イリタトル (イリテーターとも、学名 がくめい : Irritator 、「苛立 いらだ たせる者 しゃ 」の意 い )は、約 やく 1億 おく 1000万 まん 年 ねん 前 まえ にあたる前期 ぜんき 白 はく 亜紀 あき のアルビアン で現在 げんざい のブラジル に生息 せいそく した、スピノサウルス科 か に属 ぞく する獣 しし 脚 あし 類 るい の恐竜 きょうりゅう の属 ぞく 。アラリペ盆地 ぼんち (英語 えいご 版 ばん ) のロムアルド累 るい 層 そう (英語 えいご 版 ばん ) で発見 はっけん されたほぼ完全 かんぜん な頭骨 とうこつ から知 し られ、化石 かせき 商人 しょうにん がこの頭骨 とうこつ を入手 にゅうしゅ して州立 しゅうりつ シュトゥットガルト自然 しぜん 史 し 博物館 はくぶつかん (英語 えいご 版 ばん ) に違法 いほう 販売 はんばい した。1996年 ねん 、この標本 ひょうほん はタイプ種 しゅ Irritator challengeri のタイプ標本 ひょうほん に指定 してい された。属 ぞく 名 めい は「苛立 いらだ ち」を意味 いみ する "irritation" に由来 ゆらい し、頭骨 とうこつ が収集 しゅうしゅう 家 か により酷 ひど く損傷 そんしょう して変造 へんぞう されたと考 かんが えた古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ の感情 かんじょう を反映 はんえい している。種 たね 小名 しょうみょう はアーサー・コナン・ドイル の小説 しょうせつ の架空 かくう の人物 じんぶつ チャレンジャー教授 きょうじゅ への献 けんじ 名 めい である。
1996年 ねん の下半期 しもはんき に記載 きさい された吻部先端 せんたん から知 し られる Angaturama limai をイリタトルのジュニアシノニムの可能 かのう 性 せい があるとみなす研究 けんきゅう 者 しゃ もいる。いずれもアラリペ盆地 ぼんち の同 おな じ層 そう 序 じょ 単位 たんい から産出 さんしゅつ しており、以前 いぜん イリタトルとアンガトラマ の頭骨 とうこつ 部位 ぶい は同 おな じ標本 ひょうほん のものであるとも提唱 ていしょう されていた。この提唱 ていしょう は疑 うたが わしい点 てん もあるが、同 おな じ動物 どうぶつ であるか否 ひ かを確定 かくてい させるためにはさらに重複 じゅうふく した化石 かせき 標本 ひょうほん が必要 ひつよう である。ロムアルド累 るい 層 そう から回収 かいしゅう された他 ほか のスピノサウルス科 か の骨格 こっかく 要素 ようそ にはイリタトルあるいはアンガトラマに属 ぞく しうるものもあり、それを利用 りよう して2009年 ねん にブラジル国立 こくりつ 博物館 はくぶつかん の展示 てんじ 用 よう にレプリカ骨格 こっかく が製作 せいさく された。
イリタトルは全長 ぜんちょう 6 - 8メートル、体重 たいじゅう 約 やく 1トンと推定 すいてい され、最小 さいしょう のスピノサウルス科 か の1つである。上下 じょうげ に浅 あさ く細長 ほそなが い吻部には、鋸歯 きょし 状 じょう 構造 こうぞう を持 も たず真 ま っ直 す ぐな円錐 えんすい 形 がた の歯 は が並 なら んでいた。頭部 とうぶ の縦 たて 方向 ほうこう には矢 や 状 じょう 隆起 りゅうき が走 はし り、そこに強力 きょうりょく な首 くび の筋肉 きんにく が固定 こてい されていた可能 かのう 性 せい が高 たか い。外 そと 鼻孔 びこう は吻部先端 せんたん から遥 はる か後方 こうほう に位置 いち し、堅 かた い二 に 次 じ 口蓋 こうがい は摂食 せっしょく の際 さい に顎 あご を強化 きょうか していた。亜 あ 成体 せいたい の Irritator challengeri のホロタイプ標本 ひょうほん は、これまでに発見 はっけん された中 なか で最 もっと も完全 かんぜん に保存 ほぞん されたスピノサウルス科 か の頭骨 とうこつ である。アンガトラマの吻部先端 せんたん はロゼット状 じょう の形状 けいじょう で側 がわ 方 かた へ広 ひろ がり、長 なが い歯 は と高 たか い鶏冠 けいかん を持 も っていた。他 た のスピノサウルス科 か と同様 どうよう に、第 だい 1指 ゆび の鉤 かぎ 爪 つめ が肥大 ひだい して背中 せなか には帆 ほ が走 はし っていたことが、おそらくイリタトルのものである骨格 こっかく から示唆 しさ されている。
イリタトルは当初 とうしょ 誤 あやま って翼 つばさ 竜 りゅう とされた後 のち 、マニラプトル類 るい の恐竜 きょうりゅう とされ、1996年 ねん にスピノサウルス科 か の恐竜 きょうりゅう として同定 どうてい された。ホロタイプ標本 ひょうほん の頭骨 とうこつ が完全 かんぜん に揃 そろ った後 のち 、2002年 ねん の再 さい 記載 きさい で分類 ぶんるい が確定 かくてい した。イリタトルとアンガトラマはいずれもスピノサウルス亜 あ 科 か に属 ぞく する。イリタトルは現在 げんざい のワニのようにジェネラリストの捕食 ほしょく 動物 どうぶつ であったことが提案 ていあん されており、主 おも に魚類 ぎょるい 、他 た には仕留 しと められる小型 こがた 動物 どうぶつ を捕食 ほしょく していた可能 かのう 性 せい がある。化石 かせき 証拠 しょうこ としては、翼 つばさ 竜 りゅう を狩 か るかその死体 したい を漁 あさ るかして捕食 ほしょく した個体 こたい が知 し られている。イリタトルは半 はん 水棲 すいせい の可能 かのう 性 せい があり、乾燥 かんそう 地域 ちいき に囲 かこ まれた沿岸 えんがん のラグーン の熱帯 ねったい 環境 かんきょう に生息 せいそく していた。本属 ほんぞく は他 た の肉食 にくしょく 獣 じゅう 脚 あし 類 るい だけでなくカメ やワニ 、大量 たいりょう の翼 つばさ 竜 りゅう や魚類 ぎょるい と共存 きょうぞん していた。
研究 けんきゅう の歴史 れきし [ 編集 へんしゅう ]
3つのスピノサウルス亜 あ 科 か 標本 ひょうほん が発見 はっけん されたブラジルの北東 ほくとう 部 ぶ 地域 ちいき を示 しめ す地図 ちず 。アラリペ盆地 ぼんち (英語 えいご 版 ばん ) と São Luís-Grajaú 盆地 ぼんち で、上 うえ から順 じゅん にオキサライア 、イリタトル、アンガトラマ
商業 しょうぎょう 化石 かせき 盗掘 とうくつ 者 しゃ がブラジル北東 ほくとう 部 ぶ 地域 ちいき のサンタナ・ドゥ・カリリ (英語 えいご 版 ばん ) の街 まち 近 ちか くで白亜 はくあ のコンクリーションを発掘 はっくつ し、巨大 きょだい な頭骨 とうこつ の後 のち 側部 そくぶ 分 ぶん を入手 にゅうしゅ した。化石 かせき の売買 ばいばい は1942年 ねん からブラジルの法律 ほうりつ により禁止 きんし されていた[1] が、この化石 かせき は商人 しょうにん により違法 いほう に[2] ドイツの州立 しゅうりつ シュトゥットガルト自然 しぜん 史 し 博物館 はくぶつかん (英語 えいご 版 ばん ) のルパート・ワイルドへ売却 ばいきゃく した[2] 。チャパダ・ドゥ・アラリペ (英語 えいご 版 ばん ) 地域 ちいき は豊富 ほうふ な翼 つばさ 竜 りゅう で有名 ゆうめい であり、よくドイツの博物館 はくぶつかん が翼 つばさ 竜 りゅう を購入 こうにゅう していたため、この時 とき に頭骨 とうこつ は巨大 きょだい な基盤 きばん 的 てき 翼 つばさ 竜 りゅう のものと想定 そうてい された。非常 ひじょう に重要 じゅうよう でユニークな発見 はっけん であることが確約 かくやく され、ドイツとイギリスの翼 つばさ 竜 りゅう の専門 せんもん 家 か がコンタクトを取 と ってサンプルの研究 けんきゅう を始 はじ めた。論文 ろんぶん 執筆 しっぴつ 者 しゃ であるドイツの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ エバーハード・フレイとハンス・ディーター・スース (英語 えいご 版 ばん ) はこの標本 ひょうほん を翼 つばさ 竜 りゅう のものとする論文 ろんぶん を提出 ていしゅつ した後 のち 、査読 さどく によりこの化石 かせき が獣 しし 脚 あし 類 るい の恐竜 きょうりゅう のものであると提唱 ていしょう され否定 ひてい された[3] 。
マーティルらの1996年 ねん の解釈 かいしゃく [2] に基 もと づくホロタイプ標本 ひょうほん 頭骨 とうこつ の旧 きゅう 復元 ふくげん (上 うえ )。この復元 ふくげん に基 もと づいた記載 きさい (下 した に似 に る)は後 のち に数 すう 多 おお くの恐竜 きょうりゅう の書籍 しょせき や百科 ひゃっか 事典 じてん に掲載 けいさい された[4] [5] [6] [7]
頭骨 とうこつ はある程度 ていど 側 がわ 方 かた へ平 ひら たく、化石 かせき にはよくあることであるが部分 ぶぶん 的 てき に破損 はそん している。右側 みぎがわ は保存 ほぞん が良 よ く、一方 いっぽう で左側 ひだりがわ は収集 しゅうしゅう の間 あいだ に酷 ひど く損傷 そんしょう を受 う けた。頭骨 とうこつ の最 さい 後部 こうぶ 上側 うわがわ 表面 ひょうめん は侵食 しんしょく を受 う け、下 しも 顎 あご は前 ぜん 端 はし を失 うしな い、いずれも化石 かせき 化 か の際 さい の破損 はそん に起因 きいん する。また、標本 ひょうほん の一部 いちぶ は泥 どろ 灰 はい 岩 がん のコンクリーション により割 わ れている。上顎 じょうがく の先端 せんたん も紛失 ふんしつ しており、ここには侵食 しんしょく の痕跡 こんせき が見 み られないことから、化石 かせき のコンクリーションの間 あいだ か後 のち に破損 はそん した可能 かのう 性 せい が最 もっと も高 たか い。特定 とくてい の骨 ほね が腐食 ふしょく を示 しめ していることから、酸 さん 処理 しょり が試 こころ みられたことが示唆 しさ されている。頭蓋骨 ずがいこつ の中央 ちゅうおう には垂直 すいちょく な骨折 こっせつ があり、自動車 じどうしゃ の車体 しゃたい 用 よう 充填 じゅうてん 剤 ざい で塞 ふさ がれていたようである[8] 。より完全 かんぜん で価値 かち のあるように見 み せかけるため、化石 かせき 商人 しょうにん は頭蓋骨 ずがいこつ を石膏 せっこう でひどく隠 かく しており[2] 、これは特 とく に魚類 ぎょるい 化石 かせき などに使用 しよう される、チャパダ・ドゥ・アラリペの地元 じもと 収集 しゅうしゅう 家 か の間 あいだ で広 ひろ く普及 ふきゅう した手法 しゅほう であった[9] 。バイヤーは違法 いほう に収集 しゅうしゅう された標本 ひょうほん の変造 へんぞう に気付 きづ かず[1] 、CTスキャンのためイギリスの大学 だいがく に送 おく られて初 はじ めて、収集 しゅうしゅう 家 か が上顎 じょうがく 骨 こつ の一部 いちぶ を鼻 はな の前 まえ の部分 ぶぶん に移 うつ して頭骨 とうこつ を新 あら たに組 く み立 た てていたことが判明 はんめい した[2] 。古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ デイヴィッド・M・マーティル、アーサー・R・I・クルックシャンク、エバーハード・フレイ、フィリップ・G・スモール、マルコム・クラークが科学 かがく 的 てき に記載 きさい し、SMNS 58022 に指定 してい された頭骨 とうこつ は1996年 ねん に新 しん 属 ぞく 新種 しんしゅ Irritator challengeri のホロタイプ標本 ひょうほん となった。同 どう 論文 ろんぶん においてマーティルらは属 ぞく 名 めい の由来 ゆらい について「苛立 いらだ ち、吻部が人工 じんこう 的 てき に伸 の ばされたと知 し った時 とき の論文 ろんぶん 著者 ちょしゃ の抱 だ いた感情 かんじょう に由来 ゆらい する」と綴 つづ った[2] 。種 たね 小名 しょうみょう はアーサー・コナン・ドイル の小説 しょうせつ 『失 うしな われた世界 せかい 』の登場 とうじょう 人物 じんぶつ チャレンジャー教授 きょうじゅ にちなんで命名 めいめい された[2] 。その2年 ねん 前 まえ には、フレイとマーティルはクラト累 るい 層 そう (英語 えいご 版 ばん ) から産出 さんしゅつ した新種 しんしゅ の翼 つばさ 竜 りゅう アーサーダクティルス (英語 えいご 版 ばん ) を小説 しょうせつ 家 か 自身 じしん にちなんで命名 めいめい していた[10] 。
マーティルらが最初 さいしょ に Irritator challengeri を記載 きさい した際 さい 、ホロタイプは大 だい 部分 ぶぶん がまだ石灰岩 せっかいがん の母 はは 岩 がん に入 はい っていた。トロント大学 だいがく の研究 けんきゅう 者 しゃ ディアン・M・スコットはは完全 かんぜん に頭骨 とうこつ をクリーニングする作業 さぎょう を引 ひ き受 う け、2002年 ねん に詳細 しょうさい な再 さい 記載 きさい を行 おこな った。完全 かんぜん に取 と り出 だ された標本 ひょうほん に基 もと づいて2002年 ねん にスース、フレイ、マーティルが執筆 しっぴつ した精査 せいさ では、マーティルらのオリジナルの観察 かんさつ は否定 ひてい され、損傷 そんしょう した上 うえ に大 だい 部分 ぶぶん が隠 かく れていた頭骨 とうこつ の誤解 ごかい に基 もと づいたものとされた。完全 かんぜん な頭骨 とうこつ は原 げん 記載 きさい よりも24センチメートル短 みじか いと見積 みつ もられた。元々 もともと 卓越 たくえつ した頭部 とうぶ の鶏冠 けいかん と考 かんが えられていたものは、結合 けつごう していない不 ふ 確定 かくてい な骨 ほね の断片 だんぺん であると判明 はんめい した。さらに、追加 ついか の頭骨 とうこつ が同定 どうてい された。以前 いぜん の研究 けんきゅう と同様 どうよう に、スースらはアフリカのスピノサウルス 属 ぞく をイリタトルに最 もっと も近 きん 縁 えん な分類 ぶんるい 群 ぐん とみなした。この根拠 こんきょ として、主 おも に真 ま っ直 す ぐな円錐 えんすい 形 がた の歯 は 冠 かんむり 、薄 うす いエナメル質 しつ 、はっきりとしていて鋸歯 きょし 状 じょう 構造 こうぞう を持 も たない縁 えん 、縦 たて 方向 ほうこう の溝 みぞ といった特徴 とくちょう が両 りょう 属 ぞく に共通 きょうつう していたことが挙 あ げられる。当時 とうじ スピノサウルスの頭骨 とうこつ はほとんど理解 りかい が進 すす んでいなかったため、これらの類似 るいじ 点 てん を受 う けた論文 ろんぶん 著者 ちょしゃ はイリタトルをスピノサウルスの潜在 せんざい 的 てき ジュニアシノニム であると提唱 ていしょう した。スースらはさらなる重複 じゅうふく した頭骨 とうこつ 要素 ようそ を要 よう すると綴 つづ った[8] 。スピノサウルスの頭骨 とうこつ の研究 けんきゅう が進 すす んだため、後 ご の研究 けんきゅう で両者 りょうしゃ は別 べつ 属 ぞく に分 わ けられたままとなった[11] [12] [13] 。
発見 はっけん 地 ち は定 さだ かではないが、標本 ひょうほん はおそらくかつてロムアルド層 そう 群 ぐん サンタナ累 るい 層 そう (英語 えいご 版 ばん ) に指定 してい されていたロムアルド累 るい 層 そう (英語 えいご 版 ばん ) から産出 さんしゅつ した[2] 。この割 わ り当 あ てはロムアルド累 るい 層 そう で発見 はっけん された貝 かい 虫 ちゅう Pattersoncypris の微 ほろ 化石 かせき とイクチオデクテス科 か (英語 えいご 版 ばん ) のクラドキクルス (英語 えいご 版 ばん ) のウロコから確 たし かめられた。地元 じもと 化石 かせき 商人 しょうにん へ質問 しつもん したところ、チャパダ・ドゥ・アラリペの脇 わき に位置 いち するサンタナ・ドゥ・カリリに近 ちか い Buxexé 村 むら の近 ちか く、標高 ひょうこう 約 やく 650メートル地点 ちてん に産地 さんち があるという手 て がかりが得 え られた。ロムアルド累 るい 層 そう は実際 じっさい にそこで露出 ろしゅつ しており、ホロタイプを含 ふく む母 はは 岩 がん もそれらも岩 いわ と同 おな じ色 しょく と質感 しつかん であることから、この産地 さんち がおそらく化石 かせき の発見 はっけん 地 ち とみなせる[8] 。Irritator challengeri はロムアルド累 るい 層 そう から初 はじ めて記載 きさい された恐竜 きょうりゅう であり、ホロタイプ標本 ひょうほん は知 し られているスピノサウルス科 か 頭骨 とうこつ の中 なか で最 もっと も完全 かんぜん に保存 ほぞん されたものである[2] [11] 。
知 し られているイリタトルの頭骨 とうこつ 要素 ようそ 。古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ ジェイミー・A・ヘイデンによる解釈 かいしゃく で、吻部先端 せんたん はアンガトラマの標本 ひょうほん に由来 ゆらい する
Angaturama limai は Irritator challengeri と同 おな じ時代 じだい と場所 ばしょ に生息 せいそく した別 べつ のスピノサウルス科 か 恐竜 きょうりゅう で、1996年 ねん 2月 がつ にブラジルの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ アレクサンダー・ケルナー とディオゲンス・デ・アルメディア・カンポスにより記載 きさい された。現在 げんざい ではサンパウロ大学 だいがく で USP GP/2T-5 の標本 ひょうほん 番号 ばんごう が与 あた えられたホロタイプ標本 ひょうほん は、ロムアルド累 るい 層 そう から産出 さんしゅつ して孤立 こりつ した吻部の先端 せんたん からなる。標本 ひょうほん は元々 もともと 翼 つばさ 竜 りゅう 化石 かせき のために開発 かいはつ された技術 ぎじゅつ を用 もち いて白 はく 亜紀 あき のノジュール から取 と り出 だ された。属 ぞく 名 めい はブラジル先住民 せんじゅうみん のトゥピ人 じん (英語 えいご 版 ばん ) の守護 しゅご 霊 れい Angaturama を反映 はんえい し、種 たね 小名 しょうみょう は1991年 ねん に標本 ひょうほん をケルナーに教 おし えたブラジルの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ ムリロ・R・デ・リマへの献 けんじ 名 めい である[14] 。
Irritator challengeri と Angaturama limai のホロタイプ。後者 こうしゃ の頭骨 とうこつ が大型 おおがた で、左 ひだり 第 だい 3上顎 じょうがく 歯 は が重複 じゅうふく しているのが分 わ かる。2017年 ねん にセイルズとシュルツにより提唱 ていしょう された
1997年 ねん 、イギリスの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ アラン・J・カリグ (英語 えいご 版 ばん ) とアンジェラ・ミルナー (英語 えいご 版 ばん ) はアンガトラマがイリタトルのジュニアシノニムである可能 かのう 性 せい が高 たか いと考 かんが え、両 りょう 属 ぞく が奥 おく に位置 いち する外 そと 鼻孔 びこう や長 なが い顎 あご 、特徴 とくちょう 的 てき なスピノサウルス科 か の歯 は 列 れつ を持 も つことを記 しる した[15] 。ポール・セレノ らは1998年 ねん にこの可能 かのう 性 せい に同意 どうい し、アンガトラマのホロタイプ標本 ひょうほん がイリタトルのホロタイプ標本 ひょうほん に揃 そろ う、即 すなわ ち両者 りょうしゃ が同 おな じ標本 ひょうほん に属 ぞく しうると意見 いけん した[16] 。エリック・ビュフェトー (英語 えいご 版 ばん ) とモハメド・クアジャは2002年 ねん [17] 、クリスティアーノ・ダル・サッソ (英語 えいご 版 ばん ) らが2015年 ねん [13] 、トル・G・バーティンが2010年 ねん [18] 、ダレン・ナイシュ が2013年 ねん [19] 、マダニ・ベンユーセフらが2015年 ねん にこの結論 けつろん を支持 しじ した[20] 。彼 かれ らのイリタトルの再 さい 記載 きさい で、いずれのホロタイプ標本 ひょうほん も同 どう 程度 ていど に細 ほそ く、鋸歯 きょし 状 じょう でない縁 えん を持 も つ横 よこ に丸 まる みを帯 お びた歯 は を共有 きょうゆう するとスースらは指摘 してき した。また、彼 かれ らはアンガトラマの前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ の矢 や 状 じょう 隆起 りゅうき はイリタトルの鼻骨 びこつ に対応 たいおう する可能 かのう 性 せい があると記載 きさい した[8] 。これらの主張 しゅちょう には異議 いぎ が唱 とな えられてもいる。ケルナーとカンポスが2000年 ねん 、ブラジルの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ エライン・B・マカドとケルナーが2005年 ねん に、化石 かせき は2つの異 こと なる属 ぞく に由来 ゆらい していて Angaturama limai のホロタイプは Irritator challengeri のものより明確 めいかく に側 がわ 方 かた へ平 ひら たいと意見 いけん を表明 ひょうめい した[3] [21] 。
ブラジルの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ マルコス・A・F・セイルズとシーザー・L・シュルツによる2017年 ねん の両 りょう 化石 かせき の評価 ひょうか では、保存 ほぞん という他 た の観点 かんてん でも両 りょう 標本 ひょうほん が別物 べつもの であるとされた。イリタトルの標本 ひょうほん は明 あか るい色 いろ で垂直 すいちょく に割 わ れ目 め が入 はい り、一方 いっぽう でアンガトラマの標本 ひょうほん は多 おお くの空洞 くうどう がある。また、イリタトルのホロタイプの歯 は への損傷 そんしょう は遥 はる かに少 すく ない。さらにセイルズとシュルツは左 ひだり 第 だい 3上顎 じょうがく 骨 こつ が重複 じゅうふく すると発見 はっけん したほか、近 きん 縁 えん なバリオニクス のプロポーションに基 もと づくとアンガトラマの頭骨 とうこつ はイリタトルのものよりも大型 おおがた であるとも意見 いけん した。これを以 もっ て彼 かれ らは二 ふた つの標本 ひょうほん は同 おな じ個体 こたい に属 ぞく さないと結論 けつろん づけ、属 ぞく レベルのシノニムの判定 はんてい にはさらに広 ひろ く重複 じゅうふく した化石 かせき が必要 ひつよう だと記 しる した。アンガトラマとイリタトルが同属 どうぞく とみなされる場合 ばあい 、イリタトルがほぼ1ヶ月 かげつ 先 さき に命名 めいめい されたため、先取 せんしゅ 権 けん の原則 げんそく によりイリタトルが有効 ゆうこう な学名 がくめい となる[11] 。
頭蓋 とうがい 後方 こうほう 要素 ようそ とさらなる発見 はっけん [ 編集 へんしゅう ]
スピノサウルス亜 あ 科 か の骨盤 こつばん と仙 せん 椎 しい (標本 ひょうほん 番号 ばんごう MN 4819-V)。ブラジル国立 こくりつ 博物館 はくぶつかん
頭骨 とうこつ 要素 ようそ と孤立 こりつ した歯 は の他 ほか に、ロムアルド累 るい 層 そう には頭骨 とうこつ よりも後方 こうほう のスピノサウルス科 か に由来 ゆらい する骨格 こっかく が産出 さんしゅつ している。多 おお くは未 み 記載 きさい であり、さらに全 すべ てがスピノサウルス亜 あ 科 か に関連 かんれん する[22] 。2004年 ねん に脊柱 せきちゅう の一部 いちぶ MN 4743-V が累 るい 層 そう で発掘 はっくつ され、ブラジルの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ ジョナサン・ビッテンコートとケルナーが構造 こうぞう に基 もと づいてスピノサウルス科 か と想定 そうてい した。この標本 ひょうほん がイリタトルとアンガトラマのいずれに分類 ぶんるい されるかは、両 りょう 属 ぞく が頭骨 とうこつ のみに基 もと づいているため不 ふ 確定 かくてい である[23] 。2007年 ねん にマカドとケルナーは暫定 ざんてい 的 てき に肋骨 あばらぼね 断片 だんぺん MN 7021-V をスピノサウルス科 か に割 わ り当 あ てた[22] が、ロムアルド累 るい 層 そう から得 え られた最 もっと も完全 かんぜん なスピノサウルス標本 ひょうほん は頭骨 とうこつ を失 うしな った骨格 こっかく 断片 だんぺん MN 4819-V である[24] 。1991年 ねん に初 はじ めて報告 ほうこく されたこの標本 ひょうほん はケルナーにより2001年 ねん にスピノサウルス科 か に割 わ り当 あ てられた。その根拠 こんきょ は仙 せん 椎 しい の神経 しんけい 棘 とげ 、肥大 ひだい した前肢 ぜんし の鉤 かぎ 爪 つめ であった[22] [23] [25] 。骨格 こっかく は2010年 ねん にマカドによる未 み 発表 はっぴょう の修士 しゅうし 論文 ろんぶん で完全 かんぜん に記載 きさい された[26] 。2013年 ねん に言及 げんきゅう された不完全 ふかんぜん な後肢 あとあし MPSC R-2089 もスピノサウルス科 か に関係 かんけい する可能 かのう 性 せい がある[27] 。2018年 ねん 、ティト・オーレリアノと彼 かれ のチームが特大 とくだい 個体 こたい の左 ひだり 腸 ちょう 骨 こつ の一部 いちぶ LPP-PV-0042 を記載 きさい した[22] 。アラリペ盆地 ぼんち (英語 えいご 版 ばん ) 産 さん の化石 かせき にはよくあることだが、ロムアルド累 るい 層 そう から産出 さんしゅつ したスピノサウルス科 か の骨 ほね 要素 ようそ の大 だい 多数 たすう は、化石 かせき の違法 いほう 取引 とりひき のため管理 かんり されていない状況 じょうきょう 下 か で収集 しゅうしゅう されたものである。そのため、部分 ぶぶん 的 てき に損傷 そんしょう し、地理 ちり 学 がく 的 てき フィールドデータの揃 そろ っていない標本 ひょうほん も多 おお い[9] [22] [28] 。
頭骨 とうこつ よりも後方 こうほう のロムアルド累 るい 層 そう の骨格 こっかく にはアンガトラマのレプリカ骨格 こっかく の製作 せいさく の基盤 きばん に用 もち いられたものもあり、レプリカは後 のち にリオデジャネイロ大学 だいがく の所有 しょゆう するブラジル国立 こくりつ 博物館 はくぶつかん で組 く み立 た てられた[29] 。骨格 こっかく は顎 あご でアンハングエラ科 か (英語 えいご 版 ばん ) の翼 つばさ 竜 りゅう を運 はこ ぶ様子 ようす を示 しめ した[19] 。同 どう 標本 ひょうほん は2009年 ねん 3月 がつ に開催 かいさい された Dinossauros no Sertão (セルトン の恐竜 きょうりゅう )展 てん の目玉 めだま 展示 てんじ となり、展示 てんじ された初 はじ めてのブラジル産 さん 大型 おおがた 肉食 にくしょく 恐竜 きょうりゅう となった[29] 。骨盤 こつばん や仙 せん 椎 しい の化石 かせき を含 ふく むオリジナルの頭 あたま より後方 こうほう の要素 ようそ には、組 く み立 た てられた骨格 こっかく マウントともに展示 てんじ されたものもあった[19] [30] 。特別 とくべつ 展 てん 開幕 かいまく のプレスリリース で、ケルナーは MN 4819-V がアンガトラマに属 ぞく すと非公式 ひこうしき に暗示 あんじ した[29] 。また、これは標本 ひょうほん が骨格 こっかく マウントに含 ふく まれることにも反映 はんえい されている[19] 。2011年 ねん には、ブラジル産 さん の3番目 ばんめ のスピノサウルス科 か Oxalaia quilombensi がサオ・ルイス盆地 ぼんち イタペクル層 そう 群 ぐん アルカンターラ累 るい 層 そう (英語 えいご 版 ばん ) から記載 きさい ・命名 めいめい された。この大型 おおがた 種 しゅ は孤立 こりつ した吻部先端 せんたん と上顎 じょうがく 断片 だんぺん のみから知 し られ、イリタトルやアンガトラマから約 やく 6000万 まん 年 ねん から9000万 まん 年 ねん 後 ご のセノマニアン 期 き に生息 せいそく した。Oxalaia quilombensis は広 ひろ く丸 まる みを帯 お びた吻部と前 ぜん 上顎 じょうがく 歯 ぱ に鋸歯 きょし 状 じょう 構造 こうぞう がない点 てん で Angaturama limai と異 こと なる[31] 。2018年 ねん 9月 がつ 、ブラジル国立 こくりつ 博物館 はくぶつかん で火災 かさい が発生 はっせい し、化石 かせき コレクションも大 だい 規模 きぼ な破壊 はかい を受 う け、おそらく展示 てんじ されていたアンガトラマの骨格 こっかく と化石 かせき も失 うしな われた[32] 。Oxalaia quilombensis のホロタイプ標本 ひょうほん は同 おな じ建物 たてもの に保管 ほかん されていたため、これも火災 かさい で破壊 はかい された可能 かのう 性 せい がある[33] 。
スピノサウルス科 か とヒトの大 おお きさ比較 ひかく 。イリタトルは紫色 むらさきいろ
全長 ぜんちょう を最大限 さいだいげん 見積 みつ もっても、イリタトルは知 し られているスピノサウルス科 か の中 なか で最小 さいしょう であった。グレゴリー・ポール はその全長 ぜんちょう を7.5メートル、体重 たいじゅう を1トンと計算 けいさん した[34] 。トーマス・R・ホルツ・ジュニア (英語 えいご 版 ばん ) はそれを上回 うわまわ る推定 すいてい をしており、全長 ぜんちょう 8メートル、体重 たいじゅう 0.9 - 3.6トンと見積 みつ もった[35] [36] 。ドゥーガル・ディクソン による見積 みつ もりは低 ひく い値 ね を示 しめ し、全長 ぜんちょう 6メートル、体高 たいこう 2メートルと推定 すいてい された[37] 。オーレリアノらは比率 ひりつ を調整 ちょうせい し、セイルズとシュルツによる研究 けんきゅう の復元 ふくげん から Irritator challengeri のホロタイプを全長 ぜんちょう 6.5メートル、Angaturama limai のホロタイプを全長 ぜんちょう 8.3メートルとした[22] 。以前 いぜん のホロタイプ標本 ひょうほん の頭骨 とうこつ はまだ完全 かんぜん には癒合 ゆごう しておらず、この標本 ひょうほん が亜 あ 成体 せいたい のものであることが示唆 しさ されている[8] 。スピノサウルス亜 あ 科 か の部分 ぶぶん 的 てき 骨格 こっかく MN 4819-V は中型 ちゅうがた サイズの個体 こたい で、マカドにより全長 ぜんちょう 5 - 6メートルと見積 みつ もられた[26] 。この標本 ひょうほん に由来 ゆらい する数 すう 多 おお くの要素 ようそ がブラジル国立 こくりつ 博物館 はくぶつかん の骨格 こっかく マウントに組 く み込 こ まれており、骨格 こっかく は全長 ぜんちょう 6メートル、体高 たいこう 2メートルであった[19] [29] 。しかし、ロムアルド累 るい 層 そう 産 さん のスピノサウルス科 か はおそらくさらに大型 おおがた のサイズに達 たっ していた。LPP-PV-0042 は腸 ちょう 骨 こつ 断片 だんぺん のみに代表 だいひょう されるが、オーレリアノらは全長 ぜんちょう 約 やく 10メートルと推定 すいてい した。骨 ほね 組織 そしき からこの個体 こたい は亜 あ 成体 せいたい であったことが示唆 しさ されており、そのため成熟 せいじゅく した個体 こたい はさらに大型 おおがた であった[22] 。
Irritator challengeri ホロタイプの解剖 かいぼう 学 がく [ 編集 へんしゅう ]
左 ひだり と右 みぎ から見 み た Irritator challengeri のホロタイプ
Irritator challengeri のホロタイプ頭骨 とうこつ は特定 とくてい 部位 ぶい が酷 ひど く損傷 そんしょう しているが、大 おお まかには完全 かんぜん であり、失 うしな われている部位 ぶい は吻部先端 せんたん と下 した 顎骨 がっこつ の前方 ぜんぽう 部位 ぶい のみである。保存 ほぞん された頭骨 とうこつ は高 たか さ16.5センチメートル、幅 はば 10センチメートルであり、完全 かんぜん な頭骨 とうこつ 長 ちょう はバリオニクス に基 もと づいて60センチメートルと推定 すいてい された。イリタトルの頭骨 とうこつ は長 なが く、狭 せま く、断面 だんめん はある程度 ていど 三角形 さんかっけい をなしていた。脳 のう 頭蓋 とうがい は後方 こうほう に傾 かたむ き、長 なが さよりも深 ふか さがあった。そこから上下 じょうげ に低 ひく い吻部が長 なが く伸 の び、両側 りょうがわ が比較的 ひかくてき 平坦 へいたん でわずかに頭骨 とうこつ の正中 せいちゅう 線 せん に曲 ま がっていた[8] 。対 たい をなす前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ の後端 こうたん だけが完全 かんぜん であり、外 そと 鼻孔 びこう の上下 じょうげ 境界 きょうかい の前方 ぜんぽう を形成 けいせい した。全 すべ てのスピノサウルス科 か と同様 どうよう に、上顎 じょうがく 骨 こつ は外 そと 鼻孔 びこう を過 す ぎてその下 した に伸 の びており、長 なが く低 ひく い枝 えだ は外 がい 鼻孔 びこう の下 した 側 がわ 境界 きょうかい をなし、前上 まえかみ 顎骨 がっこつ と鼻骨 びこつ をその位置 いち で分 わ けていた。イリタトルの上顎 じょうがく 洞 ほら はアロサウルス と同様 どうよう に大型 おおがた の楕円 だえん 形 がた 開口 かいこう 部 ぶ を持 も った。全 すべ てのスピノサウルス科 か と同様 どうよう に外 そと 鼻孔 びこう は楕円 だえん 形 がた で、典型 てんけい 的 てき な獣 しし 脚 あし 類 るい よりも遥 はる か後方 こうほう に位置 いち していた。イリタトルの外 そと 鼻孔 びこう は相対 そうたい 的 てき ・絶対 ぜったい 的 てき にスコミムス やバリオニクス のものよりも小 ちい さかったが、スピノサウルス のものよりは大型 おおがた であった[8] [11] 。眼窩 がんか の後 うし ろに開 ひら いた孔 あな である下 した 側 がわ 頭 あたま 窓 まど は非常 ひじょう に大 おお きい一方 いっぽう 、目 め の前 まえ に開 ひら いた上側 うわがわ 頭 あたま 窓 まど は細長 ほそなが い楕円 だえん 形 がた であった。眼窩 がんか 自体 じたい は眼球 がんきゅう の位置 いち した最 さい 上部 じょうぶ で底 そこ よりも深 ふか く広 ひろ かった。涙 なみだ 骨 こつ は眼窩 がんか を前 ぜん 眼窩 がんか 窓 まど と分 わ け、40°で閉 と じる2つの突起 とっき で前 ぜん 眼窩 がんか 窓 まど の上下 じょうげ 後方 こうほう 縁 えん を形成 けいせい した。この角度 かくど は35°のバリオニクスのものに似 に ていた。バリオニクスと違 ちが い、イリタトルの涙 なみだ 骨 こつ は骨 ほね の角 かく を形成 けいせい しなかった。前 ぜん 眼窩 がんか 骨 こつ は大型 おおがた かつ頑丈 がんじょう で、その後 うし ろに位置 いち する薄 うす い前 ぜん 頭骨 とうこつ は最 さい 上部 じょうぶ で滑 なめ らかかつ凹状で、いずれもが眼窩 がんか の上部 じょうぶ 縁 えん を形成 けいせい した[8] 。
イリタトルとアンガトラマの標本 ひょうほん を結合 けつごう させた生態 せいたい 復元 ふくげん 図 ず
薄 うす い矢 や 状 じょう 隆起 りゅうき が長 なが い鼻骨 びこつ から構成 こうせい されており、頭骨 とうこつ の正中 せいちゅう 線 せん を走 はし って目 め の真上 まうえ の平坦 へいたん な膨 ふく らみで止 と まる[8] 。イリタトルの矢 や 状 じょう 隆起 りゅうき の完全 かんぜん な形状 けいじょう と高 たか さは不明 ふめい だが、頭部 とうぶ の鶏冠 けいかん はスピノサウルス科 か に共通 きょうつう であり、生 い きていた頃 ころ にはおそらく性的 せいてき ディスプレイとして機能 きのう していた[38] 。イリタトルの鶏冠 けいかん の保存 ほぞん された部分 ぶぶん は前 ぜん 眼窩 がんか 窓 まど の最深 さいしん 部 ぶ の真上 まうえ で、スピノサウルスの鶏冠 けいかん に見 み られる垂直 すいちょく な隆起 りゅうき を欠 か いている[13] 。他 た のスピノサウルス科 か と同様 どうよう に、イリタトルには長 なが い骨質 こっしつ の構造 こうぞう が口 くち 二 に 次 じ 口蓋 こうがい として存在 そんざい し、口 くち と鼻腔 びこう を分別 ふんべつ していた。この特徴 とくちょう は現在 げんざい のワニにも観察 かんさつ できるが、大半 たいはん の獣 しし 脚 あし 類 るい 恐竜 きょうりゅう には存在 そんざい しない[8] [39] 。また、他 た の親戚 しんせき と同様 どうよう に、イリタトルの頭蓋 とうがい 天井 てんじょう にはさらに2つ孔 あな (postnasal fenestrae)が開 ひら いているほか、部分 ぶぶん 的 てき にしか分 わ かれていない長 なが い基 もと 翼状 よくじょう 骨 こつ 突起 とっき (口蓋 こうがい 骨 こつ と共 とも に頭蓋 とうがい 腔と繋 つな がる骨 ほね の伸長 しんちょう )があった。下 した 顎 あご の欠損 けっそん は深 ふか く、後 こう 側 がわ 上側 うわがわ 表面 ひょうめん は大 だい 部分 ぶぶん が上角 うえすみ 骨 こつ からなり、上角 うえすみ 骨 こつ は下 した に位置 いち する浅 あさ い角 かく 骨 こつ と関節 かんせつ した。下 した 顎 あご の側面 そくめん に開 ひら いた孔 あな (mandibular fenestra)は楕円 だえん 形 がた 的 てき 比較的 ひかくてき 大型 おおがた だった。下 した 顎 あご で歯 は の生 は えた骨 ほね である歯 は 骨 こつ はイリタトルでは確認 かくにん されておらず、上角 うえすみ 骨 こつ の前 まえ に残骸 ざんがい が残 のこ っている。Irritator challengeri のホロタイプはあぶみ骨 こつ が保存 ほぞん されていた非 ひ 鳥類 ちょうるい 型 がた 恐竜 きょうりゅう 化石 かせき という点 てん でもユニークである[8] 。
イリタトルの上顎 じょうがく と歯 は のクローズアップ
イリタトルの歯 は は円錐 えんすい 形 がた でわずかにのみ湾曲 わんきょく しており、縁 えん は鋭 するど く明瞭 めいりょう であったが鋸歯 きょし 状 じょう ではなかった。縦 たて 方向 ほうこう の溝 みぞ が歯 は 冠 かんむり に存在 そんざい し、これはスピノサウルス科 か には一般 いっぱん 的 てき な歯 は の特徴 とくちょう であった。[8] [11] 。スピノサウルスと同様 どうよう にイリタトルの歯 は は両側 りょうがわ とも溝 みぞ があったが、バリオニクスの歯 は の溝 みぞ は内側 うちがわ にしかなかった。イリタトルの歯 は は断面 だんめん が円形 えんけい で、大半 たいはん の獣 しし 脚 あし 類 るい 恐竜 きょうりゅう の側 がわ 方 かた に平 ひら たい歯 は とは対照 たいしょう 的 てき である。エナメル質 しつ は薄 うす く、きめ細 こま かい皺 しわ の入 はい った手触 てざわ りはバリオニクスでも観察 かんさつ できる。イリタトルの上顎 じょうがく 骨 こつ は左右 さゆう 両方 りょうほう とも9本 ほん の歯 は が保存 ほぞん され、より完全 かんぜん 度 ど の高 たか い左上 ひだりうえ 顎骨 がっこつ 歯 ぱ については母 はは 岩 がん に10番目 ばんめ の歯 は の痕跡 こんせき がある。歯 は は顎 あご へ深 ふか く差 さ し込 こ まれ、上顎 じょうがく 骨 こつ の前方 ぜんぽう へ広 ひろ く間隔 かんかく を開 あ けていた。第 だい 1および第 だい 2上顎 じょうがく 骨 こつ 歯 は が最 もっと も大 おお きく、それぞれ歯 は 冠 かんむり の長 なが さは32ミリメートルと40ミリメートルであった[8] 。残 のこ る7本 ほん は奥 おく に向 む かうにつれ小型 こがた 化 か し、最奥 さいおう の歯 は は歯 は 冠 かんむり 長 ちょう 6ミリメートルと推定 すいてい されている。この標本 ひょうほん に行 おこな われたCTスキャンから、上顎 じょうがく の左右 さゆう 両側 りょうがわ において生 は え変 が わりの歯 は が明 あき らかにされている。生 は え変 が わりの歯 は の歯根 しこん は上顎 じょうがく 骨 こつ に深 ふか く走 はし り、ほぼ頭骨 とうこつ の最 さい 上部 じょうぶ に届 とど くようにして正中 せいちゅう 線 せん 近 ちか くで生 は え変 か わった[2] [8] 。イリタトルの親戚 しんせき との比較 ひかく に基 もと づくと、上顎 じょうがく 骨 こつ はおそらくそれぞれ合計 ごうけい 11本 ほん の歯 は が並 なら んでいた。この値 ね は、スピノサウルスに分類 ぶんるい される上顎 じょうがく 化石 かせき MSNM V4047 の12本 ほん に近 ちか い[11] 。イリタトルの標本 ひょうほん の左上 ひだりうえ 顎骨 がっこつ で最 もっと も奥 おく に位置 いち する歯 は は完全 かんぜん には生 は え出 で ておらず、先端 せんたん だけが視認 しにん できる[8] 。
Angaturama limai ホロタイプの解剖 かいぼう 学 がく [ 編集 へんしゅう ]
様々 さまざま な角度 かくど から見 み た Angaturama limai のホロタイプ
Angaturama limai のホロタイプは上顎 じょうがく の一部 いちぶ のみからなり、対 たい をなす前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ の先端 せんたん と上顎 じょうがく 骨 こつ の最前 さいぜん 端 はし 部 ぶ を構成 こうせい している。標本 ひょうほん は高 たか さ19.2センチメートル、長 なが さ11センチメートル、口蓋 こうがい 領域 りょういき の幅 はば は4 - 5ミリメートルであった。上顎 じょうがく 骨 こつ と前上 まえかみ 顎骨 がっこつ の間 あいだ の縫合 ほうごう 線 せん は前方 ぜんぽう でジグザグ状 じょう で、後方 こうほう で真 ま っ直 す ぐであった。前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ の下 した 側 がわ 縁 えん は凹状で、窪 くぼ みには第 だい 6前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ 歯 ぱ の頂点 ちょうてん が届 とど いた。吻部の前方 ぜんぽう は広 ひろ がり、スピノサウルス科 か に特徴 とくちょう 的 てき なスプーン型 がた 末 まつ 端 はし ロゼットを形成 けいせい した。この前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ の下 した 側 がわ の窪 くぼ みは凸 とつ 状 じょう に肥大 ひだい した下 しも 顎骨 がっこつ 先端 せんたん と噛 か み合 あ わさった[14] 。前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ は互 たが いに最低 さいてい 部 ぶ で繋 つな がり、アンガトラマ の二 に 次 じ 口蓋 こうがい を形成 けいせい した。二 に 次 じ 口蓋 こうがい は上顎 じょうがく 骨 こつ から伸 の びる2つの突起 とっき にも部分 ぶぶん 的 てき に寄与 きよ された[11] 。吻部は側 がわ 方 かた に強 つよ く潰 つぶ れ、前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ は穏 おだ やかに厚 あつ さ1 - 2ミリメートルの矢 や 状 じょう 隆起 りゅうき から最 さい 上部 じょうぶ に向 む けて細 ぼそ くなった。矢 や 状 じょう 隆起 りゅうき は他 た の知 し られているスピノサウルス科 か よりも大型 おおがた かつ前方 ぜんぽう に伸 の びていた。前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ の最 さい 前方 ぜんぽう 上側 うわがわ 境界 きょうかい は小 ちい さく膨 ふく らんで隆起 りゅうき の基部 きぶ に張 は り出 だ した。この膨 ふく らみは見 み たところ上側 うわがわ 表面 ひょうめん が損傷 そんしょう しており、矢 や 状 じょう 隆起 りゅうき の最 さい 上部 じょうぶ がその点 てん よりもさらに上 うわ や前 まえ に伸 の びていた可能 かのう 性 せい が示唆 しさ されている。アンガトラマの吻部の前側 まえがわ 縁 えん は垂直 すいちょく に真 ま っ直 す ぐあるいは窪 くぼ んでおり、これは他 た のスピノサウルス科 か の滑 なめ らかに傾斜 けいしゃ した吻部からすると異様 いよう である[11] [14] 。
前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ では、破損 はそん した歯 は が部分 ぶぶん 的 てき な歯 は 冠 かんむり が発見 はっけん されている。大 おお きく伸 の びた真 ま っ直 す ぐな歯 は には鋸歯 きょし 状 じょう 構造 こうぞう のない円錐 えんすい 形 がた の歯 は 冠 かんむり が備 そな わり、長 なが さ40ミリメートルで、単一 たんいつ で骨 ほね に埋 う め込 こ まれていた。これにより、これに続 つづ く歯 は の配置 はいち は古 ふる い歯 は の間 あいだ に新 あたら しい歯 は が萌 もえ 出 だ したことが示唆 しさ されている。歯槽 しそう から判断 はんだん して、前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ には互 たが いに7本 ほん の歯 は があり、第 だい 3歯 は が最 もっと も大型 おおがた であった。また、上顎 じょうがく 骨 こつ 歯 ぱ の最 さい 前方 ぜんぽう 3本 ほん も保存 ほぞん されていた。前上 まえかみ 顎骨 がっこつ 歯 ぱ は第 だい 1歯 は から第 だい 3歯 は にかけて大型 おおがた 化 か し、第 だい 3歯 は から第 だい 6歯 は にかけて縮 ちぢ み、第 だい 6前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ 歯 ぱ から第 だい 3上顎 じょうがく 骨 こつ 歯 ぱ にかけて再 ふたた び大型 おおがた 化 か した。最後 さいご の前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ 歯 は と最初 さいしょ の上顎 じょうがく 骨 こつ 歯 ぱ の歯 は 間 あいだ 距離 きょり は16センチメートルであった[14] 。
頭 あたま よりも後方 こうほう の骨格 こっかく [ 編集 へんしゅう ]
標本 ひょうほん MN 4819-V の手 て と腕 うで 。知 し られている中 なか で最 もっと も完全 かんぜん なスピノサウルス科 か の手 て
オリジナルのアンガトラマの吻部先端 せんたん と共 とも に骨格 こっかく 要素 ようそ は発見 はっけん されなかったものの、別 べつ の産地 さんち から産出 さんしゅつ した骨格 こっかく 断片 だんぺん MN 4819-V はアンガトラマ属 ぞく に属 ぞく する可能 かのう 性 せい がある[19] [29] 。しかし2つの標本 ひょうほん の間 あいだ に重複 じゅうふく する要素 ようそ がないため、直接的 ちょくせつてき な比較 ひかく は不可能 ふかのう である[24] 。MN 4819-V にはほぼ完全 かんぜん な骨盤 こつばん 、複数 ふくすう の脊椎 せきつい と尾 お 椎 しい 、5つの仙 せん 椎 しい 、右 みぎ の腸 ちょう 骨 こつ と腓骨 ひこつ の断片 だんぺん 、右 みぎ 大腿 だいたい 骨 こつ の大 だい 部分 ぶぶん 、尺 しゃく 骨 こつ の一部 いちぶ があった[22] [24] 。また、ほとんど完全 かんぜん な手 て が知 し られており、中手 なかて 骨 こつ ・指 ゆび 骨 こつ ・手 て 根 ね 骨 こつ ・鉤 かぎ 爪 つめ が含 ふく まれていた。全 すべ てのスピノサウルス科 か と同様 どうよう に、第 だい 1指 ゆび の鉤 かぎ 爪 つめ は強 つよ くカーブしていて巨大 きょだい であった[40] 。
骨盤 こつばん は保存 ほぞん が良 よ く、右側 みぎがわ は左側 ひだりがわ よりも良 よ く関節 かんせつ した。癒合 ゆごう した仙 せん 椎 しい がまだ骨盤 こつばん に付 つ いており、恥骨 ちこつ と坐骨 ざこつ の遠 とお 位 くらい 端 はし は失 うしな われていた[24] 。腸 ちょう 骨 こつ は長 なが さ55.3センチメートルだった[25] 。腸 ちょう 骨 こつ の前 ぜん 寛 ひろし 骨 ほね 臼 うす 翼 つばさ は底 そこ で曲 ま がり、後 こう 寛 ひろし 骨 ほね 臼 うす 翼 つばさ よりも幾分 いくぶん 短 みじか く深 ふか かった。前 ぜん 寛 ひろし 骨 ほね 臼 うす 翼 つばさ は前方 ぜんぽう で大 おお きく、対照 たいしょう 的 てき に後 こう 寛 ひろし 骨 ほね 臼 うす 翼 つばさ は細長 ほそなが かった。後 こう 寛 ひろし 骨 ほね 臼 うす 翼 つばさ の底 そこ に位置 いち する窪 くぼ みである brevis fossa は座骨 ざこつ の後 のち 側 がわ 縁 えん をなした。恥骨 ちこつ には比較的 ひかくてき 大型 おおがた でほぼ閉 と じた閉鎖 へいさ 切 きり 痕 こん があり、恥骨 ちこつ の後方 こうほう 部位 ぶい の下 した 側 がわ 縁 えん で閉鎖 へいさ 神経 しんけい の通 とお り道 みち になっていたことが示唆 しさ されている。仙 せん 椎 しい の上 うえ に突出 とっしゅつ した神経 しんけい 棘 とげ は長 なが く、スピノサウルス科 か に典型 てんけい 的 てき であった[24] 。生 い きていた頃 ころ には、これらは皮膚 ひふ で覆 おお われて背中 せなか に帆 ほ を形成 けいせい していただろう[21] [38] 。MN 4819-V は長 なが く浅 あさ い腸 ちょう 骨 こつ の上側 うわがわ 縁 えん が上 うえ に曲 ま がっていないことからスコミムス と区別 くべつ され[3] [24] 、坐骨 ざこつ の底 そこ にブレード状 じょう の発達 はったつ した閉鎖 へいさ 隆起 りゅうき を持 も つことでバリオニクス と区別 くべつ される[24] 。
マーティルと彼 かれ のチームは元々 もともと イリタトルをマニラプトル類 るい の Bullatosauria(現在 げんざい では単 たん 系統 けいとう 群 ぐん と考 かんが えられていない分類 ぶんるい 群 ぐん [41] )に分類 ぶんるい し、羽毛 うもう の生 は えた[42] [43] オルニトミモサウルス類 るい やトロオドン科 か と近 きん 縁 えん とした。歯 は の形態 けいたい 、特 とく に長 なが い吻部、そしてヒレ状 じょう の鶏冠 けいかん が他 た のマニラプトル類 るい に知 し られていなかったため、研究 けんきゅう 者 しゃ は新 あたら しい科 か としてマニラプトル類 るい にイリタトル科 か を設立 せつりつ した。彼 かれ らはイリタトルとスピノサウルスが似 に た形状 けいじょう で鋸歯 きょし 状 じょう でない歯 は を持 も つという類似 るいじ 性 せい を認 みと めたが、スピノサウルスの下 しも 顎 あご はイリタトルの上顎 じょうがく と一致 いっち せず、コンプソグナトゥス やオルニトレステス のような他 ほか の非 ひ 鳥類 ちょうるい 型 がた 恐竜 きょうりゅう も鋸歯 きょし 状 じょう 構造 こうぞう のない歯 は を持 も っていたと記述 きじゅつ した[2] 。ケルナーは、頬骨 ほおぼね が前 ぜん 眼窩 がんか 窓 まど の一部 いちぶ を形成 けいせい するという当時 とうじ のマニラプトル類 るい に見 み られる固有 こゆう 派生 はせい 形質 けいしつ を欠 か いていると発見 はっけん し、1996年 ねん にマーティルらの研究 けんきゅう に疑問 ぎもん を投 な げかけた。また、彼 かれ は Irritator challengeri のホロタイプに吻部先端 せんたん がないためスピノサウルスの歯 は 骨 こつ が一致 いっち するか否 ひ かを知 し るのは不可能 ふかのう であろうとも指摘 してき した。スピノサウルスとの比較 ひかく に基 もと づき、ケルナーはイリタトルをスピノサウルス科 か とし、イリタトル科 か をスピノサウルス科 か のジュニアシノニムとした[44] 。イリタトルはその後 ご アンガトラマ、バリオニクス 、スコミムス 、スピノサウルス と共 とも に2003年 ねん にオリバー・W・M・ローハットによりバリオニクス科 か に分類 ぶんるい された[45] 。トーマス・ホルツ (英語 えいご 版 ばん ) らは2004年 ねん にバリオニクス科 か をスピノサウルス科 か のシノニムと考 かんが え、これらの属 ぞく をスピノサウルス科 か へ移 うつ した[46] 。後 ご の研究 けんきゅう もこの分類 ぶんるい を支持 しじ した[38] [12] 。スピノサウルス科 か としてイリタトルとアンガトラマはメガロサウルス上 うえ 科 か に位置付 いちづ けられ、スピノサウルス科 か はおそらくメガロサウルス科 か の姉妹 しまい 群 ぐん である[38] 。
イリタトル(最下 さいか 部 ぶ )と他 た のスピノサウルス科 か の頭骨 とうこつ 要素 ようそ のダイアグラム。外 そと 鼻孔 びこう (e.n.)の相対 そうたい 的 てき 位置 いち を比較 ひかく している
1998年 ねん 、セレノらはスピノサウルス科 か の2つの亜 あ 科 か を頭骨 とうこつ と歯 は の特徴 とくちょう に基 もと づいて定義 ていぎ した。彼 かれ らはスピノサウルス亜 あ 科 か にスピノサウルスとイリタトルを、バリオニクス亜 あ 科 か にバリオニクスとスコミムスおよびクリスタトゥサウルス を分類 ぶんるい した。スピノサウルス亜 あ 科 か は、歯 は が鋸歯 きょし 状 じょう でなく真 ま っ直 す ぐであり、間隔 かんかく が広 ひろ く、前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ の最初 さいしょ の歯 は が小 ちい さい[47] 。2005年 ねん に、ダル・サッソらはイリタトルの外 そと 鼻孔 びこう が上顎 じょうがく 骨 こつ 歯 ぱ の中央 ちゅうおう の真上 まうえ に位置 いち し、これはバリオニクスよりも後方 こうほう でスピノサウルスよりも前方 ぜんぽう であると推測 すいそく した[13] 。2017年 ねん にセイルズとシュルツは、イリタトルの外 そと 鼻孔 びこう が実際 じっさい にはバリオニクスやスコミムスと同様 どうよう に顎 あご の前方 ぜんぽう に近 ちか く位置 いち することを発見 はっけん した。外 そと 鼻孔 びこう が前方 ぜんぽう に位置 いち することはバリオニクス亜 あ 科 か に典型 てんけい 的 てき な特徴 とくちょう と考 かんが えられていた。しかし、イリタトルは鋸歯 きょし 状 じょう でない歯 は を持 も ち、これはスピノサウルス亜 あ 科 か に関連 かんれん する特徴 とくちょう である。セイルズとシュルツは、アラリペ盆地 ぼんち のスピノサウルス科 か であるイリタトルとアンガトラマがバリオニクス亜 あ 科 か とスピノサウルス亜 あ 科 か の中 なか 間 あいだ 形態 けいたい を代表 だいひょう する可能 かのう 性 せい があると記 しる し、 さらなる研究 けんきゅう によりバリオニクス亜 あ 科 か は側 がわ 系統 けいとう 群 ぐん になりうるとも綴 つづ った[11] 。
イリタトルは上顎 じょうがく 骨 こつ 歯 ぱ の本数 ほんすう が半分 はんぶん をわずかに上回 うわまわ る程度 ていど であることからバリオニクスやスコミムスおよびクリスタトゥサウルスと区別 くべつ され、外 そと 鼻孔 びこう が大型 おおがた で前方 ぜんぽう に位置 いち し前 ぜん 上顎 じょうがく 骨 こつ で形成 けいせい されていることからスピノサウルスとも区別 くべつ される。狭 せま い矢 や 状 じょう 鶏冠 けいかん は前 ぜん 頭骨 とうこつ 上 うえ のノブ状 じょう 突起 とっき に終 お わり、これもイリタトルを他 た のスピノサウルス科 か から区別 くべつ する固有 こゆう 派生 はせい 形質 けいしつ である[11] 。Angaturama limai の吻部は一般 いっぱん 的 てき に他 た のスピノサウルス科 か よりも狭 せま いが、これは化石 かせき 化 か の際 さい の変形 へんけい の可能 かのう 性 せい がある。ホロタイプ標本 ひょうほん は下 した 側 がわ 縁 えん が部分 ぶぶん 的 てき に潰 つぶ れて破損 はそん しており、保存 ほぞん された歯 は は長 なが さに応 おう じて折 お れていた。それゆえアンガトラマの固有 こゆう 派生 はせい 形質 けいしつ は矢 や 状 じょう 鶏冠 けいかん だけが有効 ゆうこう である。矢 や 状 じょう 鶏冠 けいかん は吻部の前方 ぜんぽう へ伸 の び、他 た のスピノサウルス科 か よりも強調 きょうちょう されている[11] [48] 。
Topology A: Benson ら (2009)[49]
Topology B: Sales and Schultz (2017)[11]
食 しょく 性 せい と摂食 せっしょく [ 編集 へんしゅう ]
インドガビアルの頭部 とうぶ 。イリタトルの頭部 とうぶ との類似 るいじ 性 せい がある
1996年 ねん 、マーティルらは Irritator challengeri が長 なが い吻部と鋸歯 きょし 状 じょう でない円錐 えんすい 形 がた の歯 は を持 も つことから、少 すく なくとも部分 ぶぶん 的 てき には魚 さかな 食 しょく 性 せい であった可能 かのう 性 せい が高 たか いとした[2] 。ホロタイプの形態 けいたい の多 おお くは彼 かれ らの考 かんが えていたものと大 おお きく違 ちが ったものの、後 ご の研究 けんきゅう はこれらの観察 かんさつ 結果 けっか を支持 しじ した[11] [38] 。スピノサウルス科 か の顎 あご は狭 せま く長 なが く、同 どう 歯 は 性 せい の尖 とが った歯 は を持 も ち[38] 、最 もっと も魚 さかな を食 た べる現生 げんなま ワニのインドガビアル にも特 とく に見 み られる配列 はいれつ であった[39] [50] 。スピノサウルス亜 あ 科 か の円錐 えんすい 形 がた の長 なが い歯 は は鋸歯 きょし 状 じょう の縁 えん を持 も たず、獲物 えもの を刺 さ して確保 かくほ するのに適 てき していた。これらの歯 は は、肉 にく を切 き り裂 さ くのに向 む いた他 ほか の獣 しし 脚 あし 類 るい のものとは異 こと なった[38] 。
復元 ふくげん された頭骨 とうこつ と首 くび のクローズアップ
イリタトルは硬 かた い二 に 次 じ 口蓋 こうがい と小 ちい さな前 ぜん 眼窩 がんか 窓 まど がワニと共通 きょうつう した。2007年 ねん にイギリスの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ エミリー・J・レイフィールドらが有限 ゆうげん 要素 ようそ 法 ほう 研究 けんきゅう により、これらの性質 せいしつ が他 た のスピノサウルス科 か にも存在 そんざい し、摂食 せっしょく の際 さい の獲物 えもの によるねじりの力 ちから に対 たい する頭骨 とうこつ の抵抗 ていこう 性 せい が高 たか まったと発見 はっけん した。これと対照 たいしょう 的 てき に大半 たいはん の獣 しし 脚 あし 類 るい は二 に 次 じ 口蓋 こうがい を持 も たずに巨大 きょだい な前 ぜん 眼窩 がんか 窓 まど を持 も ち、強度 きょうど を捨 す てて頭骨 とうこつ を軽 かる い構造 こうぞう にしていたとエミリーらは指摘 してき した[8] [51] 。イリタトルの外 そと 鼻孔 びこう は吻部先端 せんたん から遥 はる か後方 こうほう へ移 うつ っていた。これは口 くち の内側 うちがわ と鼻腔 びこう を分 わ ける二 に 次 じ 口蓋 こうがい と共 とも に、獲物 えもの を抑 おさ えている時 とき や水中 すいちゅう でも呼吸 こきゅう ができるようにしていた。特 とく に、イリタトルの二 に 次 じ 口蓋 こうがい は首 くび の筋肉 きんにく が卓越 たくえつ していたことを示唆 しさ しており、これは水 みず の抵抗 ていこう に逆 さか らって素早 すばや く顎 あご を閉 と じることと、急速 きゅうそく に頭 あたま を引 ひ っ込 こ めることに必要 ひつよう とされた[8] 。2015年 ねん 、ドイツの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ セルヨスカ・W・エヴァースらは同様 どうよう の適応 てきおう がアフリカのスピノサウルス科 か シギルマッササウルス にも見 み られると発見 はっけん した。この属 ぞく の頸椎は下面 かめん に幾重 いくえ もの溝 みぞ が入 はい っている。これは魚 さかな や小型 こがた の獲物 えもの を素早 すばや く獲物 えもの を捕 と らえる際 さい に使用 しよう した強力 きょうりょく な首 くび の筋肉 きんにく が附随 ふずい していたことと矛盾 むじゅん せず、この特徴 とくちょう は現生 げんなま のワニや鳥類 ちょうるい にも観察 かんさつ される[52] 。セイルズとシュルツが2019年 ねん に発表 はっぴょう した論文 ろんぶん では、イリタトルやバリオニクス亜 あ 科 か は前方 ぜんぽう に位置 いち した大型 おおがた の鼻孔 びこう と広大 こうだい な鼻腔 びこう を頭骨 とうこつ に持 も つため、スピノサウルスよりも嗅覚 きゅうかく に狩 か りを頼 たよ っていた可能 かのう 性 せい があると提唱 ていしょう された。スピノサウルスはおそらく視覚 しかく 、あるいはワニが水中 すいちゅう で動 うご く獲物 えもの を感 かん じ取 と るために使 つか う機械 きかい 的 てき 受容 じゅよう 器 き を主 おも に使 つか っていた[11] 。
アンハングエラ科 か (英語 えいご 版 ばん ) の翼 つばさ 竜 りゅう を襲 おそ う姿 すがた で組 く み立 た てられた骨格 こっかく 。ブラジル国立 こくりつ 博物館 はくぶつかん
他 た にスピノサウルス科 か がガビアルと共有 きょうゆう する特徴 とくちょう としては、魚 さかな を捉 とら えるのに適 てき した、噛 か み合 あ う歯 は がロゼット状 じょう をなす肥大 ひだい した吻部先端 せんたん が挙 あ げられる[53] 。知 し られている大半 たいはん のスピノサウルス科 か よりは低 ひく い度合 どあ いであるものの、この特徴 とくちょう は Angaturama limai のホロタイプ標本 ひょうほん にもある[11] 。しかし2002年 ねん 、スースらはスピノサウルス科 か が完全 かんぜん に魚 さかな 食 しょく に特殊 とくしゅ 化 か したと想定 そうてい する理由 りゆう がないと指摘 してき した。頭部 とうぶ の形態 けいたい はジェラリックな食 しょく 性 せい を示唆 しさ し、特 とく に小型 こがた 動物 どうぶつ を獲物 えもの としていたと彼 かれ らは強調 きょうちょう した。事実 じじつ 、肢 し 足 あし 歩行 ほこう の植物 しょくぶつ 食 しょく 性 せい 恐竜 きょうりゅう である若 わか いイグアノドン が、バリオニクスの骨格 こっかく 化石 かせき の中 なか から発見 はっけん されている[8] 。2004年 ねん にナイシュらはイリタトルが沿岸 えんがん に生息 せいそく するジェネラリスト捕食 ほしょく 者 しゃ として水棲 すいせい 動物 どうぶつ と陸棲 りくせい 動物 どうぶつ を両方 りょうほう とも狩 か り、さらにおそらくは死 し 肉 にく も漁 あさ っていたという仮説 かせつ を支持 しじ した[41] 。イリタトルに属 ぞく する歯 は には翼 つばさ 開 ひらき 長 ちょう 3.3メートルほどのオルニトケイルス科 か 翼 つばさ 竜 りゅう の頸椎に刺 さ さって発見 はっけん されたものもある。このことから、狩 か りを行 おこな ったのか死体 したい を漁 あさ ったのかは不明 ふめい であるものの、イリタトルが翼 つばさ 竜 りゅう も捕食 ほしょく していたことが示唆 しさ されている[50] [54] [55] 。2018年 ねん には、オーレリアノらがロムアルド累 るい 層 そう の食物 しょくもつ 網 もう のシナリオを発表 はっぴょう した。ロムアルド累 るい 層 そう 産 さん のスピノサウルス亜 あ 科 か は陸棲 りくせい 及 およ び水棲 すいせい ワニ上目 うわめ 、カメ、小型 こがた から中型 ちゅうがた の恐竜 きょうりゅう を捕食 ほしょく した可能 かのう 性 せい があると彼 かれ らは提唱 ていしょう した。スピノサウルス亜 あ 科 か はこの生態 せいたい 系 けい における頂点 ちょうてん 捕食 ほしょく 者 しゃ であっただろう[22] 。
同位 どうい 体 たい 解析 かいせき や骨 ほね 組織 そしき のような技術 ぎじゅつ を用 もち いた研究 けんきゅう から示 しめ されるように、多 おお くのスピノサウルス科 か は半 はん 水棲 すいせい であった可能 かのう 性 せい が高 たか い。彼 かれ らがおそらく水棲 すいせい の獲物 えもの や環境 かんきょう (沿岸 えんがん 生息 せいそく 域 いき [56] )といったアドバンテージを得 え て明確 めいかく な生態 せいたい 的 てき 地位 ちい を占 し め、より陸棲 りくせい の獣 しし 脚 あし 類 るい との競争 きょうそう を避 さ けていたことが判明 はんめい している[57] [58] 。スピノサウルス亜 あ 科 か はバリオニクス亜 あ 科 か よりもそのような生態 せいたい に適 てき していたらしい[22] [59] 。イギリスの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ トーマス・M・S・アーデンらによる2018年 ねん の研究 けんきゅう では、水棲 すいせい の特徴 とくちょう を探 さぐ るためスピノサウルス亜 あ 科 か の形態 けいたい が調査 ちょうさ された。イリタトル、スピノサウルス、シギルマッササウルスの前 ぜん 頭骨 とうこつ がアーチ状 じょう で最 さい 上部 じょうぶ が窪 くぼ み、前部 ぜんぶ で狭 せま くなっていることを彼 かれ らは発見 はっけん した。これらの特徴 とくちょう は目 め が他 た の獣 しし 脚 あし 類 るい よりも上 うえ に位置 いち していたことに帰着 きちゃく する。特 とく に、大半 たいはん の獣 しし 脚 あし 類 るい では眼窩 がんか は側 がわ 方 かた に面 めん していた一方 いっぽう 、イリタトルは広 ひろ い下 した 顎 あご と狭 せま い前頭 まえがしら 骨 こつ により頭蓋骨 ずがいこつ の正中 せいちゅう 線 せん に眼窩 がんか が急 きゅう 勾配 こうばい で面 めん した。これらの特徴 とくちょう により、イリタトルは水 みず に浸 つ かっても水面 すいめん より上 うえ を見 み ることができた[60] 。
2018年 ねん 、オーレリアノらはロムアルド累 るい 層 そう の腸 ちょう 骨 こつ 断片 だんぺん に解析 かいせき を行 おこな った。サンカルロス大学 だいがく (英語 えいご 版 ばん ) での標本 ひょうほん のCTスキャンにより、骨 ほね 硬化 こうか の存在 そんざい が明 あき らかにされた[22] 。この状態 じょうたい はかつて Spinosaurus aegyptiacus でも観察 かんさつ され、骨 ほね を重 おも くして水 みず に浸 つ かるのを楽 らく にしたのかもしれないとされた[59] 。この状態 じょうたい がブラジルの脚 あし 断片 だんぺん にも見 み られたことは、少 すく なくともスピノサウルスが1億 おく 年 ねん 前 まえ のエジプトに出現 しゅつげん した頃 ころ にはコンパクトな骨 ほね が既 すで にスピノサウルス亜 あ 科 か で進化 しんか していたことを示 しめ している。近 きん 縁 えん 種 しゅ との比較 ひかく により生命 せいめい 体 たい の未知 みち の特徴 とくちょう を推定 すいてい するのに用 もち いられる手法 しゅほう phylogenetic bracketing[61] によると、骨 ほね 硬化 こうか はスピノサウルス亜 あ 科 か では標準 ひょうじゅん 的 てき なものであった[22] 。これらの特徴 とくちょう の重要 じゅうよう 性 せい は2018年 ねん の後 のち の論文 ろんぶん で疑問 ぎもん 視 し され、カナダの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ ドナルド・ヘンダーソンは同 どう 論文 ろんぶん で骨 ほね 硬化 こうか は獣 しし 脚 あし 類 るい の浮力 ふりょく に大幅 おおはば に影響 えいきょう しなかっただろうと異議 いぎ を唱 とな えた[62] 。
古 こ 環境 かんきょう 学 がく と古 こ 生物 せいぶつ 理知 りち 学 がく [ 編集 へんしゅう ]
頭部 とうぶ の復元 ふくげん 図 ず
イリタトルとアンガトラマはロムアルド累 るい 層 そう (英語 えいご 版 ばん ) から知 し られ、層 そう の岩石 がんせき は約 やく 1億 おく 1000万 まん 年 ねん 前 まえ の前期 ぜんき 白 はく 亜紀 あき アルビアン まで遡 さかのぼ る[22] 。この時代 じだい には南 みなみ 南極 なんきょく 海 かい が開 ひら いており、円形 えんけい の大西洋 たいせいよう を取 と り巻 ま くブラジル南部 なんぶ とアフリカ南西 なんせい 部 ぶ の海 うみ 盆 ぼん を形成 けいせい していたが、ブラジル北東 ほくとう 部 ぶ とアフリカ西部 せいぶ はまだ陸 りく で繋 つな がっていた。ロムアルド累 るい 層 そう はサンタナ層 そう 群 ぐん (英語 えいご 版 ばん ) の一部 いちぶ で、イリタトルが記載 きさい された頃 ころ はサンタナ累 るい 層 そう とされていた層 そう の部 ぶ 層 そう と考 かんが えられていた。ロムアルド累 るい 層 そう は化石 かせき が素晴 すば らしい状態 じょうたい で保存 ほぞん される堆積 たいせき 層 そう であるラーガーシュテッテ で、頁岩 けつがん に埋 う め込 こ まれた石灰岩 せっかいがん からなり、クラト累 るい 層 そう の上 うえ に横 よこ たわる。石灰岩 せっかいがん 中 ちゅう に化石 かせき が立体 りったい 的 てき に保存 ほぞん されていることで有名 ゆうめい であり、多 おお くの翼 つばさ 竜 りゅう 化石 かせき でも知 し られる。翼 つばさ 竜 りゅう や恐竜 きょうりゅう の筋繊維 きんせんい に加 くわ え、エラや消化 しょうか 物 ぶつ 、心臓 しんぞう を保存 ほぞん した魚類 ぎょるい も発見 はっけん されている[63] [64] 。この層 そう は海水 かいすい 準 じゅん の変動 へんどう サイクルと競合 きょうごう する不規則 ふきそく な淡水 たんすい の影響 えいきょう を受 う ける沿岸 えんがん のラグーン であったと解釈 かいしゃく されている[22] 。この層 そう の気候 きこう は熱帯 ねったい で、現在 げんざい のブラジルの気候 きこう に大 おお まかに対応 たいおう している[65] 。層 そう を取 と り巻 ま く地域 ちいき は乾燥 かんそう 地帯 ちたい ないし半 はん 乾燥 かんそう 地帯 ちたい で、大 だい 部分 ぶぶん の植物 しょくぶつ 相 しょう は乾 ひ 生 なま 植物 しょくぶつ であった。ソテツ類 るい と絶滅 ぜつめつ 種 しゅ の毬 かさ 果 はて 植物 しょくぶつ 門 もん のブラキフィルム (英語 えいご 版 ばん ) が最 もっと も広 ひろ がった植物 しょくぶつ であった[66]
ロムアルド累 るい 層 そう (英語 えいご 版 ばん ) の環境 かんきょう で沿岸 えんがん を歩 ある くイリタトルの復元 ふくげん 図 ず
当時 とうじ の環境 かんきょう はアンハングエラ 、アラリペダクティルス 、アラリペサウルス (英語 えいご 版 ばん ) 、ブラシレオダクティルス (英語 えいご 版 ばん ) 、ケアラダクティルス 、コロボリンクス 、サンタナダクティルス (英語 えいご 版 ばん ) 、タペヤラ 、タラッソドロメウス 、トゥプクスアラ [67] 、バルボサニア (英語 えいご 版 ばん ) 、マーラダクティルス (英語 えいご 版 ばん ) [68] 、トロペオグナトゥス 、アンウィンディア (英語 えいご 版 ばん ) などの翼 つばさ 竜 りゅう が支配 しはい 的 てき であった[69] 。イリタトル以外 いがい で判明 はんめい している恐竜 きょうりゅう の動物 どうぶつ 相 しょう は、ティラノサウルス上 うえ 科 か のサンタナラプトル 、コンプソグナトゥス科 か のミリスキア [66] 、未 み 同定 どうてい のウネンラギア亜 あ 科 か のドロマエオサウルス科 か [70] 、マニラプトル類 るい に代表 だいひょう された[22] 。アラリペスクス やカリリスクス (英語 えいご 版 ばん ) といったワニ形 がた 上目 うわめ [71] やブラシレミス (英語 えいご 版 ばん ) [72] 、ケアラケリス (英語 えいご 版 ばん ) [73] 、アラリペミス 、エウラキセミス (英語 えいご 版 ばん ) [74] 、サンタナケリス のようなカメが堆積 たいせき 層 そう から知 し られている[75] 。また、カイエビ、ウニ 、貝 かい 虫 ちゅう 、軟体動物 なんたいどうぶつ も生息 せいそく していた[76] 。保存 ほぞん の良 よ い魚類 ぎょるい の化石 かせき 記録 きろく としてはヒボドゥス科 か (英語 えいご 版 ばん ) のサメ、エイ 、ガー 、アミア科 か 、オスニア科 か 、アスピドリンクス科 か (英語 えいご 版 ばん ) 、クラドキクルス科 か (英語 えいご 版 ばん ) 、ソトイワシ科 か 、サバヒー科 か 、マウソニア科 か (英語 えいご 版 ばん ) や未 み 同定 どうてい の種 たね が挙 あ げられる[77] 。ナイシュらによると、植物 しょくぶつ 食 しょく 恐竜 きょうりゅう がいないことは、植生 しょくせい が乏 とぼ しく大 だい 規模 きぼ な集団 しゅうだん を維持 いじ できなかったことを意味 いみ する可能 かのう 性 せい がある。個体 こたい 数 すう の多 おお い肉食 にくしょく 獣 じゅう 脚 あし 類 るい は、その後 ご 豊 ゆた かな水棲 すいせい 生物 せいぶつ を主要 しゅよう な食糧 しょくりょう 源 げん に変 か えた可能 かのう 性 せい がある。また、嵐 あらし の後 のち には翼 つばさ 竜 りゅう や魚類 ぎょるい の死骸 しがい が海岸 かいがん 線 せん に打 う ち上 あ げられて獣 しし 脚 あし 類 るい に膨大 ぼうだい な腐肉 ふにく が提供 ていきょう されたとも彼 かれ らは仮説 かせつ を立 た てた[66] 。層 そう には複数 ふくすう の魚 さかな 食 しょく 動物 どうぶつ が生息 せいそく し、熾烈 しれつ な競争 きょうそう が起 お こった可能 かのう 性 せい もある。オーレリアノらは動物 どうぶつ たちが間違 まちが いなくある程度 ていど 生態 せいたい 的 てき 地位 ちい を分 わ けていたと主張 しゅちょう した。この見解 けんかい では、ラグーンの中 なか で動物 どうぶつ たちは体格 たいかく と生息 せいそく 地 ち に合 あ わせて獲物 えもの を変 か えていた[22] 。
1億 おく 1300万 まん 年 ねん 前 まえ から9390万 まん 年 ねん 前 まえ のアルビアン - セノマニアン に由来 ゆらい するスピノサウルス科 か の化石 かせき が発見 はっけん された場所 ばしょ
ロムアルド累 るい 層 そう とクラト累 るい 層 そう の動物 どうぶつ 相 しょう は白亜 はくあ 紀中 きちゅう ごろのアフリカの動物 どうぶつ 相 しょう と類似 るいじ しており、アラリペ盆地 ぼんち がテチス海 うみ と繋 つな がっていたことが示唆 しさ されている。ただし、アラリペ盆地 ぼんち に海洋 かいよう 無 む 脊椎動物 せきついどうぶつ がいないため盆地 ぼんち の堆積 たいせき 物 ぶつ は海洋 かいよう 性 せい ではなかったことが示 しめ されており、テチス海 うみ とアラリペ盆地 ぼんち の繋 つな がりは散発 さんぱつ 的 てき であった可能 かのう 性 せい が高 たか い[77] 。スピノサウルス科 か は既 すで に前期 ぜんき 白 はく 亜紀 あき の間 あいだ に拡散 かくさん を遂 と げていた[78] 。セレノらは1998年 ねん に、テチス海 うみ が開 ひら いたためスピノサウルス亜 あ 科 か が南 みなみ (アフリカ、ゴンドワナ )で、バリオニクス亜 あ 科 か が北 きた (ローラシア )で進化 しんか したと提唱 ていしょう した[47] 。これに続 つづ き、2005年 ねん にはマカドとケルナーがスピノサウルス亜 あ 科 か はアフリカから南 みなみ アメリカへ広 ひろ がったと仮説 かせつ を立 た てた[3] 。セレノらは南 みなみ アメリカとアフリカでのスピノサウルス亜 あ 科 か の分岐 ぶんき 進化 しんか は大西 おおにし 洋 ひろし に起因 きいん する可能 かのう 性 せい が高 たか いと推論 すいろん し、大西洋 たいせいよう の開口 かいこう 部 ぶ が徐々 じょじょ に大陸 たいりく を隔 へだ てて両 りょう 分類 ぶんるい 群 ぐん の差異 さい に繋 つな がったとした[47] 。同様 どうよう のシナリオは2014年 ねん にブラジルの古 こ 生物 せいぶつ 学者 がくしゃ マヌエル・A・メデイロスらがアルカンターラ累 るい 層 そう の動物 どうぶつ 相 しょう に提唱 ていしょう しており、この層 そう ではオキサライアが発見 はっけん されている[79] 。しかし、スピノサウルス科 か の古 こ 生物 せいぶつ 地理 ちり 学 がく は仮説 かせつ の段階 だんかい かつ遥 はる かに不 ふ 確定 かくてい のままであり、アジアとオーストラリアでの発見 はっけん によりさらに事態 じたい は複雑 ふくざつ であることが示唆 しさ されている[80] [81] 。
Irritator challengeri のホロタイプ標本 ひょうほん の化石 かせき 化 か の過程 かてい は複数 ふくすう の研究 けんきゅう 者 しゃ が議論 ぎろん してきた。頭骨 とうこつ は傍 はた に横 よこ たわるようにして発見 はっけん された。化石 かせき 化 か に先駆 さきが け、頭蓋 とうがい 腔の後 うし ろの幾 いく つかの骨 ほね 、歯 は 骨 こつ 、粘 ねば 骨 こつ (英語 えいご 版 ばん ) 、烏口 からすぐち 骨 こつ 、下 しも 顎 あご の右 みぎ の角 かく 骨 こつ (英語 えいご 版 ばん ) が失 うしな われた。他 た の骨 ほね はほとんどが後頭部 こうとうぶ に由来 ゆらい し、分離 ぶんり して頭部 とうぶ の別 べつ の場所 ばしょ へ分散 ぶんさん して埋没 まいぼつ した[8] 。2004年 ねん にナイシュらは、ロムアルド累 るい 層 そう の恐竜 きょうりゅう の動物 どうぶつ 相 しょう は海岸 かいがん 線 せん か川 かわ で死亡 しぼう して海 うみ へ運 はこ ばれ、漂 ただよ った末 すえ に化石 かせき 化 か した動物 どうぶつ に代表 だいひょう されていると主張 しゅちょう した[41] 。2018年 ねん にオーレリアノらはこのシナリオに異議 いぎ を唱 とな えた。Irritator challengeri のホロタイプの下 しも 顎 あご は残 のこ りの頭骨 とうこつ と関節 かんせつ 下 か 状態 じょうたい で発見 はっけん されていたが、死体 したい が海 うみ を漂 ただよ ったなら分散 ぶんさん した可能 かのう 性 せい が高 たか いと彼 かれ らは主張 しゅちょう した。また、骨格 こっかく の骨 ほね 硬化 こうか ゆえに死体 したい はすぐに海 うみ へ沈 しず んだとも彼 かれ らは綴 つづ った。従 したが って、サンタナ層 そう 群 ぐん から産出 さんしゅつ した化石 かせき は異 こと 所 しょ 的 てき に堆積 たいせき したのではなく、土着 どちゃく の生息 せいそく 地 ち で埋没 まいぼつ した生物 せいぶつ を代表 だいひょう するものであると彼 かれ らは結論 けつろん 付 つ けた[22] 。
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