つき

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月輪げつりんから転送てんそう

つき ☾
the Moon
かり符号ふごう別名べつめい 太陰たいいん
lat:Luna
分類ぶんるい 衛星えいせい
発見はっけん
発見はっけんねん 有史ゆうし以前いぜん
発見はっけん方法ほうほう 目視もくし
軌道きどう要素ようそ性質せいしつ
平均へいきん公転こうてん半径はんけい 384,400 km[1][2][3]
きん地点ちてん距離きょり (q) 356,445km から 370,354km[4]
遠地点えんちてん距離きょり (Q) 404,064km から 406,712km[4]
はなれしんりつ (e) 0.0548799[1](0.026 から 0.077[4]
公転こうてん周期しゅうき (P) 27にち7あいだ43.193ふん
平均へいきん軌道きどう速度そくど 1.022 km/s
軌道きどう傾斜けいしゃかく (i) 5.1454
地球ちきゅう衛星えいせい
物理ぶつりてき性質せいしつ
長短ちょうたんみち 3,475.8 km
赤道せきどう
3,471.3 km
きょく
直径ちょっけい 3,474.3 km
平均へいきん
表面積ひょうめんせき 3,800まん km2
質量しつりょう 7.347673
×1022 kg
地球ちきゅうとの相対そうたい質量しつりょう 0.01230002
平均へいきん密度みつど 3.344 g/cm3
表面ひょうめん重力じゅうりょく 1.622 m/s2
(0.165 G)
脱出だっしゅつ速度そくど 2.378 km/s
自転じてん周期しゅうき 27にち7あいだ43.193ふん
恒星こうせいがつ公転こうてん同期どうき
29にち12あいだ44.048ふん
さく望月もちづき
光度こうど -12.66 とう満月まんげつ
アルベド反射はんしゃのう 0.136
赤道あかみち傾斜けいしゃかく 1.5424
表面ひょうめん温度おんど
最低さいてい 平均へいきん 最高さいこう
40 K 250 K 396 K
年齢ねんれい やく46おくねん
大気たいきあつ 10-7 Paひる
10-10 Pa(よる
Template (ノート 解説かいせつ■Project

つき(つき、どく: Mondふつ: Luneえい: Moon: Luna ルーナ)は、地球ちきゅう唯一ゆいいつ安定あんていてき存在そんざいする天然てんねん衛星えいせいである(地球ちきゅうのその衛星えいせいについては、「つき以外いがい地球ちきゅう衛星えいせい」を参照さんしょう)。

太陽系たいようけい惑星わくせい恒久こうきゅうてき存在そんざいする衛星えいせいなかで、もっと内側うちがわ位置いちする衛星えいせいであり、太陽系たいようけいで5番目ばんめおおきい衛星えいせいでもある。地球ちきゅうから太陽たいよういであかるい[5]

ふるくは太陽たいようたいして太陰たいいんとも、また日輪にちりん( = 太陽たいよう)にたいして月輪げつりん(げつりん)ともった。

概要がいよう

太陽系たいようけいなか地球ちきゅうもっとちか自然しぜん天体てんたいであり、人類じんるい到達とうたつしたことのある唯一ゆいいつ地球ちきゅうがい天体てんたいでもある。

地球ちきゅうからえる天体てんたいなかでは太陽たいようつぎあかるく、白色はくしょくひかってえるが、これはみずか発光はっこうしているのではなく、太陽光たいようあきら反射はんしゃしたものである。

名称めいしょう

ドイツでは Mond(モーント)、フランス語ふらんすごでは Lune(リュヌ)、英語えいごでは Moon(ムーン)、ラテン語らてんごでは Luna(ルーナ)、サンスクリットでは चंद्र(チャンドラ)、ギリシャではΣελήνη(セレーネー)とばれる。ふるくは太陽たいようたいして太陰たいいんともいった。日本語にほんごでは「ツキ」というが、奈良なら時代じだい以前いぜんは「ツク」という語形ごけいだったと推定すいていされている。

なお、漢字かんじの「つき」はけたつきかたちえがいた象形しょうけい文字もじである[6][7]

また「つき」は、広義こうぎには「ある惑星わくせいからてそのまわりをまわ衛星えいせい」をす。たとえば、「フォボス火星かせいつきである」などと表現ひょうげんする[ちゅう 1]

運行うんこう

つき天球てんきゅううえはくみちばれるとおみちをほぼ4週間しゅうかん周期しゅうき運行うんこうする。しろどうは19ねん周期しゅうきらいでいるが、黄道こうどうたいとよばれる黄道こうどう周辺しゅうへん8範囲はんいおさまる。つきはほぼ2週間しゅうかんごとに黄道こうどう横切よこぎる。

恒星こうせいつきかくされる現象げんしょう掩蔽えんぺい、あるいはほししょくという。惑星わくせい小惑星しょうわくせいかくされることもある。一等星いっとうせい惑星わくせい掩蔽えんぺいはめったにこらない。天球てんきゅううえでのつき移動いどう速度そくど毎時まいじ0.5つき直径ちょっけい程度ていどであるから、掩蔽えんぺい継続けいぞく時間じかんながくても1あいだ程度ていどである。

こよみとの関係かんけい

こよみつき関係かんけい近代きんだいいたるまで密接みっせつであった。つきの《け》をもとめたこよみ太陰暦たいいんれきい、地球ちきゅうからつきるとつきあかるい部分ぶぶんかたち毎日まいにち変化へんかやく29.5にち周期しゅうきおながたとなっており、この変化へんか周期しゅうきもとこよみめたものである。

歴史れきしてきれば元々もともと太陰暦たいいんれき採用さいようしていた地域ちいきのほうがおおかったのであり、現代げんだいでも太陽暦たいようれき太陰暦たいいんれき併用へいようしている文化ぶんかけんはある。つき基準きじゅんめたこよみというのは、漁師りょうしなど自然しぜん相手あいて仕事しごとをする人々ひとびとにとっては日付ひづけがそのまま有用ゆうよう情報じょうほうをもたらしてくれるものである。

日本にっぽんでも、明治めいじ5ねんまでは太陽たいよう太陰暦たいいんれきしゅとして使用しようしていた。明治めいじ5ねん公的こうてき制度せいどえた段階だんかいでこれを「旧暦きゅうれき」とぶようになったが、そのながらく旧暦きゅうれきカレンダー販売はんばいされ、両方りょうほう併用へいようする人々ひとびとおおかった。いまでも一般いっぱん太陽暦たいようれきのカレンダーに旧暦きゅうれき掲載けいさいしたものはひろ使つかわれる。

日本語にほんごではこよみむことを「つきむ」「ツキヨミ(ツクヨミ)」「月読つきよみ」とった。こよみえば近代きんだいまで太陽たいよう太陰暦たいいんれきであったため、こよみむとはすなわちつきむことであった[ちゅう 2]

物理ぶつりてき特徴とくちょう

性質せいしつ

主要しゅよう太陽系たいようけい衛星えいせい比較ひかく衛星えいせいくらべてもつきおおきく、つきはは惑星わくせい地球ちきゅうたい不釣合ふつりあいいなほどおおきな衛星えいせいであることがかる。

つき直径ちょっけい (3,474km) は、木星もくせい衛星えいせいガニメデ (5,262km)、土星どせい衛星えいせいタイタン (5,150km)、木星もくせい衛星えいせいカリスト (4,800km)、イオ (3,630km) にぎ、太陽系たいようけい衛星えいせいなかで5番目ばんめおおきい[10]。また、惑星わくせいたいする衛星えいせい直径ちょっけい比率ひりつえば、つき地球ちきゅうやく1/4であり、ガニメデが木星もくせいやく1/27、タイタンが土星どせいやく1/23であるのにくらべて桁違けたちがいにおおきい[10]。かつては、衛星えいせいしゅほしおおきさの50%をえる冥王星めいおうせいカロンくみいで2番目ばんめだったが、冥王星めいおうせいじゅん惑星わくせい分類ぶんるい変更へんこうされたので、地球ちきゅうつきくみが1ばんとなった。

つきはその規模きぼ構造こうぞうといった物理ぶつりてき性質せいしつから、ほしそのものは地球ちきゅうがた惑星わくせいだとかんがえられている[11]。ただし軌道きどう観点かんてんではあくまで「衛星えいせい」の範疇はんちゅうであるため、太陽系たいようけいの8惑星わくせい分類ぶんるいする意味いみで「地球ちきゅうがた惑星わくせい」とった場合ばあいつきふくめないのが普通ふつうである。

従来じゅうらい地球ちきゅうたいするつきは、衛星えいせいとしては釣合つりあいにおおきいので、じゅう惑星わくせいとみなす意見いけんもあった。つき直径ちょっけい地球ちきゅうの4ぶんの1きょうであり、質量しつりょうでも81ぶんの1におよぶからである。つき太陽たいようおおきさ(直径ちょっけい)はほぼひとしく、やく0.5である。したがって、惑星わくせい場合ばあいとはことなり、太陽たいよう完全かんぜんつきおおかくされる皆既かいき日食にっしょくや、太陽たいようえんがわずかにかくされずに環状かんじょうのこ金環きんかん日食にっしょくこる。

つき形状けいじょうはほぼ球形きゅうけいだが、厳密げんみつにはわずかにセイヨウナシかたちをしている。月面げつめん最高さいこうてん平均へいきん高度こうどより+10.75km、最低さいていてんは-9.06kmで、とも裏側うらがわにある。質量しつりょうはおよそ地球ちきゅうの0.0123ばい (1/81)。表面積ひょうめんせき(3793まんkm2)は地球ちきゅう表面積ひょうめんせきの7.4%に相当そうとうし、アフリカ大陸たいりくオーストラリア大陸たいりくわせた面積めんせきよりもわずかにちいさい。

つき地球ちきゅう距離きょりおよびそれぞれの直径ちょっけい つき地球ちきゅうあいだ距離きょりは38まん4,400km、これにたい地球ちきゅう直径ちょっけいは1まん2,756km、つき直径ちょっけいは3,474km。
つきばかりどう(ひょうどう)この画像がぞうは27にちぶんつき映像えいぞう時間じかんちぢめて表示ひょうじし、つきかけじょうれ(ばかりどう)の様子ようすしめす。つき楕円だえん軌道きどうめぐ地球ちきゅうとの距離きょりわるので、かけのおおきさも変化へんかする。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくアポロ計画けいかくソ連それんルナ計画けいかく月面げつめん設置せっちされた反射はんしゃきょう地球ちきゅうからレーザー光線こうせん照射しょうしゃし、ひかりもどってくるのにようする時間じかんはかればつきまでの距離きょり正確せいかく測定そくていできる。この測定そくていつきレーザーはか(LLR)とばれ、1969ねんにアメリカのマクドナルド天文台てんもんだいはじめておこなわれた。地球ちきゅう中心ちゅうしんからつき中心ちゅうしんまでの平均へいきん距離きょりは38まん4,403km(やく1.3ひかりびょう)であり、地球ちきゅう赤道あかみち半径はんけいやく60.27ばいである。21世紀せいきはいってからも各国かっこく天文台てんもんだい測定そくていつづけられており、つき平均へいきんして1ねんあたり3.8cmのはやさで地球ちきゅうからとおざかっていることがあきらかになっている[12][13]

つきは、太陽系たいようけい惑星わくせいやほとんどの衛星えいせいおなじく、てん北極ほっきょくからはん時計とけいまわり(地球ちきゅう自転じてん公転こうてんおなじ)の方向ほうこう公転こうてんしている。軌道きどうえんちか楕円だえんかたち自転じてん周期しゅうきは27.32にちで、地球ちきゅうまわりをまわ公転こうてん周期しゅうき完全かんぜん同期どうきしている(自転じてん公転こうてん同期どうき)。つまり地球ちきゅうじょうからつき裏側うらがわ直接ちょくせつ観測かんそくすることは永久えいきゅうにできない。これはそれほどめずらしい現象げんしょうではなく、火星かせいの2衛星えいせい木星もくせいガリレオ衛星えいせいであるイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト、土星どせい最大さいだい衛星えいせいタイタンなどにもられる。ただし、一致いっちしてはいても、つき自転じてんじくかたむいているうえに軌道きどうはなれしんりつが0ではないので、地球ちきゅうからつきばかりどうばれるゆっくりとした振動しんどう運動うんどうおこなっており、月面げつめんの59%が地上ちじょうから観測かんそく可能かのうである。ぎゃくに、月面げつめんからは地球ちきゅう天空てんくうのあるせま範囲はんいばかりどうおうじて東西とうざい南北なんぼくおよそ±7°程度ていど範囲はんい[14])にとどまってえる(いちてん静止せいししてえるわけではない)。とくに、スミスうみひがしうみのように地球ちきゅうからつきえん位置いちする地点ちてんでは、ばかりどうによって地球ちきゅうからえたりかくれたりするのにおうじて、ぎゃく地球ちきゅうつき地平線ちへいせんからのぼったりしずんだりしてえる[ちゅう 3](「地球ちきゅうだし」の画像がぞう月面げつめんからではなく、つき周回しゅうかい軌道きどうまわ宇宙船うちゅうせん観測かんそくからられたものである)。

2014ねん5がつ発表はっぴょうされた研究けんきゅう成果せいかによれば、つき自転じてんじくは40おくねんまえから現在げんざいまでにすうじゅうずれていたことかったと発表はっぴょうされた[15]

月内げつない構造こうぞうはアポロ計画けいかくさい設置せっちされたつきふるえけいあきらかになった。中心ちゅうしんから700 - 800kmの部分ぶぶん液体えきたい性質せいしつびており、液体えきたい固体こたい境界きょうかい付近ふきんなどでマグニチュード1 - 2程度ていどふかはつがつふるえ多発たはつしている。また、あさはつがつふるえばれる地下ちか300km前後ぜんこう震源しんげんとするれは、マグニチュード3 - 4にもなるが、発生はっせい原因げんいん特定とくていはできていない。表面ひょうめんから60kmの部分ぶぶん地球ちきゅう地殻ちかく相当そうとうし、はす長石ちょうせき比率ひりつたかい。つき内部ないぶ地球ちきゅうがた惑星わくせい同様どうよう岩石がんせき金属きんぞくからなり、ふかさによって密度みつどごとに成層せいそうした(分化ぶんかした)天体てんたいである。

つきナトリウムカリウムなどからなる大気たいきつが、地球ちきゅう大気たいきくらべると1017ぶんの1(10きょうぶんの1)ほどの希薄きはくさであり、表面ひょうめん実質じっしつてき真空しんくうであるといえる。したがって、気象きしょう現象げんしょう発生はっせいしない。月面げつめん着陸ちゃくりく以前いぜん望遠鏡ぼうえんきょう観測かんそくからもつきには大気たいきがないと推定すいていされていたが、1980年代ねんだいアメリカ航空こうくう宇宙うちゅうきょく(NASA)によって実際じっさい希薄きはくながらも大気たいき存在そんざいすることが確認かくにんされた。

みず存在そんざい観測かんそくでは確認かくにんされていなかったが、2009ねん11月にNASAによって南極なんきょく相当そうとうりょうみずふくまれることが確認かくにんされた。ただし、みず極地きょくちこおりかたち存在そんざいするだけであって、ねつすいこう溶液ようえき)による元素げんそしゅうきないとされており、ねつすい鉱脈こうみゃく存在そんざいしないと推定すいていされている。しかしながら、マグマへのしゅうきていたためチタンなどの含有がんゆうりょう非常ひじょうおお地質ちしつたい存在そんざいする。

現在げんざいつき火山かざん活動かつどう英語えいごばんみとめられず、マントル対流たいりゅう存在そんざいしないが、すくなくとも25おくねんまえまでは火山かざん活動かつどうがあったことが確認かくにんされている。溶岩ようがんりゅうによって形成けいせいされたつき溶岩ようがんほら溶岩ようがんチューブ)も確認かくにんできる[16]

磁場じば地球ちきゅうやく1/10,000ときわめて微弱びじゃくである。つきにはぜんたまてき明瞭めいりょう固有こゆう磁場じば存在そんざいせず、局所きょくしょてきに、磁場じば異常いじょうつよ地域ちいきよわ地域ちいき混在こんざいしている[17]つきはかつてぜんたまてき磁場じばゆうしていたが、液体えきたい金属きんぞくかく凝固ぎょうこともなって消滅しょうめつし、局所きょくしょてき磁場じばだけがのこったとかんがえられている。2014ねん5がつ発表はっぴょうされた研究けんきゅう成果せいかによれば、現在げんざいつきにはだい規模きぼ磁場じばはないが、やく40おくねんまえつき中心ちゅうしんではけたてつ活発かっぱつ運動うんどう磁場じば発生はっせいさせていたことがわかった[15]

表面ひょうめん

表側おもてがわ地球ちきゅうからえるがわ
裏側うらがわ くろっぽくえるうみすくない
つき北極ほっきょく周辺しゅうへん 夏期かき ルナー・リコネサンス・オービターによる写真しゃしん合成ごうせいイメージ
つき南極なんきょく周辺しゅうへん南緯なんい70-90クレメンタイン (探査たんさ)による写真しゃしん合成ごうせいイメージ つね日光にっこうたらない領域りょういき永久えいきゅうかげ)が中心ちゅうしんのクレーターないられる。

つき表側おもてがわ地球ちきゅうから観測かんそくされるがわ)の北緯ほくい60 - 南緯なんい30にわたる領域りょういきひかりをあまり反射はんしゃせずくろえることから、うみばれている。うみ月表げっぴょうめんの35パーセントをめるが、つき裏側うらがわにはほとんど存在そんざいせず、高地こうちばれる急峻きゅうしゅん地形ちけいからなる。つきうみは、まだ内部ないぶあつけ、地表ちひょうした溶岩ようがんがある時代じだい隕石いんせき衝突しょうとつによってしょうじたクレーターそこから玄武岩げんぶがんしつ溶岩ようがんがにじみてクレーターがめられたものとされている。やく20kmのあつみがあるえてかたまったくろっぽい玄武岩げんぶがんそうおおわれているためにひかりをあまり反射はんしゃせず、くらべてくらえる。表側おもてがわにのみうみ存在そんざいするのは、そちらがわ集中しゅうちゅうしてねつ放射ほうしゃせい物質ぶっしつ存在そんざいしたためであるとか、また、地球ちきゅうからの重力じゅうりょく影響えいきょうにより、よりつよ重力じゅうりょくはたら地球ちきゅうがわでのみ溶岩ようがん噴出ふんしゅつしたためとするせつ存在そんざいするが、現在げんざいのところ定説ていせつはない。[よう出典しゅってん]

うみ以外いがい部分ぶぶんは、小石こいしあつまったすみつぶてがんから構成こうせいされている。これは太陽系たいようけい初期しょきからのこったほろ惑星わくせい衝突しょうとつによってしょうじたものである。つきには大気たいきがほとんど存在そんざいしないため、微小びしょう隕石いんせきもそのまま月面げつめん衝突しょうとつしてクレーターをつくる。またみずふう動植物どうしょくぶつによる物理ぶつりてき浸食しんしょく地殻ちかく変動へんどう影響えいきょうけることもないので、さら物体ぶったい衝突しょうとつかぎりほとんどのクレーターがそのままのこる。

大気たいきすくなく、磁場じばよわいために宇宙うちゅうせん太陽たいようふうなども直接ちょくせつ月面げつめん到達とうたつするため、月面げつめんでの生命せいめい活動かつどうさいしては、これらをふせ必要ひつようがある。また、昼夜ちゅうや表面ひょうめん温度おんど変化へんかおおきく、赤道あかみち付近ふきんひるやく110℃、よるやく-170℃となる。自転じてんじくかたむきにより多少たしょうぶしはあるが、気象きしょう現象げんしょういので表面ひょうめん温度おんど変化へんかつきの1にちつうじてほぼ一定いってい変化へんかをする[18]。なお、つき公転こうてん周期しゅうきやく27.3にちであるのにたいして、けがやく29.5にちとなっているのは、つき公転こうてんするあいだ地球ちきゅう太陽たいようまわりを公転こうてんしており、そのぶん余計よけい公転こうてんしなければならないためである[19]

月面げつめんすなレゴリス)によっておおわれている。レゴリスは隕石いんせきなどによってこまかくくだかれたいしもったものであり、月面げつめんのほぼ全体ぜんたいすうじゅうcmからすうじゅうmのあつさでおおっている。これはおよそ200kgの体重たいじゅう装備そうびが、重力じゅうりょくによりおよそ30kg相当そうとうとなった人間にんげんのこした足跡あしあとからも観測かんそくできる。よりあたらしいクレーターなどのわか地形ちけいほどそうあさい。その粒子りゅうし非常ひじょうこまかく、宇宙うちゅうふく精密せいみつ機械きかいなどにはいみやすく、問題もんだいこす。しかしその一方いっぽうでレゴリスのやく半分はんぶん酸素さんそ構成こうせいされており、酸素さんそ供給きょうきゅうげん建築けんちく材料ざいりょうとしても期待きたいされている。また太陽たいようふうによってはこばれた水素すいそヘリウム3分布ぶんぷ密度みつどちいさいものの吸着きゅうちゃくされており、かく融合ゆうごう燃料ねんりょうになるとかんがえられている。

両極りょうきょく付近ふきんのクレーターないには「永久えいきゅうかげ」とばれるつね日陰ひかげとなる領域りょういきがあるため、こおり存在そんざいしている可能かのうせいたかいとわれている。

2009ねん9がつ無人むじんがつ探査たんさチャンドラヤーン1ごうISROインド)および土星どせい探査たんさカッシーニ彗星すいせい探査たんさディープ・インパクト(いずれもNASAアメリカ)の3探査たんさによって、つきみずもしくはみずもととなるヒドロキシもと存在そんざいしていることが確認かくにんされたと発表はっぴょうされた。存在そんざい範囲はんい月面げつめん全体ぜんたいうすひろがっている状態じょうたいで、つきにおいてみずもしくはヒドロキシもとやく1リットルあつめるのに、つき土壌どじょうやく0.76立方りっぽうメートルが必要ひつようだと試算しさんされている。確認かくにんされたみずもしくはヒドロキシもとは、太陽たいようふうによってはこばれた水素すいそイオン月面げつめんにある酸素さんそふくんだ鉱物こうぶつガラスよう物質ぶっしつ衝突しょうとつした結果けっかしょうじたものとかんがえられ、将来しょうらい月面げつめん探査たんさ月面げつめん基地きち計画けいかくにおいて、抽出ちゅうしゅつして水素すいそ結合けつごうすれば真水しみず生成せいせい可能かのうとされている[20][21]

同年どうねん10月9にち、NASAのつき探査たんさエルクロスつき南極なんきょく付近ふきんにあるカベウスクレーターに衝突しょうとつした。衝突しょうとつによる閃光せんこう噴出ふんしゅつぶつ観測かんそくしたところ、上層じょうそう部分ぶぶんからはこまかいちり水蒸気すいじょうきが、下層かそう部分ぶぶん土砂どしゃからも水分すいぶん確認かくにんされた。合計ごうけい水分すいぶんりょうやく95リットルだという。

同年どうねん10月24にち日本にっぽん宇宙うちゅう航空こうくう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう (JAXA) は、つき探査たんさかぐや撮影さつえいした画像がぞう解析かいせきで、つき表側おもてがわにある平地ひらちあらし大洋たいよう」の中央ちゅうおうにあるマリウスおか月面げつめんはつとなる地下ちか溶岩ようがんトンネルつうじる縦穴たてあな発見はっけんしたと発表はっぴょうした。今回こんかい発見はっけんされた縦穴たてあなは「あらし大洋たいよう」において火山かざん活動かつどう活発かっぱつだったことがかっている地点ちてん存在そんざいしており、直径ちょっけいやく70m、ふかやく90mの垂直すいちょくあなで、あな底部ていぶぶんすくなくともよこはば400m、内高うちだか20mをえるトンネルになっているとしている。JAXAは、今回こんかい発見はっけん将来しょうらいてき有人ゆうじん探査たんさにおいて天然てんねん基地きちとしての有力ゆうりょく候補こうほになったとしている[22]

2010ねん9月7にち、NASAによって、月面げつめんにおいてはつとなる「天然てんねんはし」が確認かくにんされた[23]。NASAのルナー・リコネサンス・オービター (LRO) のカメラ (LROC) が撮影さつえい成功せいこうし、その画像がぞう公開こうかいされた。画像がぞうでは、はし右側みぎがわくぼみから橋下はしもと通過つうかしたひかりが、左側ひだりがわくぼみのそこ三日月みかづきがたうつっている姿すがたをとらえている。地球ちきゅうじょうにおいてはふうみずによる浸食しんしょく現象げんしょう形成けいせいされる自然しぜんきょうだが、月面げつめんられるこのような地形ちけいは、通常つうじょう太古たいこ火山かざん活動かつどうによってできた溶岩ようがんほら崩落ほうらくした結果けっかかんがえられている。ただし、今回こんかい発見はっけんされたケースでは、この天然てんねんはし溶岩ようがんほら崩落ほうらくによるものではなく、クレーターを形成けいせいした隕石いんせき衝突しょうとつねついわ融解ゆうかいして形成けいせいされたものとかんがえられている[23]

2020ねん10月アメリカ航空こうくう宇宙うちゅうきょく(NASA)は成層圏せいそうけん赤外線せきがいせん天文台てんもんだい(SOFIA)をもちいておこなわれた観測かんそくで、南半球みなみはんきゅうにあるクラヴィウス・クレーター英語えいごばんからみず検出けんしゅつされたと発表はっぴょうした。ごく地域ちいき永久えいきゅうかげ領域りょういきのぞいた太陽光たいようこうらされることがある地域ちいきみず検出けんしゅつされたのはこれがはじめてで、ごく地域ちいきだけではなく、つき全体ぜんたいみず存在そんざいする可能かのうせいしめ観測かんそく結果けっかとなった[24][25]

TLP

月面げつめん一時いちじてき発光はっこう現象げんしょうこることがあり、一時いちじてき月面げつめん現象げんしょう (英語えいご: TLP, Transient Lunar phenomena)ぶ。過去かこすうひゃくねんあいだ地球ちきゅうじょうからおよそ1500けん観測かんそく報告ほうこくがなされているが、錯覚さっかくによるものや望遠鏡ぼうえんきょうかがみとうない異物いぶつによる乱反射らんはんしゃであったり、レンズいろ収差しゅうさなど観測かんそくしゃがわなんらかの原因げんいんがあったりする場合ばあい誤認ごにんおおいとされている[26][27]

実際じっさいしょうじている月面げつめんでの発光はっこう現象げんしょう原因げんいんとしてあきらかになっているものがいくつかある。

  1. 隕石いんせき衝突しょうとつ[28] - 規模きぼ持続じぞく時間じかんてんからTLPは隕石いんせき衝突しょうとつ区別くべつされる[29]
  2. つき太陽たいよう地球ちきゅう位置いち関係かんけい - 月面げつめん斜面しゃめんよこから太陽光たいようこうせんたると、地形ちけい高低こうていによりそれまでは太陽光たいようこう反射はんしゃしていなかった場所ばしょ反射はんしゃしょう発光はっこうしているようにえる[26]
  3. レゴリス - 太陽たいようふうによって帯電たいでんしたレゴリスががる[30]
  4. ガス噴出ふんしゅつ - つき地殻ちかく含有がんゆうされているウラン(238U)が核分裂かくぶんれつこし、分裂ぶんれつ生成せいせいぶつであるラドン(222Rn)ガス噴出ふんしゅつともな発光はっこう[27]だい18ぞく元素げんそ特徴とくちょうてき性質せいしつ)。とくアリスタルコス・クレーター付近ふきん顕著けんちょ現象げんしょう。ガスの噴出ふんしゅつ地表ちひょうちかくにまったガスが突発とっぱつてき月面げつめんすなげるもので、アポロ計画けいかく発見はっけんされた月面げつめんじょうのガスの漏出ろうしゅつ地点ちてんと、TLPが頻発ひんぱつ報告ほうこくされる地域ちいき一致いっちするという研究けんきゅうがある[29]

影響えいきょう

つき重力じゅうりょく地球ちきゅう影響えいきょうおよぼし、しおきをこす(潮汐ちょうせき作用さよう)。なお、つきよりも格段かくだんおおきい質量しつりょう太陽たいよう潮汐ちょうせき作用さようこし地球ちきゅう潮汐ちょうせきりょくおよぼすが、地球ちきゅうからの距離きょりつきより遠距離えんきょりにあるため、その影響えいきょうりょくつきちから半分はんぶん程度ていどである(潮汐ちょうせきりょく距離きょりの3じょう反比例はんぴれいする[31])。

つき潮汐ちょうせき作用さようにより、おも海洋かいよう海底かいていとの摩擦まさつ海水かいすい同士どうし地殻ちかく同士どうし摩擦まさつなどもある)によるねつ損失そんしつから、地球ちきゅう自転じてん速度そくどがおよそ10まんねんに1びょう割合わりあいおそくなっている。また、重力じゅうりょくによる地殻ちかく変形へんけいかいして、地球ちきゅう-つきけいかく運動うんどうりょうつき移動いどうしており、これにより、つき地球ちきゅう距離きょり年間ねんかんやく3.8cmずつはなれつつある[32]。このかく運動うんどうりょう移動いどうは、地球ちきゅう自転じてん周期しゅうきつき公転こうてん周期しゅうき一致いっちするまでつづくとかんがえられるが、そこにいたるまでにはおよそ50おくねんようする[32]

ぎゃくえば、かつてつき現在げんざいよりも地球ちきゅうちかくにあり、より強力きょうりょく重力じゅうりょく潮汐ちょうせきりょく影響えいきょうおよぼしており、また地球ちきゅう(およびつき)はよりはや回転かいてんしていた。サンゴ化石かせき調査ちょうさによれば、そこにきざまれた日輪にちりん年輪ねんりんにちばん)により、4おくねんほどまえには1にちやく22あいだで、1としは400にちほどあったとされる[32]

視覚しかくてき特徴とくちょう

地表ちひょうちかくの満月まんげつ

つきあかるさは満月まんげつで-12.7など半月はんつきでも-10とう前後ぜんこうたっし、夜間やかんにおけるもっとあかるい天然てんねん光源こうげんである。

地球ちきゅうじょうからつき観察かんさつすると、つきおおきさがわっているようにえることがある。そらたかくに位置いちする場合ばあい地平線ちへいせんまたは水平すいへいせんちかくに位置いちする場合ばあいとは、あきらかにおおきさに変化へんかがあり、前者ぜんしゃ場合ばあいちいさくえ、後者こうしゃ場合ばあいおおきくえる。

この現象げんしょう人間にんげん錯覚さっかくによるものである。カメラとはことなり、人間にんげん視界しかいはいるすべての物体ぶったい鮮明せんめいるべく、つね焦点しょうてん位置いち調節ちょうせつし、のう画像がぞう合成ごうせいしている。このためちかじょうから遠方えんぽうつらなる風景ふうけい先端せんたんつきえる場合ばあい,ズームレンズをうごかしながらるように、ひと認識にんしきするつき巨大きょだいする。ぎゃくそらたかくに位置いちする場合ばあいは、比較ひかくとなる対象たいしょうぶつ存在そんざいしないために、ちいさく(実質じっしつてき目視もくしじょうのサイズとして)えるのである。

実際じっさいつき直径ちょっけいは、うでばしてえんだまあなおおきさとほぼおなじである。そらたかくに位置いちするときちいさな姿すがたは、えんだまあなにそのすべてがおさまってしまいそうにえる。地平線ちへいせんちかくにあるおおきなつき場合ばあいは、えんだまあなはいりそうもなくおもえるが、実際じっさいちいさなつきおなじようにえんだまあなすべてがおさまってしまう。

なお、つき公転こうてん軌道きどう楕円だえんがたであり、きん地点ちてんやく36まんkmにたいして遠地点えんちてんやく40まんkmであるため、かけのおおきさはつき軌道きどうじょう位置いちにより実際じっさいわる。また、赤道せきどうじょう地上ちじょうからるといちにちのうちでも厳密げんみつには距離きょり変化へんかする。つき天頂てんちょう付近ふきんときいちにちのうちでもっとつきちかく、つき地平線ちへいせん付近ふきんるときは、それよりもおよそ地球ちきゅう半径はんけいやく6,000km)はなれるので、それだけわずかにちいさくえる。

つき一時いちじあいだあたり、恒星こうせいたいしてひがしへ0.5きょうだけうごいていき、24あいだでは13である。つまり、毎夜まいよつきまえよるより13だけひがしうごいていく[33]

地球ちきゅうあきら
地球ちきゅうあきら仕組しく

太陽光たいようこうたっていない、けた部分ぶぶん肉眼にくがんでもっすらとえることがあるが、これは地球ちきゅうあきら(ちきゅうしょう、earthshine)とばれるもので、地球ちきゅう反射はんしゃした太陽光たいようこうつきらすことによってしょうじるものである。つき大気たいきくもがなく岩石がんせきのみであり、満月まんげつあかるくえるといっても、つきアルベド太陽光たいようこう反射はんしゃする割合わりあい)は7%ほどである。それにたいして地球ちきゅうまん地球ちきゅう)は面積めんせきやく16ばいおおきく、また、アルベドが20-30%(くも氷雪ひょうせつひかり反射はんしゃする)であり、地球ちきゅうほうがずっとつよひかりはなっている。肉眼にくがんでの確認かくにん容易ようい期間きかんは、新月しんげつはさ月齢げつれい27から2(三日月みかづき前後ぜんこうの、つき輪郭りんかくちいさなときである。ただし新月しんげつさいには目印めじるしとなるものがなく、発見はっけん困難こんなんである。もっとも、皆既かいき日食にっしょくさいには地球ちきゅうあきら確認かくにん可能かのうで、写真しゃしん撮影さつえいすれば地球ちきゅうあきら地形ちけいえるつき周囲しゅうい太陽たいようコロナうつる。また、半月はんつきくらいになれば肉眼にくがん地球ちきゅうあきら確認かくにんすることはむずかしいが、露出ろしゅつ時間じかんながくしてかげ部分ぶぶん写真しゃしん撮影さつえいすれば地球ちきゅうあきらうつる。

つきがつりのころなどにあかつき観測かんそくされることがあるが、これは朝焼あさやけや夕焼ゆうや同様どうよう原理げんりで、つき地平ちへいちかくにあることからつきからのひかり大気たいきなかながとおり、あか以外いがいひかり散乱さんらんしてしまうことによる。月食げっしょくによっても発生はっせいすることがある。

つき公転こうてん軌道きどう地球ちきゅう公転こうてん軌道きどうたいして5ほどかたむいている。このかたむきが周期しゅうきてき月食げっしょく日食にっしょくこしている[34]

起源きげん

古典こてんてき学説がくせつ

つきがどのようにつくられ、地球ちきゅうめぐるようになったかについてふるくは3つのせつとなえられてきた。

親子おやこせつ分裂ぶんれつせつ出産しゅっさんせつむすめせつ
自転じてんによる遠心えんしんりょくで、地球ちきゅう一部いちぶしてつきになったとするせつ
兄弟きょうだいせつ双子ふたご集積しゅうせきせつ[35]きょう成長せいちょうせつ
つき地球ちきゅうおな材料ざいりょう物質ぶっしつから、同時どうじつくられたとするせつ
他人たにんせつ捕獲ほかくせつ配偶はいぐうしゃせつ
べつ場所ばしょ形成けいせいされたつき地球ちきゅう偶然ぐうぜん接近せっきんしたさいつき地球ちきゅう引力いんりょくらえられたとするせつ

だが、いずれのせつ現在げんざいつき力学りきがくてき物質ぶっしつ科学かがくてき特徴とくちょう矛盾むじゅんなく説明せつめいすることができなかった。まず、親子おやこせつでは地球ちきゅう-つきけい現在げんざいぜんかく運動うんどうりょう原始げんし地球ちきゅう単独たんどくっていたとはかんがえにくい。兄弟きょうだいせつではつき平均へいきん密度みつどから推定すいていされる全体ぜんたいてき組成そせいが、地球ちきゅう比較ひかくして金属きんぞくてつとぼしいことを説明せつめいできない。また、他人たにんせつでは地球ちきゅう重力じゅうりょく圏外けんがいから進入しんにゅうするつきが、地球ちきゅうからちょうど距離きょり接近せっきんして衛星えいせい軌道きどうらえられる可能かのうせいひくい。また、アポロ計画けいかくにより採取さいしゅされたつきいし分析ぶんせき結果けっかから判明はんめいした地球ちきゅうマントルつきいし化学かがく組成そせい酸素さんそ同位どういたい類似るいじせいも、他人たにんせつ説明せつめいできない。一方いっぽうで、つきいし放射ほうしゃ年代ねんだい測定そくていによりつきやく45おく5000まんねんまえ誕生たんじょうしたこと、つき高地こうちはす長岩ながいわからなることからつきはその歴史れきし初期しょき高温こうおんだったことがあきらかとなった。これらの証拠しょうこから、有力ゆうりょくされるようになったのが巨大きょだい衝突しょうとつせつである。

巨大きょだい衝突しょうとつせつ

巨大きょだい衝突しょうとつせつジャイアント・インパクトせつ)は、地球ちきゅう天体てんたいとの衝突しょうとつによって飛散ひさんした物質ぶっしつ地球ちきゅう周回しゅうかい軌道きどうじょう集積しゅうせきしてつきができたとするせつである。このせつ標準ひょうじゅんてき設定せっていでは、地球ちきゅうがほぼ現在げんざいおおきさになったころ火星かせいほどおおきさの天体てんたい (テイア名付なづけられている) がななめに地球ちきゅう衝突しょうとつし、その衝撃しょうげき蒸発じょうはつ飛散ひさんしたりょう天体てんたいのマントル物質ぶっしつ一部いちぶ地球ちきゅう周回しゅうかい軌道きどうじょう集積しゅうせきしてつき形成けいせいされたとする。

このせつもちいると、以下いかのことが説明せつめいできる。

  • つき質量しつりょう現在げんざい程度ていどになること。
  • 地球ちきゅうがつけい全角ぜんかく運動うんどうりょう現在げんざい程度ていどでも不思議ふしぎはないこと。
  • つき比重ひじゅう (3.34) が地球ちきゅう大陸たいりく地殻ちかく構成こうせいする花崗岩かこうがん比重ひじゅう1.7 - 2.8)よりもおおきく、海洋かいよう地殻ちかく構成こうせいする玄武岩げんぶがん比重ひじゅう2.9 - 3.2)にちかいこと[よう出典しゅってん]
  • 地球ちきゅうくらべて揮発きはつせい元素げんそ欠乏けつぼうしていること。月形つきがたしげる環境かんきょう高温こうおんであったことで説明せつめいできる。
  • つきコアちいさいこと。地球ちきゅうやテイアのマントルをおもとするかる物質ぶっしつ集積しゅうせきしたとすれば説明せつめいできる。

一方いっぽうで、詳細しょうさい計算けいさんによるとつき岩石がんせき同位どういからだ巨大きょだい衝突しょうとつせつ説明せつめいしづらいことがしめされている。きょだい衝突しょうとつ数値すうち計算けいさん結果けっかから、つき質量しつりょう再現さいげんする標準ひょうじゅんてき設定せっていでは、つき成分せいぶんの5ぶんの1は地球ちきゅう由来ゆらいし、のこる5ぶんの4は衝突しょうとつ天体てんたい物質ぶっしつ寄与きよすることがかっている。しかしながら、実際じっさいには、地球ちきゅうつき岩石がんせき酸素さんそなどの同位どういからだはほぼ同一どういつであることがられており、巨大きょだい衝突しょうとつせつには物質ぶっしつ科学かがくてき困難こんなん存在そんざいする。

これにたいして、衝突しょうとつ原始げんし地球ちきゅうマグマのうみおおわれており、その物質ぶっしつ効率こうりつよく地球ちきゅう周回しゅうかい軌道きどうへと飛散ひさんすることでつき主成分しゅせいぶんとなり、同位どういからだ類似るいじせい説明せつめいできるという仮説かせつ提唱ていしょうされている[36][37]

このほか、つぎ複数ふくすう衝突しょうとつせつ提唱ていしょうされている[38]

複数ふくすう衝突しょうとつせつ

複数ふくすう衝突しょうとつせつは、つき巨大きょだい衝突しょうとつせつとなえるように1かいだい規模きぼ衝突しょうとつによって形成けいせいされたのではなく、ほろ惑星わくせいちいさな衝突しょうとつが20かい程度ていどかえされて月形つきがたしげるがなされたとするせつである。このシナリオでは、衝突しょうとつのたびに原始げんし地球ちきゅう周囲しゅういデブリ円盤えんばん形成けいせいされ、円盤えんばん物質ぶっしつ集積しゅうせきしょう衛星えいせい形成けいせいされる。こうしたしょう衛星えいせい数々かずかず最終さいしゅうてき合体がったいし、単一たんいつつき形成けいせいされる[38][39]

複数ふくすう衝突しょうとつせつによると、単独たんどく衝突しょうとつよりも地球ちきゅうからおおくの物質ぶっしつがえぐりるような衝突しょうとつ考慮こうりょできる。これにくわえて、多数たすうしょう衛星えいせい組成そせい平均へいきん最終さいしゅうてきつき組成そせいとなることから、単一たんいつ衝突しょうとつシナリオよりもつき組成そせい地球ちきゅう類似るいじさせやすいとされる[38][39]。また、つき質量しつりょう以上いじょうしゅう地球ちきゅうデブリ円盤えんばんつく必要ひつようがないため、単一たんいつ衝突しょうとつつきつくるよりもゆる条件じょうけん月形つきがたしげる達成たっせいできるという利点りてんもある[39]

なお、巨大きょだい衝突しょうとつせつ複数ふくすう衝突しょうとつせつ以外いがいつき形成けいせいかんするあらたな学説がくせつとして「つきは2つあった」とする学説がくせつ提示ていじされている[40]

月齢げつれい

中心ちゅうしんあお球体きゅうたい地球ちきゅうみぎかた太陽たいようがあり、地球ちきゅうまわりに配置はいちされる球体きゅうたいが1かげつあいだ公転こうてんするつき位置いちしめす。の1の球体きゅうたいついたちつき位置いちしめす。地球ちきゅうからて、つき太陽たいようおな方向ほうこうにある。の3の球体きゅうたい上弦じょうげんの5がもちの7が下弦かげんつき位置いちをそれぞれしめす。

地球ちきゅうからて、太陽たいようつきおな方向ほうこうにある瞬間しゅんかんを、ついたち(さく)また新月しんげつという。日本にっぽん中国ちゅうごく旧暦きゅうれきもちいられた太陰暦たいいんれき太陰たいいん太陽暦たいようれきでは、ついたちふくつきはつだい1にち)とする[ちゅう 4][ちゅう 5]

ついたちからの経過けいか時間じかんにち単位たんいあらわした数値すうち月齢げつれいという。ついたち瞬間しゅんかん月齢げつれい0として、ついたちふく朔日さくじつ)を「1にち」とするため、日本にっぽんもちいられる旧暦きゅうれき日付ひづけは、その午前ごぜん0月齢げつれいに1をしたものとなる[ちゅう 6]。なお、通常つうじょう、カレンダーなどでしめされる月齢げつれいは、当日とうじつ正午しょうご時点じてん数値すうちである。たとえば、2009ねん9がつ19にち日本にっぽん標準時ひょうじゅんじ午前ごぜん344ふんついたちとなるため、この時点じてん月齢げつれい0となり、同日どうじつ旧暦きゅうれき8がつ1にちとなる。ついたちから24あいだ同年どうねん9がつ20にち午前ごぜん344ふんには月齢げつれい1となる。カレンダーなどでしめされる月齢げつれいは、それぞれ正午しょうご時点じてんでの数値すうちとなるため、2009ねん9がつ19にち月齢げつれい0.3、よく20日はつか月齢げつれいは1.3となる。

つきには、つきしょうつきけ)におうじて、様々さまざま名称めいしょうがある。まず、天文学てんもんがくてきもちいられる名称めいしょうとしては、「ついたち上弦じょうげんもち下弦かげん」の4つがある。太陽たいようつきけいが、それぞれ0状態じょうたいついたち、90上弦じょうげん、180もち、270下弦かげんぶ。なお、つきしょう通常つうじょう0から360までの角度かくどしめされるが、月齢げつれいとの比較ひかく容易よういにするため、0から360までの角度かくどを0から28までの整数せいすう換算かんさんしてしめすことがある。この場合ばあいついたちは0、上弦じょうげんは7、もちは14、下弦かげんは21となる。このつきしょう数値すうち月齢げつれいかならずしも一致いっちしない(詳細しょうさいつきしょう参照さんしょう)。

このほか日本にっぽんでは、旧暦きゅうれき日付ひづけ対応たいおうする名称めいしょう三日月みかづき十三夜じゅうさんやつき十五夜じゅうごやつき十六夜いざよいつきなど)やつきえる時間じかんたいかんする名称めいしょう立待月たちまちのつき居待月いまちのつき寝待月ねまちのつきゆうがつ有明ありあけがつなど)、形状けいじょう対応たいおうする名称めいしょう満月まんげつ弦月げんげつ半月はんつき弓張月ゆみはりづきなど)、年中ねんじゅう行事ぎょうじ関連かんれんする名称めいしょう芋名月いもめいげつ栗名月くりめいげつ)など、つきにはおおくの名称めいしょうつきめい、げつめい)がある。

旧暦きゅうれき15にちつき(ほぼ満月まんげつ)は日没にちぼつごろのぼり、以後いごすう日間にちかん夜間やかんのぼるため月見つきみてきしており、とく様々さまざま名称めいしょうされた。日没にちぼつしばらくしてからのぼ旧暦きゅうれき16にちつきは「いざよい」(ためらう、なかなかすすまないの)、以後いご、「立待たちまち」(ってっているとてくる)、「きょまち」(すわってっているとてくる)、「まち」(っているとてくる)、「さらまち」(ふけまち。よるけてからてくる、あるいはさらつとてくる)と、つきだしおそくなるごとにふさわしい名称めいしょうけられている。なお、「ゆうがつ」は日没にちぼつ前後ぜんこうえるつき総称そうしょうであり、「有明ありあけつき」はがたになってもまだのこっているつき総称そうしょうである。

つき毎日まいにち平均へいきんやく50ふんずつおくれてるため、「つきだし」がないや1にちに2かいこるがある。そのため、つきは、旧暦きゅうれき日付ひづけではなく朔日さくじつを1とする「つきだし」の回数かいすうつきだしすうによってめられる。そうしないと欠番けつばんたり、おながつでも地域ちいきによりことなったりするからである。なお、つきだし時刻じこくが0前後ぜんこうになる旧暦きゅうれきの24にちごろ以降いこうは、旧暦きゅうれき日付ひづけつきが1にちずれるので注意ちゅうい必要ひつようである。「つきだしがない」といっても、そのに「つきだし」がないだけでつきえないわけではない。そのはじまる午前ごぜん0にはすでつきているので、ひがしからつきる「つきだし」がないのである。

つきしょう およその月齢げつれい つきだしすう おも名称めいしょう
0・ついたち 0 1 新月しんげつ
1 1 2 二日月ふつかづきすんでついたち(きさく)
2 2 3 三日月みかづき(みかづき)
7・上弦じょうげん 7.5 7 半月はんつき七日なのかがつ弓張月ゆみはりづき
12 12 13 じゅう三日月みかづき十三夜じゅうさんやがつ
13 13 14 じゅうよん日月じつげつしょう望月もちづき(こもちづき)、いくもち(きぼう)、まちよいつき(まつよいのつき)
14・もち 14 15 じゅう日月じつげつ十五夜じゅうごや望月もちづき(もちづき)、満月まんげつ[ちゅう 7]
15 15 16 十六夜いざよい(いざよい)、じゅうろく日月じつげつ既望きぼう(きぼう)
16 16 17 じゅうなな日月じつげつ立待月たちまちのつき(たちまちづき)
17 17 18 じゅうはち日月じつげつ居待月いまちのつき(いまちづき)
18 18 19 じゅうきゅう日月じつげつ寝待月ねまちのつき(ねまちづき)、まちがつ(ふしまちづき)
19 19 20 二十日はつかがつさらまちがつ(ふけまちづき)
21・下弦かげん 22.5 23 半月はんつきじゅう三日月みかづき弓張月ゆみはりづき
つき出入でい時刻じこくれい(2009ねん9がつ時刻じこく日本にっぽん標準時ひょうじゅんじ
日付ひづけ
旧暦きゅうれき
月齢げつれい[ちゅう 8] 東京とうきょう 京都きょうと 説明せつめい
つきだし つきはい つきだし つきだしすう つきだし つきはい つきだし つきだしすう
9がつ10日とおか
(7がつ22にち
20.7 10:45 20:46 22 10:59 21:04 22 東京とうきょう京都きょうととも、前日ぜんじつつき午前ごぜん10だいぼっし、午後ごご 9ごろにまたてくる。「つきだし」は 1かいなので、「つきだしすう」は1える。
9月11にち
(7がつ23にち
21.7 11:51 21:37 23 12:05 21:55 23 東京とうきょう京都きょうととも、前日ぜんじつつき正午しょうごごろぼっし、午後ごご 9だいにまたてくる。「つきだし」は 1かいなので、「つきだしすう」は1える。
9月12にち
(7がつ24にち
22.7 12:54 22:36 24 13:08 22:55 24 下弦かげん半月はんつき
東京とうきょう京都きょうととも、前日ぜんじつつき午後ごご 1ごろぼっし、午後ごご10ぎにまたてくる。「つきだし」は 1かいなので、「つきだしすう」は 1える。
9月13にち
(7がつ25にち
23.7 13:51 23:44 25 14:06 - 東京とうきょうでは、前日ぜんじつつき午後ごご 2まえぼっしたのち当日とうじつちゅうふたたてくる。そのため、「つきだしすう」は 1える。これにたいして京都きょうとでは、前日ぜんじつつき午後ごご 2ぎにぼっしたのち当日とうじつちゅうにはふたたがつてこない。そのため、「つきだしすう」はえない。
9月14にち
(7がつ26にち
24.7 14:42 - 0:02 14:56 25 東京とうきょうでは、前日ぜんじつつき午後ごご 2ぎにぼっしたのち当日とうじつちゅうにはふたたがつてこない。そのため、「つきだしすう」はえない。これにたいして京都きょうとでは、未明みめいつき午後ごご 3まえぼっしている。そのため、「つきだしすう」は 1える。
9月15にち
(7がつ27にち
25.7 0:55 15:25 26 1:14 15:40 26 東京とうきょう京都きょうととも、未明みめいつき午後ごご 3だいぼっする。「つきだし」は 1かいなので、「つきだしすう」は 1える。
9月16にち
(7がつ28にち
26.7 2:08 16:02 27 2:27 16:18 27 東京とうきょう京都きょうととも、未明みめいつき午後ごご 4だいぼっする。「つきだし」は 1かいなので、「つきだしすう」は 1える。
9月17にち
(7がつ29にち
27.7 3:21 16:36 28 3:39 16:51 28 東京とうきょう京都きょうととも、未明みめいつき午後ごご 4だいぼっする。「つきだし」は 1かいなので、「つきだしすう」は 1える。
9月18にち
(7がつ30にち
28.7 4:32 17:07 29 4:49 17:23 29 東京とうきょう京都きょうととも、未明みめいつき午後ごご 5だいぼっする。「つきだし」は 1かいなので、「つきだしすう」は 1える。
9月19にち
(8がつ1にち
0.3 5:42 17:37 1 5:58 17:54 1 ついたち新月しんげつ
東京とうきょう京都きょうととも、つき午後ごご 3だいぼっする。ついたちとなったので「つきだしすう」は、 1にもどる。

れき中国ちゅうごくれき太陰たいいん太陽暦たいようれきでは、つきやく29.5にち周期しゅうきだいつき(30日間にちかん)としょうつき(29日間にちかん)で調整ちょうせいする。このため、毎年まいとしがつごとの日数にっすうことなり、煩雑はんざつ記憶きおくできない。そこで、毎年まいとしこよみ大小だいしょうれき)を作成さくせいして参照さんしょうした。日本にっぽんでは、大小だいしょうれきえがいたものが、のち浮世絵うきよえになった。

つき初日しょにち( 1にち)は「朔日さくじつ(ついたち、さくじつ)」とび、つき最終さいしゅう29にちまた30にち)は「晦日みそか(みそか、つごもり)」とぶ。「ついたち」とは「つきち(つきたち)」、「つごもり」は「つきこもり(つきこもり)」がおと変化へんかしたかたりである。また、いちねん最終さいしゅうがつ最終さいしゅう(29にちまたは30にち)は、「大晦日おおみそか(おおみそか、おおつごもり)」である。

日本にっぽん童謡どうようの「おげっさんいくつ、じゅうさんななつ」はこれだけでは意味いみ不明ふめいであるが、沖縄おきなわ民謡みんよう童謡どうようつきうつくしゃ』に由来ゆらいするとの見方みかたがある。そこでは「つきぬかいしゃ、10日とおか3にち。みやらびかいしゃ10ななつ」とあり、13にちつき、つまり成熟せいじゅくまえうつくしいとのとされ、月齢げつれい年齢ねんれいになぞらえている。

月齢げつれい人間にんげんてき事象じしょう関連かんれんせい

現代げんだいにおいても、詳細しょうさいなデータなど明確めいかく根拠こんきょしめさず、テレビ・雑誌ざっしなどで、月齢げつれいが、人間にんげん生理せいりてき精神せいしんてき事象じしょうたとえば出産しゅっさんや、自殺じさつ殺人さつじん交通こうつう事故じここりやすさなど)に影響えいきょうおよぼしているのではとかたられることがある。

月齢げつれい暴力ぼうりょく行為こうい因果いんが関係かんけいについては、2007ねん初頭しょとうポーランド科学かがくしゃMichal Zimeckiが確認かくにんしたとされるが、その一方いっぽうシドニしどに大学だいがくニューサウスウェールズしゅうのManly病院びょういん研究けんきゅうしゃらが、心理しんりがく専門せんもんAustralian and New Zealand Journal of Psychiatryに1998ねん発表はっぴょうした内容ないようでは「両者りょうしゃあいだ特別とくべつ関連かんれんせいはみられない」とされたという。2007ねん6がつ5にち、「満月まんげつには犯罪はんざいえる」とイギリスえい南部なんぶサセックスしゅう警察けいさつのある警察けいさつしょ発表はっぴょうし、満月まんげつ警察官けいさつかんおおめに配置はいちすべきだとの見解けんかい表明ひょうめいしたというが、懐疑かいぎてきひとおおかったという[41]

人間にんげんとの関係かんけい

古代こだいギリシア

古代こだいギリシア人々ひとびとは、月食げっしょくきるのは満月まんげつときであること、また月食げっしょくつき表面ひょうめんまるかげ徐々じょじょあらわれることを観察かんさつして、それらのことからそのかげというのは自分じぶんたちのかげで、球体きゅうたいであると推定すいていしたといい、アリストテレース時代じだい紀元前きげんぜん4世紀せいき)には、その知識ちしきはギリシア世界せかいではひろわたっていたという。

古代こだいギリシアから中世ちゅうせいにかけての宇宙うちゅうろん。(ペトルス・アピアヌスアントワープ1539ねん

アリストテレースも地球ちきゅうまわりをつき太陽たいよう、および惑星わくせいまわっているという宇宙うちゅうろんいた(地球ちきゅう中心ちゅうしんせつ)。

ギリシア神話しんわつき女神めがみ元々もともとセレーネーであるが、のちアルテミスヘカテー同一どういつされ、つきちてけるように3つのかお女神めがみとされるようになった。ローマ神話しんわではルーナがセレーネーと、ディアーナがアルテミスと同一どういつされたので、ここでもつきしんは2つのかおつとされた。これらのかみ々は一般いっぱんにあまり区別くべつされない。ルーナ Lunaロマンスではそのままがつあらわ普通ふつう名詞めいしとなった。また、英語えいごなどではセレーネーから派生はせいした selen-, seleno- というつきあらわ語根ごこん接頭せっとう存在そんざいする。元素げんそ周期しゅうきひょうテルル地球ちきゅう)の真上まうえ位置いちし、あとから発見はっけんされたセレンはこの語根ごこんから命名めいめいされた。

ヨーロッパの伝統でんとう文化ぶんか

古来こらいよりつき太陽たいようならんで神秘しんぴてき意味いみ付加ふかされてきた。ヨーロッパ文化ぶんかけんでは太陽たいよう金色きんいろ黄色おうしょく表現ひょうげんされるのにたいし、つき銀色ぎんいろしろあらわされることがおおい。西洋せいようではつき人間にんげん狂気きょうきむとかんがえられ、英語えいごで "lunatic"(ルナティック)とはくるっていることをあらわす。また満月まんげつひとおおかみひとからおおかみ変身へんしんし、魔女まじょたちはくろミサひらくとかんがえられていた。

きたヨーロッパではのろわれてつきおくられたおとこ見立みたてられており、『マザー・グース』に収録しゅうろくされたThe man in the moonは、その伝承でんしょうもとにしたものである[42]安息日あんそくび無視むししてたきぎ背負せおっていた、キャベツをぬすんだなど、おとこのろわれた理由りゆう地域ちいきによってことなる。

このほかつき模様もようカニ姿すがたものをするろう婦人ふじんとみたものがある。きたアメリカ東欧とうおうではしろ部分ぶぶん女性じょせい横顔よこがおたてている。

西洋せいよう占星術せんせいじゅつ

つき七曜しちよう九曜くようの1つで、10だい天体てんたいの1つである。

西洋せいよう占星術せんせいじゅつでは、きょかにみや支配しはいぼしで、よしほしである。感受性かんじゅせいしめし、母親ははおやつま女性じょせいてはまる[43]

イスラム文化ぶんか

赤地あかじしろ三日月みかづきすすきぼしをあしらったトルコの国旗こっき

トルコ共和きょうわこくパキスタンモルディブマレーシアなどのくにでは国旗こっき新月しんげつ一般いっぱんてきには三日月みかづき認識にんしきされることがおおいが、地球ちきゅう北半球きたはんきゅうからつききからかんがえると新月しんげつ直前ちょくぜんの27 - 28にちがつである)がえがかれている。これらのくにではムスリム国民こくみん圧倒的あっとうてき多数たすうめる、ないしイスラム教いすらむきょう国教こっきょうとしているため、新月しんげつイスラム教いすらむきょう意匠いしょうであるとおもわれることがおおいが誤解ごかいである(偶像ぐうぞう崇拝すうはい禁止きんしさだめられているため、つき崇拝すうはいきんじられる)。コンスタンティノープルにおいてはふるくから新月しんげつがシンボルとしてもちいられており、オスマン帝国ていこくによってイスラム教いすらむきょう共通きょうつう意匠いしょうとしてひろめようとこころみられた。今日きょうつき国旗こっき採用さいようしているイスラム国家こっかがそれほどおおくはないのは、帝国ていこく衰退すいたいとともに独立どくりつした諸国しょこくが、新月しんげつ採用さいようしなかったためとされる。太陰暦たいいんれきであるイスラムれきとの関連かんれんせい指摘してきするせつもある。

また、赤十字せきじゅうじしゃ十字じゅうじ意匠いしょう偶像ぐうぞう崇拝すうはいきんずるイスラム教いすらむきょうではキリスト教きりすときょう信徒しんとのイエス崇拝すうはいつながるという理由りゆうからながらく忌避きひされつづけてきたため、イスラムけんではあか新月しんげつもちいられ、名称めいしょうあか新月しんげつしゃとしている。

東洋とうよう伝統でんとう文化ぶんか

東洋とうようでは、つきうみをウサギがもちつきをしている姿すがた見立みたてることがある(つきうさぎ)。つきとウサギとの由来ゆらいはインド仏教ぶっきょう説話せつわしゅうジャータカ』からとされる。古代こだい中国ちゅうごくでは、つきのことをたまうさぎ(ぎょくと)とぶ。また、たまうさぎほか仙女せんにょ嫦娥じょうが)や蟾蜍ひきがえるヒキガエル)だといういいつたえもある。

中国ちゅうごく伝説でんせつでは、つきにはかつらえているとされ、つよしというおところうとしているともわれる。また、おっと羿裏切うらぎった嫦娥じょうがへんじた蝦蟇がまヒキガエル)がんでいるともいわれる。そのほか、中国ちゅうごくでもつき模様もようをウサギの姿すがたとする見方みかたがある。また、つきとおみちにそって28の星座せいざつくり、これを「二十八宿にじゅうはっしゅく」とび、つきは1にちにこの星座せいざを1つずつたずねて天空てんくうたびしていくとかんがえられていた。タイには、つきまちばれるチャンタブリーけんがあり、そのけんあきらにはつきとウサギがえがかれている。

つきかげ象徴しょうちょうとなり、女性じょせい連関れんかんするとかんがえられていた。ゆえ月経げっけいばれた[よう出典しゅってん]

日本にっぽん

古事記こじき』では黄泉よみくにからもどったイザナギみそぎおこなったとき右目みぎめあらったさいまれたツクヨミ月読つきよみいのち)がつき神格しんかくであり、よるおさめるとされている。同時どうじ左目ひだりめからまれたのがアマテラスで、太陽たいよう女神めがみである。

たけ物語ものがたり』ではたけからまれた絶世ぜっせい美女びじょかぐやひめは、つき出身しゅっしんかし、つきかえっていった。に、『今昔こんじゃく物語ものがたりしゅう』の天竺てんじくしるされている「さんじゅう菩薩ぼさつみち修行しゅぎょうし、うさぎかたり(こと)」という説話せつわ結末けつまつで、帝釈天たいしゃくてんなかんだウサギつきなかうつしたとされており[44]日本にっぽんにもつきにはウサギんでいるといういいつたえがある。

月見つきみ

おもあきつきでる行事ぎょうじ代表だいひょうてきなものとして、中秋ちゅうしゅう名月めいげつ十五夜じゅうごやがある。なお中秋ちゅうしゅう名月めいげつ満月まんげつとはかぎらない。旧暦きゅうれき8月(グレゴリオれき9がつごろ)は乾燥かんそうしてつきあざやかにえ、またつきのぼたかさもほどよく、気候きこうてきにも快適かいてきなため観月みづき時節じせつとされた。

季語きごとしてのつき

俳句はいく世界せかいたんに「つき」とった場合ばあい、それはあきつきをさし、それ以外いがいぶしつきは「はるつき」「なつつき」「梅雨つゆつき」「ぼんつき」「ふゆつき」などと区別くべつする。あきつきは、はるはなたいして、ふゆゆきとともに雪月花せつげっかとよばれる「さんだい季語きご」のひとつである。「よりもりくるつきのかげればこころづくしのあきにけりよみじんしらず(『古今ここん和歌集わかしゅう』)、「つきれば千々ちじにものこそかなしけれひとつのあきにはあらねど大江おおえ千里せんりどう)など、あきつきしょうし、つき物思ものおもうこころはふるくから和歌わかつくられている。

  • 傍題ぼうだい
    • 上弦じょうげん
    • 下弦かげん(かげん・げげん)
    • 弓張月ゆみはりづき片割月かたわれづき弦月げんげつ半月はんつき
    • つきふね
    • つきゆみ
    • のぼがつ
    • くだがつがつもちくだり)
    • 有明ありあけ有明ありあけがつ
    • 朝月あさつきちょう月夜づきよ(あさづくよ))

パラオ

パラオの国旗こっき

パラオの国旗こっきは、あかるいあおうえ黄金おうごんしょく満月まんげつえがいている。シンプルなデザインではあるが、パラオ人々ひとびとにとっては特別とくべつ意味いみふくんでいる。黄金おうごんしょくつきは、パラオじんじゅく独立どくりつこくとなったことをあらわし、またつきはパラオの人々ひとびとにとって収穫しゅうかくや、自然しぜん循環じゅんかん年中ねんじゅう行事ぎょうじ重要じゅうよう役割やくわりたしている。

ネイティブアメリカン

ネイティブアメリカン(インディアン)には、つき模様もよう女性じょせいかお慣習かんしゅうがある。

つきることにかんする伝承でんしょう

北欧ほくおうにおいて「妊娠にんしんした女性じょせいつきてはいけない」、あるいは「イヌイットむすめつきると妊娠にんしんするからつきない」、アイスランドにおいて「子供こども精神せいしん障害しょうがいになるからにんつきかおけてはいけない」など、女性じょせいつきることを禁忌きんきとした伝承でんしょうはいくつかある。

17世紀せいき以降いこうつき理学りがく発展はってん

ガリレオ・ガリレイのスケッチ (1610ねん

つき研究けんきゅう望遠鏡ぼうえんきょうによる観察かんさつと、月面げつめん作成さくせいというかたちはじまった[よう出典しゅってん]。これをつき理学りがくぶ。

最初さいしょ月面げつめん作成さくせいしたのはイギリスのウィリアム・ギルバートだとかんがえられている[よう出典しゅってん]ウィリアム・ギルバート1603ねんくなっており、観察かんさつ自体じたい1600ねんころのものだとかんがえられている。月面げつめん自体じたい出版しゅっぱんされたのは1651ねんおそかった。ギルバートの観察かんさつ裸眼らがんによるものであり、つき理学りがくのさきがけとえる。最初さいしょ望遠鏡ぼうえんきょう月面げつめん観測かんそくしたのは、イギリスのトーマス・ハリオットであった。ハリオットの月面げつめん1609ねん7がつ作成さくせいされた。ガリレオ・ガリレイによる有名ゆうめいなスケッチは1610ねんえがかれ、同年どうねん3がつ13にち出版しゅっぱんされた「ほしかい報告ほうこく」で発表はっぴょうされている。先駆せんくしゃ仕事しごと比較ひかくすると、特徴とくちょうてき地形ちけい精密せいみつえがいたこと、「やま」のかげながさを計測けいそくし、「標高ひょうこう」を推定すいていしたことにおいてすぐれている。かれ計測けいそくにより、月面げつめんやま地球ちきゅうかみやまよりもたかいことがかった。[よう出典しゅってん]

つき旅行りょこうえがいた小説しょうせつ

ギリシャ時代じだいかれたルキアノスの『イカロ・メニッパス』では、つばさをつけてオリンポスさんからがることでつき様子ようすえがかれている。

シラノ・ド・ベルジュラック1656ねんに『月世界げっせかい旅行りょこう』をいている。ムルタ・マクダーモットは1728ねんに『A Trip to the Moon』を出版しゅっぱんした[45]

1865ねん1870ねんにはフランス作家さっかジュール・ヴェルヌ小説しょうせつ月世界げっせかい旅行りょこう』を発表はっぴょうした。これは、南北戦争なんぼくせんそう終了しゅうりょうアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおいて、「大砲たいほうクラブ」なる火器かき専門せんもん家集かしゅうだん巨大きょだい大砲たいほう製造せいぞうして、人間にんげんはいったおおきな砲弾ほうだん着陸ちゃくりく帰還きかんようのロケットエンジンを搭載とうさいしてつきむことでひとおくもうとする、という物語ものがたりである[ちゅう 9]1901ねんには『月世界げっせかい最初さいしょ人間にんげん』がハーバート・ジョージ・ウェルズによってあらわされた。 そのほかにも、ジョン・W・キャンベルつき地獄じごくだ!』やロバート・A・ハインラインつきったおとこ』のようにはつ月面げつめん到達とうたつえがいた小説しょうせつはいくつもかれている。

日本にっぽんでは1882ねん6がつぬきめい駿一しゅんいちが『ほし世界せかい旅行りょこう 千万無量せんまんむりょう[46]1888ねん井口いぐち元一げんいちろうが『夢幻むげん現象げんしょうせいうみ破裂はれつ[47]1906ねん羽化うかせんが『月世界げっせかい探検たんけん[48]1915ねんには石松ひかげのかずらゆめじんが『かい飛行ひこうてい月世界げっせかい旅行りょこう』をあらわした[49]

冷戦れいせん時代じだい無人むじん探査たんさ有人ゆうじん探査たんさ

冷戦れいせん影響えいきょうで、有人ゆうじん探査たんさにむけてアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくソビエト連邦れんぽうあいだ熾烈しれつ競争きょうそう宇宙うちゅう開発かいはつ競争きょうそう、スペース・レース)がおこなわれた。当初とうしょ宇宙うちゅう開発かいはつ競争きょうそうソ連それん先行せんこうしており、人類じんるいはつ有人ゆうじん宇宙うちゅう飛行ひこう1961ねん4がつ12にちソ連それんボストーク1ごうユーリ・ガガーリンによりおこなわれ、はじめて地球ちきゅう周回しゅうかい軌道きどうはいった。これに対抗たいこうしてアメリカも宇宙うちゅう開発かいはつすすめており、有人ゆうじん宇宙うちゅう飛行ひこう計画けいかくとしてマーキュリー計画けいかくすすめられていた。

つき接近せっきんした最初さいしょ人工じんこう物体ぶったいは、ソビエト連邦れんぽうルナ計画けいかくによってげられた無人むじん探査たんさルナ1ごうで、1959ねん1がつつき近傍きんぼう5,995 kmを通過つうかした。ソビエト連邦れんぽうつづ無人むじん探査たんさルナ2ごう月面げつめん到達とうたつ成功せいこうした。ルナ2ごうは1959ねん9月13にち月面げつめん着陸ちゃくりく衝突しょうとつしている。つき裏側うらがわはじめて観測かんそくしたのは1959ねん10月7にち裏側うらがわ写真しゃしん撮影さつえいしたルナ3ごうはじめて軟着陸なんちゃくりく成功せいこうしたのはルナ9ごうで、1966ねん2がつ3にち着陸ちゃくりく月面げつめんからの写真しゃしん送信そうしんしてきた。1966ねん3月31にちげられたルナ10ごうはじめてつき周回しゅうかい軌道きどうった。

月面げつめんあるバズ・オルドリン 1969ねん7がつ20日はつか

しかし、人間にんげんつきおくることに成功せいこうしたのはアメリカである。アメリカは1959ねん3月3にちげられたパイオニア4ごうはじめてつき無人むじん探査たんさ成功せいこうし、1961ねん5がつ25にちおこなわれた「アメリカは10ねん以内いないにアメリカじんつきおくり、無事ぶじ地球ちきゅう帰還きかんさせることを約束やくそくすべきだとしんじます。」というケネディ大統領だいとうりょう声明せいめいもあって、ジェミニ計画けいかくアポロ計画けいかくおこなわれることとなった。レインジャー計画けいかく衝突しょうとつ)、サーベイヤー計画けいかく軟着陸なんちゃくりく)、ルナ・オービター計画けいかく周回しゅうかい)などにより有人ゆうじん着陸ちゃくりくてきした場所ばしょえらばれ、1969ねん7がつ20日はつかアポロ11ごうしずかのうみ着陸ちゃくりくニール・アームストロング船長せんちょう人類じんるいはじめて月面げつめんった。このアポロ計画けいかく1972ねんアポロ17ごうまでつづけられた。なお、アポロ13ごう事故じこ液化えきか酸素さんそタンクの爆発ばくはつ)により、月面げつめん着陸ちゃくりくせずに、つき軌道きどう周回しゅうかいして不要ふようになったロケットパーツをつき落下らっかさせて人工じんこう地震じしんこさせただけで、地球ちきゅう帰還きかんした(帰還きかんミッション非常ひじょう困難こんなんなものであった)。

しかしこのような探査たんさには高度こうど技術ぎじゅつ莫大ばくだい費用ひよう必要ひつようであり、アメリカではアポロ20ごうまで予定よていされていたが、予算よさん削減さくげんで17ごうわった。ソ連それん1970ねんから1974ねんにかけて、ルナ16ごう20ごう24ごうつき土壌どじょう採取さいしゅ地球ちきゅうかえること成功せいこうルナ17ごう21ごう無人むじん月面げつめんしゃおくんだが、有人ゆうじん月面げつめん探査たんさ計画けいかくであるソユーズL3計画けいかくは1974ねん6がつ23にち正式せいしき中止ちゅうし決定けっていした。

アポロ計画けいかく終了しゅうりょう以後いご

アポロ計画けいかく終了しゅうりょう以後いご人類じんるい月面げつめんあるいていないが、各国かっこくによる無人むじん探査たんさおこなわれている。2004ねん2がつアメリカ大統領だいとうりょうジョージ・W・ブッシュ2020ねんまでにふたたがつ人類じんるいおく計画けいかく発表はっぴょうし、NASAによりコンステレーション計画けいかく発表はっぴょうされたが、のち予算よさん圧迫あっぱくなどを理由りゆう中止ちゅうしされている。そのには、欧州おうしゅう宇宙うちゅう機関きかん (ESA)、中国ちゅうごく国家こっかこうてんきょく (CNSA)、日本にっぽん宇宙うちゅう航空こうくう研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう (JAXA)、インド宇宙うちゅう研究けんきゅう機関きかん (ISRO) でもつき探査たんさ計画けいかくがある。

中国ちゅうごく月面げつめん探査たんさ積極せっきょくてき姿勢しせいをとっており、とく月面げつめんヘリウム同位どういたいであるヘリウム3発掘はっくつおこな地球ちきゅうでエネルギー資源しげんとしてもちいることをねらっているとわれる。2019ねんには探査たんさ嫦娥じょうが4ごうつき裏側うらがわ着陸ちゃくりくした。

日本にっぽんではLUNAR-ASELENE(かぐや)の2つの計画けいかくがあり、つき探査たんさ計画けいかくLUNAR-Aではペネトレータとばれるやりじょう探査たんさ機器きき月面げつめんみ、つき内部ないぶ構造こうぞうさぐ計画けいかくだったが、2007ねん計画けいかく中止ちゅうしまった。つき探査たんさ周回しゅうかい衛星えいせい計画けいかくSELENEはつき起源きげん進化しんか解明かいめいのためのデータを取得しゅとくすることと、将来しょうらいつき探査たんさけての技術ぎじゅつ取得しゅとく目的もくてきとしている。2007ねん9月14にちげられ、2009ねん6月11にちまでつき周回しゅうかいしてデータをあつめた。

なお2006ねんには、それまで解析かいせきされずに放置ほうちされていたアポロ観測かんそくデータが発掘はっくつされた[50]。この観測かんそくデータの解析かいせき結果けっか従来じゅうらい知見ちけんくつがえすような結果けっかられはじめている。このアポロ観測かんそくデータと日本にっぽんのかぐやなど、世界せかいつき周回しゅうかい探査たんさ衛星えいせいによる観測かんそくデータをわせた解析かいせきによって、よりつき起源きげんについて理解りかいふかまることが期待きたいされる。

また、より長期ちょうき計画けいかくとして月面げつめん基地きち建設けんせつ構想こうそうもある。NASAは2006ねん12月、上記じょうきのコンステレーション計画けいかくひとつとして2020ねんまでに月面げつめん基地きち建設けんせつ開始かいしし、2024ねんころには長期ちょうき滞在たいざい可能かのうとする計画けいかく発表はっぴょうしたが、こちらも中止ちゅうしされている。またロシア連邦れんぽう宇宙うちゅうきょくは2007ねん8がつ2025ねんまでの有人ゆうじん月面げつめん着陸ちゃくりくと、2028ねん - 2032ねん月面げつめん基地きち建設けんせつはしらとした長期ちょうき計画けいかく発表はっぴょうした。JAXAの長期ちょうき計画けいかくにも有人ゆうじん月面げつめん基地きちふくまれる。

各国かっこくつきでの開発かいはつおこなうにあたり、安全あんぜん首尾しゅびよく探査たんさするため、そして、政治せいじてき緊張きんちょう緩和かんわし、事故じこ防止ぼうしするため、過去かこ現在げんざい将来しょうらいわたる「つき活動かつどう登録とうろく簿」を作成さくせいすることをオープン・ルナー・ファウンデーション[51]提案ていあんしている[52]

1990年代ねんだい以降いこうつき探査たんさ一覧いちらん

地名ちめい

クレーター

やま山脈さんみゃく

うみ大洋たいよう

その

物理ぶつりがく解決かいけつ問題もんだい

つきはなれしんりつ増大ぞうだい: つき潮汐ちょうせき摩擦まさつによってゆっくりとおざかっているが、同時どうじ軌道きどうすこしずつひしゃげていることがレーザー観測かんそくから判明はんめいしている。力学りきがくてきモデルとは一致いっちしないこのはなれしんりつのわずかな拡大かくだい原因げんいんなにか?という解決かいけつ問題もんだいがあり、天文学てんもんがく研究けんきゅうしゃおよび物理ぶつり学者がくしゃによる議論ぎろんがあるものの解決かいけつにはいたっていない。

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

  1. ^ つき」は「惑星わくせい衛星えいせい」という意味いみがある[8]
  2. ^ 「コヨミ」は「カヨミ(むこと)」がてんじた語彙ごいというせつ有力ゆうりょくである[9]
  3. ^ 地球ちきゅうからつきが±7°程度ていどばかりどうしてえる以上いじょうつきからればその角度かくどだけ地球ちきゅう位置いち変化へんかしていることであり、「つきから地球ちきゅう天空てんくういちてん静止せいししてえる」というのはあやまりである。とくに、ばかりどうにより地球ちきゅうから月面げつめんの59%が観測かんそくできるということは、地球ちきゅうえたりしずんだりする月面げつめんじょう場所ばしょ存在そんざいすることを意味いみする。つき周回しゅうかい軌道きどう宇宙船うちゅうせん観測かんそくでなくとも、月面げつめんじょう地球ちきゅうだし地球ちきゅうりは観測かんそくできる。ただし、地球ちきゅうえる日出にっしゅつ日没にちぼつ月出つきでがつぼつちがい、地球ちきゅうだし地球ちきゅうりはほぼおな方位ほういとなる。
  4. ^ 太陰暦たいいんれきをもとにしたローマれきでは、つきはつを「カレンダエ (Kalendae)」、つきだい13にちまただい15にちを「イードゥース (Īdūs)」、その9にちまえだい5にちまただい7にちを「ノーナエ (Nōnae)」とび、この3にち特別とくべつした。ただし、ローマれきにおけるつきだい1にちは、かならずしも新月しんげつとは一致いっちしない(参照さんしょう:ローマれき#ローマれき日付ひづけかぞかた)。
  5. ^ 太陰たいいん太陽暦たいようれきをもとにしたユダヤれきでは、つきだい1にちを「ローシュ・ホーデッシュ Rōš Hōdheš」とんだ。
  6. ^ ただし、朔日さくじつのぞく。朔日さくじつ午前ごぜん0時点じてんではついたちむかえていないため、いまだ月齢げつれい0となっていないからである。
  7. ^ かなら十五夜じゅうごや満月まんげつもち)になるわけではない。太陰たいいん太陽暦たいようれきでは、15にちと16にちとが半々はんはんくらいである。たまに、17にち未明みめい満月まんげつになることがある(たとえば、2015ねん6がつ3にち)。
  8. ^ 日本にっぽん標準時ひょうじゅんじ正午しょうご時点じてん月齢げつれい
  9. ^ 大砲たいほう使用しようして宇宙うちゅうくという概念がいねんはヴェルヌよりも137ねんはやムルタ・マクダーモット自身じしん著作ちょさくしるしていた。また、当時とうじすで兵器へいきとしてではあったものの、ロケット存在そんざいしており、宇宙うちゅう旅行りょこう道具どうぐとしてシラノ・ド・ベルジュラックアシール・エアーオード作品さくひんでも移動いどう手段しゅだんとしてロケットがあつかわれていた。

出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

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