん者しゃ決定けってい戦せんでは渡辺わたなべ明あきらを破やぶって羽生はぶ王位おういへの挑戦ちょうせん権けんを得えた。2014年ねん5月がつ12日にちの王位おうい戦せんで居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまの木村きむらを終盤しゅうばんもたつきはあったものの撃破げきは。A級きゅうから陥落かんらくしたものの、研究けんきゅうは怠おこたっていないところを見みせた。 その後ご、2015年ねん頃ごろから後手ごて番ばん藤井ふじいシステムが復権ふっけん傾向けいこうにあり、2016年ねんには第だい24期き銀河ぎんが戦せんで藤井ふじいが優勝ゆうしょうする原動力げんどうりょくとなり[注ちゅう 6]、第だい64期き王座おうざ戦せん五ご番ばん勝負しょうぶ第だい2局きょく[注ちゅう 7]など、他たの対局たいきょくでも現あらわれるようになっている。

このような変遷へんせんを経へた現在げんざいでの四よん間あいだ飛車ひしゃ対策たいさくでは、穴熊あなぐまや急戦きゅうせんに加くわえ上述じょうじゅつのミレニアム囲がこいや増田ますだ康宏やすひろが多用たようし注目ちゅうもくされた銀ぎん冠かんむり穴熊あなぐまなどで藤井ふじいシステムを警戒けいかいすることで開発かいはつされた戦法せんぽうが増ふえている。特とくに高たかく構かまえる左ひだり美濃みのでは2五ご歩ほから4五ご歩ほで攻せめの取とっ掛かかりを与あたえることになるので、陣形じんけいの不備ふびを補おぎなう手段しゅだんとして飯島いいじま流りゅう引びき角かく戦法せんぽうをはじめ陣形じんけいを低ひくく構かまえる角すみ道みち不ふ突左美濃みの型がたが開発かいはつされていった。この他た相しょう振ふり飛車ひしゃも定跡じょうせきが整備せいびされ角かく道どうを止とめる振ふり飛車ひしゃへの有力ゆうりょくな対策たいさくとみなされるようになるなど、藤井ふじいシステム以前いぜんの穴熊あなぐま一辺倒いっぺんとうだった時代じだいから比くらべるとかなりの多様たよう化かを見みせている。

三さん間あいだ飛車ひしゃへの応用おうよう

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△久保くぼ利明としあき 持もち駒ごま なし
987654321 
香こう桂かつら 金きむ王おう金きむ 桂かつら香こう一いち
  銀ぎん   飛ひ  二に
 歩ふ  歩ふ銀ぎん角かく歩ふ歩ふ三さん
  歩ふ歩ふ 歩ふ歩ふ  四よん
歩ふ      歩ふ 五ご
  歩ふ銀ぎん歩ふ    六ろく
歩ふ歩ふ 歩ふ 歩ふ歩ふ 歩ふ七なな
  玉たま角かく金きむ  飛ひ 八はち
香こう桂かつら銀ぎん金きむ   桂かつら香こう九きゅう
▲佐藤さとう天たかし彦 持もち駒ごま なし
2009年度ねんどNHK杯はい戦せん
第だい23手て▲6八はち角かくまで

また近年きんねんでは、本来ほんらいの四よん間あいだ飛車ひしゃだけではなく、三さん間あいだ飛車ひしゃにおいても居い玉だまのまま戦たたかう藤井ふじいシステム調ちょうの戦法せんぽうが採用さいようされることがある。

2009年ねん8月がつ30日にちに放映ほうえいされたNHK杯はい戦せんにおいて、後手ごて番ばんを引ひいた久保くぼ利明としあきが採用さいようしたのが初号しょごう局きょく（右みぎ図ず）である。その後ご佐藤さとう和俊かずとしが2016年度ねんどNHK杯はい戦せんにおいてこの戦法せんぽうを採用さいようし屋敷やしき伸之のぶゆき・羽生はぶ善治よしはる・橋本はしもと崇たかし載のといった強豪きょうごう棋士きしを相次あいついで倒たおし準じゅん優勝ゆうしょうしたことで大おおきく注目ちゅうもくされた。佐藤さとうはその後ご将棋しょうぎフォーカスに講師こうしとして出演しゅつえんしこの戦法せんぽうを解説かいせつした。

この戦法せんぽうの特長とくちょうとしては、四よん間あいだ飛車ひしゃ藤井ふじいシステムに比くらべて角かく頭あたまを狙ねらう急戦きゅうせんに強つよい点てん、および△5二に金きん左ひだりを保留ほりゅうすることにより展開てんかいによっては袖そで飛車ひしゃ・右みぎ四よん間あいだ飛車ひしゃ・中ちゅう飛車ひしゃなどへ振ふり直なおし居きょ飛車ひしゃ調しらべの戦たたかいへ転換てんかんすることが容易よういである点てんが挙あげられる。一方いっぽうで△4五ご歩ほの威力いりょくが減げんじていることや、ミレニアム模様もようで▲6八角はっかくと▲2四よん歩ほの仕掛しかけを狙ねらわれた場合ばあいに△2二に飛ひと受うけることを強要きょうようされる[注ちゅう 8]などのデメリットがある。

5筋すじの歩ふを突つかない居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまに対たいして、角かく筋すじで相手あいて玉だまを睨にらみつつ自じ玉たま側がわの桂馬けいまと香車きょうしゃで一気いっきに端はし攻ぜめを狙ねらう三さん間あいだ飛車ひしゃは「トマホーク」として知しられる。2016年ねんに奨励しょうれい会かいの三さん段だんリーグで山本やまもと博志ひろしが藤井ふじい聡さとし太ふとしに対たいして採用さいようし快勝かいしょうした例れいなどがある。

→「トマホーク (将棋しょうぎ)」も参照さんしょう

藤井ふじいシステムのエピソード

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  • 藤井ふじい猛たけしは「重要じゅうようなのは動機どうきがあるかどうかなんです。私わたしは新しん戦法せんぽうを編あみ出だしたくて『藤井ふじいシステム』を指さしたわけではないです。相手あいてに勝かつために、必要ひつよう性せいがあって『藤井ふじいシステム』を考かんがえたのです。竜王りゅうおうになった時ときに『絶対ぜったい的てきな強つよさは求もとめない』と話はなしているように、相手あいてに勝かつためにはどうすればいいのか、という思想しそうで指さしてきたので、（藤井ふじいシステムには）コンピュータ的てきな強つよさは求もとめないです。」とインタビューで語かたっている[11]。
  • 今後こんご、藤井ふじい聡さとし太ふとしと対戦たいせんすることになったら、藤井ふじい猛たけしは「藤井ふじいシステムを指さそうと思おもいます」と語かたっている[11]。

脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 藤井ふじいは1998年度ねんどのNHK将棋しょうぎ講座こうざで本戦ほんせん法ほうの解説かいせつを行おこない、その直後ちょくごに谷川たにがわ浩司こうじから竜王りゅうおう位いを無敗むはいで奪取だっしゅ。
  2. ^ 「画期的かっきてき。この戦法せんぽうがすごいのは、藤井ふじいさんがひとりでシステムを構築こうちくしたこと」(佐藤さとう康光やすみつ)「右みぎの銀ぎん桂香けいかを攻せめに使つかうという画期的かっきてきな構想こうそう。将棋しょうぎ界かいの流ながれを大おおきく変かえた戦法せんぽう」(谷川たにがわ浩司こうじ)「凄すごい発想はっそう。創世そうせい期きには藤井ふじいさんとよく当あたり、負まかされました(笑)かっこわらい。優秀ゆうしゅうさを身みをもって体感たいかん」(深浦ふかうら康やすし市し)「振ふり飛車ひしゃ側がわが居きょ玉だまで戦たたかうという発想はっそうは思おもいつかなかった居きょ飛車ひしゃ側がわの急戦きゅうせん策さくや、その他たの持久じきゅう戦せんに対応たいおうするアイデアをひとりで作つくり上あげたのは驚異きょうい的てきだ」(室岡むろおか克彦かつひこ)「連れん常つねの新しん戦法せんぽうは誰だれかのアイデアに対たいし、追つい走者そうしゃが現あらわれることで構築こうちくされていきます。藤井ふじいシステムの特異とくいな点てんは、第だい1期き竜王りゅうおう戦せんに見みられるように、すでに完成かんせいされたひとつの分野ぶんやとして提示ていじされたことです。藤井ふじいさん独自どくじの研究けんきゅう量りょう·新手あらての多おおさでも際立きわだっており、今後こんごこのような新しん研究けんきゅうは現あらわれないのではないでしょうか」(飯塚いいづか祐紀ゆうき)などで、若手わかて棋士きしに振ふり飛車ひしゃ党とうが多おおいのは、間違まちがいなくこの戦法せんぽうの影響えいきょうである、という指摘してきも数多かずおおく寄よせられた。「奨励しょうれい会かい有段者ゆうだんしゃ時代じだいに大だい流行りゅうこうしていた戦法せんぽう。おかげさまで卒業そつぎょうすることができました」(島本しまもと亮あきら)「振ふり飛車ひしゃの大だい革命かくめい。この戦法せんぽうのおかげでプロになった棋士きしも多おおいはずです」 (長岡ながおか裕也ゆうや) 「世代せだいが大おおきな影響えいきょうを受うけた戦法せんぽう。みんな、狂くるいそうなほど研究けんきゅうしました。将棋しょうぎの才能さいのうという面めんでは、藤井ふじい九きゅう段だんが現役げんえきで一番いちばんではないかと思おもいます」(大平おおひら武洋たけひろ)
  3. ^ 井上いのうえは｢おかげで第だい一いち号ごう局きょくの犠牲ぎせい者しゃと、この将棋しょうぎが有名ゆうめいになった｣といっていたが、この年度ねんどの順位じゅんい戦せんの敗戦はいせんはこの局きょくのみで、他たは全勝ぜんしょうして昇級しょうきゅうする一方いっぽう、藤井ふじいは後手ごて番ばんでのシステムで苦戦くせんし、昇級しょうきゅうまでにあと五ご期きを要ようしている。
  4. ^ 田中たなか寅彦とらひこ（居きょ飛車ひしゃ穴熊あなぐまを得意とくいとしていた）は、「何なにか変へんだな」と何なん度どもうなった。羽生はぶの△3二に玉たまを見みて、司会しかい・き手きての藤森ふじもり奈津子なつこは思おもわず「あ！戻もどった！」と声こえを上あげた。
  5. ^ 藤井ふじい猛たけし『最強さいきょう藤井ふじいシステム』(1999年ねん)によれば、▲1五ご歩ほと端はしに2手てかける手ては急戦きゅうせん相手あいてだと緩なる手しゅになると考かんがえられがちであるが、終盤しゅうばんで自じ玉たまが広ひろい(端はしに逃にげ道みちが広ひろく空あいている)ため、十じゅう分ふん戦たたかえるとされている。
  6. ^ 決勝けっしょうトーナメントでは先手せんて番ばん、後手ごて番ばん共ともにすべて藤井ふじいシステムを用もちいた。
  7. ^ 後手ごて番ばんの羽生はぶ善治よしはる王座おうざが挑戦ちょうせん者しゃの糸谷いとたに哲郎てつろう八はち段だんに対たいし採用さいよう。糸谷いとたにが巧たくみに対応たいおうし一いち時じは優位ゆういに立たったが、終盤しゅうばんで羽生はぶが逆転ぎゃくてん勝がちをおさめた。
  8. ^ 初号しょごう局きょくにおける佐藤さとう天たかし彦の対策たいさくでもある。その後ご佐藤さとう康光やすみつが2016年度ねんどNHK杯はい戦せん決勝けっしょうにおいて類似るいじ形がたを佐藤さとう和俊かずとしに対たいして採用さいようした際さい、佐藤さとう和俊かずとしは△2二に飛ひと受うけずに戦たたかい不利ふりとなったが、後のちに▲2四よん歩ほの仕掛しかけを失念しつねんしていたと語かたった。

出典しゅってん

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  1. ^ “将棋しょうぎ大賞たいしょう受賞じゅしょう者しゃ一覧いちらん｜棋士きしデータベース｜日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい”. 日本にっぽん将棋しょうぎ連盟れんめい. 2018年ねん9月がつ16日にち閲覧えつらん。
  2. ^ 『将棋しょうぎ年鑑ねんかん2018　棋士きし名鑑めいかんアンケート』の「登場とうじょうしたときに最もっともびっくりした戦法せんぽうはなんですか?」でも多数たすうの棋士きしが「藤井ふじいシステム」を挙あげている。“棋士きしをも驚愕きょうがくさせた新しん戦法せんぽうとは！？”. マイナビ将棋しょうぎ情報じょうほう局きょく. 2023年ねん2月がつ4日にち閲覧えつらん。
  3. ^ 勝又かつまた清和きよかず『最新さいしん戦法せんぽうの話はなし』（浅川あさがわ書房しょぼう、2007年ねん、ISBN 978-4-86137-016-8）、108ページ。2006年ねん春はるまでのデータである。
  4. ^ 『将棋しょうぎ世界せかい』2007年ねん9月がつ号ごう、「新手あらて魂たましい」23ページ。青野あおの照あきら市し・勝又かつまた清和きよかず・上野うえの裕和ひろかずによる対談たいだんより。
  5. ^ 河口かわぐち俊彦としひこ『新しん対局たいきょく日誌にっし 第だい八はち集しゅう 七なな冠かん狂騒きょうそう曲きょく（下した）』（河出かわで書房しょぼう、2002年ねん、ISBN 4-309-61438-8）、12 - 15ページ。
  6. ^ 1998年度ねんど竜王りゅうおう戦せん第だい2局きょくの谷川たにがわなど。
  7. ^ 対談たいだん：瀬川せかわ晶司しょうじ六ろく段だん×今泉いまいずみ健司けんじ四よん段だん「B級きゅう戦法せんぽうは こんなに楽たのし」（『将棋しょうぎ世界せかいSpecial　将棋しょうぎ戦法せんぽう事典じてん100＋』（将棋しょうぎ世界せかい編集へんしゅう部ぶ編へん、マイナビ出版しゅっぱん）所収しょしゅう）
  8. ^ 後手ごて番ばんについては勝又かつまた『最新さいしん戦法せんぽうの話はなし』90 - 94ページ、先手せんて番ばんについては同書どうしょ118ページ。
  9. ^ 『週刊しゅうかん将棋しょうぎ』2008年ねん8月がつ6日にち、7ページ。
  10. ^ 勝又かつまた『最新さいしん戦法せんぽうの話はなし』116ページ。
  11. ^ a b “元もと竜王りゅうおう・藤井ふじい猛たけし九きゅう段だん、藤井ふじい聡さとし太ふとし新しん竜王りゅうおうを語かたる「藤井ふじいさんに新しん戦法せんぽうは要いらない」”. スポーツ報知ほうち (2021年ねん11月14日にち). 2023年ねん10月がつ29日にち閲覧えつらん。


参考さんこう文献ぶんけん

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  • 『将棋しょうぎ世界せかい』2006年ねん3月がつ号ごう「勝又かつまた教授きょうじゅのこれならわかる! 最新さいしん戦法せんぽう講義こうぎ」藤井ふじいシステムはどこに消きえた? の巻まき
  • 勝又かつまた清和きよかず『最新さいしん戦法せんぽうの話はなし』（浅川あさがわ書房しょぼう、2007年ねん、ISBN 978-4-86137-016-8）
    『将棋しょうぎ世界せかい』の連載れんさいをまとめたもの。藤井ふじいシステムについては2章しょうを割さいて解説かいせつしている（第だい3講こう 後手ごて藤井ふじいシステムの話はなし（57 - 94ページ）、第だい4講こう 先手せんて藤井ふじいシステムの話はなし（95 - 118ページ））。
  • NHK将棋しょうぎ講座こうざ 2017年ねん10月がつ号ごう 「カズトシ流りゅう主導しゅどう権けんをにぎる振ふり飛車ひしゃ　後手ごて番ばんで緩急かんきゅう自在じざい三さん間あいだ飛車ひしゃ藤井ふじいシステム」

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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