スピノサウルス

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スピノサウルス
Spinosauridae
地質ちしつ時代じだい
ジュラ紀じゅらき後期こうきはく亜紀あき前期ぜんき?
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 爬虫つな Reptilia
つな : そうゆみつな Diapsida
下綱しもつな : しゅりゅうがた下綱しもつな Archosauromorpha
上目うわめ : 恐竜きょうりゅう上目うわめ Dinosauria
: りゅうばん Saurischia
: ししあし Theropoda
下目しため : テタヌラ下目しため Tetanurae
: スピノサウルス Spinosauridae
学名がくめい
Spinosauridae
Stromer1915
シノニム
たね

本文ほんぶん参照さんしょう

スピノサウルス (学名がくめい:Spinosauridae) は、恐竜きょうりゅう分類ぶんるいぐんひとつ。スピノサウルスイリタトルからスピノサウルスバリオニクススコミムスからなるバリオニクスふくまれる。へんせいさかなしょくせい動物どうぶつだったと認識にんしきされることもあるが、最近さいきんかならずしもそうではなかったとわれている。

進化しんか[編集へんしゅう]

最初さいしょのスピノサウルスるいジュラ紀じゅらき後期こうき出現しゅつげんし、スピノサウルスるいはく亜紀あき前期ぜんきもっとさかえた。 ジュラ紀じゅらき後期こうき(1おく5500まんねんまえ)のものはのみでられている[1]かれらははく亜紀あき後期こうきセノマニアンには次第しだい衰退すいたいしていったようである。アルゼンチンのチューロニアン地層ちそうつかったはスピノサウルス特徴とくちょうをもっているとされていた[2]が、最近さいきんではクルロタルシるいあらためられた[3]サントニアン中期ちゅうきでもいくつかのたねられている。たとえば、中国ちゅうごく河南かなんしょううま家村いえむらるいそうMajiacun Formation ではバリオニクス一本いっぽんつかっている[4]。マダガスカルのマエヴァラノるいそう Maevarano Formation(マーストリヒチアン)の不確ふたしかなスピノサウルスるい化石かせきはく亜紀あき終末しゅうまつまでスピノサウルスるい生存せいぞんしていた可能かのうせい示唆しさしているかもしれない[よう出典しゅってん]

生態せいたい[編集へんしゅう]

捕食ほしょく行動こうどう[編集へんしゅう]

スピノサウルスるい頭部とうぶ(とくイリタトルの)は、アロサウルスティラノサウルス代表だいひょうされるようなししあしるいのそれとはかなりちがっている。 おおくの肉食にくしょく恐竜きょうりゅうは、あごあつふと幅広はばひろくなっているが、スピノサウルスるいのそれはうす細長ほそながい。スーズらは、このちがいはスピノサウルスるいししあしるいちがい、大型おおがた獲物えものはげしく抵抗ていこうする獲物えものおそわなかったことを示唆しさしているとかんがえた[5]。しかし、バリオニクスの化石かせきから、イグアノドンの化石かせきなどが発見はっけんされたためまれであるが草食そうしょく恐竜きょうりゅう捕食ほしょくしていたことわかっている。(下記かき参照さんしょう

スーズと学生がくせいたちはスピノサウルスるい頭骨とうこつ構造こうぞう研究けんきゅうし、かれらがあご使つかってちいさな獲物えものきわめてすばやく、力強ちからづよらえていたとかんがえた。強靭きょうじんくび筋肉きんにくあたまをすばやくろしたりげたりすることができたという[5]

しょくせい[編集へんしゅう]

スピノサウルスるいあごかたち現生げんなまクロコダイルていることから、20世紀せいきちゅうごろからしばしばさかなしょくせい動物どうぶつであるとかんがえられてきた。レイフィールドと学生がくせいたちは、2007ねん生物せいぶつ工学こうがくてき手法しゅほうはじめて検証けんしょうおこなった。バリオニクス頭骨とうこつもちいられた。かれらはバリオニクスの咬合りょく現生げんなまガビアルどう程度ていどで、おもさかなべていたと結論けつろんづけた。しかしスピノサウルスるいあごかたち様々さまざまであることに要注意ようちゅういともべている[6] 。しかしながら、レイフィールドらが2013ねんったスピノサウルスバリオニクス頭骨とうこつ研究けんきゅうられた生物せいぶつ工学こうがくてきデータは、へんせいさかなしょくせい動物どうぶつではなく、個体こたいのボディーサイズによってしょくせいことなっていたことをしめした[7]バリオニクス口吻こうふん形態けいたい垂直すいちょく方向ほうこうきょくげにつよ構造こうぞうだが、スピノサウルスについてはそうではないことが指摘してきされた[7]

直接的ちょくせつてき化石かせき証拠しょうこはスピノサウルスるいさかなおなじくらいの頻度ひんど小型こがたから中型ちゅうがたサイズの動物どうぶつ小型こがた恐竜きょうりゅうふくむ)もべていたことをしめしている。バリオニクスはらうちからはさかなうろこつかっているが、イグアノドン幼体ようたいつばさりゅうほね断片だんぺんつかっている[8] 。このことはスピノサウルスるいは、さかなふく小型こがた獲物えもの専門せんもんてき捕食ほしょくする動物どうぶつだったことを示唆しさしている[5]

生息せいそくいき[編集へんしゅう]

ロメイン・アミオット Romain Amiotらは2010ねん論文ろんぶんで、スピノサウルスるいほね酸素さんそ同位どういたい比率ひりつはん水棲すいせい生活せいかつ様式ようしきしめしていることを発見はっけんしたとほうじた。バリオニクスイリタトルシアモサウルス、およびスピノサウルスからの同位どういたいどう時代じだい昆虫こんちゅうカメワニ比較ひかくされ、ししあしるいなかでスピノサウルスるい同位どういからだカメクロコダイルのそれにちかいことがかった。シアモサウルス標本ひょうほんは、のスピノサウルスるい割合わりあいもっとがあり、比較的ひかくてき水中すいちゅうへの適応てきおうすすんでいないとされ、スピノサウルススピノサウルス以外いがいししあしるいもっとおおきい傾向けいこうがあるとされた。アミオットらは、近代きんだいワニカバのようにスピノサウルスるい生活せいかつ大半たいはん水中すいちゅうごしたと結論けつろんづけた。またスピノサウルスるいはん水性すいせいおよびさかなしょくせいという習性しゅうせいが、大型おおがたししあしるいとの共存きょうぞんできた理由りゆうとして説明せつめいできると示唆しさした。ことなる獲物えものべ、ことなる生息せいそくむことによってニッチ競合きょうごうけていたとかんがえられる[9]

系統けいとう発生はっせい[編集へんしゅう]

スピノサウルスエルンスト・シュトローマーによってスピノサウルスいちぞくのみをふくものとして1915ねん命名めいめいされた。このタクソンはスピノサウルスがよくられるようになるごとに拡大かくだいされていった。 最初さいしょ分岐ぶんきてきスピノサウルス定義ていぎされたのは、1998ねんポール・セレノによってであった 。その定義ていぎトルヴォサウルスよりスピノサウルスきんえんすべてのスピノサウルスるい(spinosaurids)」というものである。

スピノサウルスは、スピノサウルス Spinosaurinae とバリオニクス Baryonychinae を内包ないほうする。前者ぜんしゃは1998ねん、セレノとトーマス・ホルツによって、後者こうしゃ1986ねんアラン・チャリグアンジェラ・ミルナーによって命名めいめいされた。スピノサウルス・アエジプティアクス Spinosaurus aegyptiacusバリオニクス・ワルケリ Baryonyx walkeri のよりどちらにきんえんかでけられる。バリオニクスはもともとバリオニクスはじめて発見はっけんされたときスピノサウルスとはおもわれなかったため、バリオニクスとしてもうけられたものだが、のちスピノサウルス下位かいクレードとなったことで2004ねん、ホルツによって分類ぶんるい階級かいきゅうえられた。

2021ねん9がつにはイギリスのワイトとうから産出さんしゅつした一部いちぶ頭骨とうこつ要素ようそからケラトスコプスが、おなじく一部いちぶ頭骨とうこつ要素ようそしい断片だんぺんからリパロヴェナトル記載きさいされた。りょうぞく系統けいとう解析かいせき結果けっかバリオニクス位置付いちづけられた。またこの解析かいせき結果けっかにより、スピノサウルスがヨーロッパで出現しゅつげんし、スピノサウルスとバリオニクスがそれぞれアフリカへ進出しんしゅつしたことが示唆しさされた[10]

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Buffetaut, E. (2008). "Spinosaurid teeth from the Late Jurassic of Tengaduru, Tanzania, with remarks on the evolutionary and biogeographical history of the Spinosauridae." In J.-M. Mazin, J. Pouech, P. Hantzpergue, V. Lacombe., Mid-Mesozoic Life and Environments. Cognac (France), June 24th-28th 2008, pp. 26-28.
  2. ^ Salgado, L., Canudo, J.I., Garrido, A.C., Ruiz-Omeñaca, J.I., Garcia, R.A., de la Fuente, M.S., Barco, J.L., and Bollati, R. (2009). "Upper Cretaceous vertebrates from El Anfiteatro area, Río Negro, Patagonia, Argentina." Cretaceous Research in press.
  3. ^ Hasegawa, Y.; Tanaka, G.; Takakuwa, Y.; Koike, S. (2010). “Fine sculptures on a tooth of Spinosaurus (Dinosauria, Theropoda) from Morocco”. Bulletin of Gunma Museum of Natural History 14: 11–20. 
  4. ^ Hone, Xu; Wang (2010). “A probable baryonychine (Theropoda: Spinosauridae) tooth from the Upper Cretaceous of Henan Province, China”. Vertebrata PalAsiatica 48: 19–26. 
  5. ^ a b c Sues, H.D.; Frey, E.; Martill, D.M. (2002). “Irritator challengeri, a spinosaurid (Dinosauria: Theropoda) from the Lower Cretaceous of Brazil”. Journal of Vertebrate Paleontology 22 (3): 535–547. doi:10.1671/0272-4634(2002)022[0535:icasdt]2.0.co;2. 
  6. ^ Rayfield, E.J.; Milner, A.C.; Xuan, V.B.; Young, P.G. (2007). “Functional morphology of spinosaur 'crocodile-mimic' dinosaurs”. Journal of Vertebrate Paleontology 27 (4): 892–901. doi:10.1671/0272-4634(2007)27[892:fmoscd]2.0.co;2. 
  7. ^ a b Cuff, AR; Rayfield, EJ (2013). “Feeding mechanics in spinosaurid theropods and extant crocodilians”. PLoS ONE 8 (5): e65295. doi:10.1371/journal.pone.0065295. PMC 3665537. PMID 23724135. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3665537/. 
  8. ^ Buffetaut, E.; Martill, D.; Escuillié, F. (2004). “Pterosaurs as part of a spinosaur diet”. Nature 429: 33. doi:10.1038/430033a. PMID 15229562. 
  9. ^ Amiot, R.; Buffetaut, E.; Lécuyer, C.; Wang, X.; Boudad, L.; Ding, Z.; Fourel, F.; Hutt, S. et al. (2010). “Oxygen isotope evidence for semi-aquatic habits among spinosaurid theropods”. Geology 38 (2): 139–142. Bibcode2010Geo....38..139A. doi:10.1130/G30402.1. 
  10. ^ Chris T. Barker; David W. E. Hone; Darren Naish; Andrea Cau; Jeremy A. F. Lockwood; Brian Foster; Claire E. Clarkin; Philipp Schneider et al. (2021). “New spinosaurids from the Wessex Formation (Early Cretaceous, UK) and the European origins of Spinosauridae”. Scientific Reports 11. doi:10.1038/s41598-021-97870-8. https://doi.org/10.1038/s41598-021-97870-8. 
  11. ^ Buffetaut, Eric; Suteethorn, Varavudh; Tong, Haiyan; Amiot, Romain (2008). “An Early Cretaceous spinosaurid theropod from southern China”. Geological Magazine 145 (5): 745–748. doi:10.1017/S0016756808005360. 
  12. ^ Muller, Natalie (2011). Australian 'Spinosaur' unearthed. http://www.australiangeographic.com.au/journal/australian-spinosaur-carnivorous-dinosaur-unearthed.htm. 
  13. ^ Allain, R.; T. Xaisanavong; P. Richir (2012). “The first definitive Asian spinosaurid (Dinosauria: Theropoda) from the early Cretaceous of Laos”. Naturwissenschaften 99 (5): 369–77. doi:10.1007/S00114-012-0911-7. PMID 22528021. http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00114-012-0911-7.