引退いんたい相撲すもう

引退いんたい相撲すもう（いんたいずもう）は、力士りきしが現役げんえき引退いんたい、年寄としより襲名しゅうめい後ごに行おこなうイベント。花相撲はなずもうの一ひとつ。

概要がいよう

本来ほんらいは引退いんたいする力士りきしが新しん生活せいかつのための費用ひようを捻出ねんしゅつするため自主じしゅ興行こうぎょうを打うった花相撲はなずもうだった。三河そうご島とう事件じけんなどの力士りきしによる待遇たいぐう改善かいぜん要求ようきゅうによって、養老ようろう金きん（退職たいしょく金きん）制度せいどが発足ほっそくしたことで一いち時じすたれたが、やがて復活ふっかつして現在げんざいに至いたっている。

原則げんそく的てきに関取せきとり30場所ばしょ以上いじょうを務つとめた力士りきしは、両国りょうこく国技こくぎ館かんにて引退いんたい相撲すもうを行おこなうことができる。開催かいさいされるのは1月がつ、5月、9月の東京とうきょう場所ばしょ後ごが通例つうれい。引退いんたいしてから、半年はんとしくらいに期日きじつが設定せっていされることが多おおい。関取せきとりで組織そしきされる力士りきし会かいは、このイベントに関かんしては無料むりょうで出場しゅつじょうするのが慣例かんれい。引退いんたい相撲すもうを開催かいさいする直前ちょくぜんの力士りきし会かいに引退いんたい相撲すもうを主催しゅさいする力士りきしはあいさつに出向でむくことになっている。引退いんたい相撲すもうの収益しゅうえきは、餞別せんべつという意味いみでその力士りきしの総そう取とりとなる。

引退いんたい相撲すもうのチケットは一般いっぱん参加さんか者しゃに有料ゆうりょうで販売はんばいされるが、余程よほどの人気にんき力士りきしでもない場合ばあい余あまることが常つねで、その場合ばあいは後援こうえん者しゃの家族かぞく・友人ゆうじん、障害しょうがい者しゃ施設しせつなどに残のこりを無料むりょう配布はいふすることが一般いっぱん的てき。一般いっぱん参加さんか者しゃの場合ばあい、基本きほん的てきにチケット代だい以上いじょうの直接的ちょくせつてきな開催かいさい者しゃ側がわへの負担ふたんは必要ひつようない。

引退いんたい相撲すもうでは、その引退いんたいする力士りきしが所属しょぞくする一門いちもんの幕下まくした以下いか力士りきしによる取組とりくみや十じゅう両りょう、幕内まくうち、場合ばあいによっては本人ほんにんの取組とりくみがあったり、相撲すもう甚句じんく披露ひろうなど各種かくしゅイベントで盛もり上あがったりした後のち、後援こうえん者しゃなどをはじめとした関係かんけい者しゃによって、大だい銀杏いちょうを切きり落おとす断髪だんぱつ式しきが行おこなわれる。行司ぎょうじが三宝さんぽうに鋏やっとこを捧ささげ持もち、ひとはさみずつ入いれていく。大だい銀杏いちょうを最後さいごに切きり落おとすのは師匠ししょうの役目やくめで、その切きり落おとす所作しょさを止とめ鋏やっとこと言いう。切きり落おとした髷まげは、引退いんたいした力士りきしが記念きねん品ひんとして保管ほかんしている例れいがほとんどである。

また、元もと横綱よこづなが引退いんたい相撲すもうを行おこなう場合ばあいは、最後さいごの横綱よこづな土俵入どひょういりを行おこなうのが通例つうれいである。かつてその時点じてんで現役げんえき横綱よこづなが二に人にん以上いじょういた時ときには、その二人ふたりの横綱よこづなが太刀持たちもち・露払つゆはらいをそれぞれ務つとめていたが、最近さいきんでは大関おおぜき以下いかの現役げんえき幕内まくうち力士りきしの二人ふたりが、太刀持たちもち・露払つゆはらいを担当たんとうする事ことも多おおくなっている。

詳細しょうさいは「横綱よこづな土俵入どひょういり#引退いんたい相撲すもうにおける横綱よこづな土俵入どひょういり」を参照さんしょう

引退いんたい相撲すもうを行おこなわない場合ばあいでも、国技こくぎ館かんの土俵どひょう（引退いんたい相撲すもうと異ことなり、関係かんけい者しゃや後援こうえん者しゃのみが出席しゅっせき）もしくは国技こくぎ館かん地下ちか1階かいの大広間おおひろまを使つかって断髪だんぱつ式しきを行おこなうことはできる。年寄としよりを襲名しゅうめいせず、協会きょうかいから離はなれる（昔むかしの呼よび方かたでいえば「廃業はいぎょう」する）時じも可能かのうである。関取せきとりに昇進しょうしんできなかった力士りきしの場合ばあいは、千秋楽せんしゅうらくの打うち上あげなどの機会きかいに断髪だんぱつ式しきを行おこなうことが一般いっぱん的てきである。

元々もともとは断髪だんぱつ式しきと引退いんたい相撲すもうは別べつの行事ぎょうじであったが、戦後せんごは両方りょうほうが合体がったいして今いまの形態けいたいが一般いっぱん的てきとなった。また、引退いんたい相撲すもうを興行こうぎょうするには経費けいひがかかるため、数すう人にんの力士りきしが共同きょうどうで興行こうぎょうを打うつ例れいもある（最近さいきんの例れいでは、栃とち乃花と栃とち栄さかえが2009年ねんに合同ごうどう引退いんたい相撲すもうを行おこなった）。変かわり種だねとして、早稲田大学わせだだいがく出身しゅっしんの笠置山かさぎやまは、母校ぼこうの大隈おおくま講堂こうどうで引退いんたい相撲すもうを開催かいさいし、同おなじ出羽海でわのうみ部屋へやの安藝あきノ海うみが横綱よこづな土俵入どひょういりを披露ひろうしている。

なお、行司ぎょうじの引退いんたい時じも引退いんたい相撲すもうを開催かいさいできる。特とくに立たて行司ぎょうじは軍配ぐんばいを次代じだいに継承けいしょうさせるために開催かいさいすることが多おおい。力士りきしと行司ぎょうじによる合同ごうどうで開催かいさいされた引退いんたい相撲すもうも存在そんざいする。例たとえば19代だい伊之助いのすけは平鹿ひらか川がわと七ななッ海うみの2力士りきしと合同ごうどうで引退いんたい相撲すもうを開催かいさいした。

引退いんたい相撲すもうの興行こうぎょう名めいは、引退いんたい力士りきしが年寄としより名跡みょうせきを襲名しゅうめいする場合ばあいは「○○○（四股しこ名めい）引退いんたい×××（年寄としより名跡みょうせき）襲名しゅうめい披露ひろう大相撲おおずもう」、現役げんえき名めいで年寄としよりとなるか、あるいは角界かくかいに残のこらず退職たいしょくする（昔むかしでいう廃業はいぎょう）場合ばあいは「○○○（四股しこ名めい）引退いんたい断髪だんぱつ披露ひろう大相撲おおずもう」となるのが一般いっぱん的てきである。

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