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日本語にほんご一人称いちにんしょう代名詞だいめいし

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

日本語にほんご一人称いちにんしょう代名詞だいめいしは、日本語にほんごにおいて、一人称いちにんしょうすなわちはな代名詞だいめいしである。英語えいごフランス語ふらんすごスペインなどおおくの言語げんごことなり、現代げんだい日本語にほんごには文法ぶんぽうてき名詞めいしとはっきり区別くべつされる代名詞だいめいしがなく、様々さまざまかたり一人称いちにんしょう代名詞だいめいしとして使つかわれ、それぞれ文体ぶんたい立場たちばことなる。人称にんしょう代名詞だいめいしとはなにかについては議論ぎろんかれるところである。この記事きじなかには人称にんしょう代名詞だいめいしとはかんがえられないようなものもあるが、えてその議論ぎろんけて記載きさいしている。人称にんしょう代名詞だいめいしでないものをふくめれば、英語えいごでも the writer (筆者ひっしゃ)、 this study (とう研究けんきゅう)、our company(当社とうしゃ)など、文法ぶんぽうじょう一人称いちにんしょう代名詞だいめいしでない語句ごく意味いみうえはなすことがある。

役割やくわり

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フィクションとく漫画まんがアニメ脇役わきやく一人称いちにんしょう代名詞だいめいしは、役割やくわりであることがおお[1]。このため現実げんじつには使つかわれないような代名詞だいめいしもある。

少年しょうねん漫画まんが主人公しゅじんこう一人称いちにんしょう代名詞だいめいしは、当初とうしょは「ぼく」であったが、1960年代ねんだい後半こうはんの『巨人きょじんほし』や『あしたのジョー』などから「おれ」が主流しゅりゅうになった。ヒーローぞうがエリート少年しょうねんから野性やせいてき少年しょうねんわったためとかんがえられる[1]

また一人称いちにんしょう発話はつわしゃ自身じしん役割やくわりしめ役割やくわりでもあることから、複数ふくすうある一人称いちにんしょうからいずれをえらぶかは発話はつわしゃ自身じしんによる個性こせい主張しゅちょうであると同時どうじ自身じしん役割やくわり主張しゅちょうでもある。ぎゃくに、自我じが形成けいせいされ自身じしん役割やくわりかんしてなやおお思春期ししゅんきには、一人称いちにんしょうなにもちいるかについてなや場合ばあいがある。とく前述ぜんじゅつ少年しょうねん漫画まんが主人公しゅじんこう一人称いちにんしょうわったころは、その影響えいきょうけた少年しょうねんにとって「ぼく」をもちいることはそれ以前いぜんのヒーローぞうである「目上めうえひと従順じゅうじゅん」であることを主張しゅちょうしていることになり、反抗はんこう特性とくせいとしてこれから脱却だっきゃくしたい。さりとて「おれ」をもちいることは自身じしん自身じしん少年しょうねん漫画まんがのヒーローの役割やくわりであると主張しゅちょうすることとなり、それは他者たしゃからの嘲笑ちょうしょうさそうのではないか、となや場合ばあいがあった。

一人称いちにんしょう二人称ににんしょう

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日本語にほんごでは、一人称いちにんしょう二人称ににんしょう転用てんようされることおおい。たとえば、「自分じぶん」は一人称いちにんしょうとしてもちいられるれい各地かくちにあるが、近畿きんき地方ちほうでは二人称ににんしょうとしても多用たようされている。東北とうほく地方ちほう一部いちぶでは「」のふるいかたとおもわれる「わ」が一人称いちにんしょうとしても二人称ににんしょうとしてももちいられている。

ちなみに、一人称いちにんしょう謙譲けんじょう表現ひょうげんもちいられる「手前てまえ(てまえ)」がなまった「てめえ」は、現在げんざいではおも東日本ひがしにっぽん方言ほうげんにおいて相手あいてののしるときにもちいられる言葉ことばになっている。

一人称いちにんしょう単数たんすう代名詞だいめいし一覧いちらん

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以下いかにあげたもの以外いがいにも日本人にっぽんじん使用しようする一人称いちにんしょう存在そんざいしており、どれだけのかたり一人称いちにんしょうになっているかは、いまだにわかっておらず、正確せいかくかず把握はあくされていない。日本語にほんご一人称いちにんしょうとなるかたりもっとおお言語げんごわれるが、実際じっさい最多さいたかも把握はあくされていないのが実情じつじょうである。

公的こうてき表現ひょうげん

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わたし(わたし)

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日本人にっぽんじんもっとおお使用しようする一人称いちにんしょうである。わたくしのくだけたいいかた近世きんせい以降いこうわたくし省略しょうりゃくされたわたし女性じょせい中心ちゅうしんられるようになった。現在げんざいでは男女だんじょともに使用しようする[2]おおやけではたとえ男性だんせいであっても自分じぶんのことをわたし、もしくはわたくしうのが礼儀れいぎとされている[3]女性じょせい常用じょうようする場合ばあいは「あたし」「うち」とはことなり、やや真面目まじめ女性じょせい言葉ことばとされている。

ただし「わたくし」のふるくからある関西かんさいでは、このような私的してき個人こじんてき)な人称にんしょうけることがいとされ、社会しゃかいてきには「わたくし」そのものを敬称けいしょうなしてはいない。

かつての常用漢字じょうようかんじひょうでは「わたし」の訓読くんよみは「わたくし」のみがみとめられていたため、公用こうようぶん放送ほうそう用語ようごでは「わたし」はひらがなで表記ひょうきすることになっていたが[4]2010ねん常用漢字じょうようかんじひょう改定かいていで「わたし」という訓読くんよみもみとめられるようになった[5]

なお、活字かつじ媒体ばいたいなどで東北とうほく方言ほうげん表現ひょうげんするさい、「わだす」「あだす」「わす」のような一人称いちにんしょうもちいられることがあるが、話者わしゃ自身じしんは「わたし」または「あたし」や「わし」と発言はつげんしているのであり、一人称いちにんしょうのバリエーションではなくあくまで発声はっせいのバリエーションである。また、表記ひょうきとしての「わだす」「あだす」「わす」は、共通きょうつう話者わしゃ立場たちばからききとれるおとを、共通きょうつう表記ひょうき体系たいけい無理むりてはめようとしたものであり、実際じっさい東北とうほく方言ほうげん発音はつおん正確せいかくうつったものではない。

私的してき表現ひょうげん

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自分じぶん(じぶん)

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スポーツ選手せんしゅなど、いわゆる体育たいいくかいけい男性だんせいがよく使用しようする。刑事けいじドラマ西部せいぶ警察けいさつ』ではわたり哲也てつやえんじた主人公しゅじんこう大門だいもん圭介けいすけもちいた。このほかタレント風見かざみしんごらももちいる。

文章ぶんしょうでもしばしば使つかわれる一人称いちにんしょうであり、その場合ばあい女性じょせいもちいる場合ばあいもあるが、あらたまった文章ぶんしょうやビジネス文書ぶんしょでは使つかわれない。

近世きんせい以降いこうひろられるようになったかたりで、用法ようほうとしては「おのれ」にちかいものである。関西かんさいけんでは「自分じぶん」を二人称ににんしょうでももちいる(「てめえ」「おのれ」「われ」の用法ようほう変化へんか相似そうじ)。

国語こくご審議しんぎかいは『「じぶん」を「わたし」の意味いみ使つかうことはけたい』とあらわしている[3]きゅう日本にっぽんぐんでは一人称いちにんしょうを「自分じぶん」とすることが推奨すいしょうされたが、自衛隊じえいたいでは任官にんかん服務ふくむ宣誓せんせい代表だいひょうされるように「わたし」を使用しようすることが推奨すいしょうされている。

ぼく(ぼく)

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おも男性だんせい私的してき場面ばめんもちいるが、フォーマルなでの使用しよう許容きょようされる。男性だんせい謙称けんしょうであり、字義じぎとしては「ぼく(ボク)」はおとこ使つかいをしており、おんなは「わらわ(ショウ)」をもちいる。ぼくわらわでしもべとめかけ、下男げなん下女げじょ。『古事記こじき』においてはや須佐すさおとこいのちスサノオ)や因幡いなば白兎しろうさぎなどがしばしば自分じぶんを「ぼく」とんでいる。平安へいあん時代じだいころからの文書ぶんしょでは「やつがれ」とくんじられていた。かつて「ぼく」は謙譲けんじょうとしての敬意けいい非常ひじょうたかかったが、武家ぶけ教養きょうようそうなどの使用しようて、1860年代ねんだいには謙譲けんじょうせいひくかたりとなっていった[6]。1863ねん兵隊へいたい自称じしょうとしてもちいたことがられている[7]明治めいじ時代じだいになって、書生しょせいなどが愛用あいようし、ひろもちいられるかたりとなった[6]

ク」とあたまだかがたアクセントでひとと、「ボ」と平板へいばんがたアクセントでひとがいるが、共通きょうつうでは前者ぜんしゃはるかに優勢ゆうせいである[8]

男児だんじたいする二人称ににんしょうとして使つかわれることがあるのは、「手前てまえ」「自分じぶん」と同様どうよう変化へんかによるものである。

おれ(おれ)

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おおくは男性だんせい使用しようされている。「おれ」のほうが「ぼく」よりも傲慢ごうまんというとらえかたをしているひとおおく、もっぱら私的してきもしくはぞくにおいて通用つうようしており、おおやけでの使用しようはばかられる傾向けいこうにある。

鎌倉かまくら時代ときよまでは二人称ににんしょう卑称ひしょうとして使つかわれたものが次第しだい一人称いちにんしょうにも転用てんようされ、各地かくち江戸えど時代じだいには貴賎きせん男女だんじょわず幅広はばひろ使つかわれた。明治めいじ以降いこうになると共通きょうつうでは女性じょせい使用しようしゃすくなくなったが、東北とうほく地方ちほう中心ちゅうしん方言ほうげんでは根強ねづよのこっている。愛知あいちけん西にし三河そうご地方ちほうでも農業のうぎょう地区ちくでは女性じょせい一人称いちにんしょうとして今日きょういたっても使用しようされている事例じれいがある。

また、アクセントは平板へいばんがた(「れ」のほうたかく、それとほぼおなおんだかのちかたり開始かいしする)が一般いっぱんてきであるが、一部いちぶ地域ちいきれいとして静岡しずおかけん静岡しずおか静岡しずおかけん志太しだ地域ちいきなど)では複数ふくすうがた「おら」のアクセントに同調どうちょうしてあたまだかがた使用しようされるれいもある。一人称いちにんしょうもちいられる以前いぜんにはことなるアクセントであった可能かのうせいがある。

おれ」というながらく常用漢字じょうようかんじになかったが、2010ねん常用漢字じょうようかんじひょう改定かいてい追加ついかされた。追加ついかするめるさい、「しながない言葉ことば」「おおやけ使つかうべきでない」として反対はんたいする意見いけんもあったが、最終さいしゅうてき追加ついかされた。

おれさま(おれさま)

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おれ」を高慢こうまんにした表現ひょうげん。「あいつはおれようやつだから」などと他者たしゃから揶揄やゆ批判ひはんされる場合ばあい[9]使用しようされる場合ばあいおおく、創作そうさく世界せかいのぞくと実際じっさい自称じしょうとしてもちいられることすくない。

わしわたし(わし)

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おも西日本にしにほん中心ちゅうしんもちいられる。愛知あいちけん岐阜ぎふけん北陸ほくりく地方ちほう以西いせい西日本にしにほん各地かくちで、おもに成人せいじん男性だんせいもちいる。子供こども若者わかものでも使つかうことがあるが、近年きんねんはメディアの影響えいきょうから、わか世代せだい中心ちゅうしんに「おれ」も使つかわれるようになってきた。一部いちぶ地域ちいきでは(おも高齢こうれいそうで)女性じょせい使つか場合ばあいもあり、たとえば愛知あいちけん一部いちぶでは「わたし」の「た」のおとけたような「わっし」にちか発音はつおん女性じょせいもちいる。

常用じょうようしている著名ちょめいじんとしては川藤かわふじ幸三こうぞう小林こばやしよしのり井脇いわきノブ子のぶこ大悟たいごヒコロヒーほかいたるがわ光男みつお石崎いしざき信弘のぶひろ木村きむら和司かずし広島ひろしまけんじんがいる。そのほか、力士りきし政治せいじにも常用じょうようしゃおおい。社会しゃかいてき立場たちば関係かんけいなくもちいることばであるが、小説しょうせつなど創作そうさく世界せかいでは老人ろうじん武士ぶし一人称いちにんしょうとされることがある。

「わたし」のくだけた表現ひょうげん日本にっぽんおおくの女性じょせいは「わたし」かこの「あたし」を使つかうが、あらたまったでは「わたし」ときちんと発音はつおんすべきとされている[3]かつての東京とうきょうでは職人しょくにん商人しょうにん男性だんせいこのんで使つかい、現代げんだいでも落語らくご使用しようする場合ばあいもある。

あたくし

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「わたくし」のくだけた表現ひょうげん創作そうさく世界せかいでは高慢こうまん女性じょせい一人称いちにんしょうとしてもちいられるが、実際じっさい日常にちじょう生活せいかつくことはすくない。伝統でんとうてき東京とうきょう方言ほうげんでは通常つうじょうあらたまった一人称いちにんしょうとして男女だんじょとも使用しようした表現ひょうげんであり、とく落語らくご桂歌丸かつらうたまる一人称いちにんしょう終生しゅうせいこの言葉ことばとおした。

「あたし」のさらにくだけた表現ひょうげんで、おもはす女性じょせい使つかう。現在げんざいではまれだが、創作そうさく世界せかいではられる。かつて、鹿児島かごしま方言ほうげんなどにもられた。著名ちょめいじんでは中島なかじまみゆき使つかうことがある。言語げんご感覚かんかく同等どうとうおれさま」。

「あたし」のさらにくだけた表現ひょうげんで、ギャルてき性質せいしつふくむ。現代げんだいにおいては「あたい」よりもメジャーな表現ひょうげんとなっている。

わがわれ)のくだけた「わえ、わえら」などが各地かくち方言ほうげんとして使つかわれる。瀬戸内海せとないかい周辺しゅうへんのほか、南島なんとうから北日本きたにっぽん北部ほくぶなどにもられ、それらの地域ちいきでは男女だんじょとも使用しようする一人称いちにんしょうである。二人称ににんしょうもちいる地域ちいきもある。

近世きんせい末期まっき以降いこう近畿きんき地方ちほうもちいる表現ひょうげん。「わたし」から変化へんかした「わたい」がくだけたもの。男女だんじょとも使用しようし、京都きょうとなどでは「わて」がさらにくだけて「あて」ともった。現在げんざい近畿きんき地方ちほうでは落語らくご世界せかい高齢こうれいそうのぞいてほぼ死語しごとなったが、創作そうさく世界せかいでは関西かんさい一人称いちにんしょうとしてしばしばもちいられる。

わい、ワイ

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「わし」がくだけたもので、もっぱ男性だんせい近世きんせい末期まっき以降いこう近畿きんき地方ちほうられるほか、青森あおもりけん下北しもきた地方ちほうでは、男女だんじょどもに「わい」をもちいる。東京とうきょうしきアクセント話者わしゃには、「わい」を「猥」や「まかない」などのかたりにききとり、不快ふかい印象いんしょうもの割合わりあいおお[10]。また九州きゅうしゅう地方ちほうとく長崎ながさきにおいては、一人称いちにんしょうとして「おい」を使用しようする場合ばあい、「わい」を二人称ににんしょうとしてもちいることがおおいため、注意ちゅうい必要ひつようである。

所有しょゆうかくとしては全国ぜんこく一般いっぱん男女だんじょ関係かんけいなくもちいられるが、一人称いちにんしょう主格しゅかくとしては西日本にしにほん中心ちゅうしんおも女性じょせいかたりとしてもちいられてきた。九州きゅうしゅうゆたか方言ほうげん地域ちいきなど男女だんじょ関係かんけいなくもちいる地域ちいきもある。京都きょうとでは「うちら」は男性だんせいでもある。21世紀せいきになると、てい年齢ねんれいそう女性じょせいにおいて日本にっぽん全体ぜんたい使つかわれるようになり、使用しようしゃ年齢ねんれいかさねるにつれてその使用しようそうえている。

おれとう(おいら)

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おも関東かんとう地方ちほう男性だんせい使用しようする。複数ふくすうがた「おれら」のくだけた表現ひょうげんであるが、てんじてかわいこぶるときに使用しようするれいもある。単数たんすう複数ふくすうどちらのあつかいにも使つかわれる。

著名ちょめいじんでは西村にしむら博之ひろゆきビートたけしなどが使用しようしている。

おら(おれら) おらさま

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使用しようされるのはおも関東かんとう地方ちほう以北いほくで、かつては女性じょせいもちいた。現代げんだいでは「おれら(おら)東京とうきょうぎょうぐだ」という歌詞かしにもあるように、役割やくわりとしてあつかわれる場合ばあいがある。とく北海道ほっかいどう南部なんぶ青森あおもりけんなどの東北とうほく地方ちほう富山とやまけん周辺しゅうへん中部ちゅうぶ地方ちほうでは平板へいばんがたアクセント(「ら」がたかい)となる。単数たんすう複数ふくすうかは地方ちほう各地かくちのアクセントや使つかいかたによってことなる。

昭和しょうわ初期しょき首相しゅしょう陸軍りくぐん大将たいしょう田中たなか義一ぎいち山口やまぐちけん出身しゅっしんだが、一人称いちにんしょうが「おら」だったことから「おらが大将たいしょう」といわれた。

モンスターストライク』のオラゴンは、この一人称いちにんしょうさまけをしている。

クレヨンしんちゃん』の主人公しゅじんこう野原のはらしんのすけは、埼玉さいたまけん在住ざいじゅうの5歳児さいじだが、秋田あきたけんじん祖父そふ影響えいきょうけ、この一人称いちにんしょう一貫いっかんして使つかっている。

おい、おいどん

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九州きゅうしゅうとくみなみ九州きゅうしゅう地方ちほう男性だんせい使つかう。「おれ」「おり」の変型へんけい。「おいどん」は年配ねんぱい男性だんせい戦前せんぜんまれのなかでは女性じょせいも)が使つかう。松本まつもとれい作品さくひんおとこおいどん』で知名度ちめいどがった。長崎ながさき出身しゅっしん福山ふくやま雅治まさはる地元じもとでは「おい」を使つかう。

全国ぜんこくてきには「きみ」「おまえ」の意味いみ二人称ににんしょうでも使つかわれる。「おい!こら!」は喧嘩けんかなどの威嚇いかく使つかわれるが、明治めいじ初期しょき薩摩さつま出身しゅっしん警官けいかんおおかったことから普及ふきゅうした。

北陸ほくりく方言ほうげん福井ふくいけん石川いしかわけんなど)や東海とうかい東山ひがしやま方言ほうげん(ナヤシ方言ほうげん)で、おも男性だんせい使つかう。むかし女性じょせい使つかっていた。

わ、わー

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古代こだいからあった人称にんしょう代名詞だいめいしとみられ、北海道ほっかいどう南部なんぶ沿岸えんがん津軽つがる方言ほうげんでは男女だんじょ区別くべつなく使つかわれる。ではおも年配ねんぱい男性だんせい使つかい、二人称ににんしょう使つかわれることも同等どうとうにある。北陸ほくりく方言ほうげんでは濁音だくおんによって人称にんしょう使つかける。沖縄おきなわ方言ほうげん(ウチナーグチ)などでの一人称いちにんしょうではおも男性だんせい使つかう。

ぼくちゃん、ぼくちん

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おも男性だんせい使用しようする。大抵たいていはかわいこぶったり、ふざけたりして使つかう。『わらいてん』に出演しゅつえんしたさんゆうていしょうえんゆうがふざけて使用しようした。

おれっち

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おれ」の変型へんけい江戸えど言葉ことば江戸えどは「おれたち」「おれら」というおれ複数ふくすうしょう単数たんすうしょうにも使つかい、「おれら」がくずれたのが「おいら」であり「おれたち」がくずれたのが「おれっち」であるという。現在げんざいでは静岡しずおかけん中部ちゅうぶ地区ちく中心ちゅうしん使つかわれている。

おりゃあ・ぼかぁ・わたしゃ・あたしゃ・わしゃあ・おらぁ

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一人称いちにんしょう+「は」をくずした表現ひょうげんで「ゃあ」や「ぁ」を既成きせい一人称いちにんしょうにつけ表現ひょうげんがある。山本やまもと五十六いそろくはプライベートでは「おらぁ」と自称じしょうすることがおおかったとわれている。

英語えいご目的もくてきかく一人称いちにんしょうであるme借用しゃくようしたもの。小笠原諸島おがさわらしょとうはなされていた日本語にほんご八丈はちじょう方言ほうげん)と英語えいごクレオール言語げんごである小笠原おがさわら方言ほうげん使つかわれていた(小笠原おがさわら方言ほうげんでは、英語えいご主格しゅかく一人称いちにんしょうであるIもちいられなかった)。

フィクション作品さくひんなどでは、外国がいこくかぶれのキャラクターが使つかれいがある。

ビジネス文書ぶんしょ

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当方とうほう(とうほう)

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話者わしゃ本人ほんにんおよび、話者わしゃぞくしている場所ばしょ団体だんたいなどをふくめてわれる場合ばあいおおい。ビジネスなど、比較的ひかくてきあらたまった使用しようされる。

下名かめい(かめい)

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自分じぶんをへりくだっていうかたり相手あいて目上めうえでも目下もっかでも使つかえる表現ひょうげんとされる。

職業しょくぎょう

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本官ほんかん小官しょうかん

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警察官けいさつかん士官しかん裁判官さいばんかん事務次官じむじかんひとし官職かんしょくにあるもの自分じぶん言葉ことば。たとえばだい1かい帝国ていこく議会ぎかいにおける山縣やまがた有朋ありとも首相しゅしょう施政しせい方針ほうしん演説えんぜつ一人称いちにんしょうが「本官ほんかん」であった(山縣やまがた陸軍りくぐん大将たいしょうだったので前記ぜんきの「士官しかん」に該当がいとうする)。現在げんざいではほとんどもちいられなくなっているが、フィクションにおいて警官けいかんなどがもちいることはある。小官しょうかん謙譲けんじょう

本職ほんしょく小職しょうしょく

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公務員こうむいん職務しょくむにおいてもちいる。たとえば、供述きょうじゅつ調書ちょうしょではろくものである検察官けんさつかん警察官けいさつかんなどをしめ定型ていけいとして「本職ほんしょく」がもちいられる。小職しょうしょく謙譲けんじょう小職しょうしょくかんして、民間みんかん企業きぎょう人間にんげんが「小職しょうしょく」を使つかうのは本来ほんらい間違まちがいであるが、昨今さっこん一般いっぱんてき表現ひょうげんになっている。英語えいごでも裁判官さいばんかんは I や we の使用しようけ、受動態じゅどうたいあらわして意味いみじょう主語しゅごをぼかすか、the court (とう法廷ほうてい)などでいいかえる。

とうしょくへいしょく

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一定いってい職務しょくむにあるもの当該とうがい職務しょくむにおいてもちいる。弁護士べんごし弁理べんり司法しほう書士しょしひとし専門せんもんしょくもちいることがおおい。へいしょく謙譲けんじょう

愚僧ぐそう(ぐそう)、つたなそう(せっそう)、愚禿ぐとく(ぐとく)

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僧侶そうりょがへりくだったいいかた。「愚禿ぐとく」はとく親鸞しんらん多用たようしたことで有名ゆうめい[11]

団体だんたい組織そしき

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とう○・へい○(まれに小社しょうしゃ-会社かいしゃ場合ばあい) 

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当社とうしゃ」「弊社へいしゃ」(会社かいしゃまたは神社じんじゃ)、「当行とうこう」「へいぎょう」(銀行ぎんこう)、「とう法人ほうじん」「へい法人ほうじん」(監査かんさ法人ほうじんなど)、「とう組合くみあい」「へい組合くみあい」(組合くみあい)、「とういん」「へいいん」(病院びょういん医院いいん)、「当校とうこう」「へいこう」(学校がっこう)など。「へい○」は謙譲けんじょう。なお、「とう○」は三人称さんにんしょうとしてもちいられることもある。

無線むせん

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当局とうきょく(とうきょく)

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アマチュア無線むせんいえ同士どうし会話かいわ文書ぶんしょ使つかわれる。二人称ににんしょうきょく(ききょく)とう。本来ほんらいはアマチュア無線むせん通信つうしんにおける表現ひょうげんであり、送信そうしんしゃ送信そうしんきょくであるため。

アマチュア無線むせん使用しようされる。通信つうしんにおいてみずからの名乗なの場合ばあい、「こちら山田やまだ」のように表現ひょうげんしていたものが由来ゆらい。これからてんじてか、電話でんわ通信つうしんさいに「こちら本部ほんぶ」「こちら339便びん」などのようにもちいられることもある。英語えいごでも、無線むせん電話でんわでの自己じこ紹介しょうかいでは I am のわりに、This is が使つかわれる。

古式こしき

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我輩わがはい吾輩わがはいやからやから(わがはい)

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もったいぶった、尊大そんだい表現ひょうげん。『吾輩わがはいねこである』の題名だいめいおよび主人公しゅじんこう一人称いちにんしょうとして有名ゆうめいである。福田ふくだ赳夫たけお使つかっていた。このほかデーモン閣下かっか使用しようしている(せいかつえII構成こうせいいん使用しようすることがあった)。

フィクションにおいてもクッパケロロセブルス・スネイプなど地位ちいのある男性だんせいキャラクターの一人称いちにんしょうとして多用たようされる。

ぼう(それがし)

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中世ちゅうせい以降いこう用法ようほう謙譲けんじょうしめすが、のちには尊大そんだいしめした。おも武士ぶし一人称いちにんしょうとしてもちいる。戦国せんごく時代じだいなどにおお使つかわれた。

ちん(ちん)

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かつて古代こだい中国ちゅうごくにおいて王侯おうこう貴族きぞく使つかっていたが、始皇帝しこうてい皇帝こうていのみ使用しようできる一人称いちにんしょうとして独占どくせんした。それにならい、日本にっぽんにおいても天皇てんのう詔勅しょうちょく公文書こうぶんしょないにおける一人称いちにんしょうとしてもちいた。終戦しゅうせん玉音ぎょくおん放送ほうそうでももちいられている。しかし、戦後せんご公式こうしき文書ぶんしょ発言はつげんなかからちん使用しよう徐々じょじょになくなり、上皇じょうこう明仁あきひと今上きんじょう天皇てんのうわたくし使用しようしている。ただし、戦前せんぜんにおいてもちん文書ぶんしょやその朗読ろうどく使つかわれたのみで昭和しょうわ天皇てんのう口語こうごではわたし使用しようしていた(プライベートではぼく)。なお、漢字かんじちんには「きざし」という意味いみがある。

麻呂まろ麿まろ(まろ)

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古代こだい日本にっぽんにおいて男性だんせいめい使つかわれていたが(柿本人麻呂かきのもとのひとまろ坂上田村麻呂さかのうえのたむらまろなど)、平安へいあん時代じだい以後いご一人称いちにんしょうとして使用しようされるようになり、身分みぶん男女だんじょわずにもちいられた。

われ(あ)

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奈良なら時代じだい以前いぜんから平安へいあん時代じだいまで一人称いちにんしょうとして使つかわれた。現在げんざいでは短歌たんか俳句はいくったおとすう制限せいげんのある詩歌しか使用しようされるほかみなみ近畿きんき地方ちほうなどに方言ほうげんとしてのこる(和歌山わかやまべんの「われがら」など)。それ以外いがい地域ちいきでも地名ちめいなどにのこっているのがられる(吾妻あづま我孫子あびこひとし)。

わがわれ(われ・わ)・わが

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文部省もんぶしょう唱歌しょうかの「うみ」など。 日本にっぽんふるくからの一人称いちにんしょうであるが、東京とうきょうなどでは口頭こうとうには使つかわれず、文章ぶんしょうにおいても書名しょめいなどのあらたまった場合ばあいもちいられるだけである。ただし「」・「くに」のように、“わたしの〜”という意味いみ言葉ことばとしてはしばしばもちいられる。一方いっぽう西日本にしにほんでは一部いちぶ地域ちいき方言ほうげんとしてられる。沖縄おきなわ方言ほうげんでは「わが(ワン)」がもっぱ一人称いちにんしょうとしてもちいられたものの、明治めいじ標準ひょうじゅん教育きょういくによって現在げんざいではもちいられなくなっている。また、西日本にしにほん一部いちぶ地方ちほうでも「われ(ワレ)」が口頭こうとうもちいられる。

おのれおのれれ(おのれ)

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「おの」をもとにする「自身じしん」をさす反照はんしょう代名詞だいめいしであったものを一人称いちにんしょう二人称ににんしょうもちいた。文献ぶんけんにはすでに万葉集まんようしゅうなどからられるかたりであり、平安へいあん時代じだい以降いこう人称にんしょう代名詞だいめいしとしてひろまる。二人称ににんしょうでは場合ばあいによって相手あいて卑下ひげするをもった使つかかたをするが、一人称いちにんしょうでもそれとおなじくみずからを見下みさげた謙譲けんじょうふく場合ばあいがある。おのれれ、おのれら。古典こてんとなる伝記でんきから近世きんせい文学ぶんがくなどおおくのなかで使つかわれているため、全国ぜんこくてきには文語ぶんごとしてられているが、近畿きんき地方ちほうをはじめ関西かんさい周辺しゅうへん地方ちほうでは口語こうごとしてもちいられる。

(よ)

[編集へんしゅう]

平安へいあん時代じだい以後いご使用しようされるようになった。どもに「われ・わ」とくんじる。なお、現在げんざいあまりを「あまる」「あらかじめ」ともくんじるのは古来こらいみではなく、昭和しょうわ21ねん内閣ないかく告示こくじだい32ごう当用漢字とうようかんじひょう』によって、本来ほんらいべつである(あまる)と(われ)、(あらかじめ)と(われ)がそれぞれどう字形じけいとなったからである。

小生しょうせい(しょうせい)

[編集へんしゅう]

おも書面しょめんじょうもちいられ、男性だんせい自分じぶんへりくだ(へりくだ)って使つかう。現在げんざいでも書簡しょかんにはもちいられる[12]

われじん(ごじん)

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かつて書簡しょかん文章ぶんしょうで、男性だんせい使用しようした。岩波いわなみ文庫ぶんこ巻末かんまつの「読書どくしょよせす」でもちいられているのが現代げんだいかける数少かずすくないれいである。

迂生うせい(うせい)・愚生ぐせい(ぐせい)

[編集へんしゅう]

かつて書簡しょかんで、男性だんせい謙称けんしょうとして使用しようした。

非才ひさい(ひさい)・不才ふさい(ふさい)・佞(ふねい)

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みずからのざいをへりくだって使つかう。おも男性だんせいようである。

おも男女だんじょわず、庶民しょみんおお使用しようされた。「あたし」がさらにくずれた結果けっか、「あっし」になったとかんがえられている。

様々さまざま地方ちほうからあつめられた遊女ゆうじょいたるが、お国訛くになまりをかくすために使用しようした「くるわ言葉ことば」における一人称いちにんしょうとして、「あっし」ととももちいられた。さらに、「わちき」「あちし」というのがあるが、これは時代じだいげきなどフィクションのなかでのみもちいられる。

これもくるわ言葉ことばとして使用しようされた女性じょせい一人称いちにんしょう現在げんざいはほとんど使つかわれない。ただし、美濃みのべんでは男女だんじょわず一人称いちにんしょうとして使つかわれる。岐阜ぎふのコミュニティFMきょくFMわっち」の命名めいめいもこれに由来ゆらいする。

わらわ(わらわ)

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女性じょせい謙譲けんじょう一人称いちにんしょうで、語源ごげんは「わらわわらわ)」。貴人きじんちかづき奉仕ほうしするずみをほどこされた女性じょせい腰元こしもと侍女じじょ)。近世きんせいではとく武家ぶけ女性じょせいもちいた。「わらわ」はうえずみをされ、おもふくろ背負しょわされた奴隷どれい意味いみあらわし、てんじてわらべの意味いみをもあらわす。フィクションにおいては女王じょおう女性じょせい貴族きぞくなどが尊大そんだい演出えんしゅつとして使つか場合ばあいがあるが、本来ほんらい謙譲けんじょうでありフィクション固有こゆう用法ようほう

ぼく(やつがれ)

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上代じょうだい中古ちゅうこでは男女だんじょども使用しようしていたが、近代きんだいではおも男性だんせいあらたまった使つかうのにもちいられていた。自分じぶんをへりくだって使つかう。現在げんざいはほとんど使つかわれない。

拙者せっしゃ(せっしゃ)・つたなそう(せっそう)・つたな(せつ)

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おも武士ぶしさむらい忍者にんじゃなどが自分じぶんのことをへりくだって使用しようする。僧侶そうりょ場合ばあいつたなそう」になる。あそにんふうに「つたな」という場合ばあいもある。

ども(みども)

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武士ぶし階級かいきゅうで、同輩どうはい同輩どうはい以下いかたいして使つかわれた。男性だんせいもちいる。複数ふくすうがたとしてももちいられる。

手前てまえ(てまえ)

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現在げんざいでもビジネスなどで「手前てまえども」といったかたちで「こちら」のわりに使用しようされる。

此方こちら(こなた)、此方こちらじんとう(こちとら)

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此方こちらはな距離きょり、あるいは心理しんりてきちか場所ばしょあらわし、「こちら」のひと直接ちょくせつしめすことを無作法ぶさほうとし、曖昧あいまい位置いちしめそうとする意識いしき起因きいんする表現ひょうげんである。おも武士ぶし階級かいきゅう公卿くぎょう華族かぞく女性じょせいもちいた。対応たいおうする庶民しょみん無作法ぶさほうないいかたとして、此方こちらじんとう(こちとら)があり、17世紀せいきごろから使つかわれた。単数たんすうにも複数ふくすうにももちいられるが、単数たんすう用法ようほうのほうがあたらしい。

わたしめ(わたしめ)(わたくしめ)

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「め」は自分じぶん卑下ひげする接尾せつびである。女性じょせい使用人しようにん主人しゅじん(この場合ばあい男女だんじょわない)にたいして使用しようしたりくらいひくもの目上めうえ人物じんぶつたいして使用しようすることもある。

インターネットスラング

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以下いかのものは、インターネットじょうとく匿名とくめい掲示板けいじばんもちいられることがある。

おれ(おれし)

[編集へんしゅう]

おれ」+敬称けいしょう接尾せつびとしての「」。

ぼくくん(ぼくくん)

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  1. ぼく」+敬称けいしょう接尾せつびとしての「きみ」。
  2. かたなにかの出来事できごと回想かいそうするなかで、だれかから二人称ににんしょうとしてかた名前なまえばれる描写びょうしゃをするさいもちいられる。すなわち、回想かいそうなかもちいられた二人称ににんしょうについて、回想かいそうをしているかたがそれは自分じぶん自身じしんことあらわしているとしめ目的もくてき使つかわれる一人称いちにんしょうといえる。

れ(もれ)

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おれ」(ore)の手前てまえ子音しいんの/m/をけたもの。「おれおれも」とキータイプするさいあやま変換へんかん由来ゆらいというせつがある[13]

ワイ(わいし)

[編集へんしゅう]

「わい」+敬称けいしょう接尾せつびとしての「」。

ボイ(ぼい)

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ぼく」+「わい」。

一人称いちにんしょう複数ふくすう代名詞だいめいし

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日本語にほんご人称にんしょう代名詞だいめいしにおいて複数ふくすうがたとは、かならずしも複数ふくすうのみをあらわすものであらない。自他じた主客しゅかくのいいわけ、話者わしゃとの待遇たいぐうじょう表現ひょうげんであるなど、使つかいかたは多用たようである。

たち(たち)

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話者わしゃふくんだ複数ふくすう人称にんしょう。ニュートラルに使用しようできるが謙譲けんじょうもとめられるじょうで「わたしたち」などをもちいることは不適ふてきとされる。

とも(ども)

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一人称いちにんしょう複数ふくすう謙譲けんじょうとして現在げんざいでは「わたくしども」が標準ひょうじゅんとされる。  

とう(ら)

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まえにつく一人称いちにんしょうによってニュアンスがことなる。

  • おれら」(低位ていいしたしみ)
  • ぼくら」(謙遜けんそんおさなさ)
  • われら」(あらたまり・尊大そんだい

など。

我々われわれ(われわれ)

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あらたまったびかたであり、公的こうてきなスピーチや責任せきにんのある場面ばめんでの口語こうごもちいられ、人称にんしょうだけでなく立場たちばふくめてしょうすることがおおい。

代名詞だいめいし使つかわない一人称いちにんしょう

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英語えいごでも学術がくじゅつ論文ろんぶんなどでは、一人称いちにんしょう代名詞だいめいしけて三人称さんにんしょう受動態じゅどうたい表現ひょうげんしたり、I を the author(筆者ひっしゃ)でいいかえたりすることがある。受動態じゅどうたい意味いみじょう主語しゅごあらわす by 以下いか省略しょうりゃくし、意味いみじょう主語しゅご明示めいじしないこともしばしばである。

話者わしゃ名前なまえ

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おも未成年みせいねん女性じょせい幼児ようじ使つかっている。使つかかたは、自分じぶんした名前なまえ(または名字みょうじ)をそのままんだり、いやすくして省略しょうりゃくしたり(れい:あやか→あや)、自分じぶん名前なまえに「ちゃん」や「くん」や「たん」をつけたりするなど種類しゅるい様々さまざまである。また、成人せいじん男女だんじょ幼児ようじ会話かいわするとき使つかわれることがある(「○○ちゃん(自分じぶん名前なまえ)とあそぼうか?」など)。水木みずきしげる生前せいぜん自分じぶんのことを「水木みずきサン」とんだが、老人ろうじんとしては例外れいがいてきである。

外国がいこく場合ばあい英語えいごふくめた印欧語いんおうごぞく言語げんごなどでは動詞どうし活用かつよう人称にんしょう変化へんかしたり、人称にんしょう代名詞だいめいしかく変化へんかがあるといった文法ぶんぽうじょう文法ぶんぽうカテゴリー)の理由りゆうから、自分じぶん名前なまえこと一般いっぱんてきではないが、幼児ようじ(セサミストリートに登場とうじょうするモンスターの一人ひとりであるエルモなど)ではられることがある。一方いっぽうひがしアジアではとくインドネシアベトナム話者わしゃによって自分じぶんのことを名前なまえぶことがおこなわれている。かつての中国ちゅうごくでは、自分じぶん名前なまえ一人称いちにんしょうとして使用しようすることは相手あいてたいする臣従しんじゅうしめしていた。たとえばしょかずらあきらしょかずら孔明こうめい)の出師すいしひょうでは、皇帝こうていにたてまつる文章ぶんしょうであるので「しんあきらもうす」というしになっており、四庫全書総目提要すべ皇帝こうていへの上奏じょうそうぶんであるから「しんつつしんであんずるに…編纂へんさんかんしん○○。しん☓☓。しん△△…」とみずからの(もしくは姓名せいめい)のまえに「しん」をけて名乗なのっている。かつての日本にっぽんでもその影響えいきょう天皇てんのうたいする正式せいしき自称じしょうは「しんなにがし」であった(戦後せんごれいでは吉田よしだしげる1950年代ねんだいに「しんしげる」とったことがある)。

地位ちい立場たちば

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親族しんぞく呼称こしょう

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親族しんぞく呼称こしょうとは「とうさん」「かあさん」「ねえさん」「にいさん」「じいちゃん」「ばあちゃん」「おじさん」「おばさん」などをす。家族かぞくあいだ使つかわれる言葉ことばで、子供こどもまご中心ちゅうしんえて家族かぞく自分じぶん立場たちば表現ひょうげんする。

バリエーションは多彩たさいあたまに「お」をけたり「さん」のわりとして「ちゃん」にえたり「とうさん」「かあさん」のかわりに「パパ」「ママ」、「じいちゃん」「ばあちゃん」のわりに「じーじ」「ばーば」を使用しようするなどじつ様々さまざまである。なお、「おにいさん」「おねえさん」「おじさん」「おばさん」の表現ひょうげん場合ばあい家族かぞく関係かんけいでなくても大人おとな子供こども使つか表現ひょうげんである。

英語えいごでも小児しょうにたいしては、"Dad/Mom will do it."(おとうさん(おかあさん)がしてあげよう)のように父親ちちおや母親ははおや)が I のわりに Dad/Mom を使つかうことがある。子供こどもおやたいしてうときには二人称ににんしょうとして使つかわれるのも日本語にほんごおなじである。"Is Dad there?"(おとうさんいる?)

作者さくしゃ

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小説しょうせつ作品さくひんなどでは、その作者さくしゃ解説かいせつとして文中ぶんちゅう自身じしんことを「作者さくしゃ」と表記ひょうきすることがある。とくに『羅生門らしょうもん』の文中ぶんちゅうにも作者さくしゃである芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ使用しようしている。

先生せんせい

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しょうなか高校こうこう教師きょうし児童じどう生徒せいとたいして使つか一人称いちにんしょうとく義務ぎむ教育きょういく小・中学校しょうちゅうがっこうにおいて使つか教師きょうしおおい。たまに名字みょうじふくむときもある。また、医療いりょう業界ぎょうかいでも医師いし子供こども患者かんじゃ使用しようするれいがある。親族しんぞく呼称こしょう延長えんちょうかんがえられる。

編集へんしゅう筆者ひっしゃ

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編集へんしゅう(へんしゅうし)や筆者ひっしゃ新聞しんぶん雑誌ざっし記事きじにて、署名しょめい以外いがいにも編集へんしゅうしゃ著者ちょしゃ自称じしょうとしてもちいられる一人称いちにんしょう新聞しんぶんコラム記事きじ場合ばあいはそのらん名前なまえって「○○(し)」と自称じしょうすることもおおい。「天声てんせい人語じんご」など。たとえば、藤沢ふじさわ周平しゅうへい業界ぎょうかい編集へんしゅうちょうとしてコラム「甘味あまみ辛味からみ」を連載れんさいしていたときには「あま辛子からし」(あまからし)を名乗なのり、「あま辛子からしもサラリーマンのたしなみとして多少たしょうやる」などと使用しようしている[14]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b かねすいさとし (2003), ヴァーチャル日本語にほんご 役割やくわりなぞ, 岩波書店いわなみしょてん, ISBN 978-4-00-006827-7 
  2. ^ 語源ごげん由来ゆらい辞典じてんわたし』のこうより
  3. ^ a b c これからの敬語けいご 国語こくご審議しんぎかい決定けってい1952ねん4がつ14にち
  4. ^ 「わたし」と「わたし」 - 最近さいきんになる放送ほうそう用語ようご、NHK放送ほうそう文化ぶんか研究所けんきゅうじょ1998ねん8がつ1にち更新こうしん2011ねん9月25にち閲覧えつらん
  5. ^ 常用漢字じょうようかんじひょう平成へいせい22ねん11月30にち内閣ないかく告示こくじ文化庁ぶんかちょう
  6. ^ a b しん明解めいかい 語源ごげん辞典じてん 2011/8 小松こまつ寿雄よしお編集へんしゅう)、鈴木すずき英夫ひでお編集へんしゅう) P832
  7. ^ 日本語にほんごげんこう辞典じてん 2012/8 増井ますいきむのりちょ) P983
  8. ^ しん明解めいかい国語こくご辞典じてん だい5はん1997ねん三省堂さんせいどう(ただし、アクセントの記載きさいじゅんは、かならずしもおお使つかわれているじゅんではないとはかれている)および日本にっぽん国語こくごだい辞典じてんだい2はん小学館しょうがくかん
  9. ^ 『オレさまするどもたち』(諏訪すわ哲二てつじ ちょ中公新書ちゅうこうしんしょラクレ、2005ねんISBN 4121501713)といった著作ちょさく存在そんざいする。
  10. ^ 馬瀬まぜ良雄よしお(2011)。"「東京とうきょうしきアクセントにかんする社会しゃかい言語げんごがくてき研究けんきゅう
  11. ^ デジタル大辞泉だいじせん[1]
    西田にしだ幾多郎きたろうに『愚禿ぐとく親鸞しんらん』という随筆ずいひつがある[2]
  12. ^ 小説しょうせつおついちは『しょう生物せいぶつ』(2004ねん)というエッセイを出版しゅっぱんした。
  13. ^ れとは - コトバンク
  14. ^ 藤沢ふじさわ周平しゅうへい徳永とくなが文一ぶんいち甘味あまみ辛味からみ』(文春ぶんしゅん文庫ぶんこ)2012より。

関連かんれん項目こうもく

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