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マイプ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
マイプ
Maip
既知きち骨格こっかく(A)、だいろくどうしい位置いちでの胸腔きょうこう復元ふくげん(B)、さんじょう(C)
地質ちしつ時代じだい
中生代ちゅうせいだい後期こうきはく亜紀あき
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 爬虫つな Reptilia
つな : そうゆみつな Diapsida
下綱しもつな : しゅりゅうがた下綱しもつな Archosauromorpha
上目うわめ : 恐竜きょうりゅう上目うわめ Dinosauria
: りゅうばん Saurischia
: ししあし Theropoda
階級かいきゅうなし : とり吻類 Averostra
下目しため : テタヌラ下目しため Tetanurae
階級かいきゅうなし : コエルロサウルスるい Coelurosauria
階級かいきゅうなし : メガラプトルるい Megaraptora
: メガラプトル Megaraptoridae
ぞく : マイプぞく Maip
学名がくめい
Maip
Roland et al., 2022
たね

マイプ学名がくめいMaip)は、アルゼンチンサンタクルスしゅうから化石かせき産出さんしゅつした、後期こうきはく亜紀あきメガラプトルるいぞくするししあしるい恐竜きょうりゅうぞく全長ぜんちょうやく9メートル胴体どうたいはばやく1.2メートル、体重たいじゅうやく5トン推定すいていされており、頑強がんきょう体格たいかくをしていたことが示唆しさされる[1]当時とうじみなみアメリカにおける最大さいだいきゅうししあしるい恐竜きょうりゅうであり、頂点ちょうてん捕食ほしょくしゃであった可能かのうせいがある[2]

2020ねん3がつから研究けんきゅうチームによる調査ちょうさ開始かいし[3]椎骨ついこつ肋骨あばらぼね確認かくにんされているが、頭蓋骨ずがいこつ発見はっけんされていない。2022ねん4がつげん記載きさい論文ろんぶん発表はっぴょうされた。ぞくめいの"Maip"はパタゴニア地方ちほう悪霊あくりょうにちなみ、たね小名しょうみょうの"macrothorax"は「おおきな胴体どうたい」を意味いみする[1][3]

発見はっけん命名めいめい

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マイプのホロタイプ標本ひょうほん

マイプのホロタイプ標本ひょうほんMPM 21545は、2019ねんにアルゼンチンのサンタクルスしゅう位置いちするエル・カラファテから30キロメートル西にしのLa Anita Farmにて、アレクシス・ローランドにより発見はっけんされた。既知きち化石かせき要素ようそじくしい複数ふくすうどうしいおよびしい頸肋およびむねあばらはらあばらひだり烏口からすぐちこつ断片だんぺんてきかたかぶとこつ部分ぶぶんてきみぎ恥骨ちこつ部分ぶぶんてきちゅうあしこつからなる。これらのほねのいくつかは2019ねんにノヴァスらにより記載きさいされた[4]当該とうがい標本ひょうほん関節かんせつしない状態じょうたい発見はっけんされたが、5m×3mの範囲はんいない集積しゅうせきしていた。ホロタイプ標本ひょうほんにはのメガラプトルるいではこれまで確認かくにんされていないほねふくまれている。断片だんぺんてきではあるものの、当該とうがい標本ひょうほん既知きちのメガラプトルるい骨格こっかくなかではもっと完全かんぜんなものである[5]

マイプは2021ねんにResearch Squareの査読さどくぜん論文ろんぶん言及げんきゅうされたが、当該とうがい論文ろんぶん国際こくさい動物どうぶつ命名めいめい規約きやくさだめられた基準きじゅんたさなかったため、有効ゆうこう学名がくめいではないものとしてあつかわれていた[6]。2022ねん、ローランドらにより当該とうがい化石かせきはメガラプトルるいしんぞく新種しんしゅとしてあつかわれ、また有効ゆうこうめい学名がくめい命名めいめいされた。ぞくめいの"Maip"は冷風れいふうころかげとしてテウェルチェぞく神話しんわ登場とうじょうする悪霊あくりょうにちなみ、たね小名しょうみょう"macrothorax"は大型おおがた胸腔きょうこう反映はんえいしてギリシャで「ながい」を意味いみする"makrós"とラテン語らてんごで「どう」を意味いみする"thorax"に由来ゆらいする[5]

形態けいたい

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ヒトとのおおきさ比較ひかく

生存せいぞんのマイプは全長ぜんちょうやく9 - 10メートルと推定すいていされており、そのため既知きちのメガラプトルるいでは最大さいだいであった可能かのうせいがある。メガラプトルるいのメンバーは後期こうきはく亜紀あき前半ぜんはん南半球みなみはんきゅうにおけるカルカロドントサウルス絶滅ぜつめつつづいて大型おおがたげており[7]頂点ちょうてん捕食ほしょくしゃ不在ふざいによりししあしるい多様たようして空白くうはく生態せいたいてき地位ちいめられるようになったという仮説かせつ提唱ていしょうされている。アベリサウルスウネンラギアくわえ、メガラプトルるいかれらの生態せいたいけいにおける主要しゅよう捕食ほしょくしゃとなった。既知きちのメガラプトルるい解析かいせきによると、当該とうがい系統けいとうぐんのメンバーはバレミアンからアプチアンにかけてアジアみなみアメリカオーストラリア分布ぶんぷするもので全長ぜんちょう4 - 4.5メートル、アプチアンから前期ぜんきチューロニアンにかけてオーストラリア・なんアメリカに分布ぶんぷしたもので全長ぜんちょう4.5 - 6メートルである。チューロニアンからコニアシアンのメガラプトルるいみなみアメリカのみから化石かせき産出さんしゅつしており、より大型おおがた全長ぜんちょう6 - 7メートルである。最後さいごに、サントニアンからマーストリヒチアンのものはさらに大型おおがたであり、全長ぜんちょう7 - 10メートルにたっする[5]

肋骨あばらぼね保存ほぞんされたあとは、記載きさいしゃにより靭帯じんたい付着ふちゃくてんとして解釈かいしゃくされている。このことからマイプの呼吸こきゅうは、ワニなど現生げんなま爬虫類はちゅうるいよりもむしろ現生げんなま鳥類ちょうるいのものに類似るいじすることが示唆しさされている[5]

分類ぶんるい

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マイプのパレオアート

Rolando et al. (2022) の系統けいとう解析かいせきでは、マイプはアルゼンチンのメガラプトルるいとも分岐ぶんきをなす派生はせいてきなメガラプトルるいであることが判明はんめいした。げん記載きさい論文ろんぶんでは、2つの明確めいかく系統けいとうぐん存在そんざいしるされている。1つはより包括ほうかつてき系統けいとうぐんで、フクイラプトルアウストラロヴェナトルのぞすべてのメガラプトルるいふくむ(系統けいとうぐんA)。もう1つはより排除はいじょてき系統けいとうぐんで、みなみアメリカのメガラプトルるいすべふくむ(系統けいとうぐんB)。著者ちょしゃ過去かこ解析かいせき同様どうように、メガラプトルるいコエルロサウルスるいうち位置付いちづけられ、ティラノサウルスうえ姉妹しまいぐんかれている。以下いかクラドグラムはRolando et al. の系統けいとう解析かいせき結果けっかしめ[5]

メガラプトルるい

プウィアングヴェナトル

ヴァユラプトル

フクイラプトル

メガラプトル

Australian megaraptorid indet. (LRF 10/106)

アウストラロヴェナトル

系統けいとうぐんA

アオニラプトル

Bajo Barreal Formation megaraptorid indet. (UNPSJB-Pv 944/958)

メガラプトル
ムルスラプトル
系統けいとうぐんB

オルコラプトル

トラタイェニア英語えいごばん

マイプ

アエロステオン

生態せいたいがく

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マイプのホロタイプ標本ひょうほん発見はっけんされたChorrilloるいそう地域ちいき中央ちゅうおうみぎ)の衛星えいせい画像がぞう

マイプはアルゼンチン南部なんぶ分布ぶんぷするマーストリヒチアンかいのChorrilloるいそうから発見はっけんされた。どうそうから発見はっけんされた命名めいめいみのほか恐竜きょうりゅうとしては、エラスマリアるい英語えいごばんとりばんるいであるイサシクルソル英語えいごばんティタノサウルスるいりゅうあしるいであるヌロティタン英語えいごばんがいる[4]同定どうてい化石かせきとしてはきょくりゅうるいイグアノドンハドロサウルスノアサウルス英語えいごばんウネンラギアのものがどうそうから産出さんしゅつしている。また両生類りょうせいるい魚類ぎょるい哺乳類ほにゅうるいモササウルスヘビカメはらあしつなられている[8]

どうしいふく非常ひじょう断片だんぺんてき化石かせき発見はっけんされており、メガラプトルるいのものとして分類ぶんるいされている。しかし、あまりに断片だんぺんてきであるため、マイプあるいは分類ぶんるいぐんてることは不可能ふかのうである[5]

出典しゅってん

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  1. ^ a b 悪霊あくりょう」の新種しんしゅ肉食にくしょく恐竜きょうりゅう 国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかんなどが南米なんべい発見はっけん」『朝日新聞あさひしんぶん』2022ねん4がつ26にち2022ねん4がつ28にち閲覧えつらん
  2. ^ 新種しんしゅ肉食にくしょく恐竜きょうりゅう”の化石かせき 南米なんべいアルゼンチンで発見はっけん”. NHKニュース. NHK (2022ねん4がつ26にち). 2022ねん4がつ28にち閲覧えつらん
  3. ^ a b 南半球みなみはんきゅうのティラノサウルス」大型おおがた肉食にくしょく恐竜きょうりゅう新種しんしゅ化石かせき発見はっけん」『産経新聞さんけいしんぶん』2022ねん4がつ26にち2022ねん4がつ28にち閲覧えつらん
  4. ^ a b Novas, Fernando; Agnolin, Federico; Rozadilla, Sebastián; Aranciaga-Rolando, Alexis; Brissón-Eli, Federico; Motta, Matias; Cerroni, Mauricio; Ezcurra, Martín et al. (2019). “Paleontological discoveries in the Chorrillo Formation (upper Campanian-lower Maastrichtian, Upper Cretaceous), Santa Cruz Province, Patagonia, Argentina”. Revista del Museo Argentino de Ciencias Naturales nueva serie 21 (2): 217–293. doi:10.22179/revmacn.21.655. ISSN 1853-0400. https://www.researchgate.net/publication/337901475_Paleontological_discoveries_in_the_Chorrillo_Formation_upper_Campanian-lower_Maastrichtian_Upper_Cretaceous_Santa_Cruz_Province_Patagonia_Argentina. 
  5. ^ a b c d e f Rolando, Alexis M. A.; Motta, Matias J.; Agnolín, Federico L.; Manabe, Makoto; Tsuihiji, Takanobu; Novas, Fernando E. (2022-04-26). “A large Megaraptoridae (Theropoda: Coelurosauria) from Upper Cretaceous (Maastrichtian) of Patagonia, Argentina”. Scientific Reports 12 (1): Article number 6318. doi:10.1038/s41598-022-09272-z. https://www.nature.com/articles/s41598-022-09272-z. 
  6. ^ Rolando, Alexis M. A.; Motta, Matias J.; Agnolín, Federico L.; Manabe, Makoto; Tsuihiji, Takanobu; Novas, Fernando E. (2021-12-22). “The Biggest Megaraptoridae (Theropoda: Coelurosauria) of South America”. Research Square: 1-43. doi:10.21203/rs.3.rs-1152394/v1. https://assets.researchsquare.com/files/rs-1152394/v1/f6a237e3-38e4-42ed-aaed-27335b4a881e.pdf?c=1640187847. 
  7. ^ Meso, J. G.; Juárez Valieri, R. D.; Porfiri, J. D.; Correa, S. A. S.; Martinelli, A. G.; Casal, G. A.; Canudo, J. I.; Poblete, F. et al. (2021-09-01). “Testing the persistence of Carcharodontosauridae (Theropoda) in the Upper Cretaceous of Patagonia based on dental evidence” (英語えいご). Cretaceous Research 125: 104875. doi:10.1016/j.cretres.2021.104875. ISSN 0195-6671. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0195667121001221. 
  8. ^ Rozadilla, Sebastián; Agnolín, Federico; Manabe, Makoto; Tsuihiji, Takanobu; Novas, Fernando E. (2021-09-01). “Ornithischian remains from the Chorrillo Formation (Upper Cretaceous), southern Patagonia, Argentina, and their implications on ornithischian paleobiogeography in the Southern Hemisphere” (英語えいご). Cretaceous Research 125: 104881. doi:10.1016/j.cretres.2021.104881. ISSN 0195-6671. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0195667121001282.