幽斎ゆうさい本ほん源氏物語げんじものがたり

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幽斎ゆうさい本ほん源氏物語げんじものがたり（ゆうさいぼんげんじものがたり）は、源氏物語げんじものがたりの写本しゃほん。細川ほそかわ幽斎ゆうさいの筆ふでによるものであることからこのように呼よばれる。現在げんざいは旧きゅう熊本くまもと藩はん主家しゅか細川ほそかわ家か伝来でんらいの美術びじゅつ品ひん、歴史れきし資料しりょう、歴代れきだい当主とうしゅの収集しゅうしゅう品ひんなどを収蔵しゅうぞうし、展示てんじ、研究けんきゅうを行おこなっている永えい青あお文庫ぶんこにあることから「永えい青あお文庫本ぶんこぼん（源氏物語げんじものがたり）」とも呼よばれる。

細川ほそかわ幽斎ゆうさいと源氏物語げんじものがたり[編集へんしゅう]

細川ほそかわ幽斎ゆうさいは、足利あしかが家か・織田おだ家か・豊臣とよとみ家か・徳川とくがわ家かに仕つかえた戦国せんごく時代じだいから安土あづち桃山ももやま時代じだいにかけての武将ぶしょうであるが、文人ぶんじんとしても優すぐれた業績ぎょうせきを残のこしており、古今ここん伝授でんじゅを受うけるなど当代とうだい一流いちりゅうの文人ぶんじんとしても知しられていた。『源氏物語げんじものがたり』に関かんしても、『源氏物語げんじものがたり』の本文ほんぶん全文ぜんぶんを含ふくまない注釈ちゅうしゃく書しょとしては最もっとも大部たいぶなものである『岷江入にゅう楚すわえ』の成立せいりつに深ふかく関かかわっており、同書どうしょは中院なかのいん通勝みちかつが不興ふきょうを買かって丹後たんごに出奔しゅっぽんした際さい、幽斎ゆうさいに出会であい、同人どうじんの要請ようせいを受うけて記しるしたものであり、『岷江入にゅう楚すわえ』という書名しょめいも幽斎ゆうさいの命名めいめいであるとされている^[1]。また幽斎ゆうさいの『源氏物語げんじものがたり』研究けんきゅうのために幽斎ゆうさいの依頼いらいによって書写しょしゃされた、当時とうじの数すう多おおくの注釈ちゅうしゃく書しょが現在げんざいも永えい青あお文庫ぶんこに残のこされている。

写本しゃほんの概要がいよう[編集へんしゅう]

54帖じょうの揃ぞろい本ほん。若菜わかな下かの1帖じょうのみ山崎やまざき宗鑑そうかんの補ほ写うつしで、それ以外いがいの五ご十じゅう三さん帖じょうは細川ほそかわ幽斎ゆうさいの筆ふでとされる。本文ほんぶんは青あお表紙ひょうし本ほん系統けいとう。この写本しゃほんには本文ほんぶんの他ほかに大量たいりょうの書かき込こみがあり、『源氏物語げんじものがたり』注釈ちゅうしゃく史しの面めんからも注目ちゅうもくされる写本しゃほんであり、「これからは、独立どくりつした注釈ちゅうしゃく書しょだけではなく「書かき入いれ注ちゅう」にも注目ちゅうもくしていかなければならない」と指摘してきされている^[2]注釈ちゅうしゃくには『紫むらさき明あきら抄しょう』からの引用いんようが多おおいが、幽斎ゆうさいの元もとで成立せいりつした注釈ちゅうしゃく書しょである『岷江入にゅう楚すわえ』には『紫むらさき明あきら抄しょう』からの引用いんようは極きわめて少すくない。

校本こうほんへの採用さいよう[編集へんしゅう]

『校異こうい源氏物語げんじものがたり』および『源氏物語げんじものがたり大成たいせい校異こうい編へん』には不ふ採用さいようであるものの、『新編しんぺん日本にっぽん古典こてん文学ぶんがく全集ぜんしゅう源氏物語げんじものがたり』では、写本しゃほん記号きごう「幽かそけ」、「幽齋ゆうさい本もと永ひさし青あお文庫ぶんこ所蔵しょぞう細川ほそかわ幽齋ゆうさい筆写ひっしゃ本ほん五ご十じゅう四よん帖じょう」として校合きょうごう対象たいしょうに取とり上あげられている。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

徳岡とくおか涼すずか「細川ほそかわ幽斎ゆうさいはいかに源氏物語げんじものがたりを読よんだか」森もり正人まさと・鈴木すずき元はじめ編へん『細川ほそかわ幽斎ゆうさい戦塵せんじんの中なかの学芸がくげい』笠間かさま書院しょいん、2010年ねん（平成へいせい22年ねん）11月、pp. 208-226。ISBN 978-4-3057-0527-3
野口元のぐちもと大だい・徳岡とくおか涼すずか編へん『続つづけ群ぐん書しょ類従るいじゅう細川ほそかわ幽斎ゆうさい選集せんしゅう 1 源氏物語げんじものがたり聞書ききがき』続ぞく群ぐん書しょ類従るいじゅう完成かんせい会かい、2006年ねん（平成へいせい18年ねん）9月がつ ISBN 978-4-7971-1701-1

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

^ 「岷江入にゅう楚すわえ」伊井いい春樹はるき編へん『源氏物語げんじものがたり注釈ちゅうしゃく書しょ・享受きょうじゅ史し事典じてん』東京とうきょう堂どう出版しゅっぱん、2001年ねん（平成へいせい13年ねん）9月がつ15日にち、pp. 459-462。ISBN 4-490-10591-6
^ 加藤かとう昌あきら嘉よしみ「本文ほんぶんの傍かたわらに/或あるいは本文ほんぶんとなって」陣じん野の英則ひでのり・横溝よこみぞ博ひろし編へん『平安へいあん文学ぶんがくの古こ注釈ちゅうしゃくと受容じゅよう第だい1集しゅう』武蔵野むさしの書院しょいん、2008年ねん（平成へいせい20年ねん）10月がつ、pp. 13-20。ISBN 978-4-8386-0228-5

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

徳岡とくおか涼すずか「伝でん細川ほそかわ幽斎ゆうさい筆ひつ『源氏物語げんじものがたり』の書入かきいれについて」『上智大学じょうちだいがく国文学こくぶんがく論集ろんしゅう』第だい31号ごう、上智大学じょうちだいがく国文こくぶん学会がっかい、1998年ねん1月がつ、55-70頁ぺーじ、ISSN 02880210、NAID 110000187039。