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みなもとちゅう拾遺しゅうい

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みなもとちゅう拾遺しゅうい』(げんちゅうしゅうい)とは、『源氏物語げんじものがたり』の注釈ちゅうしゃくしょである。高山たかやま郷土きょうどかん蔵本ぞうほんでは、『源氏物語げんじものがたり拾遺しゅういしょう(げんじものがたりしゅういしょう)』の外題げだいと、『源氏げんじ拾遺しゅうい(げんじしゅうい)』や『源氏げんじちゅう拾遺しゅうい(げんじちゅうしゅうい)』の内題ないだいとをっている。

概要がいよう[編集へんしゅう]

江戸えど時代じだい初期しょき僧侶そうりょであった契沖けいちゅう著作ちょさく奥書おくがきなどによると元禄げんろく9ねん7がつ19にち1696ねん8がつ16にち初稿しょこう成立せいりつ最終さいしゅうてき完成かんせい元禄げんろく11ねん正月しょうがつ5にち1698ねん2がつ15にち)とされる。きゅうちゅう集大成しゅうたいせいとされる『みずうみがつしょう』をもととして、そのあやまり・不備ふび訂正ていせいすることを目的もくてきとして執筆しっぴつされたものとされる。江戸えど時代じだい中期ちゅうきから後期こうきにかけて主流しゅりゅうになった国学こくがくしゃによる『源氏物語げんじものがたり』の注釈ちゅうしゃくしょはじまりに位置いちするもので、安藤あんどうためあきらによる1703ねん9月成立せいりつの『むらさきななろん』とならしんちゅう嚆矢こうししょうされる[1]

契沖けいちゅう本書ほんしょ先立さきだって『みなもと偶篇』なる『源氏物語げんじものがたり』の辞書じしょあらわしたとされており、かつては「現在げんざいではつたわっていない」とされていたが、外題げだい内題ないだいとも『源氏げんじ大和言葉やまとことば絵巻えまき』とする書物しょもつがこの『みなもと偶篇』であるとかんがえられるようになり、『契沖けいちゅう全集ぜんしゅう』にも収録しゅうろくされるようになっている[2]

内容ないよう[編集へんしゅう]

本書ほんしょ全部ぜんぶで8かん8さつからなり、おおきくはだいいちかんの「大意たいい」とだいかん以降いこう各巻かくかんごとの注釈ちゅうしゃくかれる。

だいいちかんの「大意たいい」はじゅうろく項目こうもくからり、『源氏物語げんじものがたり』の総説そうせつとでもうべきものである。しんちゅう代表だいひょうてき存在そんざいであるほんきょ宣長のりながによる『源氏物語げんじものがたりだましょうくし』などとくらべると、従来じゅうらいきゅうちゅう内容ないようをそのままいでいる部分ぶぶんおおいものの、このなかにはそれまでの主流しゅりゅうであった儒教じゅきょうてき教戒きょうかいせつをはっきりと退しりぞける『源氏物語げんじものがたり享受きょうじゅ史上しじょう画期的かっきてき論説ろんせつもあり、これはほんきょせんちょうの「もののあはれろんにつながっていくものである。さまざまな資料しりょう駆使くしして事実じじつあきらかにしていこうというしんちゅう共通きょうつう傾向けいこうははっきりと存在そんざいするが、このなかには『栄花物語えいがものがたり』をもと紫式部むらさきしきぶにはこれまでられている「大弐三位だいにのさんみ以外いがいにもう一人ひとり越後えちごべん」とばれたむすめがいたとする(この両者りょうしゃかたことなるだけでどう一人物いちじんぶつである)といったあやまりも存在そんざいする。それまで主流しゅりゅうであった「『源氏物語げんじものがたり』は全部ぜんぶで60かんあり、それは天台てんだい60かんになぞらえたものである」とするせつを、『源氏物語げんじものがたり』の作中さくちゅう仏教ぶっきょうがどのようにえがかれているかを詳細しょうさい調しらべたうえ否定ひていしており、それは著者ちょしゃ契沖けいちゅう高野山こうのやま長年ながねん仏教ぶっきょうまなんだすぐれた僧侶そうりょであったからこそ可能かのうであったとかんがえられている。

だいかんからだいはちかん各巻かくかん注釈ちゅうしゃくである。その内容ないよう北村きたむら季吟きぎんの『みずうみがつしょう』をもととして、そのあやまり・不備ふび訂正ていせいするかたちをとっている。徹底てっていした用例ようれい主義しゅぎをとっており、まず問題もんだいとなる語句ごくをあげ、それにかんするきゅうちゅうき、つぎに「いまあん」として自説じせつべている。

本文ほんぶん[編集へんしゅう]

契沖けいちゅう自筆じひつ本書ほんしょ原本げんぽん現在げんざい天理てんり図書館としょかん所蔵しょぞうされている。盛岡もりおかたて中央ちゅうおう公民館こうみんかんほん宮内庁くないちょうしょりょうほん国会図書館こっかいとしょかんほん静嘉堂文庫せいかどうぶんこほんなどがある。

  • しつ松岩まついわ雄編ゆうへん国文こくぶん註釈ちゅうしゃく全書ぜんしょだい16〕みなもとちゅう拾遺しゅうい8かん国学院大学こくがくいんだいがく出版しゅっぱん1910ねん明治めいじ43ねん)。
  • 佐佐木ささき信綱のぶつなほかへん契沖けいちゅう全集ぜんしゅう だい6かん 註釈ちゅうしゃくしょ朝日新聞社あさひしんぶんしゃ1926ねん大正たいしょう15ねん)。
  • 築島つきしまひろし[ほか]編集へんしゅう久松ひさまつ潜一せんいち[ほか]校訂こうてい契沖けいちゅう全集ぜんしゅう だい9かん岩波書店いわなみしょてん1974ねん昭和しょうわ49ねん)。
  • 日本にっぽん文学ぶんがく註釈ちゅうしゃく大成たいせい 源氏物語げんじものがたり註釈ちゅうしゃく大成たいせい だい8かん げんちゅう拾遺しゅうい日本にっぽん図書としょセンター、1978ねん昭和しょうわ53ねん)10がつ
  • みなもと拾遺しゅうい大意たいい秋山あきやまけん監修かんしゅう島内とうないけい小林こばやし正明まさあき鈴木すずき健一けんいち編集へんしゅう批評ひひょう集成しゅうせい源氏物語げんじものがたり だい1かん 近世きんせい前期ぜんきへん』ゆまに書房しょぼう1999ねん平成へいせい11ねん)5がつISBN 4-89714-631-3
    だいいちかん大意たいい」のみ。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ 家永いえなが香織かおりみなもと拾遺しゅうい解題かいだい」『批評ひひょう集成しゅうせい源氏物語げんじものがたり だい1かん 近世きんせい前期ぜんきへん』p. 471。
  2. ^ みなもと偶篇」伊井いい春樹はるきへん源氏物語げんじものがたり 注釈ちゅうしゃくしょ享受きょうじゅ事典じてん東京とうきょうどう出版しゅっぱん、2001ねん9がつ15にち、p. 78。 ISBN 4-490-10591-6

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 重松しげまつ信弘のぶひろ契沖けいちゅうおよ安藤あんどうためしょう研究けんきゅう」『しん攷源物語ものがたり研究けんきゅう風間かざま書房しょぼう1961ねん昭和しょうわ36ねん)3がつ、pp.. 311-322。
  • みなもとちゅう拾遺しゅうい伊井いい春樹はるきへん源氏物語げんじものがたり 注釈ちゅうしゃくしょ享受きょうじゅ事典じてん東京とうきょうどう出版しゅっぱん2001ねん平成へいせい13ねん)9がつ15にち、pp.. 344-345。 ISBN 4-490-10591-6