桓階

桓 階かい（かん かい、生なま没年ぼつねん不ふ詳しょう）は、中国ちゅうごく後こう漢かん末期まっきから三さん国こく時代じだいにかけての政治せいじ家か。魏たかしに仕つかえた。字じは伯はく序じょ（または伯はく緒いとぐち）。荊州長ちょう沙すな郡ぐん臨湘県けん（現在げんざいの湖南こなん省しょう長ちょう沙すな市し長ちょう沙すな県けん）の人ひと。祖父そふは桓超。父ちちは桓勝。弟おとうとは桓纂・桓彝（字じは公おおやけ長ちょう。呉ごの尚書しょうしょ）。子こは桓佑・桓嘉・他た数すう名めい。孫まごは桓翊・桓陵。妻つまは伏ふく氏し。『三国志さんごくし』魏ぎ志こころざし「桓二陳徐衛盧伝」に伝つてがある。

経歴けいれき

劉りゅう表ひょうとの戦たたかい

祖父そふの代だいから州しゅう郡ぐんに出仕しゅっしする家柄いえがらで、父ちちは尚書しょうしょを務つとめたため、南方なんぽうにおいて著名ちょめいであった（『魏ぎ書しょ』）。

長ちょう沙すな郡ぐんの功こう曹となり、太守たいしゅの孫まご堅けんから孝こう廉れんに推挙すいきょされ、尚書しょうしょ郎ろうとなった。後のちに父ちちが亡なくなると、郷里きょうりで喪もに服ふくすことになったが、丁度ちょうどその時ときに孫まご堅けんが劉りゅう表ひょうとの戦たたかいで戦死せんしした（襄じょう陽ひの戦たたかい）。桓階は孫まご堅けんに受うけた恩おんを返かえすため、危険きけんを知しりながら劉りゅう表ひょうに対たいし遺体いたいの引びき取とりを請こうた。劉りゅう表ひょうは桓階の行為こういを義ぎと判断はんだんし、申もうし入いれを受諾じゅだくした。その後ご、後任こうにんの太守たいしゅである張ちょう羨ともに仕つかえた。

建たて安やすし3年ねん（198年ねん）、張ちょう羨ともに対たいして曹操そうそうに味方みかたすることを進言しんげんし、張ちょう羨ともに近隣きんりんの郡ぐんに働はたらきかけさせ、劉りゅう表ひょうに対たいして荊南三さん郡ぐんを挙こぞっての大だい規模きぼな反乱はんらんを起おこさせた。曹操そうそうは喜よろこんだが、袁紹との決戦けっせんに追おわれて援軍えんぐんを派遣はけんすることはできなかった。やがて張ちょう羨ともが病死びょうしすると、子この張ちょう懌が反乱はんらんを継続けいぞくしたが、最終さいしゅう的てきには劉りゅう表ひょうに鎮圧ちんあつされた。桓階は逐電ちくでんすることを考かんがえ、官位かんいと自みずからの妻つまの妹いもうとを与あたえるという劉りゅう表ひょうの誘さそいを断ことわり、病気びょうきと称しょうして隠遁いんとんした。

曹氏に仕つかえる

劉りゅう表ひょう死後しご、荊州が曹操そうそうの支配しはい下かになると、張ちょう羨ともに協力きょうりょくした功績こうせきにより召めし出だされ、丞相じょうしょう掾じょう主ぬし簿ぼ・趙ちょう郡ぐん太守たいしゅとなった。

赤あか壁かべの戦たたかいで敗北はいぼくした曹操そうそうは、荊南三さん郡ぐんを平定へいていするために桓階を派遣はけんしようとしたが、桓階は劉りゅう巴ともみが適任てきにんであると辞退じたいした。

魏ぎが建国けんこくされると、虎とら賁中ちゅう郎ろう将しょう・侍さむらい中ちゅうにまで昇のぼった。曹植を寵愛ちょうあいする曹操そうそうに、曹丕を後継こうけい者しゃに立たてることを何なん度ども進言しんげんした。当時とうじ、曹植を支持しじする丁ちょう儀ただしが、曹植を後継こうけいにすべく暗躍あんやくしており（「曹植伝でん」）、曹丕を支持しじする毛もう玠や徐じょ奕を誹謗ひぼうすることがあったため、桓階はこれを庇かばった。桓階には、このような他人たにんの美点びてんを後押あとおしし、欠点けってんを補強ほきょうする行為こういがあったという。

やがて尚書しょうしょとなり官吏かんりの任用にんように当あたった。曹仁が関せき羽はねに攻撃こうげきされ窮地きゅうちに陥おちいると、曹操そうそうは親おや征せいを考かんがえた。しかし桓階は「曹仁殿どのや徐じょ晃あきら殿しんがりを信しんじておられるのなら、御ご自身じしんで援軍えんぐんを率ひきい赴おもむかれるべきではない」と言いった。このため曹操そうそうは、軍ぐんを摩ま陂に駐屯ちゅうとんさせるだけに留とめた。

一説いっせつには、桓階が曹操そうそうに帝位ていいにつくよう勧すすめたが、夏なつ侯ほう惇あつしの「劉りゅう備を討うつまでは時期じき尚早しょうそう」とする反対はんたいに遭あって、実現じつげんできなかったという（「武たけ帝みかど紀き」が引ひく『曹瞞伝でん』、『世よ語ご』）。

後こう漢かんから魏ぎへの禅譲ぜんじょうに、他たの群臣ぐんしんと共ともに積極せっきょく的てきに協力きょうりょくした（「文ぶん帝みかど紀き」が引ひく『献けんじ帝みかど伝でん』）。曹丕（文ぶん帝みかど）の代だいには尚書しょうしょ令れいとなり、高郷たかさと亭ちん侯こうに封ふうじられ、侍さむらい中ちゅうを加くわえられた。

蜀しょく漢かんからの降くだ将はたである孟はじめ達たちは司馬しば懿や劉りゅう曄に疑うたがわれたが、桓階は夏なつ侯こう尚なおと共ともに孟はじめ達たちと親交しんこうすることで安心あんしんさせた（「明あきら帝みかど紀き」が引ひく『魏ぎ略りゃく』）。

曹丕は桓階を厚遇こうぐうし、自分じぶんの子この後見こうけん役やく足たり得える人材じんざいと考かんがえていた。しかしまもなく桓階は重病じゅうびょうとなった。曹丕は桓階を安楽あんらく郷きょう侯こうに国替くにがえし六ろく百ひゃく戸この所領しょりょうを与あたえ、三さん人にんの子こにも関内かんない侯こうの位いを与あたえた。また早世そうせいした子この桓佑にも、関内かんない侯こうを追贈ついぞうした。さらに桓階は危篤きとくになると、九きゅう卿きょうの一ひとつである太ふとし常つねに任命にんめいされたが、まもなく死去しきょした。。貞さだ侯こうと諡おくりなされ、子この桓嘉が爵位しゃくいを継ついだ。また弟おとうとの桓纂も散ち騎き常つね侍さむらいとなり、関内かんない侯こうに封ふうじられたという。

正せい始はじめ4年ねん（243年ねん）秋あき7月がつ、曹芳（斉ひとし王おう）は詔勅しょうちょくを下くだし、曹操そうそうの廟びょう庭にわに功臣こうしん20人にんを祭まつった。その中なかには桓階も含ふくまれている（「斉ひとし王おう紀おさむ」）。

三国志さんごくし演義えんぎ

小説しょうせつ『三国志さんごくし演義えんぎ』では、当初とうしょは孫まご堅けん配下はいかとして登場とうじょうし、孫まご堅けんが劉りゅう表ひょう軍ぐんと戦たたかって戦死せんしした際さい、その遺骸いがいを引ひき取とるための交渉こうしょう役やくを与あたえられている。その後ごは史実しじつと同様どうように、曹丕の王朝おうちょう建国けんこくに加担かたん。華はな歆や王おう朗あきららと共ともに宮中きゅうちゅうに乗のり込こみ、献けんじ帝みかどに禅譲ぜんじょうを迫せまったことになっている。