反共はんきょう主義しゅぎ

反共はんきょう主義しゅぎを表あらわすマーク。共産きょうさん主義しゅぎを象徴しょうちょうする鎌かまと槌づちがバツ印しるしで消けされている。

「ボリシェヴィキの自由じゆう」 - 戯画ぎが化かされた裸はだかのレフ・トロツキーが描えがかれた、ポーランド・ソビエト戦争せんそうでの反共はんきょう宣伝せんでんポスター。ボリシェヴィキ政権せいけん下かで多数たすうの人民じんみんが虐殺ぎゃくさつされた事件じけんを風刺ふうししている。

ナチス・ドイツがヴィーンヌィツャ大だい虐殺ぎゃくさつの件けんを利用りようし、共産きょうさん主義しゅぎの脅威きょういを宣伝せんでんするために制作せいさくしたポスター。

反共はんきょう主義しゅぎ（はんきょうしゅぎ、（英えい: anti-communism, anticommunism）または反はん共産きょうさん主義しゅぎ（はんきょうさんしゅぎ）、反共はんきょう（はんきょう）とは、共産きょうさん主義しゅぎに対たいし反対はんたい・敵視てきし・憎悪ぞうおし、その排除はいじょを目指めざす様々さまざまな思想しそう・運動うんどう・立場たちばの総称そうしょう。対義語たいぎごは容共ようきょう。

『日本にっぽん大だい百科全書ひゃっかぜんしょ』での五十嵐いがらし仁ひとしによると反共はんきょう主義しゅぎは、厳密げんみつには共産きょうさん主義しゅぎ批判ひはんと異ことなり、資本しほん家かによる対たい労働ろうどう者しゃ用ようの思想しそう的てき武器ぶきとしての面めんと、反はん民主みんしゅ的てき・反はん自由じゆう的てき手段しゅだんとしての面めんを併あわせ持もつ。その典型てんけい例れいは、枢軸すうじく国こく（ナチス・ドイツ、イタリア王国おうこく、大日本帝国だいにっぽんていこく）のファシズムや、アメリカのマッカーシズム等ひとしだという。

各種かくしゅの学術がくじゅつ論文ろんぶんによれば、反共はんきょう主義しゅぎは伝統でんとうや宗教しゅうきょうと関連かんれんしてきた歴史れきしがあり、例たとえばキリスト教きりすときょうや世界せかい平和へいわ統一とういつ家庭かてい連合れんごう（統一教会とういつきょうかい）などが研究けんきゅうされている。

「マルクス主義まるくすしゅぎ批判ひはん」、「反はんレーニン主義しゅぎ」、および「反はんスターリン主義しゅぎ」も参照さんしょう

主張しゅちょう

詳細しょうさいは「マルクス主義まるくすしゅぎ批判ひはん」を参照さんしょう

唯物ゆいぶつ史観しかんへの批判ひはん

大だい多数たすうの反共はんきょう主義しゅぎ者しゃは、マルクス主義まるくすしゅぎの中心ちゅうしんとなる理念りねんである唯物ゆいぶつ史観しかんの概念がいねんに反対はんたいしている。反共はんきょう主義しゅぎ者しゃは、ちょうど封建ほうけん主義しゅぎが資本しほん主義しゅぎに移行いこうしたように資本しほん主義しゅぎは社会しゃかい主義しゅぎと共産きょうさん主義しゅぎに移行いこうするというマルクス主義まるくすしゅぎ者しゃの信念しんねんを否定ひていしている。反共はんきょう主義しゅぎ者しゃは、社会しゃかい主義しゅぎ国家こっかがその必要ひつよう性せいが消失しょうしつした時ときには「死滅しめつ」して真しんの共産きょうさん主義しゅぎ社会しゃかいとなるというマルクス主義まるくすしゅぎ者しゃの主張しゅちょうの妥当だとう性せいに疑問ぎもんを抱だいている。

経済けいざい理論りろんへの批判ひはん

多おおくの批判ひはん者しゃは、資本しほん主義しゅぎ社会しゃかいではブルジョワジーは常つねに資本しほんと富とみを増大ぞうだいさせ、他方たほうでは労働ろうどう者しゃ階級かいきゅうは生存せいぞんのために最低限さいていげんの給料きゅうりょうの対価たいかとして彼かれらの労働ろうどう力りょくを売却ばいきゃくするしか無ないために支配しはい階級かいきゅうに更さらに依存いぞんしていく、と予測よそくする共産きょうさん主義しゅぎ者しゃの経済けいざい理論りろんに重大じゅうだいな間違まちがいがあると考かんがえている。反共はんきょう主義しゅぎ者しゃは、近代きんだい化かされた西洋せいようの平均へいきん的てきな生活せいかつ水準すいじゅんは全体ぜんたいとしては向上こうじょうしたと指摘してきし、富裕ふゆう者しゃと貧困ひんこん者しゃの両方りょうほうが着実ちゃくじつにより豊ゆたかになったと主張しゅちょうしている。また反共はんきょう主義しゅぎ者しゃは、一部いちぶのアジア諸国しょこくなどの以前いぜんの第だい三さん世界せかい諸国しょこくは資本しほん主義しゅぎとなり貧困ひんこんからの脱出だっしゅつに成功せいこうしたと主張しゅちょうしている。彼かれらは、エチオピアのメンギスツ・ハイレ・マリアム政権せいけんの例れいのように、発展はってんと経済けいざい成長せいちょうの達成たっせいに失敗しっぱいして国民こくみんを更さらに悪わるい悲惨ひさんに導みちびいた第だい三さん世界せかいの共産きょうさん主義しゅぎ体制たいせいの多数たすうの例れいを引用いんようしている。

共産党きょうさんとうへの批判ひはん

反共はんきょう主義しゅぎ者しゃは共産きょうさん主義しゅぎ者しゃの政党せいとうである共産党きょうさんとうや労働党ろうどうとうに対たいしては、その一いち党とう独裁どくさいと政治せいじ的てき反対はんたい者しゃへの厳格げんかくな不ふ寛容かんようの傾向けいこうを持もつ権力けんりょくを批判ひはんしている。また、経済けいざい的てきな社会しゃかい主義しゅぎ段階だんかいから理想りそう的てきな共産きょうさん主義しゅぎ段階だんかいへ移行いこうするというマルクス主義まるくすしゅぎの概念がいねんを、大だい多数たすうの共産きょうさん主義しゅぎ諸国しょこくが何なんの兆候ちょうこうも見みせない事ことを批判ひはんしている。更さらには、共産きょうさん主義しゅぎ政府せいふはロシアではノーメンクラトゥーラと呼よばれるなどの新あたらしい支配しはい階級かいきゅうを生うみ出だし、革命かくめい前まえの治世ちせいで以前いぜんの上流じょうりゅう階級かいきゅうが享受きょうじゅしたよりも多おおくの権力けんりょくと特権とっけんを得えていると批判ひはんしている。

弾圧だんあつへの批判ひはん

反共はんきょう主義しゅぎ者しゃは、ボリシェヴィキ政権せいけんの初期しょきの弾圧だんあつは、ヨシフ・スターリン時代じだいほど極端きょくたんではなかったとしても、他たのいかなる正当せいとうな基準きじゅんから見みても厳格げんかくで、フェリックス・ジェルジンスキーなどの秘密ひみつ警察けいさつや、裁判さいばん外がいの処刑しょけいによる多数たすうの政治せいじ的てき反対はんたい者しゃの除去じょきょ、クロンシュタットの反乱はんらんやタンボフ州しゅうの反乱はんらんへの過酷かこくな撃滅げきめつなどを引用いんようしている。これらの出来事できごとの間あいだ、レフ・トロツキーはボリシェヴィキの最さい上位じょういの指導しどう者しゃだった。トロツキーは後のちに、クロンシュタットの反乱はんらんは後ごのスターリニズムに付随ふずいした官僚かんりょう支配しはい化かの前兆ぜんちょうだったと主張しゅちょうした。いくつかの反共はんきょう主義しゅぎ者しゃは、共産きょうさん主義しゅぎとファシズムの両方りょうほうを全体ぜんたい主義しゅぎとみなし、共産きょうさん主義しゅぎ政権せいけんとファシスト政権せいけんの行動こうどうが類似るいじしているとみている。以前いぜんにスターリン主義しゅぎ者しゃでイギリスのスパイであったロバート・コンクエストは、共産きょうさん主義しゅぎは20世紀せいきの間あいだの1000万まん人にんの死しの責任せきにんがあると批判ひはんした。

平等びょうどう主義しゅぎへの批判ひはん

アイン・ランドが創立そうりつした客観きゃっかん主義しゅぎ(en:Objectivism (Ayn Rand))は、人間にんげんの性質せいしつは通常つうじょうは反はん共産きょうさん主義しゅぎによって説明せつめいされるという視点してんで、平等びょうどう主義しゅぎ者ものによる社会しゃかいは理想りそう的てきに見みえる一方いっぽうで、実際じっさいには達成たっせいできないと考かんがえる。彼かれらは、個人こじん的てきな利益りえきによって動機どうきづけられるのは人間にんげんの性質せいしつであると述のべ、複数ふくすうの共産きょうさん主義しゅぎ指導しどう者しゃが公益こうえきのための労働ろうどうを主張しゅちょうしたが、彼かれらの多おおくまたは全員ぜんいんが腐敗ふはいし全体ぜんたい主義しゅぎ者しゃとなったと指摘してきした。 ミルトン・フリードマンは、共産きょうさん主義しゅぎにおける自発じはつ的てきな経済けいざい活動かつどうの欠如けつじょは、抑圧よくあつ的てきな政治せいじ的てき指導しどう者しゃが強制きょうせい的てきな権力けんりょくを得えることを非常ひじょうに容易よういにすると論ろんじた。フリードマンの視点してんは更さらに、資本しほん主義しゅぎは生いき残のこり繁栄はんえいするための自由じゆうに対たいして死活しかつ的てきに重要じゅうようだと信しんじるフリードリヒ・ハイエクとジョン・メイナード・ケインズによって共有きょうゆうされた。

歴史れきし

「社会しゃかい主義しゅぎ#歴史れきし」および「共産きょうさん主義しゅぎ#歴史れきし」も参照さんしょう

18世紀せいき以降いこう

反共はんきょう主義しゅぎの始はじまりは、一般いっぱんにはロシア革命かくめいの時ときと言いわれる。しかし社会しゃかい主義しゅぎ全体ぜんたいとの対立たいりつという意味合いみあいでは産業さんぎょう革命かくめいの頃ころから既すでに始はじまっていた。当初とうしょの反共はんきょう主義しゅぎの目的もくてきは、先鋭せんえい化かしつつ高たかまりをみせる労働ろうどう運動うんどうの対策たいさくにあった。19世紀せいき中期ちゅうきでは、イギリスを初はじめとする西にしヨーロッパでは労資ろうし紛争ふんそうが絶たえず、ラッダイト運動うんどうが日常にちじょう茶飯事さはんじの状態じょうたいと、労働ろうどう者しゃと資本しほん家かの対立たいりつが激化げきかしていた。

1789年ねんからのフランス革命かくめいでは、啓蒙けいもう思想しそうによる平等びょうどう主義しゅぎを掲かかげた革命かくめい政府せいふと王おう党派とうはや反はん革命かくめい諸国しょこくの間あいだでフランス革命かくめい戦争せんそうが行おこなわれた。革命かくめい政府せいふの内部ないぶでも、立憲りっけん君主くんしゅ制せい派はのフイヤン派はや穏健おんけん共和きょうわ派はのジロンド派はなどに対たいして、「共産きょうさん主義しゅぎの先駆せんく」ともされるジャコバン派はが独裁どくさいと恐怖きょうふ政治せいじを行おこなった。特とくにネオ・ジャコバン派はのフランソワ・ノエル・バブーフは「共産きょうさん主義しゅぎ」の近代きんだい的てきな意味いみを確立かくりつしたとされる。イギリスの思想家しそうか・エドマンド・バークは「フランス革命かくめいの省察せいさつ」で保守ほしゅ主義しゅぎの立場たちばから反はん革命かくめいを主張しゅちょうした。

1864年ねんに結成けっせいされた第だい一いちインターナショナルでは、プロレタリア独裁どくさいを掲かかげる実質じっしつ少数しょうすう派はのマルクス主義まるくすしゅぎ者しゃが、その権威けんい主義しゅぎを批判ひはんする実質じっしつ多数たすう派はのアナキストを除名じょめいした。

1871年ねんには社会しゃかい主義しゅぎや共産きょうさん主義しゅぎの理念りねんに基もとづき、世界せかい初はつの労働ろうどう者しゃ政権せいけんであるパリ・コミューンが樹立じゅりつされた。この時とき、資本しほん家かを中核ちゅうかくとした反共はんきょう勢力せいりょくは周辺しゅうへん国こくへの伝播でんぱを防ふせぐべく圧力あつりょくを加くわえ、僅わずか半年はんとしでパリ・コミューンは打倒うちたおされた。

英国えいこくを絞殺しめころした悪霊あくりょうとして社会しゃかい主義しゅぎを示しめす、保守党ほしゅとうの反はん社会しゃかい主義しゅぎポスター。“社会しゃかい主義しゅぎは国くにを絞しめる”。1909年ねん

その後ご、革命かくめい勢力せいりょくのうち社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ/共産きょうさん主義しゅぎ勢力せいりょくは第だい二にインターナショナル運動うんどうへと進すすんだ。それに対たいし反共はんきょう主義しゅぎ勢力せいりょくは、ドイツの宰相さいしょう・オットー・フォン・ビスマルクによって制定せいていされた社会しゃかい主義しゅぎ者しゃ鎮圧ちんあつ法ほう、日本にっぽんの山縣やまがた有朋ありとも内閣ないかくで成立せいりつした治安ちあん警察けいさつ法ほうなどのように、治安ちあん立法りっぽうで共産きょうさん主義しゅぎ・社会しゃかい主義しゅぎ運動うんどうを取とり締しまった。

ロシア革命かくめいから白しろ軍ぐん敗北はいぼくまで

第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん中なかの1917年ねんにロシア革命かくめいが発生はっせいした。二に月がつ革命かくめいで帝政ていせいが崩壊ほうかいしたが、革命かくめい政府せいふ内部ないぶでは民主みんしゅ主義しゅぎを重視じゅうしするメンシェヴィキが実質じっしつ的てきには多数たすう派はであった。しかし、ウラジーミル・レーニンが率ひきいたボリシェヴィキによるクーデターである十じゅう月がつ革命かくめいによって、ボリシェヴィキは独裁どくさいを確立かくりつし、反対はんたい勢力せいりょくへの弾圧だんあつや粛清しゅくせい、赤色あかいろテロを行おこなった。このレーニン主義しゅぎに対たいしマルクス主義まるくすしゅぎ者しゃの立場たちばからも、カール・カウツキーはその「一いち党とう独裁どくさい」を批判ひはんし、ローザ・ルクセンブルクは「超ちょう中央ちゅうおう集権しゅうけん主義しゅぎ」と批判ひはんした。ボリシェヴィキは後のちに「ロシア共産党きょうさんとう」、更さらに「ソビエト連邦れんぽう共産党きょうさんとう」と改称かいしょうし、各国かっこくのその影響えいきょう下かの政党せいとうの多おおくが「共産党きょうさんとう」と称しょうしたため、以後いごは「共産きょうさん主義しゅぎ」とは広義こうぎの社会しゃかい主義しゅぎや共産きょうさん主義しゅぎ思想しそうの中なかでも特とくにレーニン主義しゅぎやボリシェヴィキズムを指さすようになり、「反はん共産きょうさん主義しゅぎ」とは狭義きょうぎには社会しゃかい主義しゅぎ勢力せいりょく内部ないぶでの反はんレーニン主義しゅぎや反はんボリシェヴィキズムなども指さすようになった。

1919年ねんには「ファシズムの先駆せんく」ともされるガブリエーレ・ダンヌンツィオがイタリアで武装ぶそう蜂起ほうきを行おこなって十じゅう月がつ革命かくめいを支持しじし、レーニンはダンヌンツィオを「革命かくめい家か」として賞賛しょうさんした。

反共はんきょう主義しゅぎ勢力せいりょくの高揚こうよう期きであった。ウィンストン・チャーチルを筆頭ひっとうに反共はんきょう主義しゅぎを掲かかげる政治せいじ家かは、ロシア革命かくめいによる労働ろうどう者しゃ政権せいけんの再来さいらいとその伝播でんぱを危惧きぐし、その本格ほんかく化かが進すすむ前まえに反はん革命かくめい戦争せんそうを惹ひき起おこした。

日本にっぽんは、1917年ねんにロシアの同盟どうめい国こくであるフランス（露ろ仏ふつ同盟どうめい）から、ロシアへの介入かいにゅうを打診だしんされた。経済けいざい的てきな問題もんだいから当初とうしょは難色なんしょくを示しめしたが、ロシア革命かくめいが進すすむにつれ計画けいかくを立案りつあんし、反はん革命かくめい派はを支援しえんしシベリアを独立どくりつさせることを検討けんとうし始はじめる。1917年ねん12月より、ザバイカル・コサック軍ぐんの頭領とうりょう（アタマン）であったグリゴリー・セミョーノフは、ヴェルフネウジンスク（現げんウラン・ウデ）で白色はくしょく運動うんどうであるセミョーノフの反乱はんらんを起おこしたが失敗しっぱいし、東ひがし三さん省しょう（満まん洲しゅう）に後退こうたいしてハルビンで満まん洲しゅう特別とくべつ部隊ぶたい (Особого Маньчжурского Отряда)を組織そしきした。1918年ねん2月がつに日本にっぽんはブラゴヴェシチェンスクの日本人にっぽんじん居留民きょりゅうみんに義勇ぎゆう自警じけい団だんを組織そしきさせ反はん革命かくめい軍ぐんを支援しえんした。1918年ねん3月がつ、白しろ軍ぐんであるアムール・コサック軍ぐんは、ブラゴヴェシチェンスクでガモフの反乱はんらんを起おこすが失敗しっぱいする。1918年ねん3月25日にちに、東京とうきょうで中華民国ちゅうかみんこく特命とくめい全権ぜんけん公使こうしの章あきら宗そう祥さちから「日ひに日ひに露ろ国内こくないに敵国てきこく勢力せいりょくが蔓延まんえんしている」として共同きょうどう防ぼう敵てきについて打診だしんされ合意ごういし、日ひ支ささえ共同きょうどう防ぼう敵てき軍事ぐんじ協定きょうていを結むすんだ。また、1918年ねん7月がつにはアメリカから打診だしんされシベリア出兵しゅっぺいを行おこなった。

なお、日本にっぽんはロシアと日にち露ろ漁業ぎょぎょう協約きょうやくを結むすんでおり、1918年ねん4月がつの漁区ぎょくはウラジオストクの沿海州えんかいしゅうゼムストヴォ(地方ちほう自治じち機関きかん)で競売きょうばいが行おこなわれたが、日にち露ろ漁業ぎょぎょう協約きょうやくは15年ねん置おきに更新こうしんとなっており、1919年ねんが更新こうしんの年としであった。しかし、ロシア革命かくめいにより正式せいしき政府せいふが無なくなり、日本にっぽんは当時とうじ事実じじつ上じょうの政権せいけんである臨時りんじ全ぜんロシア政府せいふ(オムスク政府せいふ)との間あいだに、協約きょうやく暫定ざんてい延長えんちょうの覚書おぼえがきを交換こうかんした。その後ご、競売きょうばいを行おこなっていた沿海州えんかいしゅうゼムストヴォが浦うら潮しお臨時りんじ政府せいふを樹立じゅりつし、1920年ねんの漁区ぎょく競売きょうばいはここで行おこなわれた。

1919年ねん9月、日本にっぽんの支援しえんするセミョーノフ軍ぐんとパルチザンである東ひがしザバイカル戦線せんせんとの間あいだに、ボグダットの戦たたかいが起おこった。1920年ねん3月がつから5月にニコラエフスクでパルチザンが邦人ほうじんを大量たいりょう虐殺ぎゃくさつする尼あま港みなと事件じけんが起おきた。また、オホーツク方面ほうめんでもパルチザンが邦人ほうじん漁場ぎょじょう26箇所かしょ、缶詰かんづめ工場こうじょう3箇所かしょに残置ざんちした物件ぶっけんを略奪りゃくだつし、建物たてもの全部ぜんぶを焼やき壊こわした (オホーツク事件じけん)。

1920年ねん7月がつ17日にち、日本にっぽんは極東きょくとう共和きょうわ国こく（ェルフネ政権せいけん）との間あいだに、赤軍せきぐんを拒こばむ共産きょうさん主義しゅぎ不ふ採用さいようの民主みんしゅ主義しゅぎ緩衝かんしょう国こく設立せつりつのための緩衝かんしょう国こく建設けんせつ覚書おぼえがきを交換こうかんし、更さらに浦うら潮しお臨時りんじ政府せいふと極東きょくとう共和きょうわ国こくとロシア東方とうほう辺境へんきょう（反はん過激かげき派はのセミョーノフ軍ぐん）を統一とういつさせて赤化せっかを防ふせごうと画策かくさくしたが、失敗しっぱいする。その後ご、人民じんみん革命かくめい軍ぐんのアムール戦線せんせんによって、セミョーノフ軍ぐんはザバイカルから追おい出だされてしまう。

シベリア出兵しゅっぺいに伴ともない、多おおくの白しろ系けいロシア人じんが日本にっぽんに亡命ぼうめいしてきた。1920年ねん3月がつにはユダヤ系けいロシア人じんアナトリー・ヤコヴレヴィチ・グートマンが日本にっぽんに於おいて反はん過激かげき派は（反はん赤軍せきぐん）露ろ字じ新聞しんぶん「デーロ、ロシー」を創刊そうかんした。同年どうねん6月がつにロシア東方とうほう辺境へんきょうのグリゴリー・セミョーノフらがその新聞しんぶん社しゃを買収ばいしゅうし、邦文ほうぶん翻訳ほんやく号ごうを創刊そうかんし、反共はんきょう新聞しんぶんを日本にっぽんの政府せいふ内外ないがいの名士めいしに配布はいふした。そして新聞しんぶんの中なかで、過激かげき派はの世界せかい的てき脅威きょういについて訴うったえ、日本にっぽんが撤兵てっぺいすればソ連それんはバイカル州しゅうを手てに入いれ東ひがし支ささえ鉄道てつどう（中東ちゅうとう鉄道てつどう）租借そしゃく地ち内ないで過激かげき主義しゅぎについて宣伝せんでんし中国人ちゅうごくじんは過激かげき派はと協商きょうしょうに至いたるとし、中国人ちゅうごくじんと過激かげき派はが結託けったくすれば朝鮮ちょうせんや日本にっぽん内地ないちでも過激かげき主義しゅぎの宣伝せんでんをし始はじめると警告けいこくし、以下いかの内容ないようを日本にっぽん政府せいふに提案ていあんした。

(一いち)過激かげき主義しゅぎを以って全ぜん文明ぶんめい世界せかいの公おおやけ敵てき、世界せかい人道じんどうの根本ねもと義よしを覆くつがえす者ものとして之これに向むかって断然だんぜん明白めいはくに宣戦せんせん布告ふこくする事こと

(二に)バイカル撤兵てっぺいを当分とうぶん猶予ゆうよし、かの地ちに日本にっぽん勢力せいりょくを保留ほりゅうしバイカルを以って全ぜん極東きょくとうに於おける過激かげき主義しゅぎ伝播でんぱを防ふせぐ関門かんもんとなし黒くろ龍りゅう州しゅうに於おける過激かげき派は軍ぐんの増員ぞういんを防ふせぎ満まん洲しま朝鮮ちょうせん及日本にっぽんに過激かげき主義しゅぎ侵入しんにゅうを予防よぼうすべき事こと

(三さん)日本にっぽんに反はん過激かげき派は思想しそうのプロパガンダを組織そしき的てきに励行れいこうし過激かげき派はの兇暴きょうぼう並ならびにその非ひ人道的じんどうてき目的もくてきを暴露ばくろする事こと 日本にっぽん国民こくみんをしてあまねく過激かげき派はの真相しんそう並ならびに過激かげき主義しゅぎが世界せかい別わけて日本にっぽんに対たいする脅威きょういたるを知しらしむべき事こと

(四よん)露ろ国こく極東きょくとう即すなわちバイカル湖こより太平洋たいへいように至いたるまで国民こくみん的てき民主みんしゅ主義しゅぎに基もとづく露ろ国こく唯一ゆいいつ地方ちほう政府せいふを樹立じゅりつするに助力じょりょくすべき事こと、しかしてこの政府せいふはよく国くにを治おさめ専もっぱら経済けいざい実業じつぎょうの発展はってんに注意ちゅういしよく日にち露ろ両りょう国民こくみんの極東きょくとうに於おいて安全あんぜんなる生活せいかつを営いとなみ互たがいに相あい提携ていけいし親善しんぜんを保たもち平和へいわの事業じぎょうに従事じゅうじし極東きょくとうに於おける無尽蔵むじんぞうなる天与てんよの富とみ源げんを開拓かいたくするを得えしめ日にち露ろ両国りょうこくの幸福こうふくの増進ぞうしんを来きたさん事じを期きすべきである。

—  1920年ねん7月がつ18日にち デイロ、ロシー(Дело России) 号外ごうがい 邦文ほうぶん翻訳ほんやく号ごう ─日にち露ろ問題もんだいの為ためめ─ 日本にっぽん撤兵てっぺいに就て ─撤兵てっぺいは断だんじて不可ふかなり 而しかして過激かげき主義しゅぎを撲滅ぼくめつせよ─

更さらに、その新聞しんぶんに於おいて「日本にっぽんも亦また是これれ決けっして過激かげき派はの病毒びょうどく免疫めんえきの保険ほけんを附つけられたるものにあらず」「今いまや正まさに知慮ちりょあり実験じっけんあり且かつ先見せんけんの明あかりある良りょう医いが、此の嫌忌けんきすべき病毒びょうどくの蔓延まんえんを断乎だんことして防止ぼうしし得えべき機会きかい到来とうらいせり。此の良りょう医いは即すなわち日本にっぽんの帝国ていこく議会ぎかいなり。」とも述のべている。同年どうねん、日本にっぽんは新あたらしい治安ちあん立法りっぽうの制定せいていに着手ちゃくしゅしはじめ、1925年ねんには治安ちあん維持いじ法ほうが成立せいりつし施行しこうされた。

上海しゃんはいでは、1920年ねん春はるにグリゴリー・ヴォイチンスキーがコミンテルン極東きょくとう支局しきょくを発足ほっそくさせ、1921年ねん7月がつには、中国共産党ちゅうごくきょうさんとう第だい一いち次じ全国ぜんこく代表だいひょう大会たいかいに参加さんかし、コミンテルン中国ちゅうごく支部しぶ（中国共産党ちゅうごくきょうさんとう）の設立せつりつを援助えんじょした。共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ主筆しゅひつの新聞しんぶんを支援しえんしていた親おや共どもの中国ちゅうごく国民党こくみんとう広東かんとん派はは、1922年ねんに香港ほんこんで香港ほんこん海員かいいん罷業ひぎょうを支援しえんした。これを見みたコミンテルンのマーリン（本名ほんみょうヘンドリクス・スネーフリート）は国民党こくみんとうへと近ちかづき、国民党こくみんとう及およびコミンテルン中国ちゅうごく支部しぶを国共こっきょう合作がっさくの方向ほうこうへと向むかわせた。

日本にっぽんでは、1921年ねん5月がつに暁あかつき民みん会かいらがコミンテルン日本にっぽん支部しぶ準備じゅんび会かいを発足ほっそくさせ、コミンテルンから党とう結成けっせい資金しきんを貰もらうが下関しものせき遊興ゆうきょう事件じけんによって発覚はっかく、1921年ねん11月から12月に警察けいさつが非合法ひごうほうなコミンテルン日本にっぽん支部しぶ(暁あかつき民みん共産党きょうさんとう)を一斉いっせい検挙けんきょした(暁あかつき民みん共産党きょうさんとう事件じけん)。1922年ねんに残党ざんとうはコミンテルン日本にっぽん支部しぶ(第だい一いち次じ共産党きょうさんとう)を再さい設立せつりつするが、1923年ねんに起おきた早稲田わせだ軍ぐん教きょう事件じけんにおいて存在そんざいが露見ろけんし、警察けいさつは治安ちあん警察けいさつ法ほう違反いはんによって非合法ひごうほうなコミンテルン日本にっぽん支部しぶ(第だい一いち次じ共産党きょうさんとう)を一斉いっせい検挙けんきょした(第だい一いち次じ共産党きょうさんとう事件じけん)。これにより、1924年ねんにコミンテルン日本にっぽん支部しぶは一度いちど解散かいさんした。

1921年ねん5月がつ、ウラジオストクでプリアムール臨時りんじ政府せいふ(メルクーロフ政権せいけん)が樹立じゅりつされる。しかし、反はん過激かげき派はの拠より所どころであるセミョーノフは、日本にっぽんへの亡命ぼうめいによって極東きょくとう軍ぐんの地位ちいを失うしない、ロシアの公金こうきんの処分しょぶん権けんも失うしなってしまっていた。1922年ねん、プリアムール臨時りんじ政府せいふは崩壊ほうかいした。

その後ご、セミョーノフは権利けんりの無ないその公金こうきんに対たいする債権さいけんを西にし比ひ利とぎ亜あ自治じち團だんに譲渡じょうとして、その団体だんたいが「極東きょくとう政府せいふ没落ぼつらく後ごの代表だいひょう者しゃである」として裁判さいばんを起おこすが、無意味むいみであった。

南京なんきん事件じけんから広田ひろた三さん原則げんそくまで

やがて、共産きょうさん主義しゅぎは従来じゅうらいの国家こっか体制たいせいを暴力ぼうりょく革命かくめいによって転覆てんぷくさせることを主張しゅちょうするイデオロギーとして認識にんしきされるようになった。自由じゆう主義しゅぎを掲かかげるアメリカやイギリスなどにおいてはこのような国体こくたいを揺ゆるがしかねないイデオロギーを危険きけん視しして警戒けいかいした。フランスにおいても反はんソ思想しそうが広ひろまっていたが、これは第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんにおいてソ連それんがフランスを無視むしして対たい独どく単独たんどく講和こうわ（ブレスト＝リトフスク条約じょうやく）したり、フランスの対たい露ろ債権さいけんを破棄はきしたことによるものが大おおきい。また、西にしヨーロッパ人じんは既すでに第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんにおいて切符きっぷ制せいを経験けいけんしていたため、ソ連それんの切符きっぷ制せいには否定ひてい的てきな感情かんじょうを持もっていた。

1924年ねん、イギリスでジノヴィエフ書簡しょかん事件じけんやキャンベルケースが起おこる。1925年ねん、上海しゃんはいで五ご・三さん〇事件じけん、香港ほんこんと広州こうしゅうで省しょう港みなと大だい罷工ひこうが起おこる。1925年ねん11月、香港ほんこん総督そうとくがレジナルド・エドワード·スタッブスから、セシル・クレメンティへと替かわった。

日本にっぽんでは1926年ねん2月がつよりソ連それんの状況じょうきょう調査ちょうさを行おこなう露西亜ろしあ通信つうしん社しゃ(後ごの日ひ蘇そ通信つうしん社しゃ)が活動かつどうし始はじめた。同年どうねん3月がつ、中国ちゅうごくで国共こっきょう対立たいりつの始はじまりとなる中山なかやま艦かん事件じけんが起おこる。日にち露ろ協会きょうかい(1906年ねん創立そうりつ)の評議ひょうぎ員いんであった松岡まつおか洋右ようすけは1927年ねん2月がつ26日にちから35日間にちかん中国ちゅうごくの各かく方面ほうめんを訪問ほうもんし、5月の講演こうえん稿こうで「1924年ねんの国共こっきょう合作がっさくにより、国民こくみん政府せいふの領袖りょうしゅうはソ連それんから共産党きょうさんとうの細胞さいぼう組織そしき及およびロシア革命かくめいに用もちいて現在げんざいも用もちいられている手法しゅほうを教授きょうじゅされた」「東京とうきょう辺べでアカデミックな議論ぎろんを見物けんぶつしている間あいだに、支ささえ那なには着々ちゃくちゃくと共産党きょうさんとうの芽めを生しょうじて来きて、全然ぜんぜん抜去ばっきょってしまう事ことは出来できないと云いう状況じょうきょうになっている」「南方なんぽうの方ほうは宣伝せんでん委員いいんを北きたの方かたに繰くり込こんで、漸次ぜんじ宣伝せんでんで撹乱かくらんを始はじめるように進すすめているらしい」「満まん洲しゅうに手てが伸のびているかもしれなく、朝鮮ちょうせんにさえ入はいっていないかと思おもわれる節ふしがある」と述のべている。その間あいだ、中国ちゅうごくでは3月がつに共産党きょうさんとうの陰謀いんぼうとも言いわれる南京なんきん事件じけんが発生はっせいしており、その後ご4月がつ3日にちには中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの扇動せんどうによって日本にっぽん租界そかいが襲撃しゅうげきされる漢かん口こう事件じけんが起おき、同月どうげつに国民党こくみんとうが共産党きょうさんとうを弾圧だんあつする上海しゃんはいクーデターが発生はっせいし、中国ちゅうごくは内戦ないせん状態じょうたいとなった。イギリスは、5月12日にちにソ連それんの貿易ぼうえき団体だんたいアルコスを捜査そうさし、5月26日にちにソ連それんとの通商つうしょう条約じょうやくを破棄はきした (アルコス事件じけん)。同月どうげつ、漢かん口こうで会議かいぎが開ひらかれ、上海しゃんはいにプロフィンテルン（赤色あかいろ労働ろうどう組合くみあいインターナショナル）極東きょくとう局きょく組織そしきとして太平洋たいへいよう労働ろうどう組合くみあい書記しょき局きょくを設立せつりつすることが決きまる。

同年どうねんに原理げんり日本にっぽん社しゃの三井みつい甲之こうしは「祖国そこく礼拝れいはい」において国家こっかの任務にんむとしてのマルクス主義まるくすしゅぎの学術がくじゅつ的てき批判ひはんの必要ひつよう性せいを訴うったえている。1928年ねんには同社どうしゃの蓑みの田た胸むね喜きが「獨どく露ろの思想しそう文化ぶんかとマルクス・レニン主義しゅぎ マルクス主義まるくすしゅぎの根源こんげん的てき綜合そうごう的てき批判ひはん」においてマルクス主義まるくすしゅぎの批判ひはんを行おこなっている。

警察けいさつは1928年ねん3月15日にちに再建さいけんされた非合法ひごうほうの日本にっぽん共産党きょうさんとう(第だい二に次じ共産党きょうさんとう、1926年ねん再建さいけん)及および労働ろうどう農民のうみん党とうの取締とりしまりを行おこない(三さん・一いち五ご事件じけん)、1929年ねん4月がつ16日にちに再度さいど日本にっぽん共産党きょうさんとうの取締とりしまりを行おこなった(四よん・一いち六ろく事件じけん)。その後ご、共産党きょうさんとうは様々さまざまな事件じけんを起おこすようになり、警察けいさつは度々どど逮捕たいほを行おこなっている。

1928年ねん、日本にっぽん陸軍りくぐんにおいて、関東軍かんとうぐんは満まん洲しゅう分離ぶんり方針ほうしんを取とっていたが、同年どうねん3月がつに木曜もくよう会かい及および参謀さんぼう本部ほんぶ第だい一部いちぶはそれぞれ満蒙まもう問題もんだいの解決かいけつ及および対たいソ戦争せんそうへの対応たいおうのために満蒙まもう領有りょうゆう論ろんを主張しゅちょうした。1929年ねん、中ちゅうソ紛争ふんそうに関かんし、西にし比ひ利とぎ亜あ自治じち團だん団長だんちょうの「ムスチスラフ、ペトロヴィッチ、ゴルバチョフ」(ru:Мстислав Петровић Горбачёв)法学ほうがく博士はかせは、日本にっぽんの後援こうえんにより沿海州えんかいしゅう占領せんりょうを計画けいかくし、中国ちゅうごく軍ぐんと協力きょうりょく作戦さくせんする案あんを立たて、中国ちゅうごく側がわと交渉こうしょうしたが、中国ちゅうごく側がわは白しろ系けいロシア人じんの武装ぶそうに対たいし懸念けねんを示しめした。その他たにも満まん洲しゅうには様々さまざまな白しろ系けいロシア人じん組織そしきが存在そんざいしており、反はんソ運動うんどうが活発かっぱつ化かした。同年どうねん12月26日にち、停戦ていせんのために中ちゅうソ間あいだでハバロフスク議定ぎてい書しょが結むすばれ、ソ連それんは中国ちゅうごく側がわに対たいし白しろ系けいロシア人じんの武装ぶそう解除かいじょ及および責任せきにん者しゃの追放ついほうを要求ようきゅうした。しかし、中国ちゅうごく側がわは白しろ系けいロシア人じんに対たいし、寛大かんだいな態度たいどで対応たいおうしていた。

コミンテルンには一いち国こく一いち党とうの原則げんそくがあり、1929年ねんごろには更さらに重視じゅうしされたとされる。日本にっぽんでは朝鮮ちょうせん共産党きょうさんとう日本にっぽん総局そうきょくが解散かいさんして日本にっぽん共産党きょうさんとうに吸収きゅうしゅうされた。また、満まん洲しゅうでは、朝鮮ちょうせん共産党きょうさんとう満まん洲しゅう総局そうきょくが中国共産党ちゅうごくきょうさんとうへ加くわわるために、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうの許可きょかの下もとで、1930年ねん5月から一いち年ねん以上いじょうに渡わたって日本にっぽんの朝鮮ちょうせん地方ちほうの対岸たいがんにある間あいだ島とうにおいて武装ぶそう蜂起ほうきを行おこなった(間島まじま共産党きょうさんとう暴動ぼうどう)。また、1930年ねん8月がつ1日にちには中国共産党ちゅうごくきょうさんとう満まん洲しゅう省しょう委員いいん会かい直属ちょくぞくの撫なで順じゅん特別とくべつ支部しぶの朝鮮ちょうせん人じんによって満まん洲しゅうで八はち一いち吉よし敦あつし暴動ぼうどうが発生はっせいした。奉天ほうてん省しょう政府せいふは取とり締しまりを強化きょうかしたが、それに伴ともない兵へい匪や警匪による良民りょうみんへの横暴おうぼうも増ふえてしまうこととなった。1930年ねん10月7日にち、ソ連それんは中国ちゅうごく側がわに対たいしノートを発表はっぴょうし、白しろ系けいロシア人じんの解職かいしょくと反はんソ宣伝せんでんの取とり締しまりを要求ようきゅうした。中国ちゅうごく側がわは方針ほうしんを転換てんかんし、白しろ系けいロシア人じんの取とり締しまり及および追放ついほうを開始かいしした。1930年ねん11月9日にち、関東かんとう州しゅうの撫なで順じゅん警察けいさつ署しょが撫なで順じゅん炭坑たんこうにおいて挙動きょどう不審ふしんな中国人ちゅうごくじんの取調とりしらべを行おこなったところ、共産党きょうさんとうに関かんする書類しょるいを多数たすう所持しょじしており、李り得とく禄ろく外がい二に名めいを始はじめその他た中国共産党ちゅうごくきょうさんとう員いん21名めいを検挙けんきょした。彼かれらによれば、12月11日にちの全国ぜんこくソビエト代表だいひょう大会たいかい前後ぜんこうに満まん洲しゅう省しょう委員いいん会かいは中央ちゅうおう党とう部ぶと呼応こおうして大だい暴動ぼうどうを起おこし、紅べに軍ぐんを組織そしきして発電はつでん所しょや工場こうじょうを破壊はかいし、満まん洲しゅうに地方ちほうソビエト政府せいふを樹立じゅりつすることを計画けいかくしていた。

1930年ねん2月がつ、イギリスの海峡かいきょう植民しょくみん地ち総督そうとくがセシル・クレメンティへと代かわり、警察けいさつにかける費用ひようを拡大かくだいさせた。1931年ねん、海峡かいきょう植民しょくみん地ち警察けいさつは、海峡かいきょう植民しょくみん地ちの一部いちぶであるシンガポールで、フランス人じんの共産きょうさん主義しゅぎ者しゃセルジュ・ルフラン（本名ほんなジョセフ・ジュクルー）を逮捕たいほした。6月15日にちには、上海しゃんはい租界そかいの共同きょうどう租界そかい工こう部局ぶきょく警察けいさつがソ連それんのスパイでプロフィンテルン極東きょくとう組織そしきである太平洋たいへいよう労働ろうどう組合くみあい書記しょき局きょくの書記しょき員いんイレール・ヌーラン(本名ほんみょうヤコブ・ルドニック)を逮捕たいほし(牛ぎゅう蘭らん事件じけん、ヌーラン事件じけん)、極東きょくとうにおける赤化せっか機関きかんの全容ぜんようや、政府せいふ要人ようじんの暗殺あんさつ・湾わん港こうの破壊はかい計画けいかくが明あかるみに出でた。また、押収おうしゅうされた文書ぶんしょには、「国民こくみん政府せいふの軍隊ぐんたい内ないに、共産党きょうさんとうの細胞さいぼうを植付うえつけ、其戦闘せんとう力りょくを弱よわめる事ことが最もっとも必要ひつよう」だと記しるされていた。1931年ねん7月がつ、万まん宝山たからやま事件じけん及および朝鮮ちょうせん排はい華はな事件じけんが発生はっせいし、日にち中ちゅう関係かんけいは悪化あっかの一途いっとを辿たどった。その後ご、同年どうねんに日本にっぽんは満まん洲しゅう事変じへんを起おこし、1932年ねん3月がつには満まん洲しゅう国こくが建国けんこくされる。1932年ねん4月がつ、日本にっぽんにおいて、プロフィンテルン日本にっぽん支部しぶの日本にっぽん労働ろうどう組合くみあい全国ぜんこく協議きょうぎ会かい(全ぜん協きょう)の中央ちゅうおう常任じょうにん委員いいん長ちょうであった溝上みぞかみ弥わたる久馬きゅうまが逮捕たいほされた。

1929年ねんに世界せかい恐慌きょうこうが発生はっせいすると、ドイツ、イタリア、日本にっぽんなどで全体ぜんたい主義しゅぎ（ファシズム）や軍国ぐんこく主義しゅぎが台頭たいとうし始はじめた。日本にっぽんでは、1931年ねんに早稲田大学わせだだいがく教授きょうじゅ政治せいじ学がく博士はかせの五ご来らい欣造がイタリア、フランス、ドイツ、イギリス、ロシアを回まわり、1932年ねんに「ファッショか共産きょうさん主義しゅぎか」という講演こうえんを行おこなっており、1933年ねんに講演こうえん録ろくが発行はっこうされた。これらの国々くにぐにも同様どうように共産きょうさん主義しゅぎを危険きけん視しして否定ひていし、徹底的てっていてきに取締とりしまりを行おこない、共産きょうさん主義しゅぎ者しゃを社会しゃかいから排除はいじょした。

1933年ねん、満まん洲しゅう国こくハルビンにおいて白しろ系けいロシア人じんによる反共はんきょう主義しゅぎ的てき組織そしきのロシアファシスト党とうが生うまれる。彼かれらは親日しんにち的てきではあったが、親しん独どく的てきかつ反はんユダヤ主義しゅぎでもあったため、日本にっぽんの八紘はっこう一宇いちうの精神せいしんや親おやユダヤ政策せいさく(河豚ふぐ計画けいかく)、満まん洲しゅう国こくの民族みんぞく協和きょうわ政策せいさく(五ご族ぞく協和きょうわ)との間あいだに整合せいごう性せいの問題もんだいが起おきることとなった。同地どうちでは、ロシアでの赤化せっか革命かくめいの首謀しゅぼう者しゃはユダヤ人じんであるなどとして、反はんユダヤ主義しゅぎが広ひろまっていた。1934年ねん、ドイツはソ連それんに対抗たいこうするため、ポーランドに同盟どうめいを提案ていあんしたが失敗しっぱいした。

1934年ねんには既すでに、1937年ねんのソ連それん第だい二に次じ五ごヶ年かねん計画けいかく完成かんせいによって極東きょくとう軍備ぐんびの完成かんせい及および赤化せっか攻勢こうせいの強化きょうかが行おこなわれるため、これが「一いち九きゅう三さん五ご─六ろく年ねんの危機きき」と呼よばれるものの一ひとつとされていた。1934年ねん10月、ソ連それんに住すみ共産きょうさん党員とういんの待遇たいぐうを受うけていた井上いのうえ哲あきらこと熊谷くまがい大信たいしんがスパイとして疑うたがわれソ連それんより追放ついほうされ、日本にっぽんに情報じょうほうをもたらした。1935年ねん1月がつ、満蒙まもう国境こっきょうで哈爾哈廟事件じけんが発生はっせいした。そのため、同年どうねん5月がつから、広田ひろた弘毅こうき外相がいしょうは中国ちゅうごく側がわと協議きょうぎを行おこない、条件じょうけんの中なかに「3. 外そと蒙こうむ等ひとしヨリ来らいル赤化せっか勢力せいりょくノ脅威きょういカ日び満まん支ささえ三さん国こく共通きょうつうノ脅威きょういタルニ鑑かんミ支ささえ那な側がわヲシテ外がい蒙こうむ接せっ壌方面めんニ於テ右みぎ脅威きょうい排除はいじょノ為ため我わが方ほうノ希望きぼうスル諸般しょはんノ施設しせつニ協力きょうりょくセシムルコト」を提示ていじした (広田ひろた三さん原則げんそく)。

第だい7回かいコミンテルン世界せかい大会たいかいから第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんまで

1935年ねん7月がつから8月がつにかけて、コミンテルンが第だい7回かい世界せかい大会たいかいを開ひらき、日本にっぽんやドイツ等とうを共産きょうさん化かの主おもな攻撃こうげき目標もくひょうに定さだめた。中国共産党ちゅうごくきょうさんとう代表だいひょう団だんは8月がつ1日にちに国共こっきょう合作がっさくを呼よびかける八はち・一いち宣言せんげんを行おこなった。それらに対たいし、日本にっぽん国内こくないでは、1935年ねん11月7日にちに、五ご来らい欣造が代表だいひょうを務つとめる皇すめらぎ化か連盟れんめいが主催しゅさいし、千々ちじ波は敬けい太郎たろうが代表だいひょうを務つとめる風雲ふううん倶楽部くらぶが後援こうえんとなって有志ゆうし大会たいかいを開ひらいた。その大会たいかいの中なかで、ロシアファシスト党とうの日本にっぽん代表だいひょうであるワシリー・ペトロウィチ・バルイコフは「日にち、独どく、露ろ（白しろ系けい）三さん国こく同盟どうめいヲ結成けっせいシ全ぜん世界せかいノ平和へいわ確立かくりつノ為ため邁進まいしんセラレン事ごとヲ深ふかク望もちムモノデアル」と述のべた。また、その大会たいかいにおいて、「我わが等ひとしハ今日きょうヲ期きシテ更さらニ共産きょうさん主義しゅぎノ徹底的てっていてき撲滅ぼくめつヲ期きス」とする決議けつぎを行おこなった。その後ご、日本にっぽんとドイツは、1936年ねん11月25日にちに、日にち独どく防共ぼうきょう協定きょうていを結むすんだ。この協定きょうていは、建前たてまえ上反かみたんコミンテルンを目指めざしたものであり、当時とうじソ連それんが主張しゅちょうしていたようにソ連それんとコミンテルンは別物べつものという立場たちばを取とっていたが、それらが同一どういつであることは明白めいはくであったため、秘密ひみつ附属ふぞく協定きょうていにはソ連それんへの規定きていを含ふくんでいた。また、12月3日にちに有田ありた八郎はちろう外相がいしょうはこの協定きょうていに関かんし「英えい米べいとも同様どうようの協定きょうていを結むすぶ用意よういがある」とした。

綏遠省しょう公安こうあん局きょくが、1936年ねん旧きゅう正月しょうがつを期きしてその地ちを占領せんりょうしようと綏遠に潜入せんにゅうして準備じゅんびしていた中国ちゅうごく共産きょうさん軍ぐんを逮捕たいほして、武器ぶき弾薬だんやくを押収おうしゅうする事件じけんが起おき、綏遠省しょう政府せいふ主席しゅせきの傅でん作つくる義よし、山西さんせい軍閥ぐんばつの閻錫山やま、冀察政務せいむ委員いいん会かいは連絡れんらくを取とって全面ぜんめん的てき防共ぼうきょうに乗のり出だした。しかし、同年どうねん末まつに綏遠事件じけんが起おこる。

1936年ねん11月12日にちには司法しほうの赤化せっかが発覚はっかくしており(司法官しほうかん赤化せっか事件じけん)、法学部ほうがくぶにおける赤化せっか教授きょうじゅの追放ついほうが主張しゅちょうがされ行おこなわれた(滝川たきがわ事件じけん)。1937年ねん2月がつ、中国ちゅうごくでは国民党こくみんとうが三さん中ちゅう全会ぜんかいを行おこない赤禍せっか根絶こんぜつ決議けつぎを可決かけつしたが、実際じっさいには容共ようきょうに向むかい第だい二に次じ国共こっきょう合作がっさくとなった。同年どうねん6月がつには朝鮮ちょうせんにおいて赤色あかいろテロの普天ふてん堡襲撃げき事件じけんが起おきた。また同年どうねん、日にち中ちゅう戦争せんそうも勃発ぼっぱつし、日本にっぽん軍ぐんが八はち路ろ軍ぐんからの攻撃こうげきを受うけるようになった。同年どうねん12月がつにはコミンテルンに呼応こおうして日本にっぽんで人民戦線じんみんせんせんの結成けっせいを企くわだてた運動うんどう家かや大学だいがく教授きょうじゅらが一斉いっせい検挙けんきょされた(人民戦線じんみんせんせん事件じけん)。

1937年ねん4月がつ12日にち、日本にっぽんにおいて国際こくさい反共はんきょう連盟れんめいが誕生たんじょうする。世界せかいは日本にっぽんの防共ぼうきょうの大義たいぎを理解りかいし、喜よろこんで防共ぼうきょうの目的もくてきを一いちにしようとするだろうとし、これは真しんに八紘はっこう一宇いちうの大だい理想りそうを顕揚けんようすることであるとし、皇すめらぎ道どうの本義ほんぎに基もとづき人類じんるい共同きょうどうの敵てきである共産きょうさん主義しゅぎの絶滅ぜつめつを計はかることを目的もくてきとした。活動かつどうとして、反共はんきょう雑誌ざっし『反共はんきょう情報じょうほう』を始はじめ、様々さまざまな反共はんきょう本ほんの出版しゅっぱんを行おこなっていた。この団体だんたいの顧問こもんは平沼ひらぬま騏一郎きいちろう、近衛このえ文麿ふみまろ、頭山とうやま満みつる、田中たなか光ひかり顕あきら、有馬ありま良りょう橘たちばなであり、評議ひょうぎ員いんには松岡まつおか洋右ようすけ、有田ありた八郎はちろう、荒木あらき貞夫さだお、蓑みの田た胸むね喜き、五ご来らい欣造、黒くろ龍りゅう会かいの内田うちだ良平りょうへい及および葛生くずう能久よしひさなどが入はいっており、会員かいいんは1939年ねん前後ぜんこう時点じてんで約やく5万まん人にん居いたとされる。1938年ねん8月がつ25日にち、三井みつい甲之こうし、蓑みの田た胸むね喜き、五ご来らい欣造、葛生くずう能久よしひさ、吉田よしだ茂しげるらにより結成けっせいされた帝みかど大だい粛正しゅくせい期成きせい同盟どうめいが、荒木あらき貞夫さだお文相ぶんしょうの帝みかど大だい自治じち制度せいど改革かいかく要望ようぼうに関かんして、東大とうだい総長そうちょうに対たいし『対外たいがい「防共ぼうきょう協定きょうてい」に呼応こおうして此の容共ようきょう赤化せっか意志いしを国内こくないに於おいても禊祓みそぎはらいせざるべからず』として「長與ながよ東大とうだい總長そうちょうへの進言しんげん書しょ」を提出ていしゅつした。

1937年ねん12月、徳富とくとみ蘇峰そほうは、著書ちょしょ『戦時せんじ慨言』の中なかで、日にち中ちゅう戦争せんそうについて以下いかのように述のべた。

斯る事態じたいであれば、有あらん限かぎりの力ちからを尽つくして、物質ぶっしつ上じょうに於おいても、精神せいしん上じょうに於おいても、支ささえ那なをソ連それん化かより救すくいふことは、支ささえ那なの為ためばかりでなく、日本にっぽんの自衛じえいの為ために、必然ひつぜんの義務ぎむである。此の如ごとき理由りゆうに於おいて、我が等とうは此の戦争せんそうは日ひ支ささえの戦争せんそうでなく、日本にっぽん対たいコミンテルンの戦争せんそうであるとする。極言きょくげんすれば共産きょうさん主義しゅぎ者しゃとの戦争せんそうであると、認みとめむるものである。 — 戦時せんじ慨言 P.12

1938年ねん1月がつ11日にち、日本にっぽんは支ささえ那な事変じへん処理しょり根本こんぽん方針ほうしんを決定けっていし、その日ひ支ささえ講和こうわ交渉こうしょう条件じょうけん細目さいもくの中なかに「六ろく、支ささえ那なは防共ぼうきょう政策せいさくを確立かくりつし日び満まん両国りょうこくの同どう政策せいさくに協力きょうりょくすること」という条項じょうこうが入いれられた。しかし、中国ちゅうごく側がわとの交渉こうしょう(トラウトマン工作こうさく)に失敗しっぱいし、内閣ないかく総理そうり大臣だいじん近衛このえ文麿ふみまろは「帝国ていこく政府せいふは爾後じご国民こくみん政府せいふを対たい手てとせず帝国ていこくと真しんに提携ていけいするに足たる新興しんこう支ささえ那な政権せいけんの成立せいりつ発展はってんを期待きたいし是ぜと両国りょうこく国交こっこうを調整ちょうせいして更生こうせい新しん支ささえ那なの建設けんせつに協力きょうりょくせんとす」とする声明せいめいを発表はっぴょうした (第だい一いち次じ近衛このえ声明せいめい)。

1938年ねん6月がつ13日にち、ゲンリフ・リュシコフがソ連それんの重要じゅうよう機密きみつ情報じょうほうを持もって満まん洲しゅうに亡命ぼうめいを試こころみ、日本にっぽんに協力きょうりょくすることとなった。これにより、日本にっぽんの軍事ぐんじ力りょくがソ連それんに劣おとり、単独たんどくでシベリアへ攻せめ込こむのが難むずかしいことが判明はんめいした。7月4日にち、ユダヤ系けいアメリカメディアであるニューヨークタイムズはリュシコフ手記しゅきを「日本にっぽん政府せいふにとって都合つごうが良よすぎる」として「日本にっぽんの小学生しょうがくせい向むけ (DIARY FOR JAPANESE SCHOOLBOY)」であると論ろんじた。また、同年どうねんに外そと蒙こうむ古いにしえの騎兵きへい第だい十じゅう五ご聨隊騎兵きへい大尉たいいビンバーも日本にっぽんに亡命ぼうめいしており、1939年ねん8月がつに「外そと蒙こうむ古こ脱出だっしゅつ記き」を出版しゅっぱんしている。

1938年ねん11月の近衛このえ文麿ふみまろによる東亜とうあ新しん秩序ちつじょ声明せいめい (第だい二に次じ近衛このえ声明せいめい)で、東亜とうあ新しん秩序ちつじょの建設けんせつにより日にち満まん支ささえ三さん国こく相しょう携による「共同きょうどう防共ぼうきょうの達成たっせい」を期きすことが謳うたわれた。また同年どうねん12月がつの同氏どうしによる「日ひ支ささえ国交こっこう調整ちょうせい方針ほうしんに関かんする声明せいめい」 (第だい三さん次じ近衛このえ声明せいめい)では、日ひ支ささえ防共ぼうきょう協定きょうていを締結ていけつし、特定とくてい地点ちてんに防共ぼうきょう目的もくてきで日本にっぽん軍ぐんを駐屯ちゅうとんし、内うちモンゴルを特殊とくしゅ防共ぼうきょう地域ちいきとする方針ほうしんを示しめした。1939年ねんには三みっつの自治じち政府せいふの合併がっぺいによって蒙こうむ古こ聯合れんごう自治じち政府せいふが誕生たんじょうし、主席しゅせきのデムチュクドンロブ(徳王とくおう)は就任しゅうにん宣言せんげんにおいて「防共ぼうきょう協和きょうわおよび厚生こうせいに最善さいぜんの努力どりょくを行使こうし」と謳うたった。1940年ねんに成立せいりつした中華民国ちゅうかみんこく汪ひろし兆ちょう銘めい政権せいけんは和平わへい反共はんきょう建國けんこくを謳うたっており、同年どうねん11月がつ30日にちに日本にっぽんと中華民国ちゅうかみんこく汪ひろし兆ちょう銘めい政権せいけんは、共産きょうさん主義しゅぎ的てき破壊はかい活動かつどうに対たいする共同きょうどう防衛ぼうえい及およびその為ための日本にっぽんによる蒙こうむ疆及および華北かほくへの軍隊ぐんたい駐屯ちゅうとんを認みとめる条項じょうこうを含ふくむ日にち華はな基本きほん条約じょうやくを結むすんだほか、同日どうじつに日本にっぽん、満まん洲しゅう国こく及および中華民国ちゅうかみんこく汪ひろし兆ちょう銘めい政権せいけんは共同きょうどう防共ぼうきょうの実みを上あげるために協力きょうりょくすること等とうを宣言せんげんする日ひ満まん華はな共同きょうどう宣言せんげんに調印ちょういんした。また、1941年ねんには華北かほくに華北かほく防共ぼうきょう委員いいん会かいが設置せっちされた。しかし、1930年代ねんだい後半こうはんから始はじまるアメリカの容共ようきょう的てき中国ちゅうごく支援しえん(フライング・タイガース及および対たい日にち経済けいざい封鎖ふうさ)と、1939年ねんのドイツによる独どくソ不可侵ふかしん条約じょうやく締結ていけつに伴ともなう日にち独どく防共ぼうきょう協定きょうてい反故ほごによって、日本にっぽんの反共はんきょう政策せいさくは行いき詰づまってしまってしまう。

ソ連それんがドイツもしくは英えい米べいと近ちかづこうと動うごいたため、タングステンなどの資源しげんを中国ちゅうごくに依存いぞんしその運搬うんぱんをソ連それんのシベリア鉄道てつどうに依存いぞんしていたドイツは、ポーランド侵攻しんこうのために独どくソ不可侵ふかしん条約じょうやくを結むすばざるを得えなかった。また、この依存いぞんを断たたない限かぎりドイツはソ連それんへ攻撃こうげきすることは難むずかしかった。当時とうじのタングステンの産出さんしゅつ国こくは中国ちゅうごく、イギリス統治とうち下かのビルマ、イギリス領りょうマラヤ、米国べいこくなどであったため、アメリカの参入さんにゅうを防ふせぎながらイギリス及およびフランスを仲間なかまに加くわえる必要ひつようがあり、ドイツは大だいゲルマン帝国ていこくを作つくる必要ひつようにせまられ、ドイツのヨーロッパ侵攻しんこうが始はじまった。

その後ご、1940年ねん9月がつ27日にち、反共はんきょう国こくの同盟どうめいである日にち独どく伊い三さん国こく同盟どうめいが結むすばれた。この条約じょうやくには、極東きょくとうに共産きょうさん主義しゅぎ側がわの戦力せんりょくとしてアメリカが参入さんにゅうすることを阻止そしするための条項じょうこう(第だい3条じょうの後半こうはん)も入いれられた。1941年ねん4月がつ末まつ、ソ連それんが軍需ぐんじゅ品ひんのソ連それん通過つうか禁止きんしを公表こうひょうし、同年どうねん6月がつ22日にちよりドイツ軍ぐんはソ連それんへの侵入しんにゅうを開始かいしした。日本にっぽんは同年どうねん10月がつから始はじまるドイツのモスクワ侵攻しんこう成功せいこう後ごにソ連それん極東きょくとうを攻せめ、極東きょくとうを引ひき離はなして日本にっぽん保護ほごの下したに新しん国家こっかを建設けんせつすることを計画けいかくしていたが、同おなじ月がつにアメリカがソ連それんの支援しえんを始はじめ、12月にはドイツがモスクワ占領せんりょうに失敗しっぱいしてしまう。この、アメリカによるソ連それん支援しえんは、ドイツにとってユダヤによる共産きょうさん主義しゅぎ支援しえんであると見みえ、1941年ねん12月7日にち、ドイツは夜よると霧きりという命令めいれいを発行はっこうし、ホロコーストへ繋つながることとなる。更さらに、アメリカはソ連それんへの支援しえんの際さいに、ソ連それんに対たいして「極東きょくとうの安全あんぜんは英えい米べいが守まもるのでソ連それん極東きょくとう軍ぐんを西部せいぶのドイツ戦線せんせんに移動いどうすべし」と主張しゅちょうしていたほか、1941年ねん7月がつ20日はつかにはアメリカによる支援しえんが内戦ないせんに使つかわれるを許容きょようできないとして、中国ちゅうごく国民党こくみんとうに中国共産党ちゅうごくきょうさんとうとの和平わへいを促うながす声明せいめいを発表はっぴょうした。そのため、日本にっぽんは米国べいこくとの戦争せんそうを避さけられなくなり、太平洋戦争たいへいようせんそうが始はじまることとなる。

太平洋戦争たいへいようせんそうのための日本にっぽんの南進なんしんは、スペインなどのヨーロッパの反共はんきょう勢力せいりょくに害がいを与あたえることとなった。

1939年ねん - 1941年ねん、企画きかく院いん内うちの転向てんこう者しゃを中心ちゅうしんに策定さくていされた「経済けいざい新しん体制たいせい確立かくりつ要綱ようこう」が赤化せっか思想しそうの産物さんぶつだとして企画きかく院いん事件じけんが起おきた。また、1941年ねんには、ソ連それんのスパイが発覚はっかくするというゾルゲ事件じけんが起おきた。1941年ねん - 1943年ねんには、転向てんこう者しゃの多おおかった満まん鉄てつ調査ちょうさ部ぶがマルクス主義まるくすしゅぎ的てき手法しゅほうを用もちいたとして、満まん鉄てつ調査ちょうさ部ぶ事件じけんが起おきた。1942年ねんからは、日本にっぽん共産党きょうさんとう再さい結成けっせいを行おこなっていたとして横浜よこはま事件じけんが起おきた。1942年ねん、ドイツにおいて、ソ連それんのスパイでありゲシュタポに勤務きんむしていたヴィリー・レーマンが、ゲシュタポから緊急きんきゅうとして呼よび出だされ移動いどう中ちゅうに死亡しぼうした。

イタリアのファシスタ党とう党首とうしゅであったベニート・ムッソリーニは熱心ねっしんな社会しゃかい主義しゅぎ者しゃであり、スイス放浪ほうろう中ちゅうにウラジーミル・レーニンから共産きょうさん主義しゅぎについての教義きょうぎを直接ちょくせつ受うけた経験けいけんがある。その後ご、第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうに抱だいた民族みんぞく主義しゅぎと既存きそんの社会しゃかい主義しゅぎ運動うんどうや共産きょうさん主義しゅぎ運動うんどうが対立たいりつするものであったが、それらを融合ゆうごうさせ、自みずからの理論りろんとしてファシズムを創始そうしするが、その理論りろんもジョルジュ・ソレル（フランスの哲学てつがく者しゃ。暴力ぼうりょく論ろんの著者ちょしゃとして知しられる）の修正しゅうせい主義しゅぎ的てきマルクス主義まるくすしゅぎに多大ただいな影響えいきょうを受うけており、ムッソリーニ当人とうにんがソレルを「ファシズムの精神せいしん的てきな父ちち」と賛さんえ、その死しをソ連それんのヨシフ・スターリンと共ともに追想ついそうしたというエピソードが残のこっている。

欧州おうしゅうでのファシズムの代表だいひょう格かくであり、ナチズムの創始そうし者しゃでもあるアドルフ・ヒトラーも、青年せいねん時代じだいにはバイエルン・ソビエト共和きょうわ国こくに参加さんかしており、「我わが闘争とうそう」の中なかで共産きょうさん主義しゅぎの一派いっぱであるマルクス主義まるくすしゅぎの指揮しき制度せいどや集会しゅうかいを好例こうれいとして挙あげ、「私わたしはボルシェヴィズムから最もっとも多おおく学まなんだ」と述のべている。ヒトラーの側近そっきんであるヨーゼフ・ゲッベルスも、「ボリシェヴィキどもからは、とくにそのプロパガンダにおいて、多おおくを学まなぶことができる。」と語かたる様ように、共産党きょうさんとうのプロパガンダ活動かつどうを手本てほんとし、党とう歌かの旗はたを高たかく掲かかげよも共産きょうさん主義しゅぎ者しゃだったヴィリ・ブレーデルの詩しを焼やき直なおしした物ものを用もちいるなど、浅あさからぬ関係かんけいにあった。更さらに言いえば、初期しょきのNSDAP（ナチ党とう）には、ナチス左派さはと呼よばれる、資本しほん家かを激はげしく攻撃こうげきし共産党きょうさんとうやソ連それんとの接近せっきんを模索もさくするグループまで存在そんざいしており、一時期いちじきは党内とうないで大おおきな影響えいきょう力りょくを保持ほじしていた。しかし、ヒトラー自身じしんは反共はんきょう・親しん英えい的てきであり、ナチスは政権せいけん掌握しょうあく後ごは共産党きょうさんとうの結社けっしゃを禁きんじ、幹部かんぶをことごとく処刑しょけい、あるいは強制きょうせい収容しゅうよう所しょ送おくりにし、一部いちぶは海外かいがいに亡命ぼうめいした。ナチス左派さは幹部かんぶも長ながいナイフの夜よる事件じけんで粛清しゅくせいされ、その影響えいきょう力りょくをほぼ失うしなった。

その一方いっぽう、ナチ政権せいけんが長ながいナイフの夜よるをさしたる国民こくみんの反発はんぱつなく「成功せいこう」させたことにスターリンは意いを強つよくし、自みずからも大だい粛清しゅくせい（大だいテロ）に踏ふみ切きる大おおきな原動力げんどうりょくとなった。大だい粛清しゅくせいで殺ころされた人数にんずうは、70万まんとも700万まんともいわれている。

こうした関係かんけいからファシズムと共産きょうさん主義しゅぎ（この場合ばあいはマルクス・レーニン主義しゅぎ）はお互たがいの政治せいじ的てき過程かていで対立たいりつしつつも、根本こんぽん的てきな政治せいじ思想しそうという点てんでは一致いっちしていると指摘してきする論者ろんしゃも多おおい。この指摘してきを裏付うらづけるための研究けんきゅうはハンナ・アーレントの全体ぜんたい主義しゅぎの系譜けいふについての理論りろんが著名ちょめいであり、近年きんねんではアンドレ・グリュックスマンが研究けんきゅうの第一人者だいいちにんしゃとして知しられている。ソ連それんなどの崩壊ほうかいで大量たいりょうの資料しりょうが公開こうかいされたことで、よりインテリジェンスな裏付うらづけも可能かのうになり、近年きんねんでは思想しそう史し的てきな研究けんきゅうだけでなく実証じっしょう的てきな研究けんきゅうも盛さかんになっている。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なか、ヴィシー政権せいけん時代じだいのフランスの民兵みんぺい団だんの反共はんきょうポスター。

しかし、反共はんきょう主義しゅぎ陣営じんえいでは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん勃発ぼっぱつまでファシズム・ナチズムの評価ひょうかは分わかれていた。ウィンストン・チャーチルなどは共産きょうさん主義しゅぎ同様どうようの脅威きょういであり、暴政ぼうせいを見過みすごすべきではないと主張しゅちょうした。しかし、ネヴィル・チェンバレンなどの、反共はんきょうのために利用りようできるとする見方みかたがある時期じきまでは優勢ゆうせいだった。ファシズム・ナチズムがいかに問題もんだいでも、うかつに打倒だとうしようものならソ連それんにイタリアやドイツへのつけいる隙すきを与あたえ、ひいては欧州おうしゅう全体ぜんたいがその勢力せいりょく圏けんにされかねないという主張しゅちょうだった。チェンバレンらの取とった、対たい独どく宥和ゆうわ政策せいさくはこの路線ろせんに沿そったものだが、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん開戦かいせんと、ドイツのベネルクス3国こくやフランスへの侵攻しんこうで破綻はたんした。

こういった主張しゅちょうや研究けんきゅうは、ファシズムと共産きょうさん主義しゅぎの双方そうほうと対立たいりつする資本しほん主義しゅぎ・民主みんしゅ主義しゅぎ勢力せいりょくからも受容じゅようされ、2006年ねん8月がつ31日にちと9月がつ5日にちのジョージ・W・ブッシュ大統領だいとうりょうの演説えんぜつ、三さん色しょく同盟どうめいといった反共はんきょう保守ほしゅ層そうからの発言はつげんにもそれが表あらわれている。

冷戦れいせん時代じだい

「民主みんしゅ化か」も参照さんしょう

"Is this tomorrow"と題だいされた1947年ねんのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの反共はんきょうパンフレットの表紙ひょうし。

1953年ねんのドイツ連邦れんぽう共和きょうわ国こく（西にしドイツ）のドイツキリスト教きりすときょう民主みんしゅ同盟どうめいの反共はんきょう主義しゅぎポスター。「全すべてのマルクス主義まるくすしゅぎの道みちはモスクワに通つうず」と書かかれている。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんにおいて、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくを中心ちゅうしんとする自由じゆう主義しゅぎ国くにと共産きょうさん主義しゅぎ国くにであるソ連それんが手てを結むすんだ連合れんごう国こくが枢軸すうじく国こくに勝利しょうりすると、戦後せんご処理しょりの仕方しかたを発端ほったんに1947年ねんから米べい英えいとソ連それんの対立たいりつが始はじまった。日本にっぽんでは、連合れんごう国軍こくぐん最高さいこう司令しれい官かん総そう司令しれい部ぶ(GHQ)が参謀さんぼう第だい2部ぶ(G2)を創設そうせつし、反共はんきょう主義しゅぎ者しゃのチャールズ・ウィロビーの下したに反共はんきょう工作こうさくを行おこなった。その過程かていで、容共ようきょう的てきな民政みんせい局きょく(GS)と対立たいりつすることになった。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごは、ソ連それんの占領せんりょう下かにおいて東ひがしヨーロッパ各国かっこくが共産きょうさん化かし、ユーゴスラビアが国内こくないの枢軸すうじく国軍こくぐんを放逐ほうちくして共産きょうさん主義しゅぎ国こくとなり、中国共産党ちゅうごくきょうさんとうが第だい二に次じ国共こっきょう内戦ないせんに勝利しょうりして1949年ねん10月1日にちに中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくが成立せいりつするなど、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん前まえはソ連それんとモンゴルだけだった共産きょうさん主義しゅぎ国こくが大幅おおはばに拡大かくだいした。自由じゆう主義しゅぎ国こくは、自国じこくに共産きょうさん主義しゅぎが波及はきゅうするのを恐おそれて、反共はんきょう主義しゅぎをスローガンにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくからの支援しえんを受うけ、国内こくないの共産きょうさん主義しゅぎ勢力せいりょくと対決たいけつした。ロシア革命かくめいでも白しろ軍ぐんを支援しえんしたウィンストン・チャーチルは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの終結しゅうけつ後ごに「鉄てつのカーテン」演説えんぜつを行おこない、ソ連それんをはじめとする共産きょうさん圏けんの閉鎖へいさ性せいを批判ひはんした。台湾たいわんに逃にげた中華民国ちゅうかみんこく国民党こくみんとうは、その地ちで反共はんきょう抗こう俄にわか政策せいさくを行おこなった。

冷戦れいせん時代じだいの反共はんきょう主義しゅぎは、スターリニズムなどに代表だいひょうされるソ連それんの独裁どくさい政治せいじを生うみ出だした共産きょうさん主義しゅぎは民主みんしゅ主義しゅぎに対たいする脅威きょういであると強調きょうちょうし、反共はんきょうは政治せいじ的てき・軍事ぐんじ的てきな面めんが色濃いろこかった。赤狩あかがりはその典型てんけいで、その後ごも反共はんきょう主義しゅぎ勢力せいりょくは労働ろうどう運動うんどうや社会しゃかい主義しゅぎ運動うんどうを取とり締しまった。日本にっぽんでも、1949年ねんに起おこった国鉄こくてつの大量たいりょう解雇かいこの背景はいけいには、共産きょうさん主義しゅぎ者しゃが革命かくめいのために労働ろうどう運動うんどうを暴力ぼうりょく的てきなものへ扇動せんどうしていることに対たいする反共はんきょう主義しゅぎ者しゃの警戒けいかいがあった（→二に・一いちゼネスト、政令せいれい201号ごう）。「マッカーシズム」とも呼よばれる反共はんきょう政策せいさくは、本来ほんらい、共産きょうさん主義しゅぎとは無縁むえんであったとも思おもわれる人々ひとびとも「共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ」のレッテルが当人とうにんを失脚しっきゃくさせたい政敵せいてきによって貼はられ、社会しゃかいから追放ついほうされるという行いき過すぎた面めんがあったため、やがて影かげを潜ひそめた。

反共はんきょう主義しゅぎという側面そくめんでアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの外交がいこう政策せいさくをみると、反共はんきょうであれば、軍事ぐんじ政権せいけんや独裁どくさいであっても、冷戦れいせん下かの国際こくさい関係かんけいにおけるソ連それんとの対抗たいこう上じょう、“民主みんしゅ化か”を口実こうじつに経済けいざい面めんや軍事ぐんじ面めんなど多岐たきにわたって支援しえんし、また民主みんしゅ主義しゅぎ的てきなプロセスを経へて成立せいりつした政権せいけんであっても、親おやソ的てきであると見做みなせば反はん政府せいふ勢力せいりょくを支援しえんして転覆てんぷくさせた。チリのアウグスト・ピノチェト、南みなみベトナムのゴ・ディン・ジエム、大韓民国だいかんみんこくの朴ぼく正煕せいきや全ちょん斗煥どふぁん、フィリピンのフェルディナンド・マルコス、台湾たいわんの蔣介石せき、スペインのフランシスコ・フランコ、インドネシアのスハルト、イランの国王こくおうモハンマド・レザー・パフラヴィー（パーレビ）、ニカラグアのソモサ家かなど枚挙まいきょにいとまない。

「アメリカ帝国ていこく#現在げんざい」も参照さんしょう

敗戦はいせん後ごの連合れんごう国軍こくぐん占領せんりょう下かの日本にっぽんでも、GHQにより「逆ぎゃくコース」が始はじまり、共産きょうさん主義しゅぎ者しゃの追放ついほうが行おこなわれた（レッドパージ）。日本にっぽん国こくとの平和へいわ条約じょうやくが発効はっこうし主権しゅけん回復かいふくした1952年ねんには破壊はかい活動かつどう防止ぼうし法ほう（破防法はぼうほう）が成立せいりつし、公安調査庁こうあんちょうさちょうが設置せっちされ、日本にっぽん共産党きょうさんとうとその同調どうちょう者しゃ・関連かんれん団体だんたいの監視かんしを公安こうあん警察けいさつと共同きょうどうして行おこなうようになった。この活動かつどうは共産党きょうさんとうが“革命かくめい路線ろせん”を放棄ほうきした後のちも続つづけられ、警察けいさつ白書はくしょには常つねにその動向どうこうが記載きさいされている。1955年ねんには逆ぎゃくコースへの対抗たいこうのため、右派うはと左派さはに分裂ぶんれつしていた社会党しゃかいとうの再さい統一とういつがなされ、これに危機きき感かんを強つよめた自由党じゆうとうと日本にっぽん民主党みんしゅとうの「保守ほしゅ合同ごうどう」で自由民主党じゆうみんしゅとうが結党けっとうされ、保守ほしゅ・革新かくしんの二に大だいブロックによる「55年ねん体制たいせい」が確立かくりつした。また、1960年ねんには日本にっぽん社会党しゃかいとうから西尾にしお末広すえひろら右派うはが民主みんしゅ社会党しゃかいとう（のちの民社党みんしゃとう）を結成けっせいして分離ぶんりし、共産きょうさん主義しゅぎを嫌きらう労働ろうどう者しゃの間あいだで全日本ぜんにほん労働ろうどう総そう同盟どうめいが結成けっせいされ、ピノチェト政権せいけんや朴ぼく正煕せいき政権せいけんといった反共はんきょう主義しゅぎを唱となえる軍事ぐんじ独裁どくさい政権せいけんを積極せっきょく的てきに支持しじした。

1970年代ねんだい、西欧せいおう諸国しょこくの共産党きょうさんとうの多おおくはソ連それんから決別けつべつし、プロレタリア独裁どくさいと計画けいかく経済けいざいに基もとづくソ連それん型がた社会しゃかい主義しゅぎ路線ろせんを放棄ほうきした。そして、議会ぎかい制せい民主みんしゅ主義しゅぎと複数ふくすう政党せいとう制せいを擁護ようごするユーロコミュニズムの路線ろせんを確立かくりつする。1970年ねんの11回かい党とう大会たいかい以後いごの日本にっぽん共産党きょうさんとうも、基本きほん的てきにはこの路線ろせんに近ちかい立場たちばを取とった。

冷戦れいせん末期まっきからソ連それん崩壊ほうかいまで

1980年代ねんだいに入はいると、西側にしがわ先進せんしん国こくではアメリカのロナルド・レーガン政権せいけんによるレーガノミクス、イギリスのマーガレット・サッチャー政権せいけんによるサッチャリズムなどの新しん保守ほしゅ主義しゅぎ（ニューライト）が台頭たいとうした。新しん保守ほしゅ主義しゅぎは、起源きげんがリベラル・左翼さよくから転向てんこうした者ものが多おおいように象徴しょうちょうされるように旧来きゅうらいの保守ほしゅ主義しゅぎよりも強固きょうこな反共はんきょう主義しゅぎによって特色とくしょく付つけられており、また新しん自由じゆう主義しゅぎに基もとづいて「小ちいさな政府せいふ」を志向しこうする傾向けいこうが強つよまっている。なお、この時期じきニュージーランドのデビッド・ロンギは社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ政党せいとうに属ぞくしていたにもかかわらず、レーガンやサッチャー以上いじょうにラディカルな新しん自由じゆう主義しゅぎ政策せいさくを推進すいしんしている。この時期じきの日本にっぽんでは国対こくたい政治せいじを通つうじて与党よとうである自民党じみんとうと野党やとうの民社党みんしゃとう・公明党こうめいとうの距離きょりが接近せっきんし、共産党きょうさんとうを排除はいじょするオール与党よとう体制たいせいが定着ていちゃくした。

1989年ねん以降いこう、ペレストロイカでソビエト連邦れんぽうの締しめつけが緩ゆるんだ東ひがしヨーロッパでは、各国かっこくの共産きょうさん主義しゅぎ政権せいけんが政治せいじ・経済けいざいの民主みんしゅ化かを求もとめる一連いちれんの反はん共産きょうさん主義しゅぎ革命かくめい（東欧とうおう革命かくめい）により打倒だとうされ、1991年ねんには「労働ろうどう者しゃの祖国そこく」とされたソビエト連邦れんぽうが崩壊ほうかいし（ソビエト連邦れんぽうの崩壊ほうかい）、旧きゅう東側ひがしがわの中ちゅう欧おう諸国しょこくの共産きょうさん主義しゅぎ勢力せいりょくも大半たいはんが衰退すいたいするか、社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ政党せいとうに転換てんかんした。西側にしがわ諸国しょこくではイタリア共産党きょうさんとうが左翼さよく民主党みんしゅとうに鞍替くらがえしたり、日本にっぽんでも日本にっぽん社会党しゃかいとうが社会しゃかい民主党みんしゅとうに弱体じゃくたい化かするなど勢力せいりょくの後退こうたいを余儀無よぎなくされた。

色々いろいろな集団しゅうだんや運動うんどうによる反共はんきょう主義しゅぎ

共産きょうさん主義しゅぎ思想しそうへの理論りろん的てき・学術がくじゅつ的てき批判ひはんについては「マルクス主義まるくすしゅぎ批判ひはん」を参照さんしょう

政権せいけんを獲得かくとくしたボリシェヴィキズムの共産きょうさん主義しゅぎが一いち党とう独裁どくさいによる寡頭政治かとうせいじを志向しこうしたのに対たいして、「反共はんきょう主義しゅぎ」は多おおくの立場たちばから主張しゅちょうされているが、それぞれの立場たちばや批判ひはん対象たいしょうは異ことなる。

• 多おおくの保守ほしゅ主義しゅぎ者しゃは急進きゅうしん的てきな革命かくめいに反対はんたいする。
• 資本しほん主義しゅぎ者ものは私有しゆう財産ざいさんや市場いちば経済けいざいの規制きせいや廃止はいしに反対はんたいする。
• ファシズムは階級かいきゅう闘争とうそうや国際こくさい主義しゅぎに反対はんたいする。
• 個人こじん主義しゅぎ者ものは全体ぜんたい主義しゅぎに反対はんたいする。
• 社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ者ものを含ふくめた民主みんしゅ主義しゅぎ者ものはプロレタリア独裁どくさいや人権じんけん抑圧よくあつに反対はんたいする。
• アナキストは権威けんい主義しゅぎや中央ちゅうおう集権しゅうけんに反対はんたいしている。

アナキズム

多おおくのアナキストは権威けんい主義しゅぎ的てきな共産きょうさん主義しゅぎ(Communism)を批判ひはんし、彼かれら自身じしんを（無政府むせいふ)共産きょうさん主義しゅぎ者しゃと記述きじゅつする際さいには「communists」と小文字こもんじで書かいている。彼かれらはプロレタリア独裁どくさいや生産せいさん手段しゅだんの国有こくゆう化かなどのマルクス主義まるくすしゅぎの概念がいねんを、アナキズムには受うけ入いれられないと主張しゅちょうしている。いくつかのアナキストは共産きょうさん主義しゅぎを、個人こじん主義しゅぎまたは無む政府せいふ資本しほん主義しゅぎの観点かんてんから批判ひはんしている。

アナキストのミハイル・バクーニンは第だい一いちインターナショナルでカール・マルクスと論争ろんそうし、マルクス主義まるくすしゅぎ者しゃの国家こっかはもう1つの抑圧よくあつの体制たいせいであると批判ひはんした。彼かれは、大衆たいしゅうを上位じょういから統治とうちする前衛ぜんえい党とうの概念がいねんを嫌きらった。アナキストは当初とうしょは二に月がつ革命かくめいを、労働ろうどう者しゃが彼かれら自身じしんの権力けんりょくを獲得かくとくした例れいであるとして参加さんかして喜よろこんだ。しかし十じゅう月がつ革命かくめいの後のち、ボリシェヴィキとアナキストが非常ひじょうに異ことなった理念りねんを持もっていた事ことが明白めいはくとなった。アナキストのエマ・ゴールドマンは、1919年ねんにアメリカからロシアへ追放ついほうされ、当初とうしょは革命かくめいに熱中ねっちゅうしたが、ひどく失望しつぼうして著作ちょさく「ロシアでの私わたしの失望しつぼう」(en:My Disillusionment in Russia)を書かき始はじめた。アナキストのピョートル・クロポトキンは1920年ねんのウラジーミル・レーニンへの手紙てがみの中なかで「（一いち党とう独裁どくさい）は、新あたらしい社会しゃかい主義しゅぎ体制たいせいを構築こうちくするためには断だんじて有害ゆうがいである。必要ひつようなのは地方ちほう権力けんりょくによる地方ちほう建設けんせつである ... ロシアは名前なまえだけがソビエト共和きょうわ国こくに変かわった」と書かき、新興しんこうのボリシェヴィキ官僚かんりょうへの痛烈つうれつな批判ひはんを提示ていじした。

資本しほん主義しゅぎ

共産きょうさん主義しゅぎ者しゃは資本しほん蓄積ちくせきされた富とみの再さい分配ぶんぱいの原則げんそくを主張しゅちょうするが、反共はんきょう主義しゅぎ者しゃはその資本しほん蓄積ちくせきは自主じしゅ的てきな自由じゆう市場いちばの原則げんそくが生うみ出だし保持ほじしているものと主張しゅちょうして反対はんたいしている。更さらに多おおくの資本しほん主義しゅぎの理論りろん家かは、自由じゆう競争きょうそうによってのみ最適さいてき化かされると信しんじている価格かかく決定けっていのメカニズムに共産きょうさん主義しゅぎが干渉かんしょうする事ことに反対はんたいしている。

ファシスト

「ファシズム」および「ナチズム」も参照さんしょう

ファシストはナショナリズムの立場たちばから、国家こっかや民族みんぞくを階級かいきゅう闘争とうそうによって分断ぶんだんするとの理由りゆうで資本しほん主義しゅぎと共産きょうさん主義しゅぎの両方りょうほうを批判ひはんし、第だい三さんの位置いちとして階級かいきゅう協調きょうちょうを主張しゅちょうした(社会しゃかい排外はいがい主義しゅぎ)。

多おおくの歴史れきし学者がくしゃはファシズムをヨーロッパにおける共産きょうさん主義しゅぎや社会しゃかい主義しゅぎの台頭たいとうへの反動はんどうとみている。ベニート・ムッソリーニによって創立そうりつされ指導しどうされたイタリアのファシズムは、多おおくの保守ほしゅ主義しゅぎ者しゃに共産きょうさん主義しゅぎ者しゃの革命かくめいが避さけられないとの恐おそれを与あたえた左翼さよくによる騒動そうどうの数すう年ねんを懸念けねんする国王こくおうヴィット―リオ・エマヌエーレ3世せいの願ねがいによって、政権せいけんを得えた。ヨーロッパ中なかで、資本しほん主義しゅぎ者しゃや個人こじん主義しゅぎ者しゃだけではなく、多おおくの貴族きぞくや保守ほしゅ主義しゅぎ者しゃや知識ちしき人じんが、ファシストの運動うんどうに援助えんじょを与あたえた。ドイツでは多数たすうの極右きょくうのナショナリスト集団しゅうだんが発生はっせいし、特とくに第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん後ごのドイツ義勇軍ぎゆうぐんはスパルタクス団だん蜂起ほうきとミュンヘン・ソビエト（バイエルン・レーテ共和きょうわ国こく）の粉砕ふんさいに使つかわれた。

当初とうしょソビエト連邦れんぽうは、各国かっこくのファシズムに対抗たいこうする各国かっこくの人民戦線じんみんせんせんと同様どうように、西側にしがわ列強れっきょうとの同盟どうめいの考かんがえを支持しじしていた。この政策せいさくは、特とくにイギリスなどの西側にしがわ列強れっきょうがソ連それんに見みせた不信ふしんのために広ひろく失敗しっぱいした。ソ連それんは方針ほうしんを変更へんこうし、1939年ねんにドイツとの間あいだの相互そうご不可侵ふかしん条約じょうやくである独どくソ不可侵ふかしん条約じょうやくを締結ていけつした。スターリンはドイツによる攻撃こうげきを予測よそくせず、1941年ねんのバルバロッサ作戦さくせんによるドイツによる侵攻しんこうに驚おどろいた。ファシズムと共産きょうさん主義しゅぎは、協力きょうりょく関係かんけいから敵対てきたい関係かんけいに転てんじた。

社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ

社会しゃかい主義しゅぎインターナショナルは、1951年ねんのフランクフルト宣言せんげんで「共産きょうさん主義しゅぎの非情ひじょうな専制せんせいと、資本しほん主義しゅぎの浪費ろうひと不正ふせいを同様どうように拒否きょひする」とし、1962年ねんのオスロ宣言せんげんでは共産きょうさん主義しゅぎへの反対はんたいを明確めいかくにした

欧州おうしゅう連合れんごうと欧州おうしゅう評議ひょうぎ会かい

欧州おうしゅう評議ひょうぎ会かい議員ぎいん会議かいぎ(en:Parliamentary Assembly of the Council of Europe)は2006年ねん1月がつ25日にちの1481号ごう決議けつぎにおいて、「20世紀せいきに席巻せっけんし、現在げんざいでも依然いぜんとしていくつかの国くにで権力けんりょくを握にぎっている全体ぜんたい主義しゅぎ的てきな共産きょうさん主義しゅぎ政権せいけん（The totalitarian communist regimes）は、例外れいがいなく、大だい規模きぼな人権じんけん侵害しんがいを行おこなってきた。そこには、強制きょうせい収容しゅうよう所しょ、人為じんい的てきな飢饉ききん、拷問ごうもん、奴隷どれい労働ろうどうおよびその他たの組織そしき的てき暴力ぼうりょくなどによる個人こじんおよび集団しゅうだんの殺害さつがい、また、民族みんぞく的てきまたは宗教しゅうきょう的てき迫害はくがい、良心りょうしんや思想しそうを表明ひょうめいする言論げんろんの自由じゆうと表現ひょうげんの自由じゆうへの侵害しんがい、報道ほうどうの自由じゆうの侵害しんがい、政治せいじ的てき多元たげん主義しゅぎの欠如けつじょなどが含ふくまれる。」「全体ぜんたい主義しゅぎ的てき共産きょうさん主義しゅぎ体制たいせいにおける犯罪はんざいは、階級かいきゅう闘争とうそう論ろんとプロレタリア独裁どくさいの原則げんそくの名なの下したに正当せいとう化かされてきた。共産きょうさん主義しゅぎの敵てきとして排除はいじょされた膨大ぼうだいな数かずの犠牲ぎせい者しゃは自じ国民こくみんであった。」「これらの犯罪はんざいは、ナチズムの犯罪はんざいのように、国際こくさい社会しゃかいによっていまだ裁さばかれていない。その結果けっか、共産きょうさん主義しゅぎ政権せいけんの犯罪はんざいに対たいする諸しょ国民こくみんの認識にんしきは非常ひじょうに乏とぼしく、一部いちぶの国くにでは、共産党きょうさんとうは合法ごうほう政党せいとうであり、活動かつどう的てきな場合ばあいもある。」 「欧州おうしゅう評議ひょうぎ会かいは、共産きょうさん主義しゅぎ体制たいせいの犯罪はんざいを強つよく非難ひなんするとともに、共産きょうさん主義しゅぎ体制たいせいの犠牲ぎせい者しゃの苦くるしみに同情どうじょうし、理解りかいすることは倫理りんり的てきな責務せきむであると考かんがえる。」と決議けつぎした。

2009年ねん3月がつに欧州おうしゅう議会ぎかいは、8月がつ23日にちを「20世紀せいきのナチスと共産きょうさん主義しゅぎ者しゃの犯罪はんざいを記憶きおくする全ぜんヨーロッパの日ひ」に提案ていあんした。

元もと共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ

多おおくの元もと共産きょうさん主義しゅぎ者しゃが反はん共産きょうさん主義しゅぎ者しゃに転向てんこうした。ベニート・ムッソリーニは共産きょうさん主義しゅぎ者しゃからファシストに、ミハイル・ゴルバチョフは共産きょうさん主義しゅぎ者しゃから社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ者しゃに、ポーランドのレシェク・コワコフスキ、日本にっぽんの渡邉わたなべ恒雄つねおは共産きょうさん主義しゅぎ者しゃから有名ゆうめいな反はん共産きょうさん主義しゅぎ者しゃに、それぞれ転てんじている。

「転向てんこう」も参照さんしょう

宗教しゅうきょうと反共はんきょう主義しゅぎ

仏教ぶっきょう

ベトナムの著名ちょめいな仏教ぶっきょう僧そうのティック・フエン・クアン(en)は反はん共産きょうさん主義しゅぎ者しゃで、1977年ねんに彼かれは首相しゅしょうのファム・ヴァン・ドンに、共産きょうさん主義しゅぎ政権せいけんによる圧制あっせいの詳細しょうさいな数かずを書かいた手紙てがみを送おくった。このため彼かれと他たの5名めいの高僧こうそうが逮捕たいほされ留置りゅうちされた。

キリスト教きりすときょう

カトリック教会きょうかいは反共はんきょう主義しゅぎの歴史れきしを持もっている。

カトリック教会きょうかいは、共産きょうさん主義しゅぎまたは社会しゃかい主義しゅぎなどの現代げんだいに関連かんれんする全体ぜんたい主義しゅぎや無む神かみ論ろんのイデオロギーに反対はんたいする。（中略ちゅうりゃく）専せんら中央ちゅうおう集権しゅうけん化かされた計画けいかくによる経済けいざいの規制きせいは社会しゃかいの枷かせをゆがめ（中略ちゅうりゃく）市場いちばや経済けいざい的てきな自発じはつ性せいの合理ごうり的てきな規制きせい、価値かちの適切てきせつな階層かいそうの維持いじ、公益こうえきの視点してんなどが求もとめられる。 —  カトリック教会きょうかいのカテキズム第だい2版はん

ポーランドの「連帯れんたい」を支持しじしていた教皇きょうこう・ヨハネ・パウロ2世せいは共産きょうさん主義しゅぎを激はげしく批判ひはんし、アメリカ中央ちゅうおう情報じょうほう局きょくが「連帯れんたい」への資金しきん調達ちょうたつを行おこなう際さいの抜ぬけ道みちとして、ヨハネ・パウロ2世せいの黙認もくにんのもとで、ローマ教皇きょうこう庁ちょうの資金しきん管理かんり、運営うんえい組織そしきであり急逝きゅうせいしたヨハネ・パウロ1世せいが汚職おしょくの一掃いっそうを目指めざしていた宗教しゅうきょう事業じぎょう協会きょうかいが利用りようされたという報道ほうどうがなされたこともある。

宗教しゅうきょう事業じぎょう協会きょうかいの総裁そうさいポール・マルチンクス大司教だいしきょうはマフィアや極右きょくう秘密ひみつ結社けっしゃであったロッジP2などの反共はんきょう組織そしきと深ふかく関かかわりがあった。

ピウス9世せいは「Quanta Cura」 (en) と題だいした教皇きょうこうの回かい勅みことのりの中なかで「共産きょうさん主義しゅぎと社会しゃかい主義しゅぎ」を最もっとも破滅はめつ的てきな失敗しっぱいと呼よんだ.。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんの前哨ぜんしょう戦せんとなったスペイン内戦ないせんの間あいだ、左寄ひだりよりの共和きょうわ国軍こくぐんが共産きょうさん主義しゅぎと結むすんでスペインのカトリックを虐殺ぎゃくさつしたという理由りゆうでカトリック教会きょうかいは共和きょうわ国軍こくぐんに反対はんたいし、多おおくの教会きょうかいがアドルフ・ヒトラー率ひきいるナチス・ドイツやムッソリーニなどファシスト勢力せいりょくが支援しえんしたフランシスコ・フランコとナショナリストの勝利しょうりに貢献こうけんした。ポルトガルのファティマでの聖母せいぼの出現しゅつげんの目撃もくげき者しゃのルシア・ドス・サントスは、そのメッセージと同様どうように彼女かのじょの反はん共産きょうさん主義しゅぎの信念しんねんで知しられている。

アイルランドのキリスト教きりすときょう（特とくにカトリック教会きょうかい）とナショナリズムは、反共はんきょうとの一定いっていの協調きょうちょうを示しめしている。

アメリカの反共はんきょうは宗教しゅうきょう的てき歴史れきしを持もっている。アメリカの愛国あいこく主義しゅぎ的てき政治せいじにおいて有力ゆうりょくなキリスト教徒きりすときょうとビリー・グラハムは、「共産きょうさん主義しゅぎはサタン〔the Devil〕そのものによって鼓舞こぶされ、指示しじされ、動機どうきづけられている宗教しゅうきょうである」などと論ろんじていた。

イスラム教いすらむきょう

ソ連それんによる中央ちゅうおうアジアのムスリム汗あせ国こくの隷属れいぞく化か後ご、1978年ねんのアフガニスタン紛争ふんそうまでは、ソビエト流りゅうの共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ達たちはムスリム住民じゅうみんと大だい規模きぼな交流こうりゅうは無なく、伝統でんとう的てきなムスリムの宗教しゅうきょう指導しどう者しゃはムスリム社会しゃかいにおける共産きょうさん主義しゅぎ者しゃの影響えいきょうを敵視てきししたが説教せっきょうを超こえた行動こうどうはまれだった。1978年ねんのカーブルでのアフガニスタン民主みんしゅ共和きょうわ国こくの成立せいりつ宣言せんげん後ご、内戦ないせんは次第しだいにソ連それんによるアフガニスタンへの侵攻しんこうへ進すすんだ。この事件じけんは、アフガニスタンの反はん共産きょうさん主義しゅぎ者しゃ闘争とうそうをルーツとしたイスラム主義しゅぎのイデオロギーに高たかまり、西南せいなんアジアの地域ちいきに広ひろく影響えいきょうした。また中国ちゅうごくにも歴史れきし的てきに多数たすうのイスラム教徒きょうとが存在そんざいしており、信教しんきょうの自由じゆうをめぐって中国ちゅうごく政府せいふとの対立たいりつが続つづいている。

「en:Islam in China」も参照さんしょう

新しん宗教しゅうきょう

反共はんきょうを掲かかげる新しん宗教しゅうきょうも多々たた存在そんざいする。

韓国かんこく系けいの国際こくさい勝かち共ども連合れんごうを創設そうせつした世界せかい平和へいわ統一とういつ家庭かてい連合れんごう（旧きゅう：世界せかい基督教きりすときょう統一とういつ神霊しんれい協会きょうかい、統一教会とういつきょうかい）、教祖きょうそが国際こくさい勝かち共ども連合れんごうの講師こうしを務つとめていた摂理せつりがある。統一教会とういつきょうかいが韓国かんこくから日米にちべいへと拡大かくだいしていく際さいの主おもな目的もくてきの一ひとつは反共はんきょうだったとされる。

日本にっぽんの政治せいじにおいて、自民党じみんとうとともに連立れんりつ政権せいけんを構成こうせいしている与党よとう第だい二に党とう・公明党こうめいとうの支持しじ母体ぼたいである創価学会そうかがっかい、宗教しゅうきょう政党せいとう・幸福こうふく実現じつげん党とうを抱かかえる幸福こうふくの科学かがく、白装束しろしょうぞくで話題わだいになったパナウェーブ研究所けんきゅうじょなどニュースなどで取とり上あげられる著名ちょめいな団体だんたいもある。

関連かんれん作品さくひん

文学ぶんがく

アレクサンドル・ソルジェニーツィン

アレクサンドル・ソルジェニーツィンはソ連それんおよびロシアのノーベル文学ぶんがく賞しょう受賞じゅしょう者しゃ、劇げき作家さっか、歴史れきし学者がくしゃ。彼かれは著作ちょさく「収容しゅうよう所しょ群島ぐんとう」や「イワン・デニーソヴィチの一いち日にち」などでソ連それんの強制きょうせい収容しゅうよう所しょであるグラグを世界せかいに知しらせ、これらの努力どりょくにより1970年ねんにノーベル文学ぶんがく賞しょうを受賞じゅしょうしたが、1974年ねんにソ連それんを追放ついほうされた。

アーサー・ケストラーは「真昼まひるの暗黒あんこく」で、ジョージ・オーウェルは「動物どうぶつ農場のうじょう」や「1984年ねん」でスターリニズム支配しはい下かの共産きょうさん主義しゅぎをモデルにした恐怖きょうふ政治せいじや全体ぜんたい主義しゅぎを描えがいた。

アイン・ランドは「We the Living」(en)でドイツの共産きょうさん主義しゅぎの影響えいきょうを書かいた。

ヘルタ・ミュラー

ルーマニア生うまれのドイツの詩人しじん・エッセイストでノーベル文学ぶんがく賞しょうを受賞じゅしょうしたヘルタ・ミュラーは、チャウシェスク政権せいけんによる抑圧よくあつ下かの共産きょうさん主義しゅぎ国家こっかルーマニアでの荒廃こうはいした生活せいかつ状じょう況きょうを描えがいた。それはソ連それんがルーマニアに押おし付つけた共産きょうさん主義しゅぎ政府せいふによって迫害はくがいされる、バナトのドイツ人じんの歴史れきしであった。ミュラーは1990年代ねんだい初頭しょとうまでには国際こくさい的てきに知しられる作家さっかとなり彼女かのじょの作品さくひんは20言語げんご以上いじょうに翻訳ほんやくされた。

• Torben Gülstorff: Warming Up a Cooling War: An Introductory Guide on the CIAS and Other Globally Operating Anti-communist Networks at the Beginning of the Cold War Decade of Détente (Cold War International History Project Working Paper Series #75), Washington 2015.

反共はんきょう映画えいが

• アメリカ
  • The Whip Hand
  • I Was a Communist for the FBI
  • Walk East on Beacon
  • Big Jim McLain

反共はんきょうソング

• Onward Blackshirts - イギリスファシスト連合れんごうの反共はんきょうソング。曲きょくはen:Giovinezzaを借用しゃくよう。
• Hitlerleute - ナチスドイツの反共はんきょうソング。曲きょくはGiovinezzaを借用しゃくよう。
• ロシアファシスト党とう党とう歌か - ロシアファシスト党とうの党とう歌か。大だい聖堂せいどう行進曲こうしんきょくの曲きょくを借用しゃくよう。
• 慶祝けいしゅく大会たいかい紀き念ねん歌か (1936年ねん) - 冀東防共ぼうきょう自治じち政府せいふの反共はんきょうソング。
• 佐伯さえき孝夫たかお「日にち独どく伊い防共ぼうきょうの歌うた」(1937年ねん) - 日にち独どく伊い防共ぼうきょう協定きょうていを基もとに作つくられた反共はんきょうソング。
• 東海林しょうじ太郎たろう「日にち独どく伊い防共ぼうきょうトリオ」(1938年ねん)- 日にち独どく伊い防共ぼうきょう協定きょうていを基もとに作つくられた反共はんきょうソング。間奏かんそうに君きみが代よ、旗はたを高たかく掲かかげよ(国家こっか社会しゃかい主義しゅぎドイツ労働ろうどう者しゃ党とう党とう歌か)、ジョヴィネッツァ(ファシスト党とう党とう歌か)が含ふくまれている。
• 鳥越とりこし強つよし「大陸たいりく行進曲こうしんきょく」(1938年ねん) - 「友ともよいっしょに防共ぼうきょうの堅かたい砦とりでを築きずくのだ」という歌詞かしが含ふくまれる。
• 反共はんきょう進行しんこう曲きょく (1950年ねん) - 中華民国ちゅうかみんこくの反共はんきょうソング。zh:中華ちゅうか文藝ぶんげい獎金委員いいん會かいによる。
• 反共はんきょう抗こう俄にわか歌か (1950年ねん) - 中華民国ちゅうかみんこくの反共はんきょうソング。中華ちゅうか文藝ぶんげい獎金委員いいん會かいによる。
• 我わが愛あい中華ちゅうか - 中華民国ちゅうかみんこくの反共はんきょうソング。「我わが們要消滅しょうめつ共ども匪」という歌詞かしが含ふくまれる。
• 滅めつ共どもの松明たいまつ - 韓国かんこくの反共はんきょうソング。
• Elton Britt「The Red We Want Is The Red We've Got」 (1950年ねん) - アメリカの反共はんきょうソング。Mr. Touchdown, U.S.A.のB面めんに収録しゅうろく。
• Hank Williams「No, No, Joe」 (1950年ねん) - アメリカの反共はんきょうソング。
• Terry Preston「Let's Keep the Communists Out」(1950年ねん) - アメリカの反共はんきょうソング。
• Arthur "Guitar Boogie" Smith「Mr. Stalin, You're Eating Too High On The Hog」 (1950年ねん) - アメリカの反共はんきょうソング。
• Roy Acuff「Advice to Joe」(1951年ねん) - アメリカの反共はんきょうソング。
• Carson Robison「I'm No Communist」 (1952年ねん) - アメリカの反共はんきょうソング。
• The Limeliters「Harry Pollitt」(1961年ねん) - アメリカの反共はんきょうソング。The Slightly Fabulous Limelitersに収録しゅうろく。en:Harry Pollittを基もとにしている。
• Marty Robbins「Ain't I Right」（1966年ねん） - アメリカの反共はんきょうソング。
• John Birch Society Song (1962年ねん) - アメリカのジョン・バーチ・ソサエティの曲きょく。
• 國光くにみつ進行しんこう曲きょく - 中華民国ちゅうかみんこくの反共はんきょうソング。「我わが們反共ども復ふく國こく信心しんじん堅けん強きょう」という歌詞かしが含ふくまれる。

参照さんしょう文献ぶんけん

辞典じてん・事典じてん

• 五十嵐いがらし, 仁ひとし「反共はんきょう主義しゅぎ」『日本にっぽん大だい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)』小学館しょうがくかん・DIGITALIO、2023年ねん3月がつ13日にち。https://kotobank.jp/word/%E5%8F%8D%E5%85%B1%E4%B8%BB%E7%BE%A9-117928#E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.A4.A7.E7.99.BE.E7.A7.91.E5.85.A8.E6.9B.B8.28.E3.83.8B.E3.83.83.E3.83.9D.E3.83.8B.E3.82.AB.29。2023年ねん3月がつ13日にち閲覧えつらん。 

学術がくじゅつ論文ろんぶん

• Balbier, Uta Andrea (2021-05-20). “'Communism Is a Religion That Is Inspired, Directed and Motivated by the Devil Himself': Billy Graham's Apologetics and the Cold War West”. In Todd Weir & Hugh McLeod. Defending the Faith: Global Histories of Apologetics and Politics in the Twentieth Century (Proceedings of the British Academy). London: Oxford University Press & British Academy Scholarship Online. pp. 141-159. doi:10.5871/bacad/9780197266915.003.0008. ISBN 978-0197266915 

• Nurcan, Elif Sercen; Doğrul, Mürsel (2022). “Unification Church and Japan: A Historical Review”. Tarih İncelemeleri Dergisi 37 (2): 551-576. doi:10.18513/egetid.1226559. https://dergipark.org.tr/en/download/article-file/2861977#page=3. 

• Wald, Kenneth D. (1994). “The Religious Dimension of American Anti-Communism”. Journal of Church and State 36 (3): 483-506. doi:10.1093/jcs/36.3.483. 

• Zách, Lili (2018). “Catholicism and Anti-Communism: The Reactions of Irish Intellectuals to Revolutionary Changes in Hungary (1918-1939)”. Diacronie: Studi di Storia Contemporanea 33 (1): 1-23. doi:10.4000/diacronie.7354. https://megalodon.jp/2023-0313-0039-36/https://journals.openedition.org:443/diacronie/pdf/7354. 

関連かんれん項目こうもく

• 主おもな「反共はんきょう主義しゅぎ」
  • ファシズム - ナチズム - 日本にっぽん帝国ていこく主義しゅぎ - マッカーシズム - 赤狩あかがり
• その他たの「反共はんきょう主義しゅぎ」
  • 保守ほしゅ - 反動はんどう主義しゅぎ - 復古ふっこ主義しゅぎ - パターナリズム - 右翼うよく - 極右きょくう - 新しん右翼うよく
  • 経済けいざい的てき自由じゆう主義しゅぎ - ブルジョワ民主みんしゅ主義しゅぎ - 資本しほん主義しゅぎ - 新しん自由じゆう主義しゅぎ - リバタリアニズム
  • 帝国ていこく主義しゅぎ - 第だい三さんの道みち
• 社会しゃかい主義しゅぎ内部ないぶにおける「反共はんきょう主義しゅぎ」（反たんマルクス主義まるくすしゅぎ、反はんマルクス・レーニン主義しゅぎ）
  • 改良かいりょう主義しゅぎ - 社会しゃかい民主みんしゅ主義しゅぎ - 民主みんしゅ社会しゃかい主義しゅぎ - ユーロコミュニズム - 新しん左翼さよく - ナチス左派さは - ビルマ式しき社会しゃかい主義しゅぎ - 宗教しゅうきょう社会しゃかい主義しゅぎ
• 西側にしがわ諸国しょこく
• アナキズム
• 反はんファシズム
• 歴史れきし
  • 第だい一いちインターナショナル - 第だい二にインターナショナル - 十じゅう月がつ革命かくめい - 冷戦れいせん - スターリン批判ひはん - ソビエト連邦れんぽうの崩壊ほうかい