十じゅう帖じょう源氏げんじ

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『十じゅう帖じょう源氏げんじ』（じゅうじょうげんじ）は、江戸えど時代じだい初期しょきに成立せいりつした『源氏物語げんじものがたり』の絵入えいりの梗概こうがい書しょである。

概要がいよう[編集へんしゅう]

本書ほんしょは絵入えいりの版本はんぽんの形かたちをとった源氏物語げんじものがたりの梗概こうがい書しょであり、「十じゅう帖じょう源氏げんじ」の名称めいしょうは全ぜん10巻かんであることによる。俳人はいじん野々口ののぐち立圃りゅうほ（1595年ねん - 1669年ねん）の作さく。1654年ねん（承うけたまわ応おう3年ねん）ごろの成立せいりつと見みられ、1661年ねん（万治まんじ4年ねん）付つけの荒木あらき利兵衛りへえによる刊かん記きを持もった版本はんぽんが存在そんざいする。婦女子ふじょしのために平易へいいに俗ぞく訳やくした絵え入にゅう本ほんとして、野々口ののぐち立圃りゅうほ自身じしんによる130図ずに及およぶ古雅こがな挿絵さしえを添そえてあり、親したしみやすいものとなっている。本文ほんぶんの巻末かんまつには六条院ろくじょういん・二に条じょう院いんの図ず、登場とうじょう人物じんぶつ系図けいず、さらに立圃りゅうほの跋ばつを付ふしている。歌うたを引用いんようすることが多おおく、源氏物語げんじものがたり本文ほんぶんに含ふくまれている和歌わかをほとんどとりあげている。立圃りゅうほは、内容ないようを更さらに簡略かんりゃくにした姉妹しまい編へんともいえる『おさな源みなもと氏し』も著あらわしている。

本文ほんぶんはこの当時とうじとしては一般いっぱん的てきで有力ゆうりょくなものであり版本はんぽんとしても刊行かんこうされていた青あお表紙ひょうし本ほんの三条さんじょう西家にしいえ本ほん系統けいとうのものであり、中なかでも無む跋ばつ無む刊かん記き整せい版本はんぽんとの近似きんじ性せいが指摘してきされている^[1]^[2]。

構成こうせい[編集へんしゅう]

第だい一いち巻かん桐きり壺つぼ、帚木、空蝉うつせみ
第だい二に巻かん夕顔ゆうがお、若紫わかむらさき、末摘花すえつむはな、紅葉こうよう賀が、花はな宴えん、葵あおい
第だい三さん巻かん賢けん木き、花はな散ち里さと、須磨すま、明石あかし、澪標みおつくし、蓬生よもぎう、関屋せきや、絵合えあわせ
第だい四よん巻かん松風まつかぜ、薄うす雲くも、朝顔あさがお、少女しょうじょ
第だい五ご巻かん玉鬘たまかずら、初音はつね、胡蝶こちょう、蛍ぼたる、常夏とこなつ、篝火かがりび、野分のわけ、行幸ぎょうこう、藤袴ふじばかま、真木まき柱はしら
第だい六ろく巻かん梅枝ばいし、藤ふじ裏うら葉は、若菜わかな上じょう、若菜わかな下か
第だい七なな巻かん柏木かしわぎ、横笛よこぶえ、鈴虫すずむし、夕ゆう霧きり、御法みのり、幻まぼろし、匂におい宮みや、紅梅こうばい、竹たけ河かわ
第だい八はち巻かん橋はし姫ひめ、椎本しいのもと、総角あげまき
第だい九きゅう巻かん早蕨さわらび、宿木やどりぎ、東屋あずまや、浮舟うきふね
第だい十じゅう巻かん蜻蛉とんぼ、手て習、夢ゆめ浮橋うきはし

影印本えいいんぼん[編集へんしゅう]

野々口ののぐち立圃りゅうほ著ちょ『十じゅう帖じょう源氏げんじ上じょう』古典こてん文庫ぶんこ第だい507冊さつ、1989年ねん
野々口ののぐち立圃りゅうほ著ちょ『十じゅう帖じょう源氏げんじ下か』古典こてん文庫ぶんこ第だい512冊さつ、1989年ねん
中野なかの幸一こういち編へん『源氏物語げんじものがたり資料しりょう影印えいいん集成しゅうせい 11 野々口ののぐち立圃りゅうほ著ちょ十じゅう帖じょう源氏げんじ 1‐6』早稲田大学わせだだいがく出版しゅっぱん部ぶ、1990年ねん（平成へいせい2年ねん）10月がつ ISBN 4-657-90016-1
中野なかの幸一こういち編へん『源氏物語げんじものがたり資料しりょう影印えいいん集成しゅうせい 12 野々口ののぐち立圃りゅうほ著ちょ十じゅう帖じょう源氏げんじ 7‐10』早稲田大学わせだだいがく出版しゅっぱん部ぶ、1990年ねん（平成へいせい2年ねん）11月 ISBN 4-657-90017-X

インターネット上じょうでの公開こうかい[編集へんしゅう]

本書ほんしょの本文ほんぶんや現代げんだい語ご訳やくなどについて、ネット上じょうでの公開こうかいが進すすめられている。

その他たの十じゅう帖じょう源氏げんじ[編集へんしゅう]

後こう土御門天皇つちみかどてんのうによる玉鬘たまかずら十じゅう帖じょうの注釈ちゅうしゃく書しょ^[3]^[4]
国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん所蔵しょぞうの写本しゃほんのみが確認かくにんされている版本はんぽん「十じゅう帖じょう源氏げんじ」大おおきく内容ないようの異ことなる5冊さつ本ほん。これも野々口ののぐち立圃りゅうほによるものと伝つたえられており、版本はんぽん「十じゅう帖じょう源氏げんじ」の原形げんけいになったものではないかと考かんがえられている^[5]。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

「十じゅう帖じょう源氏げんじ」伊井いい春樹はるき編へん『源氏物語げんじものがたり　注釈ちゅうしゃく書しょ・享受きょうじゅ史し事典じてん』東京とうきょう堂どう出版しゅっぱん、2001年ねん（平成へいせい13年ねん）9月がつ15日にち、pp. 397-398。 ISBN 4-490-10591-6
湯浅ゆあさ佳子けいこ「立圃りゅうほ『おさな源みなもと氏し』『十じゅう帖じょう源氏げんじ』」鈴木すずき健けん一いち編へん『源氏物語げんじものがたりの変奏曲へんそうきょく江戸えどの調しらべ』三弥みつや井い書店しょてん、2003年ねん（平成へいせい15年ねん）9月がつ、pp. 29-35。 ISBN 4-8382-3124-5

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ 清水しみず婦ふ久子ひさこ「『十じゅう帖じょう源氏げんじ』『おさな源みなもと氏し』と無む刊かん記き本ほん『源氏物語げんじものがたり』若紫わかむらさき巻まきの本文ほんぶん」『青あお須我波は良りょう』第だい58号ごう、帝塚山大学てづかやまだいがく短期大学たんきだいがく部ぶ、2003年ねん（平成へいせい15年ねん）、pp. 27-53。
^ 阿おもね美よし古こ理恵りえ「野々口ののぐち立圃りゅうほ編へん画が『十じゅう帖じょう源氏げんじ』における松永まつなが貞徳さだのりの影響えいきょう--山本やまもと春はる正せいとの比較ひかくを通つうじて」『哲学てつがく会誌かいし』第だい32号ごう、学習院大学がくしゅういんだいがく哲学てつがく会かい、2008年ねん5月がつ、pp. 71-91。
^ 「十じゅう帖じょう源氏げんじ」伊井いい春樹はるき編へん『源氏物語げんじものがたり　注釈ちゅうしゃく書しょ・享受きょうじゅ史し事典じてん』東京とうきょう堂どう出版しゅっぱん、2001年ねん（平成へいせい13年ねん）9月がつ15日にち、pp. 399。 ISBN 4-490-10591-6
^ 宮川みやがわ葉子ようこ「後ご土御門つちみかど院いん自筆じひつ『十じゅう帖じょう源氏げんじ』」国際こくさいコミュニケーション学会がっかい編へん『国際こくさい経営けいえい・文化ぶんか研究けんきゅう』第だい12巻かん第だい1号ごう、国際こくさいコミュニケーション学会がっかい、2007年ねん（平成へいせい19年ねん）11月、pp. 230-159。
^ 「十じゅう帖じょう源氏げんじ」伊井いい春樹はるき編へん『源氏物語げんじものがたり　注釈ちゅうしゃく書しょ・享受きょうじゅ史し事典じてん』東京とうきょう堂どう出版しゅっぱん、2001年ねん（平成へいせい13年ねん）9月がつ15日にち、pp. 398-399。 ISBN 4-490-10591-6