系統けいとう別べつ総そう当あたり制せい

系統けいとう別べつ総そう当あたり制せい（けいとうべつそうあたりせい）とは、1964年ねんまで大相撲おおずもうで採用さいようされていた、取組とりくみ編成へんせいの方式ほうしきである。あわせて、取組とりくみ編成へんせいの方式ほうしきの変遷へんせんと、その歴史れきしと内容ないように関かんしても本ほん項こうで概説がいせつする。

総説そうせつ

大相撲おおずもうの社会しゃかいでは、入門にゅうもんした力士りきしは必かならず相撲すもう部屋へやに所属しょぞくすることになっている。その際さい、入門にゅうもんしてから十じゅう両りょうに昇進しょうしんするまでの力士りきし養成ようせい員いんと呼よばれる時代じだいには、所属しょぞくする部屋へやで、大部屋おおべやで共同きょうどう生活せいかつをするのが習ならわしである。そのため、同おなじ部屋へやに所属しょぞくする力士りきしたちの間あいだでは、本場所ほんばしょでの真剣しんけん勝負しょうぶはしづらい事情じじょうがある（1990年代ねんだいの二子山ふたごやま部屋へや全盛期ぜんせいきに個人こじん別べつ総そう当あたりを望のぞむ声こえがあったが、こういう事情じじょうから実現じつげんしなかった）。また、すべての部屋へやに稽古けいこ場ばをもつことが必要ひつようとされる現在げんざいとは違ちがって、以前いぜんには部屋へやこそ独立どくりつしてはいるものの、毎日まいにちの稽古けいこは、親方おやかたが現役げんえき時代じだいに所属しょぞくしていた本家ほんけの部屋へやでおこなう部屋へやも多おおくあった。

そうした事情じじょうがあったため、大相撲おおずもうの対戦たいせん方式ほうしきにはいくつかの変遷へんせんがあった。時代じだい順じゅんに分わけると、次つぎのようになる。

1909年ねん1月がつまでの時期じき
1909年ねん6月がつの両国りょうこく国技こくぎ館かん開館かいかん以降いこう1931年ねんまで（東西とうざい制せい第だい1期き）
1932年ねん2月がつから1939年ねん5月がつまで（系統けいとう別べつ総そう当あたり制せい第だい1期き）
1940年ねん1月がつから1947年ねん6月がつまで（東西とうざい制せい第だい2期き）
1947年ねん11月から1964年ねん11月がつまで（系統けいとう別べつ総そう当あたり第だい2期き）
1965年ねん1月がつから現在げんざいまで（部屋へや別べつ総そう当あたり）

時代じだいにわけて記述きじゅつしていく。

1909年ねん1月がつまで

調査ちょうさ中ちゅう。加筆かひつなどおねがいします。

東西とうざい制せい第だい1期き

幕内まくうちは東西とうざいに分わかれ、同おなじ側がわの対戦たいせんはない。しかし、時々ときどき勢力せいりょくの均衡きんこうを図はかるために、入いれ替かえが行おこなわれた。二に所しょノ関せき部屋へやの玉たま錦にしき三さん右みぎエ門もんは、関脇せきわけまでは出羽海でわのうみ方かたに所属しょぞくしていたが、大関おおぜき昇進しょうしんの際さいに連合れんごう方かたに替かわっている。これは、日常にちじょうの一門いちもん系統けいとうとはあまり関係かんけいがなかった。

十じゅう両りょう以下いかでは、ほとんど総そう当あたりの状況じょうきょうであった。親方おやかた同士どうしが兄弟きょうだい弟子でしであった粂川くめかわ部屋へやと友とも綱つな部屋へや、中立ちゅうりつ部屋へやとの間あいだでも、鏡岩かがみいわ善四郎ぜんしろう（粂川くめかわ）は、寶川たからがわ政治せいじ（友とも綱つな）や灘なだノ花はな虎之助とらのすけ（中立ちゅうりつ）と対戦たいせんしている。

系統けいとう別べつ総そう当あたり第だい1期き

1932年ねん1月がつの春秋しゅんじゅう園えん事件じけんの結果けっか、幕内まくうち・十じゅう両りょう力士りきしの大だい多数たすうが脱退だったいしたために、幕内まくうちでも総そう当あたり制せいを採用さいようすることとなった。しかし、次つぎの部屋へや同士どうしの対戦たいせんはなかった。

出羽海でわのうみ・春日野かすがの・山分やまわけ
高砂たかさご・若松わかまつ・富士ふじヶ根ね・大山おおやま
粂川くめかわ・二に所しょノ関せき・二子山ふたごやま（のち中村なかむらも加くわわる）
小野川おのがわ・陣じん幕まく

そのために、系統けいとう別べつという形かたちになっていた。

十じゅう両りょう以下いかの取組とりくみも、東西とうざい制せい第だい1期きとほとんど同おなじである。しかし、出羽海でわのうみ部屋へやから独立どくりつした武隈たけくま部屋へやは、破門はもんという形かたちになったので、かつての兄弟きょうだい弟子でし同士どうしも本場所ほんばしょで対戦たいせんすることになった。

東西とうざい制せい第だい2期き

幕内まくうちは東西とうざいに分わかれたが、頻繁ひんぱんに配置はいち換かえが行おこなわれた。そのため、出羽でわ一門いちもんに所属しょぞくしていた陣じん幕まく部屋へやの青あお葉山はやま徳雄とくおは、両方りょうほうの側がわに属ぞくして、ほとんどすべての部屋へやの力士りきしと対戦たいせんしている。また、高砂たかさご系けい、朝日山あさひやま部屋へやや伊勢いせヶ濱はま部屋へやも配置はいち換かえがあり、同おなじ部屋へやで東西とうざいに分わかれることもあった。当然とうぜん、この場合ばあい、方かた屋やが違ちがっても、同おなじ部屋へやや同おなじ系統けいとうは対戦たいせんしない。

1940年ねん5月場所ばしょ、横綱よこづな男女だんじょノ川登かわのぼり三さんは、相手方あいてがたの横綱よこづな双葉ふたば山さんなどが途中とちゅう休場きゅうじょうしたために、対戦たいせん相手あいてを繰くり下さげることになった。ところが、相手方あいてがたに同おなじ高砂たかさご系けいの、富士ふじヶ嶽だけ（富士ふじヶ根ね部屋へや）・鯱しゃちノ里さと（若松わかまつ部屋へや）がいたため、この二人ふたりを避さけてなおも繰くり下さげたため、すでに7敗はいして負まけ越こし目前もくぜんの新しん入幕にゅうまく、二に瀬川せかわ政一まさかず（朝日山あさひやま部屋へや）を13日にち目めに対戦たいせんさせることになってしまい、二瀬川ふたせがわは負まけ越こしてしまった。一方いっぽう上位じょうい力士りきしにとっては、部屋へやや系統けいとうが異ことなる同おなじ方かた屋やの上位じょうい力士りきしと当あたらないため有利ゆうりな制度せいどであったといえる（男女だんじょノ川かわの例れいでは、系統けいとう別べつ総そう当あたりなら同どうじ方かた屋やの出羽海でわのうみ系けい上位じょうい力士りきしと当あたるところ、東西とうざい制せいに助たすけられて相手方あいてがたの平幕ひらまくと当あたったことになる）。横綱よこづな照國てるくにが双葉ふたば山さんとの初はつ対戦たいせんが大関おおぜき昇進しょうしん後ごだったという逸話いつわは東西とうざい制せいならではのものであった。

十じゅう両りょう以下いかでは、この時期じきに双葉ふたば山道さんどう場じょうが立浪たつなみ部屋へやから独立どくりつし、色々いろいろな部屋へやを吸収きゅうしゅうしたことで対戦たいせん分野ぶんやに変動へんどうが起おきた。双葉ふたば山さんは、立浪たつなみ部屋へやから内弟子うちでしを連つれて独立どくりつしたために、立浪たつなみ部屋へやと双葉ふたば山道さんどう場じょうとの間あいだの対戦たいせんは組くまれなかった。そのために、同時どうじに引ひき取とった粂川くめかわ所属しょぞくの力士りきしたちも、立浪たつなみ部屋へやとの対戦たいせんがなくなった。当時とうじ十じゅう両りょうにいた布引ぬのびき国太郎くにたろうは、粂川くめかわ所属しょぞくのときは、立浪たつなみ部屋へやの力士りきしと対戦たいせんしていたが、その対戦たいせんがなくなった。

なお、この時期じきには系統けいとう別べつ第だい1期きには同おなじ系統けいとう扱あつかいされていた、粂川くめかわと二に所しょノ関せき・二子山ふたごやまは別べつ扱あつかいとされ、布引ぬのびきは照あきらノ海うみ照光てるみつ（二に所しょノ関せき）・鏡川かがみがわ四郎しろう（二子山ふたごやま）と対戦たいせんしている。また、1944年ねんに井筒いづつ親方おやかたが急逝きゅうせいし、力士りきしたちは双葉ふたば山道さんどう場じょうに引ひき取とられたが、この時とき、井筒いづつ部屋へや所属しょぞくだった鶴つるヶ嶺みね道どう芳かおるは、立浪たつなみ部屋へやの緑みどり國政くにまさ雄ゆうと対戦たいせんしている。

この時期じきに、かつては対戦たいせんしていた間柄あいだがらの部屋へやが、合同ごうどうし、対戦たいせんがなくなったケースとして、他たに次つぎのようなものがある。（右側みぎがわが消滅しょうめつした部屋へや）

出羽海でわのうみと三保さんぼうヶ関せき
双葉ふたば山さんと井筒いづつ
立浪たつなみと春日山かすがやま
高砂たかさごと花はな籠かご
伊勢いせヶ濱はまと鏡山かがみやま

系統けいとう別べつ総そう当あたり第だい2期き

戦後せんご、大相撲おおずもうの人気にんき復活ふっかつのために、様々さまざまな試こころみが行おこなわれた。相撲すもうくじや土俵どひょうを大おおきくすることはすぐに挫折ざせつしたが、優勝ゆうしょう決定けってい戦せんの導入どうにゅうや、三さん賞しょう制度せいどの発足ほっそくは、相撲すもう人気にんきの復活ふっかつに資しした。それとともに、東西とうざい制せいを廃止はいしして、総そう当あたり制せいを導入どうにゅうすることにした。しかし、出羽海でわのうみと春日野かすがのの関係かんけいのような深ふかいものがあったために、部屋へや別べつの総そう当あたりは不可能ふかのうで、次つぎのような系統けいとうが定さだめられた。

出羽海でわのうみ・春日野かすがの・三保さんぼうヶ関せき・小野川おのがわ
高砂たかさご・若松わかまつ・大山おおやま
伊勢いせヶ濱はま・熊くまヶ谷だに（以前いぜんは対戦たいせんがあった）
立浪たつなみ・武隈たけくま・時津風ときつかぜ
時津風ときつかぜ・井筒いづつ（立浪たつなみと井筒いづつは対戦たいせんする）
錦にしき島とう・陸奥みちのく・伊勢いせノ海うみ（錦にしき島とうと陸奥みちのくとは以前いぜんは対戦たいせんがあった）
二に所しょノ関せき・松まつヶ根ね・中村なかむら

その後ご、独立どくりつした部屋へやは、もとの部屋へやとは対戦たいせんしない。次つぎのようなケースである。

二に所しょノ関せきからの花はな籠かご・佐渡さどヶ嶽だけ・湊川みなとがわ・片男波かたおなみ・二子山ふたごやま
立浪たつなみからの春日山かすがやま
高砂たかさごからの佐さノ山やま
高島たかしま（のちに友とも綱つなに変更へんこう）からの宮城野みやぎの・熊くまヶ谷だに（のちに高島たかしまに変更へんこう）

このため、羽黒山はぐろさん政司せいじ（立浪たつなみ）と鏡かがみ里さと喜代治きよじ（時津風ときつかぜ）、千代ちよの山やま雅信まさのぶ（出羽海でわのうみ）と栃とち錦にしき清隆きよたか（春日野かすがの）、若乃花わかのはな幹みき士し（花はな籠かご）と大鵬たいほう幸喜ゆきよし（二に所しょノ関せき）といった横綱よこづな・大関おおぜきの番付ばんづけ上位じょうい同士どうしの取組とりくみがなく、不公平ふこうへいさが段々だんだんと目立めだつようになってきたのであった。

部屋へや別べつ総そう当あたり制せい

1950年代ねんだい後半こうはんからの大相撲おおずもうの改革かいかくは、取組とりくみの公平こうへい感かんを増ます方向ほうこうでもおこなわれた。系統けいとう別べつでは、幾いくつかの好こう取組とりくみ（と思おもわれる上位じょうい同士どうしの対戦たいせん）がなく、部屋へやによる不公平ふこうへいさ（大鵬たいほう幸喜ゆきよし（二に所しょノ関せき）と柏戸かしわど剛つよし（伊勢いせノ海うみ）との間あいだにも、対戦たいせんの差さがあった）を薄うすめるために、1965年ねん1月がつ場所ばしょから完全かんぜん部屋へや別べつ総そう当あたりが実施じっしされた。この場所ばしょは、序盤じょばんから横綱よこづな栃とちノ海うみ晃あきら嘉よしみ（春日野かすがの）と大関おおぜき佐田さだの山やま晋すすむ松まつ（出羽海でわのうみ）との対戦たいせんを組くむなどして、部屋へや別べつ総そう当あたり制せいに力士りきしも慣なれるように配慮はいりょされた。その結果けっかもあって、部屋へや別べつ総そう当あたり制せいは定着ていちゃくして現在げんざいに至いたっている。制度せいど導入どうにゅう当時とうじは、小野川おのがわ部屋へやや追手おって風ふう部屋へやや錦にしき島とう部屋へやなどが閉鎖へいさされるなど、部屋へや数すうの減少げんしょうが起おこったが、その後ご、独立どくりつが目立めだつようになり、総そう当あたりが日常にちじょうのものとなっている。

この方式ほうしきのもとでも血縁けつえん者しゃは対戦たいせんしないことになっている。北きた桜さくら英敏ひでとし（北きたの湖うみ）と豊ゆたか桜さくら俊昭としあき（立田たった川がわ⇒陸奥みちのく）、露ろ鵬おおとり幸生こうせい（大鵬たいほう⇒大嶽おおたけ）と白露しらつゆ山やま佑たすく太ふとし（二に十じゅう山やま⇒北きたの湖うみ）、英えい乃海拓也たくや（木瀬きせ）と翔しょう猿ざる正也まさや（追手おって風ふう）のように、実みの兄弟きょうだいが別べつの部屋へやに属ぞくしている場合ばあいである。2009年ねんに、4親等しんとう以内いないの関係かんけいは対戦たいせんさせないことが決定けっていした。