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源氏げんじいちひんけい

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源氏げんじいちひんけい(げんじいっぽんきょう)は、源氏げんじ供養くようのためにつくられた願文がんもんひとつである。

概要がいよう

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平安へいあん時代じだい末期まっきから鎌倉かまくら時代ときよにかけて源氏物語げんじものがたり作者さくしゃである紫式部むらさきしきぶ源氏物語げんじものがたり読者どくしゃたちを供養くようする「源氏げんじ供養くよう」という行事ぎょうじおこなわれ、そのためにさまざまな願文がんもん表白ひょうはくぶんつくられた。源氏げんじいちひんけいとはそれら願文がんもんなかでも代表だいひょうてきなもののひとつであり、『源氏げんじいちひんけい表白ひょうはく』とばれていることもある。大原おおはらさんせんいん所蔵しょぞうの『じつたましょう』(しゅうじゅしょう)にふくまれており、1168ねんじんやす3ねん)ころ安居あんきょいんきよしけんによってつくられたとされる。この源氏げんじいちひんけい漢文かんぶんからだかれているが、同種どうしゅ願文がんもん和文わぶんたいかれているものもあり、和文わぶんたいによる願文がんもん代表だいひょうてきなものにはきよしけんひじりさとしつくったとつたえられる『源氏物語げんじものがたり表白ひょうはく』(『源氏げんじ供養くよう表白ひょうはく』ともばれる)がある。

下記かきのように仏教ぶっきょう思想しそうなかではつく物語ものがたり最下さいかそう存在そんざいとして位置いちづけられており、さらに源氏物語げんじものがたりをはじめとする物語ものがたりにはしばしば男女だんじょあいだのやりとりがえがかれていることからこれらを罪深つみぶかい「愛欲あいよくしょ」であるとし、このような物語ものがたりいた紫式部むらさきしきぶ地獄じごくちたし、またこのような物語ものがたり耽溺たんできした読者どくしゃもそのままではやはり地獄じごくちてしまうという言説げんせつしょうじることになる。源氏げんじ供養くようとは、そのような作者さくしゃ読者どくしゃとを救済きゅうさいするためにおこなわれた供養くようのことをいう。のちにこれをモチーフにして物語ものがたりのう浄瑠璃じょうるりなどさまざまな作品さくひんつくられた。これらの作品さくひんなかにも源氏げんじいちひんけいるいするものがふくまれている。

このような思想しそうは、源氏物語げんじものがたりのおこりなどでえがかれた源氏物語げんじものがたりふつみちびきでえがかれた、さらには作者さくしゃ紫式部むらさきしきぶふつ化身けしんであるといった思想しそうとほぼおな時期じきまれたもので、この両者りょうしゃ一見いっけんせい反対はんたいのようでりながら仏教ぶっきょう思想しそうもと源氏物語げんじものがたり理解りかいしようとするといった本質ほんしつてきなところでちか性格せいかくった表裏一体ひょうりいったい思想しそうであるとかんがえられている。

本来ほんらい一品いっぴんけい源氏げんじいちひんけい

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本来ほんらい一品いっぴんけいとは、『法華経ほけきょういちひんけい』ともいい、法華経ほけきょう妙法みょうほう蓮華れんげけい書写しょしゃ一方いっぽうほうないしそのような方法ほうほう書写しょしゃした法華経ほけきょうのことをいう。全体ぜんたいで28の部分ぶぶんじゅうはちひん)から構成こうせいされる『法華経ほけきょう』のかくいちかんに、序章じょしょうてき役割やくわりつ『無量むりょう義経よしつね』と終章しゅうしょうてき役割やくわりつ『かんひろしけんけい』をわせた合計ごうけい30かんを、一人ひとりが1ひん(1かん)ずつ分担ぶんたんして書写しょしゃ供養くようすることによっておこなう。法華経ほけきょう書写しょしゃなかもっと丁寧ていねい書写しょしゃ方法ほうほうとされている。

仏教ぶっきょう思想しそうなかでの源氏物語げんじものがたり位置いちづけ

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仏教ぶっきょう思想しそうもとづくさまざまなもの価値かち階層かいそうは、

といったいくつかの基準きじゅんわせることによって、

仏典ぶってん外典げてん史書ししょ漢詩かんし)>和歌わか物語ものがたり

という序列じょれつ形成けいせいし、この結果けっか物語ものがたり仏教ぶっきょう思想しそうなか最下さいかそう存在そんざいとして位置いちづけられることになる。

源氏げんじいちひんけいでの巻数かんすうかぞかた

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源氏げんじいちひんけいでは源氏物語げんじものがたりじゅうよんじょう法華経ほけきょうになぞらえて法華経ほけきょう28ひんおなじように28じょうかぞえているが、そのためならびのまき18じょうほんまきふくめてかぞえ、さらに宇治うじじゅうじょうを1じょうとしてかぞえることにより、結果けっか以下いかのように源氏物語げんじものがたり全体ぜんたいを28じょうかぞえているとかんがえられる。

なお、このほかに源氏物語げんじものがたりじゅうよんじょうを「巻軸かんじく60きょく」とんだり「たて編目あみめ39へん」とんだりする記述きじゅつふくまれている。60とぶのは天台てんだいろくじゅうかんになぞらえて現行げんこう源氏物語げんじものがたりには現在げんざいられている54じょうのほかにかくされた6じょう存在そんざいするという源氏物語げんじものがたり60かんせつもとづくとられるが、39とするのはどのような理由りゆうによるものなのか不明ふめいである。

翻刻ほんこく

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  • 後藤ごとう丹治たんじ源氏げんじいちひんけい源氏げんじ表白ひょうはく」『国語こくご国文こくぶん研究けんきゅうだい48ごう文献ぶんけん書院しょいん1930ねん昭和しょうわ5ねん)。
  • 源氏げんじいちひんけい」『増補ぞうほ 国語こくご国文学こくぶんがく研究けんきゅう資料しりょう大成たいせい 3 源氏物語げんじものがたり じょう』、三省堂さんせいどう初版しょはん1960ねん昭和しょうわ35ねん)、増補ぞうほばん1977ねん昭和しょうわ52ねん)、p. 37。
  • 物語ものがたり評論ひょうろん  本文ほんぶん注釈ちゅうしゃく  源氏げんじいちひんけい」「無名むめい草子ぞうし輪読りんどくかいへん無名むめい草子ぞうし注釈ちゅうしゃく資料しりょう和泉いずみ書院しょいん2005ねん平成へいせい17ねん)2がつ、pp.. 129-131。 ISBN 4-7576-0247-2
  • 袴田はかまだ光康みつやす源氏げんじいちひんけい日向ひゅうが一雅かずまさへん源氏物語げんじものがたり仏教ぶっきょう  仏典ぶってん故事こじ儀礼ぎれいあお簡舎、2009ねん平成へいせい21ねん)3がつ、pp.. 217-234。 ISBN 978-4-903996-16-5

参考さんこう文献ぶんけん

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  • 寺本てらもと直彦なおひこ後編こうへんだいせつ  源氏物語げんじものがたり受容じゅようしょ問題もんだい  みなもとこうしきについて」『源氏物語げんじものがたり受容じゅよう論考ろんこう風間かざま書房しょぼう1970ねん昭和しょうわ45ねん)3がつ、pp.. 722-742。
  • 寺本てらもと直彦なおひこきよし憲作けんさく源氏げんじいちひんけい表白ひょうはく』とでんきよしさとしさく源氏げんじ供養くよう表白ひょうはく』をめぐって」『源氏物語げんじものがたり受容じゅよう論考ろんこう  続編ぞくへん風間かざま書房しょぼう1984ねん昭和しょうわ59ねん)1がつ、pp.. 493-519。 ISBN 4-7599-0598-7
  • 伊井いい春樹はるき源氏物語げんじものがたり評価ひょうか」『源氏物語げんじものがたり伝説でんせつ昭和しょうわ出版しゅっぱん1976ねん昭和しょうわ51ねん)10がつ、pp.. 151-212。
  • 源氏げんじいちひんけい伊井いい春樹はるきへん源氏物語げんじものがたり  注釈ちゅうしゃくしょ享受きょうじゅ事典じてん東京とうきょうどう出版しゅっぱん2001ねん平成へいせい13ねん)9がつ15にち、pp. 113-114。 ISBN 4-490-10591-6

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 日本にっぽんでは神道しんとうふくまれる。

関連かんれん項目こうもく

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