キレスクス

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キレスクス
生息せいそく年代ねんだい: 168.3–166.1 Ma
地質ちしつ時代じだい
やく1おく6830まんねんまえ - やく1おく6610まんねんまえ
バトニアン
中生代ちゅうせいだいジュラ紀じゅらき中期ちゅうき中期ちゅうきジュラ紀じゅらき
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
つな : 爬虫つな Reptilia
つな : そうゆみつな Diapsida
下綱しもつな : しゅりゅうがた下綱しもつな Archosauromorpha
上目うわめ : 恐竜きょうりゅう上目うわめ Dinosauria
: りゅうばん Saurischia
: ししあし Theropoda
階級かいきゅうなし : とり吻類 Averostra
下目しため : テタヌラ下目しため Tetanurae
階級かいきゅうなし : 整理せいりコエルロサウルスるい Coelurosauria
階級かいきゅうなし : ティラノラプトラ Tyrannoraptora
うえ : ティラノサウルスうえ Tyrannosauroidea
: プロケラトサウルス Proceratosauridae
ぞく : キレスクスぞく Kileskus
学名がくめい
Kilesukus Averianov et al., 2010
和名わみょう
キレスクス
下位かい分類ぶんるいたね
  • Kilesukus aristotocus Averianov et al., 2010(しきたね

キレスクス学名がくめいKileskus)は、中生代ちゅうせいだいジュラ紀じゅらき中期ちゅうき中期ちゅうきジュラ紀じゅらきバトニアンやく1おく6830まんねんまえ - やく1おく6610まんねんまえ[ちゅう 1]シベリア出土しゅつどロシア連邦れんぽうクラスノヤルスク地方ちほうイタットるいそう英語えいごばん)に棲息せいそくしていた恐竜きょうりゅうティラノサウルスうえの1ぞく分類ぶんるいされる、比較的ひかくてき小型こがたししあしるいである。

ホロタイプ標本ひょうほんは、上顎じょうがくこつぜん上顎じょうがくこつ上角うえすみじょうこつ、および、四肢しし複数ふくすうほねふく化石かせき発見はっけんされている。頭蓋骨ずがいこつプロケラトサウルスのものに類似るいじする。下位かい分類ぶんるいについては、目下もっかのところ、アレクサンドル・O・アヴェリアノフ (Alexander O. Averianov)生物せいぶつ学者がくしゃ3めいによって[2]2010ねん記載きさいされた aristotocus たね(アリストトクスしゅ)のみがられている。

名称めいしょう[編集へんしゅう]

ぞくめい Kileskus は「トカゲ」を意味いみする現地げんちであるハカスの "килескíラテンこぼし: kileskí、日本語にほんごおとうつしれい: キレスキ)" と名詞めいし作成さくせいようラテン語らてんご接尾せつび "-us[ちゅう 2]" で構成こうせいされたこんしゅである[1][2][3][ちゅう 3]

発見はっけんされた部位ぶいは、実線じっせんえがかれている部位ぶいなか灰色はいいろつぶされている部分ぶぶん
推定すいていされたほんたねヒトおおきさ比較ひかく

はら記載きさい[編集へんしゅう]

ホロタイプ不完全ふかんぜんみぎ上顎じょうがくこつひだりぜん上顎じょうがくこつひだり上角うえすみじょうこつ断片だんぺんひだりだい2中手なかてこつゆびこつひだりだい1ちゅうあしこつだい3ちゅうあしこつ趾骨あし末節まっせつこつである[4]

ひだりぜん上顎じょうがくこつには4つの歯槽しそう保存ほぞんされ、そのうち2番目ばんめ歯槽しそうでは成長せいちょう途中とちゅうかんむり観察かんさつされる。ホロタイプ標本ひょうほんであるみぎ上顎じょうがくこつでは5番目ばんめ確認かくにんできる。いずれのぜんえんこうえん鋸歯きょし確認かくにんされている。また、断面だんめんティラノサウルスうえ共通きょうつうのDがたである[5]

キレスクスが鼻骨びこつ突起とっきっていたかは不明ふめいであるが、頭骨とうこつちょうの20%以上いじょうめるほどにそと鼻孔びこうながびている、ぜん上顎じょうがくこつはらがわえんがごくみじかい、ぜん眼窩がんかまど真下ました位置いちするぜん窩窩がそのした上顎じょうがくこつよりも上下じょうげ方向ほうこうながい、といったすうおおくの特徴とくちょうから、プロケラトサウルス分類ぶんるい可能かのうである。また、そと鼻孔びこうが40角度かくど後背こうはいがわ傾斜けいしゃしているという特徴とくちょう共有きょうゆうする。上顎じょうがくこつ上昇じょうしょうてき突起とっきつながり、後背こうはいがわゆるやかに傾斜けいしゃもしている上顎じょうがくこつ前方ぜんぽうえんにより、キレスクスはのプロケラトサウルスから区別くべつされる[4]

2010ねんドイツじん生物せいぶつ学者がくしゃオリバー・ラウフット (Oliver Rauhut)らがプロケラトサウルスを「ティラノサウルスアロサウルスコンプソグナトゥスコエルルスオルニトミムスディノニクスよりもプロケラトサウルスにきんえんすべてのししあしるい恐竜きょうりゅう」として系統けいとうがくてき定義ていぎした[5]が、形態けいたいてき定義ていぎけはおこなわれていなかった。そこでアヴェリアノフらは上述じょうじゅつした特徴とくちょうくわえて、鼻骨びこつ形成けいせいされ、鼻骨びこつ前上まえかみ顎骨がっこつ境界きょうかいはしはっする鶏冠けいかんとさか)をプロケラトサウルス特徴とくちょうとした[4]

しん標本ひょうほん[編集へんしゅう]

おなじくジュラ紀じゅらき中期ちゅうきバトニアンにあたるイタットるいそうから、頚椎けいついしい血道ちみちゆみこつ腓骨ひこつからなるしん標本ひょうほん発見はっけんされた。このしん標本ひょうほんから以下いかしめすキレスクスの3つの固有こゆう派生はせい形質けいしつあきらかにされた[6]

  • 神経しんけい腔と関節かんせつぜん突起とっきあいだ前方ぜんぽうふかみぞ存在そんざいする。
  • 中央ちゅうおう頚椎けいつい神経しんけいとげ根元ねもと明瞭めいりょうくぼみが存在そんざいする。
  • 中央ちゅうおうしいはらがわみぞ存在そんざいする。

また、中央ちゅうおうから後方こうほう頚椎けいつい存在そんざいするほぼ水平すいへい後方こうほう中央ちゅうおうこつ突起とっきいたじょう構造こうぞうと、そのいたじょう構造こうぞうおもがわ位置いちする関節かんせつ突起とっきあなが、あらたにプロケラトサウルス共有きょうゆう派生はせい形質けいしつ判明はんめいした。さらにどう論文ろんぶんでは、腓骨ひこつ中央ちゅうおう表面ひょうめん存在そんざいして明瞭めいりょうえん楕円だえんがたふかあなは、キレスクスにられるティラノサウルスうえ共有きょうゆう派生はせい形質けいしつであるとされている(キレスクス以外いがいのプロケラトサウルスにおいては、腓骨ひこつ産出さんしゅつしていないか詳細しょうさい記載きさいされていない)。キレスクスの脛骨けいこつはつ生皮なまかわそう分布ぶんぷするたておよび網状もうじょう血管けっかんから、大型おおがたのティラノサウルスよりも成長せいちょう速度そくどおそかったことが示唆しさされている[6]

環境かんきょうしょくせい[編集へんしゅう]

棲息せいそく赤丸あかまる地点ちてん棲息せいそく

パンゲア大陸たいりく分裂ぶんれつはじめてひさしいが、まだまだちょう大陸たいりく状態じょうたいくずしてはいない。
イタットるいそうはシベリアたくじょうシベリア大陸たいりく)とばれるクラトン安定あんていりくかたまり)のうえにあって、形成けいせい後半こうはんつづいている。
シベリアたくじょうひがしにはシナかたまり英語えいごばんがあり、せま海峡かいきょうはさんで隣接りんせつしているか、あるいは、かろうじて陸続りくつづきになっている。みなみには遠浅とおあさ温暖おんだんテティスうみがあり、広大こうだい地中海ちちゅうかい形成けいせいしている。西にしにはウラル山脈さんみゃくそびえているが、おおきくはひがしヨーロッパ・クラトンとそのさきにあるきたアメリカ・クラトンにまで陸地りくちつづいている。

ほんたね発見はっけんされたのは現在げんざい西にしシベリア平原へいげん所在しょざいするイタットるいそう英語えいごばん下層かそうバッジョシアンかい上層じょうそうバトニアンかいからなる。年代ねんだいは170.3–166.1 Ma。)の上層じょうそう年代ねんだいは 168.3–166.1 Ma)である。西にしシベリア平原へいげん現世げんせいにおける世界せかい最大さいだい炭化たんか水素すいそ盆地ぼんちである西にしシベリア石油せきゆ盆地ぼんち英語えいごばんとその領域りょういきにおいて同一どういつってよいが、ほんしゅ棲息せいそくしていた当時とうじでは、ローラシア大陸たいりく中央ちゅうおうのかなりの部分ぶぶんきたり)をめており、ほんたね産出さんしゅつした地点ちてん当該とうがい地域ちいきのややひがしりに位置いちしていた。

イタットるいそうからは、軟骨なんこつ魚類ぎょるいヒボドゥス)、硬骨魚こうこつぎょるいチョウザメアミアハイギョ、ほか)、両生類りょうせいるいカエル〉、有尾ありお)、カメうろこりゅうがたるいスキンクるいコリストデラるい (Choristodera)、ゴニオフォリス絶滅ぜつめつワニがたるい)、つばさりゅう恐竜きょうりゅうりゅうばんるいヘテロドントサウルス英語えいごばんとりばんるいマメンチサウルス英語えいごばんけんりゅうるい)、キノドンるいトリティロドンるいなど)、哺乳ほにゅうがたるい、そしておかひとし哺乳類ほにゅうるいといった、多種たしゅ多様たよう脊椎動物せきついどうぶつ出土しゅつどしている[4]植生しょくせいとしては、トクサうす嚢シダるいイチョウるいたまはて植物しょくぶつなどがみとめられる。なお、キレスクスなどプロケラトサウルスるいしゅとしてしょう動物どうぶつ捕食ほしょくしていたとかんがえられているため[7][8]共産きょうさんしたなかでも小型こがた生物せいぶつたとえばハラミヤ (Haramiyida) もしくはハラミヤ (Euharamiyida) に分類ぶんるいされるキノドンるい(もしくは哺乳ほにゅうがたるい)のシネレウテルス (Sineleutherus) などは、キレスクスのえさになっていたかもしれない。ただし、キレスクスの推定すいてい全長ぜんちょう代表だいひょうてきなプロケラトサウルスるいであるグアンロンよりもおおきく、これが獲物えもの選択せんたく変化へんかあたえた可能かのうせいもある。

キレスクスの想像そうぞう生態せいたい復元ふくげん

なお、2020年代ねんだい初期しょき知見ちけんでは、はら鳥類ちょうるいおよびとりぐんはまだ地球ちきゅうじょう出現しゅつげんしておらず、既知きち最古さいこれいやく1おく6500まんねんまえであるから、時期じきてきには出現しゅつげん前夜ぜんやったところである。

分類ぶんるい[編集へんしゅう]

キレスクスは、2010ねんアレクサンドル・O・アヴェリアノフらによる)と2013ねんマーク・A・ローウェン[Mark A. Loewen]らによる)の2にわたって系統けいとう解析かいせきまれ、いずれにおいても基盤きばんてきティラノサウルスうえ分類ぶんるいされた[4][9]。プロケラトサウルスなかでも基盤きばんてき位置付いちづけとされたため、プロケラトサウルスがアジアりの地域ちいき誕生たんじょうした可能かのうせい浮上ふじょうしている[4]

以下いかしめクラドグラムはローウェンらが2013ねん発表はっぴょうしたものである[9]

Tyrannosauroidea ティラノサウルスうえ  
Proceratosauridae プロケラトサウルス  

Proceratosaurus プロケラトサウルス

Kileskus キレスクス

Guanlong グアンロン

Sinotyrannus シノティラヌス

Juratyrant ジュラティラント

Stokesosaurus ストケソサウルス

Dilong ディロング

Eotyrannus エオティラヌス

Bagaraatan バガラアタン

Raptorex ラプトレックス

Dryptosaurus ドリプトサウルス

Alectrosaurus アレクトロサウルス

Xiongguanlong シオングアンロング(シオングアンロン)

Appalachiosaurus アパラチオサウルス

Alioramus altai アリオラムス・アルタイ

Alioramus remotus アリオラムス・レモトゥス

Tyrannosauridae ティラノサウルス

関係かんけいしゃ[編集へんしゅう]

主要しゅよう研究けんきゅうしゃ
  • Alexander O. Averianov (Aleksandr Olegovich Averyanov)(アレクサンドル・O・アヴェリアノフ)[10][11][12][13]
(1965- )  ロシアじん生物せいぶつ学者がくしゃほんしゅ学名がくめい記載きさいしゃ記載きさい当時とうじ(2013ねん当時とうじ)の所属しょぞく大学だいがくカザン大学だいがくロシア科学かがくアカデミー会員かいいん
  • Sergei Anatolyevich Krasnolutskii(セルゲイ・アナトリエヴィッチ・クラスノルツキー)[14] - ロシアじん生物せいぶつ学者がくしゃほんしゅ学名がくめい記載きさいしゃ
  • Stepan V. Ivantsov(ステパン・V・イヴァンツォフ)[15] - ロシアじん生物せいぶつ学者がくしゃ学者がくしゃほんしゅ学名がくめい記載きさいしゃトムスク大学だいがく所属しょぞく
  • Oliver Rauhut (Oliver Walter Mischa Rauhut)(オリバー・ラウフット、オリヴァー・ヴァルター・ミーシャ・ラウフット)[16]
(1969- )  ドイツじん生物せいぶつ学者がくしゃ。2010ねん当時とうじ現在げんざい(2021ねん)も所属しょぞく大学だいがくミュンヘン大学だいがく

論文ろんぶん[編集へんしゅう]

記載きさい論文ろんぶん[編集へんしゅう]

論文ろんぶん[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ ティムール・B・ダヴレトフ博士はかせによれば、やく1おく6800まんねんまえ[1]
  2. ^ 技術ぎじゅつてきトラブルかなにかのため、"-us" のページの "Latin" ぶしへのリンクが現状げんじょうでは機能きのうせず、関係かんけいい "Lithuanian" ぶししめしてしまうので、閲覧えつらんさい注意ちゅういすること。
  3. ^ なお、ハカスラテン語らてんご解説かいせつは『よみがえる恐竜きょうりゅう 最新さいしん研究けんきゅうかす姿すがた』を典拠てんきょとしていない。ハカス先述せんじゅつのティムール・B・ダヴレトフ博士はかせツイート[1]を、ラテン語らてんごラテン語らてんご辞書じしょ典拠てんきょとしている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c Davletov 20200714a.
  2. ^ a b Kileskus (Kileskus aristotocus)” (English). State Darwin Museum. 2021ねん4がつ20日はつか閲覧えつらんYouTube動画どうがロシア)もあり。
  3. ^ 『よみがえる恐竜きょうりゅう 最新さいしん研究けんきゅうかす姿すがた』 (2017), p. 30.
  4. ^ a b c d e f Averianov et al., 2010.
  5. ^ a b Rauhut et al., 2010.
  6. ^ a b Averianov et al., 2019.
  7. ^ Yun, 2016.
  8. ^ Wick et al., 2015.
  9. ^ a b Loewen et al., 2013.
  10. ^ Alexander Averianov” (English). ResearchGate. 2021ねん4がつ25にち閲覧えつらん
  11. ^ Alexander O. Averianov - Staff” (English). Zoological Institute of Russian Academy of Sciences. Zoological Institute RAS (ZIN RAS). 2021ねん4がつ25にち閲覧えつらん
  12. ^ Alexander O. Averianov” (English). Laboratory of Theriology. 2021ねん4がつ25にち閲覧えつらん
  13. ^ Alexander O. Averianov - Institute of Earth Sciences” (English). Saint Petersburg State University. 2021ねん4がつ25にち閲覧えつらん
  14. ^ Sergei Anatolyevich Krasnolutskii” (English). ResearchGate. 2021ねん4がつ25にち閲覧えつらん
  15. ^ Stepan V. Ivantsov” (English). ResearchGate. 2021ねん4がつ25にち閲覧えつらん
  16. ^ Oliver W M Rauhut” (English). ResearchGate. 2021ねん4がつ25にち閲覧えつらん
  17. ^ Mark A. Loewen” (English). ResearchGate. 2021ねん4がつ25にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

書籍しょせき、ムック

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]