三さん段だん構かまえ

三さん段だん構かまえ（さんだんがまえ）とは、相撲すもうにおける基本きほん体たいを伝つたえる、上段じょうだん・中段ちゅうだん・下段げだんの三さん種類しゅるいの構かまえの事ことである。

概説がいせつ

同おなじ相撲すもうの儀式ぎしきの中なかでも、「土俵入どひょういりのような通俗つうぞくなものではなく、もっとも典故てんこを重おもんじた相撲すもう道どうの儀式ぎしきとして、然しかるべき場合ばあいに執行しっこうされる」ものとされる。特別とくべつな行事ぎょうじの際さいなどに東西とうざいの横綱よこづなまたは大関おおぜきによって行おこなわれるのが通例つうれいである。

各かく段だんの構かまえの形式けいしきと意味いみは以下いかの通とおりである。

• 上段じょうだんの構かまえは「本然ほんぜんの体からだ」と呼よばれ、足あしを開ひらいて立たち、互たがいに反対はんたいの手てを一直線いっちょくせんに伸のばし、他方たほうの手ては手てのひらを胸むねの下したにつけるもので、「開ひらく世よは目出度めでたし」を意味いみする。
• 中段ちゅうだんの構かまえは「攻撃こうげきの体からだ」と呼よばれ、腰こしをやや落おとし、片方かたがたの腕うでを曲まげて前方ぜんぽうに向むけ、他方たほうは横腹よこばらにつけるもので、「国土こくど成就じょうじゅ」を意味いみする。
• 下段げだんの構かまえは「防御ぼうぎょの体からだ」と呼よばれ、中段ちゅうだんからさらに腰こしを入いれて、体からだへつけていた手ても体からだから離はなして、一方いっぽうの手てと同様どうように手てのひらを開ひらいて互たがいに構かまえるもので、「仰おおせもっとも難なん有ゆうし」を意味いみする。

由来ゆらい

多おおくの相撲すもう評論ひょうろん家かは、旧きゅう両国りょうこく国技こくぎ館かん開館かいかんの時ときに「相撲すもう伝書でんしょ」（享とおる保ほ時代じだい）もあり「手合てあいの・上うえ・中なか・下したほかの型かた」あたりを参考さんこうに、吉田よしだ司つかさ家かが考案こうあんしたものではないかと推測すいそくしている。一方いっぽう、映像えいぞうで残のこっている最もっとも古ふるい横綱よこづな土俵入どひょういりの「せり上あがり」は、1896年ねんに横綱よこづな昇進しょうしんを果はたした17代だい横綱よこづな小しょう錦にしき八はち十じゅう吉きちのものであり、文献ぶんけんでは江戸えど時代じだい末期まっきぐらいから確認かくにんできる。時とき系列けいれつからして、せり上あがりをヒントに三さん段だん構かまえを発明はつめいしたと考かんがえることはできるが、その逆ぎゃくはあり得えない。稀まれ勢ぜいの里さと寛ひろしの雲龍うんりゅう型がたのせり上あがりは、三さん段だん構かまえを連続れんぞくして行いったものと説明せつめいした親方おやかたがいたが、これは大おおきな間違まちがいである。

三さん段だん構かまえと横綱よこづな土俵入どひょういりの親和しんわ性せいに関かんしては、和歌森わかもり太郎たろうの著書ちょしょ「相撲すもう今いまむかし」（隅田川すみだがわ文庫ぶんこ）にある「三さん段だん構かまえが横綱よこづなの土俵入どひょういりと結むすびついて行おこなわれたかと思おもう」という記述きじゅつがある。1980年ねんに発行はっこうされた「古今ここん大相撲おおずもう事典じてん」(読売新聞社よみうりしんぶんしゃ)では横綱よこづな土俵入どひょういりについて触ふれられており、そこでは「『ちりちょうず』『三さん段だん構かまえ』『へんばい』の三さん行ぎょうが、融合ゆうごう、交響こうきょうしつつ、完了かんりょうしたことになる」と、その関連かんれん性せいが指摘してきされている。

事例じれい

• 明治めいじ以降いこうに行おこなわれた26回かいの事例じれいが知しられている。
• 国技こくぎ館かん開館かいかんの際さいには毎回まいかい、東西とうざいの横綱よこづなによって執とり行おこなわれている。
  • 1909年ねん6月2日にち（旧きゅう両国りょうこく国技こくぎ館かん） ：常陸山ひたちやま谷右衛門たにえもん‐梅うめヶ谷藤たにふじ太郎たろう (2代だい)
  • 1954年ねん9月18日にち（蔵前くらまえ国技こくぎ館かん） ：千代ちよの山やま雅信まさのぶ‐鏡かがみ里さと喜代治きよじ
  • 1985年ねん1月がつ9日にち（両国りょうこく国技こくぎ館かん） ：千代ちよの富士ふじ貢みつぐ‐北きたの湖うみ敏さとし満みつる
• 同おなじ二に人にんの横綱よこづなによる三さん段だん構かまえは1995年ねん2月がつ5日にち（両国りょうこく国技こくぎ館かんにて報恩ほうおん古式こしき相撲すもうの一環いっかんで披露ひろう）と1996年ねん4月がつ（両国りょうこく国技こくぎ館かん以外いがいで披露ひろう）の曙あけぼの太郎たろうと貴乃花たかのはな光司こうじなどがある。
• 2016年ねん10月4日にちに大相撲おおずもうの国際こくさい文化ぶんか交流こうりゅうイベント「大相撲おおずもうbeyond2020場所ばしょ」で横綱よこづな日馬くさま富士ふじ公平こうへいと横綱よこづな鶴つる竜りゅう力りょく三郎さぶろうが20年ねんぶりに行いった際さい、日馬くさま富とみ士しは千代ちよの富士ふじと北きたの湖うみが演えんじた映像えいぞうを何なん回かいも見みて練習れんしゅうしたという。翌よく2017年ねん10月4日にちには同おなじイベントで横綱よこづな白はく鵬ほう翔しょうと横綱よこづな稀まれ勢ぜいの里さと寛ひろしが三さん段だん構かまえを披露ひろうしており、当時とうじ現役げんえき中ちゅうの4横綱よこづな全員ぜんいんが経験けいけんしたことになる。
• 最もっとも多おおく三さん段だん構かまえを経験けいけんした力士りきしは北きたの湖うみ敏さとし満まんで、4回かい経験けいけんしている。
• 三さん段だん構かまえができるのは現役げんえき横綱よこづなに限かぎられているわけではなく、経験けいけん当時とうじ大関おおぜきや平幕ひらまくだった力士りきしもいる。

外部がいぶリンク

• 三さん段だん構かまえ - コトバンク