持続じぞく可能かのうな農業のうぎょう

持続じぞく可能かのうな農業のうぎょう（じぞくかのうなのうぎょう、英えい: Sustainable agriculture〈サステイナブル・アグリカルチャー〉）とは、持続じぞく可能かのう性せいを考かんがえた農業のうぎょうのことである。

農業のうぎょうに関かんする環境かんきょう問題もんだいは、実じつは多様たようで深刻しんこくなものも多おおい。例たとえば、農地のうちを開拓かいたくする際さいに森林しんりんなどもともとそこにあった自然しぜん環境かんきょうを破壊はかいしたり、作物さくもつの栽培さいばいに必要ひつような水みず（河川かせん水みず・湖みずうみ水みず・地下水ちかすいなど）を過剰かじょうに使用しようすることで水みず資源しげんの減少げんしょうを招まねいたり、農薬のうやくにより土壌どじょう汚染おせんや水質すいしつ汚染おせんを起おこしたりといった問題もんだいがある。また、農産物のうさんぶつに関係かんけいする問題もんだい、例たとえば食糧しょくりょう問題もんだい、食料しょくりょうの安全あんぜんに関かんする問題もんだいなどの社会しゃかい問題もんだいなどにも間接かんせつ的てきに関かかわっている。

これらの問題もんだいを持続じぞく可能かのう性せいの考かんがえ方かたを取とり入いれて解決かいけつしていこうとするのが持続じぞく可能かのうな農業のうぎょうである。

持続じぞく可能かのうな農業のうぎょうに関係かんけいする考かんがえ方かた・運動うんどう[編集へんしゅう]

循環じゅんかん型がた農業のうぎょう[編集へんしゅう]

循環じゅんかん型がた農業のうぎょうとは、農業のうぎょうに用もちいられる肥料ひりょうや農薬のうやく、農具のうぐなどを循環じゅんかん利用りようするものである。畜産ちくさんや農業のうぎょう、家庭かていなどで出でる廃棄はいき物ぶつを肥料ひりょうに利用りようしたり、農業のうぎょうで出でるゴミを循環じゅんかん利用りようしたりすることは、持続じぞく可能かのうな農業のうぎょうになりうる。

有機ゆうき農業のうぎょう[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「有機ゆうき農業のうぎょう」を参照さんしょう

有機ゆうき農業のうぎょうは本来ほんらい、化学かがく肥料ひりょうや化学かがく農薬のうやくを使つかわない農業のうぎょうであるが、それは自然しぜん由来ゆらいで環境かんきょう負荷ふかの少すくない肥料ひりょうや農薬のうやくを使つかうことにつながり、持続じぞく可能かのうな農業のうぎょうにもなりうる。

地産ちさん地ち消けし・フードマイレージ[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「地産ちさん地ち消けし」および「フードマイレージ」を参照さんしょう

遠とおい海外かいがいで生産せいさんされた農産物のうさんぶつよりも近ちかい所ところで生産せいさんされた農産物のうさんぶつを選えらぶことで、エネルギー消費しょうひや温室おんしつ効果こうかガスを減へらすことにつながる考かんがえ方かた。

その他た[編集へんしゅう]

品種ひんしゅ改良かいりょうを通とおして生産せいさん力りょくを高たかめたり、農薬のうやくや肥料ひりょうの必要ひつよう量りょうを減へらしたりする試こころみもある。

農業のうぎょうを取とり巻まく課題かだいと解決かいけつ方法ほうほう[編集へんしゅう]

現在げんざい、世界せかいの農業のうぎょうを取とり巻まく課題かだいは多数たすうある。

発展はってん途上とじょう国こくや新興しんこう国こくを中心ちゅうしんとした人口じんこうの増加ぞうか（人口じんこう爆発ばくはつ）。これにより、食料しょくりょうの需要じゅようも爆発ばくはつ的てきに増加ぞうかしている。

→人口じんこうを抑制よくせいする必要ひつようがある。また、品種ひんしゅ改良かいりょうや転作てんさくなどにより生産せいさん量りょうを増ふやす必要ひつようがある。

産業さんぎょう構造こうぞうの変化へんかや都市とし化かに伴ともなう農業のうぎょう人口じんこうの減少げんしょうや高齢こうれい化か。一般いっぱん的てきにどの国くにも、もともと全ぜん人口じんこうの半数はんすう以上いじょうを占しめていた農業のうぎょう人口じんこうは、工業こうぎょう化かが進展しんてんして先進せんしん国こくになると1割わり以下いかにまで急減きゅうげんする。ただし、これは人手ひとでに頼たよる作業さぎょうに道具どうぐや機械きかいを導入どうにゅうしたり、農薬のうやくや肥料ひりょうを使つかうこと、あるいは食糧しょくりょうを輸入ゆにゅうするなどことで可能かのうになる。また、農業のうぎょうより収入しゅうにゅうの多おおい第だい二に次じ産業さんぎょうや第だい三さん次じ産業さんぎょうに従事じゅうじする国民こくみんの割合わりあいが増ふえ、都市とし化かが進行しんこうして農村のうそんは過疎かそ化かし、農業のうぎょうの衰退すいたいにつながる。
農業のうぎょうの高度こうど化かによる問題もんだい。農業のうぎょうに関かかわるエネルギー（燃料ねんりょう）や資源しげん需要じゅようの増加ぞうか。
経済けいざい発展はってんに伴ともなう食生活しょくせいかつの変化へんか（肉にく食しょく化か、食料しょくりょう需要じゅよう増加ぞうか、食品しょくひん廃棄はいきの増加ぞうか）。肉にくは同おなじ量りょうの野菜やさいや穀物こくもつに比くらべて、飼料しりょう（＝他たの作物さくもつ）や水みずの使用しよう量りょうが数すう倍ばい多おおく、飼料しりょう需要じゅようや水みず需要じゅようの増加ぞうかにつながる。経済けいざい発展はってんにより食料しょくりょうの不足ふそくが解消かいしょうされると、飽食ほうしょくに伴ともない食たべ残のこしや廃棄はいきなどが増ふえ、農産物のうさんぶつの無駄むだも増ふえる。
農業のうぎょうを取とり巻まく経済けいざい的てきな環境かんきょうの変化へんか。単価たんかの低ひくい主食しゅしょくなどから、高こう収入しゅうにゅうの作物さくもつへの転換てんかん。高こう収入しゅうにゅう作物さくもつが優先ゆうせんされたり、低てい収入しゅうにゅうにより質しつの悪わるい不作ふさくに頼たよらざるを得えない場合ばあい、不作ふさくのリスクが高たかい作物さくもつになり、その作物さくもつの需給じゅきゅうが年としによって大おおきく変動へんどうして価格かかくの騰落とうらくや最悪さいあくの場合ばあい飢饉ききんを招まねく場合ばあいがある。農業のうぎょうの機械きかい化かや燃料ねんりょう高騰こうとうなどがコストを増ふやし、農業のうぎょうの収入しゅうにゅうを減少げんしょうさせることが多おおい。
生産せいさん地ちと消費しょうひ地ちの偏かたより。生産せいさん地ちから消費しょうひ地ちまでの距離きょりが遠とおいほど、あるいは輸送ゆそう手段しゅだん次第しだいで、エネルギーの消費しょうひ量りょうが増ふえる。これはコストの増加ぞうか、品質ひんしつ維持いじのための薬剤やくざいの増加ぞうか、温室おんしつ効果こうかガス排出はいしゅつ量りょうの増加ぞうかをもたらす。先進せんしん国こくや人口じんこう密度みつどの高たかい国くに、大都市だいとし近郊きんこうで顕著けんちょ。

→消費しょうひ地ちに近ちかい所ところで生産せいさんされる農産物のうさんぶつを選えらぶよう、消費しょうひ者しゃの意識いしきを変かえる必要ひつようがある。

農地のうちの環境かんきょうの悪化あっか。過か耕作こうさく・過か放牧ほうぼく・過か取水しゅすいなどによる砂漠さばく化か。土壌どじょう汚染おせん、水質すいしつ汚染おせん、農業のうぎょう用水ようすいの減少げんしょう。益虫えきちゅう・益えき獣じゅうの減少げんしょう、害虫がいちゅう・害がい獣じゅうの増加ぞうか。
農地のうちの有限ゆうげん性せい。農業のうぎょうに適てきした土地とちは限かぎられ、作物さくもつによって適てきした環境かんきょうも異ことなるため、栽培さいばい可能かのうな土地とちは異ことなる。畜産ちくさんにおいても、生息せいそく環境かんきょうは限かぎられる。農地のうち開発かいはつに伴ともなう悪影響あくえいきょうも生うまれる。森林しんりん、特とくに熱帯ねったい雨林うりんは環境かんきょうに対たいする価値かちが高たかく、耕地こうちや放牧ほうぼく地ちに転換てんかんされると環境かんきょう負荷ふかが高たかい。
バイオエタノールの需要じゅよう増加ぞうか。農地のうちが食料しょくりょう生産せいさん用ようから燃料ねんりょう生産せいさん用ように転換てんかんされ、食料しょくりょう供給きょうきゅう量りょうが減少げんしょうする。

→食料しょくりょう生産せいさん用よう農地のうちを奪うばわないバイオ燃料ねんりょう、またはそれ以外いがいの代替だいたい燃料ねんりょうを開発かいはつする必要ひつようがある。

農産物のうさんぶつ、特とくに食しょくの安全あんぜんに関かかわる問題もんだい。品質ひんしつや残留ざんりゅう農薬のうやくの問題もんだい、添加てんか物ぶつの問題もんだいなど。

これらに関連かんれんして、以下いかのようなことも課題かだいとして挙あげられる。

農業のうぎょう政策せいさく。農業のうぎょうの振興しんこう、収入しゅうにゅう確保かくほ、農業のうぎょう技術ぎじゅつの開発かいはつ普及ふきゅうなどの役割やくわりを担になう。
農業のうぎょうに関係かんけいする資本しほん。発展はってん途上とじょう国こくを中心ちゅうしんに、大だい企業きぎょうや主要しゅよう企業きぎょうによる農具のうぐや種子しゅしなどの独占どくせんが悪影響あくえいきょうをもたらす例れいがある。資本しほんを有効ゆうこうに使つかえば持続じぞく可能かのうな農業のうぎょうに利用りようすることも可能かのう。また、有力ゆうりょく企業きぎょうや有力ゆうりょくな農業のうぎょう国こくが、農業のうぎょうに関係かんけいする経済けいざい環境かんきょうや政策せいさくの足あしかせとなる例れいもある。