Monthly Archives: January 2020

福井ふくい県けんにある関西電力かんさいでんりょく・大飯おおい原子力げんしりょく発電はつでん所しょの３号機ごうきと４号機ごうきの運転うんてんを止とめるよう、京都きょうと府ふの男性だんせいが求もとめた仮処分かりしょぶんについて、大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょは申もうし立たてを退しりぞける決定けっていを出だしました。 福井ふくい県けんおおい町まちにある大飯原発おおいいげんぱつ３号機ごうきと４号機ごうきについて、隣接りんせつする京都きょうと府ふ南みなみ丹に市しの男性だんせいは３年ねん前まえ、「巨大きょだい地震じしんに対たいする安全あんぜん性せいを欠かいている」として運転うんてんしないよう求もとめる仮処分かりしょぶんを大阪おおさか地方裁判所ちほうさいばんしょに申もうし立たてましたが、去年きょねん３月がつに退しりぞけられたため、大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょに即時そくじ抗告こうこくしていました。 改あらためて行おこなわれた審理しんりでは、大飯原発おおいいげんぱつで想定そうていされる最大さいだい規模きぼの地震じしんの揺ゆれ、「基準きじゅん地震動じしんどう」の大おおきさを算出さんしゅつするのに使つかわれた計算けいさん式しきの信頼しんらい性せいが焦点しょうてんになりました。 30日にちの決定けっていで、大阪おおさか高裁こうさいの山下やました郁夫いくお裁判さいばん長ちょうは「実際じっさいに起おきた４年ねん前まえの熊本くまもと地震じしんの解析かいせきで計算けいさん式しきの信頼しんらい性せいは裏付うらづけられており、この計算けいさん式しきを用もちいることが安全あんぜん性せいの基準きじゅんとして現在げんざいの科学かがく的てき・技術ぎじゅつ的てき知見ちけんに照てらして合理ごうり性せいを欠かくとはいえない」として、男性だんせいの申もうし立たてを退しりぞけました。 弁護べんご団だん「権力けんりょく寄よりの決定けってい」 大阪おおさか高裁こうさいの決定けっていを受うけて、仮処分かりしょぶんを申もうし立たてた児玉こだま正人まさとさんと弁護べんご団だんが記者きしゃ会見かいけんをしました。 この中なかで児玉こだまさんは「即時そくじ抗告こうこくのあと、高裁こうさいはたった１回かいの書面しょめんの審査しんさだけしか行おこなわず、一切いっさいこちらの声こえを聞きかずに結審けっしんした。非常ひじょうに不可解ふかかいで不合理ふごうりだ。ただこの決定けっていですべては決きまらない。ひるむことなく戦たたかう」と述のべ、今後こんごについては弁護べんご団だんと協議きょうぎするとしました。 また、河合かわい弘之ひろゆき弁護士べんごしは「原子力げんしりょくの権威けんいともいえる２人ふたりの学者がくしゃの主張しゅちょうを論拠ろんきょに戦たたかってきた。しかし、裁判所さいばんしょは、ものの見事みごとに権威けんいを切きり捨すて権力けんりょくにすり寄よる決定けっていを出だした。裁判所さいばんしょは権力けんりょくの言いいなりになって私わたしたちを負まかした」と話はなしていました。 […] 全文ぜんぶん

　東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい１原発げんぱつ事故じこの健康けんこう影響えいきょうを調しらべる福島ふくしま県けんの「県民けんみん健康けんこう調査ちょうさ」のデータを、外部がいぶの研究けんきゅう機関きかんに提供ていきょうする際さいの基準きじゅんづくりを進すすめる県けんの有識者ゆうしきしゃ検討けんとう会かいが福島ふくしま市しで３０日にち開ひらかれ、基準きじゅんや手続てつづきを定さだめたガイドライン案あんが示しめされた。調査ちょうさ対象たいしょう者しゃが個別こべつに提供ていきょうを拒否きょひできる仕組しくみも設もうける。 ガイドライン案あんでは提供ていきょうの対象たいしょうを「公益こうえき性せいがあり、成果せいかが県民けんみんの健康けんこう増進ぞうしんなどの利益りえきにつながる研究けんきゅう」とした。 （略りゃく） データの使用しようを承認しょうにんされた研究けんきゅうは県けんのウェブサイトで公表こうひょうし、自身じしんのデータの使用しようを拒否きょひしたい人ひとは申もうし出でることができる。 全文ぜんぶんは健康けんこう調査ちょうさでデータ提供ていきょう拒否きょひも可能かのう　福島ふくしま県けんが指針ししん、原発げんぱつ事故じこの影響えいきょう

竹田たけだ昌弘まさひろ 共同通信きょうどうつうしん編集へんしゅう委員いいん（憲法けんぽう・司法しほう・事件じけん） 共通きょうつう点てんは司法しほう行政ぎょうせい担当たんとうせず、１７日にち広島ひろしま高裁こうさい決定けっていで７件けんに 　原発げんぱつなど原子げんし炉ろ施設しせつの運転うんてんを差さし止とめた司法しほう判断はんだんは、四国電力しこくでんりょく伊方いかた原発げんぱつ３号機ごうき（愛媛えひめ県けん伊方いかた町まち）を巡めぐる１月がつ１７日にちの広島ひろしま高裁こうさい決定けっていで計けい７件けんとなった。内訳うちわけは訴訟そしょうの判決はんけつ３件けん（地裁ちさい２件けん、高裁こうさい１件けん）、仮処分かりしょぶんの決定けってい４件けん（地裁ちさい、高裁こうさい各かく２件けん）で、７件けんのうち５件けんは２０１１年ねんの東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい１原発げんぱつ（福島ふくしま県けん大熊おおくま町まち、双葉ふたば町まち）事故じこ以降いこうに相次あいついでいる。それぞれどのような内容ないようで、どんな裁判さいばん長ちょうによる判断はんだんなのか。何なにか共通きょうつう点てんはあるのだろうか。（共同通信きょうどうつうしん編集へんしゅう委員いいん＝竹田たけだ昌弘まさひろ）  ■行政ぎょうせい庁ちょう判断はんだんに不ふ合理ごうり、安全あんぜん審査しんさに過誤かごや欠落けつらくあれば違法いほう  　原子げんし炉ろ施設しせつの地元じもと住民じゅうみんらは１９７３年ねん以降いこう、地震じしん、火山かざん、津波つなみに対たいする安全あんぜん性せいを欠かくなどとして、国くにの原子げんし炉ろ設置せっち許可きょか取とり消けしや無効むこう確認かくにんを求もとめる行政ぎょうせい訴訟そしょうのほか、電力でんりょく会社かいしゃに運転うんてんの差さし止とめを求もとめる民事みんじ訴訟そしょうやその民事みんじ訴訟そしょうの結論けつろんが出でるまでの一定いってい期間きかん、原発げんぱつの運転うんてんを差さし止とめる仮処分かりしょぶんを申もうし立たててきた。こうした裁判さいばんは福島ふくしま第だい１原発げんぱつ事故じこの前まえに十じゅう数すう件けんあり、事故じこ後ごは５０件けん近ちかくに上のぼっている（脱だつ原発げんぱつ弁護べんご団だん全国ぜんこく連絡れんらく会かいのホームページなどによる）。 　一連いちれんの裁判さいばんでは、最高裁さいこうさいが伊方いかた原発げんぱつ１号機ごうき原子げんし炉ろ設置せっち許可きょか取とり消けし訴訟そしょうの上告じょうこく審しん判決はんけつ（９２年ねん１０月がつ）で示しめした、次つぎのような判断はんだんの枠組わくぐみが使つかわれてきた。  　①裁判所さいばんしょの審理しんりと判断はんだんは、原子力げんしりょく委員いいん会かいや原子げんし炉ろ安全あんぜん専門せんもん審査しんさ会かい（現げん・原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かい）の専門せんもん技術ぎじゅつ的てきな調査ちょうさ審議しんぎと判断はんだんを基もとにしてなされた、行政ぎょうせい庁ちょうの判断はんだんに不合理ふごうりな点てんがあるか否ひかという観点かんてんから行おこなわれるべきだ。  　②現在げんざい（原子げんし炉ろの設置せっち許可きょか当時とうじではない）の科学かがく技術ぎじゅつ水準すいじゅんに照てらし、調査ちょうさ審議しんぎで用もちいられた具体ぐたい的てき審査しんさ基準きじゅんに不合理ふごうりな点てんがある場合ばあい、あるいは、原子げんし炉ろ施設しせつが具体ぐたい的てき審査しんさ基準きじゅんに適合てきごうするとした原子力げんしりょく委員いいん会かいや原子げんし炉ろ安全あんぜん専門せんもん審査しんさ会かいの調査ちょうさ審議しんぎと判断はんだんの過程かていに看過かんかしがたい過誤かご、欠落けつらくがあり、行政ぎょうせい庁ちょうの判断はんだんがこれに依拠いきょしてなされたと認みとめられる場合ばあいには、行政ぎょうせい庁ちょうの判断はんだんに不合理ふごうりな点てんがあるものとして、この判断はんだんに基もとづく原子げんし炉ろ設置せっち許可きょかは違法いほうと解釈かいしゃくすべきだ。  　③行政ぎょうせい庁ちょうの判断はんだんに不合理ふごうりな点てんがあるとの主張しゅちょう、立証りっしょうの責任せきにんは、本来ほんらい原告げんこくが負おうべきだが、原子げんし炉ろ施設しせつの安全あんぜん審査しんさに関かんする資料しりょうを全すべて行政ぎょうせい庁ちょうの側がわが保持ほじしていることなどを考慮こうりょすると、行政ぎょうせい庁ちょうの側がわでまず判断はんだんに不合理ふごうりな点てんのないことを相当そうとうの根拠こんきょ、資料しりょうに基もとづき主張しゅちょう、立証りっしょうする必要ひつようがある。行政ぎょうせい庁ちょうが主張しゅちょう、立証りっしょうを尽つくさない場合ばあいには、行政ぎょうせい庁ちょうの判断はんだんに不合理ふごうりな点てんがあることが事実じじつ上じょう推認される。  　④原子げんし炉ろ設置せっち許可きょか段階だんかいの安全あんぜん審査しんさでは、その安全あんぜん性せいにかかわる事項じこう全すべてを対象たいしょうとするのではなく、その基本きほん設計せっけいの安全あんぜん性せいにかかわる事項じこうのみを対象たいしょうとする。  ■設置せっち許可きょかは無効むこう、初はじめて止とめたもんじゅ控訴こうそ審しん  　最高裁さいこうさいは伊方いかた１号機ごうきの判決はんけつで、原子げんし炉ろ等とう規制きせい法ほうに設置せっち許可きょかの基準きじゅんが定さだめられている目的もくてきは「災害さいがいが万まんが一いちにも起おこらないようにするため」としつつ、①～④の判断はんだんの枠組わくぐみに基もとづき、原子力げんしりょく委員いいん会かいなどに専門せんもん技術ぎじゅつ的てきな裁量さいりょうを広ひろく認みとめ、行政ぎょうせい庁ちょうの判断はんだんに不合理ふごうりな点てんはないと結論けつろん付つけた。この判断はんだんの枠組わくぐみは各地かくちの行政ぎょうせい訴訟そしょうで踏襲とうしゅうされただけでなく、民事みんじ訴訟そしょうでも②や③が応用おうようして使つかわれ、電力でんりょく会社かいしゃの安全あんぜん対策たいさくに看過かんかしがたい過誤かご、欠落けつらくはないなどとして住民じゅうみん側がわの敗訴はいそが続つづいたが、２００３年ねん１月がつ、核かく燃料ねんりょうサイクル開発かいはつ機構きこう（現げん・日本にっぽん原子力げんしりょく研究けんきゅう開発かいはつ機構きこう）の高速こうそく増殖ぞうしょく原型げんけい炉ろもんじゅ（福井ふくい県けん敦賀つるが市し）の周辺しゅうへん住民じゅうみんらが原子げんし炉ろ設置せっち許可きょかの無効むこう確認かくにんを求もとめた行政ぎょうせい訴訟そしょうで、初はじめて原子げんし炉ろ施設しせつの運転うんてんを止とめる判決はんけつが出でた。  　もんじゅの訴訟そしょうは、２０００年ねん３月がつの一いち審しん福井ふくい地裁ちさい（岩田いわた嘉彦よしひこ裁判さいばん長ちょう）が伊方いかた１号機ごうき訴訟そしょうの最高裁さいこうさい判決はんけつと同様どうよう、専門せんもん技術ぎじゅつ的てきな裁量さいりょうを認みとめ、住民じゅうみん側がわの請求せいきゅうを棄却ききゃくしたが、名古屋なごや高裁こうさい金沢かなざわ支部しぶの控訴こうそ審しん判決はんけつでは、川崎かわさき和夫かずお裁判さいばん長ちょうが原子げんし炉ろの安全あんぜん審査しんさには②の「看過かんかしがたい過誤かご、欠落けつらく」があり、放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつが外部がいぶに漏もれる具体ぐたい的てき危険きけんを否定ひていできないなどとして、設置せっち許可きょかを無効むこうとした。  　もんじゅはプルトニウム・ウラン混合こんごう酸化さんか物ぶつ（ＭＯＸ）燃料ねんりょうを使つかい、発電はつでんしながら消費しょうひした以上いじょうのプルトニウムを生うみ出だすとされた原子げんし炉ろ。１９９５年ねん１２月じゅうにがつ、２次じ冷却れいきゃく系けいで配管はいかん内側うちがわの温度おんど計けいが破損はそんし、冷却れいきゃく材ざいのナトリウム約やく６４０キロが漏もれて火災かさいが起おきた。川崎かわさき裁判さいばん長ちょうが安全あんぜん審査しんさの「看過かんかしがたい過誤かご、欠落けつらく」と認定にんていしたのは、▽漏もれた高温こうおんのナトリウムがコンクリートの床ゆかに置おかれた鋼鉄こうてつ板ばん（床ゆかライナ）を腐食ふしょくし、ナトリウムとコンクリートが直接ちょくせつ接触せっしょくして大量たいりょうの水素すいそが発生はっせいしたり、コンクリートが崩壊ほうかいしたりする可能かのう性せい、▽蒸気じょうき発生はっせい器き内ないでナトリウムと水みずが接触せっしょくすると、伝つて熱ねつ管かんが連続れんぞくして破損はそんするおそれ、▽ナトリウムの沸騰ふっとうから核かく反応はんのうが制御せいぎょ不能ふのうとなり、炉心ろしん崩壊ほうかい事故じこに至いたる危険きけん性せい―の三みっつだった。これらはナトリウム漏もれ事故じことその後ごの燃焼ねんしょう実験じっけんなどで判明はんめいした。  　川崎かわさき裁判さいばん長ちょうは１９４６年ねん生うまれ。７２年ねんに裁判官さいばんかんとなり、宇都宮うつのみや地裁ちさい、公害こうがい等とう調整ちょうせい委員いいん会かい（検事けんじの身分みぶんで審査しんさ官かん補佐ほさ）、東京とうきょう地裁ちさい、秋田あきた地裁ちさい大曲おおまがり支部しぶ（支部しぶ長ちょう）、東京とうきょう家裁かさい、同どう家裁かさい八王子はちおうじ支部しぶ（裁判さいばん長ちょう）、水戸みと地裁ちさい（同どう）などを経へて、２０００年ねんから名古屋なごや高裁こうさい金沢かなざわ支部しぶに所属しょぞく。０１年ねんには支部しぶ長ちょうに昇格しょうかくし、もんじゅ判決はんけつ後ごの０３年ねん１２月じゅうにがつ、熊本くまもと家裁かさい所長しょちょうへ転てんじた。０５年ねん３月がつに依願いがん退官たいかん（公人こうじん社しゃ「全ぜん裁判官さいばんかん経歴けいれき総覧そうらん第だい五ご版はん」による）。  　その２カ月かげつ後ごの０５年ねん５月がつ、高裁こうさい金沢かなざわ支部しぶ判決はんけつは最高裁さいこうさい第だい１小しょう法廷ほうてい（泉いずみ徳治とくじ裁判さいばん長ちょう）で破棄はきされ、住民じゅうみん側がわ敗訴はいそが確定かくていした。最高裁さいこうさいは判断はんだんの枠組わくぐみ④により、安全あんぜん審査しんさの対象たいしょうとされた「基本きほん設計せっけいの安全あんぜん性せいにかかわる事項じこう」とは、原子力げんしりょく安全あんぜん委員いいん会かい（現げん・原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かい）の科学かがく的てき、専門せんもん技術ぎじゅつ的てき知見ちけんに基もとづく意見いけんを十分じゅうぶんに尊重そんちょうして行おこなう、主務しゅむ大臣だいじんの合理ごうり的てきな判断はんだんに委ゆだねられていると指摘してき。高裁こうさい金沢かなざわ支部しぶが「看過かんかしがたい過誤かご、欠落けつらく」と認定にんていした床ゆかライナの問題もんだいは基本きほん設計せっけいの安全あんぜん性せいにかかわらない事項じこうであり、伝つて熱ねつ管かん破損はそん事故じこやナトリウムの沸騰ふっとうを想定そうていした解析かいせき内容ないようや結果けっかの審査しんさ、評価ひょうかにも不合理ふごうりな点てんはないなどとする国くにの主張しゅちょうを認みとめ、原子げんし炉ろ設置せっち許可きょかは適法てきほうと判断はんだんした。  　高裁こうさい金沢かなざわ支部しぶはナトリウム漏もれ事故じこで欠陥けっかんが判明はんめいしたことから、事故じこを起おこした原子げんし炉ろの設置せっち許可きょかはやり直なおすべきだと判断はんだんしたのに対たいし、最高裁さいこうさいは基本きほん設計せっけいの安全あんぜん性せいにかかわる事項じこうではないなどとして、もんじゅのプロジェクトを救済きゅうさいした。しかし、もんじゅでは、１０年ねんに炉ろ内ない装置そうちの落下らっか事故じこが起おこり、１２年ねんには機器きき点検てんけん漏もれも発覚はっかくした。１９８３年ねんに設置せっちが許可きょかされ、１兆ちょう円えんを超こえる国費こくひが投とうじられてきたが、運転うんてんしたのは２５０日にちにとどまり、政府せいふは１６年ねん１２月じゅうにがつ、廃はい炉ろを決きめた。最高裁さいこうさいの判断はんだん次第しだいでは、傷きずがここまで深ふかくなる前まえに廃はい炉ろにできたのではないだろうか。  ■耐震たいしん性せいに問題もんだい、人格じんかく権けんに基もとづき志賀しか２号機ごうき差さし止とめ  　原子げんし炉ろ施設しせつの運転うんてんを止とめた２件けん目めは０６年ねん３月がつ、北陸電力ほくりくでんりょく志賀しか原発げんぱつ２号機ごうき（石川いしかわ県けん志賀しか町まち）の地元じもと住民じゅうみんらが起おこした民事みんじ訴訟そしょうの判決はんけつだった。金沢かなざわ地裁ちさいの井戸いど謙一けんいち裁判さいばん長ちょうは、まず個人こじんの生命せいめい、身体しんたいが侵害しんがいされる具体ぐたい的てき危険きけんがある場合ばあい、その個人こじんは人格じんかく権けんに基もとづき侵害しんがい行為こういの差さし止とめを求もとめることができると認みとめた。  　その上うえで、志賀しが２号機ごうきは１９８１年ねんに原子力げんしりょく安全あんぜん委員いいん会かいが決定けっていした耐震たいしん設計せっけい審査しんさ指針ししん（耐震たいしん指針ししん）に基もとづき、安全あんぜん審査しんさに合格ごうかくしたが、この耐震たいしん指針ししんはどちらもマグニチュード（Ｍ）７・３の阪神はんしん大震災だいしんさい（９５年ねん）と鳥取とっとり県けん西部せいぶ地震じしん（２０００年ねん）、Ｍ７・２の宮城みやぎ県けん沖おきの地震じしん（０５年ねん）など、新あらたな地震じしんや研究けんきゅう成果せいかを反映はんえいしておらず、想定そうていを上回うわまわる揺ゆれも観測かんそくされているので「妥当だとう性せいがない」と判断はんだん。政府せいふの地震じしん調査ちょうさ研究けんきゅう推進すいしん本部ほんぶ地震じしん調査ちょうさ委員いいん会かいが志賀しが原発げんぱつ近ちかくの邑知潟おうちがた（おうちがた）断層だんそうではＭ７・６の地震じしんが発生はっせいする可能かのう性せいを指摘してきしているのに、考慮こうりょされていないなどとして、地震じしんによって事故じこが起おきる具体ぐたい的てき危険きけんを認定にんていした。さらに「想定そうていを超こえる地震じしんが起おきた場合ばあい、さまざまな故障こしょうが同時どうじに発生はっせいする可能かのう性せいが高たかく、多重たじゅう防護ぼうごが有効ゆうこうに機能きのうするとは思おもえない。炉心ろしん溶融ようゆう事故じこの可能かのう性せいもある」として、運転うんてんを差さし止とめた。  　金沢かなざわ地裁ちさい判決はんけつでは、最高裁さいこうさいが示しめした判断はんだんの枠組わくぐみ②の「現在げんざいの科学かがく技術ぎじゅつ水準すいじゅんに照てらし」を踏ふまえて安全あんぜん審査しんさの不ふ合理ごうり性せいを認みとめ、③の安全あんぜん性せいに関かんする資料しりょうを持もつ側がわの立証りっしょう責任せきにんも活用かつようし、北陸電力ほくりくでんりょくが十分じゅうぶん反証はんしょうできなかったことも重視じゅうしした。  　井戸いど裁判さいばん長ちょうは１９５４年ねん生うまれ。７９年ねんに任官にんかんし、神戸こうべ地裁ちさい、神戸こうべ家裁かさい、甲府こうふ地裁ちさい、福岡ふくおか家裁かさい小倉こくら支部しぶ、大津おおつ地裁ちさい彦根ひこね支部しぶ、大阪おおさか高裁こうさい、山口やまぐち地裁ちさい宇部うべ支部しぶ（支部しぶ長ちょう）、京都きょうと地裁ちさいなどに勤務きんむ。２００２年ねんから金沢かなざわ地裁ちさいの裁判さいばん長ちょうを務つとめ、志賀しが２号機ごうき判決はんけつ後ごの０６年ねん４月がつ、京都きょうと地裁ちさいの裁判さいばん長ちょうに異動いどうした。福島ふくしま第だい１原発げんぱつ事故じこが起おきた１１年ねん３月がつ、大阪おおさか高裁こうさい判事はんじを最後さいごに依願いがん退官たいかんし、弁護士べんごし（滋賀しが弁護士べんごし会かい所属しょぞく）となる。どちらも関西電力かんさいでんりょくの高浜原発たかはまげんぱつ３、４号機ごうき（福井ふくい県けん高浜たかはま町まち）や大飯原発おおいいげんぱつ３、４号機ごうき（福井ふくい県けんおおい町まち）などの差さし止とめ訴訟そしょうや仮処分かりしょぶんの代理人だいりにんを務つとめている。１９年ねんに発覚はっかくした関西電力かんさいでんりょく役員やくいんらの金品きんぴん受領じゅりょう問題もんだいでは、八木やぎ誠まこと前ぜん会長かいちょうらに対たいする告発こくはつの代理人だいりにんとなったほか、滋賀しが県けん東ひがし近江おうみ市しの湖東ことう記念きねん病院びょういんで０３年ねん、人工じんこう呼吸こきゅう器きを外はずして男性だんせい患者かんじゃを殺害さつがいしたとして殺人さつじん罪ざいに問とわれ、服役ふくえき後ごに再審さいしん開始かいしが決定けっていした元もと看護かんご助手じょしゅの弁護べんご団長だんちょうでもある（全ぜん裁判官さいばんかん経歴けいれき総覧そうらん第だい五ご版はんと共同通信きょうどうつうしん配信はいしん記事きじによる）。  ■「同様どうようの司法しほう判断はんだん続つづかず、福島ふくしま第だい１原発げんぱつ事故じこに」  　井戸いどさんは退官たいかん直後ちょくごの共同通信きょうどうつうしんの取材しゅざいに対たいし、志賀しが２号機ごうき訴訟そしょうの判決はんけつについて、次つぎのように語かたっている。  　「住民じゅうみん側がわの利益りえきと公共こうきょう的てきな利益りえきの比較ひかくが一ひとつのポイントだった。電気でんきは公共こうきょうの財産ざいさん。運転うんてん差さし止とめで一いち企業きぎょうの経済けいざい的てき利益りえきを超こえ、地域ちいき経済けいざいに悪影響あくえいきょうを与あたえるのならば、住民じゅうみんの利益りえきを制限せいげんせざるをえない場合ばあいもあり得える。一方いっぽう、原発げんぱつ事故じこが起おきて被ひばくするのは、当然とうぜん住民じゅうみんにとって我慢がまんの限度げんどを超こえる事態じたい。訴訟そしょうでは住民じゅうみん側がわが具体ぐたい的てき危険きけんを主張しゅちょうするのに対たいし、電力でんりょく会社かいしゃが十分じゅうぶんに反証はんしょうできなかった。住民じゅうみんの利益りえきは生命せいめい、身体しんたいなのだから、公共こうきょう性せいを考かんがえたとしても、一いち企業きぎょうの経済けいざい的てきな利益りえきより優先ゆうせんされる。住民じゅうみんへの具体ぐたい的てき危険きけんは受忍じゅにん限度げんどを超こえると結論けつろん付つけた」  　「社会しゃかい的てき反響はんきょうはもちろん予想よそうしていた。長年ながねん難航なんこうしていた耐震たいしん指針ししんの見直みなおし作業さぎょうは判決はんけつ後ご加速かそくし、０６年ねん秋あきには、基準きじゅんを強化きょうかした新しん指針ししんに改定かいていされた。判決はんけつには、それなりに意味いみがあったのかなとは思おもっていた。しかし、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいで福島ふくしま第だい１原発げんぱつ事故じこが起おきた。個人こじん的てき意見いけんだが、津波つなみについて警告けいこくしている学者がくしゃもいたのに、耐震たいしん指針ししんの見直みなおし作業さぎょうで津波つなみの問題もんだいも含ふくめて十分じゅうぶん安全あんぜん側がわに立たった結論けつろんにならなかったことが、福島ふくしまの事故じこに結むすび付ついたように思おもえる。残念ざんねんだ」  　井戸いどさんは１９年ねん８月がつのインタビューでは「（金沢かなざわ地裁ちさいの判決はんけつと）同様どうようの司法しほう判断はんだんは続つづかず、結果けっか的てきに東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい前まえの差さし止とめ判決はんけつは１件けんだった。司法しほうの流ながれを変かえられなかった。原発げんぱつ事故じこは万まんが一いちにも起おこしてはならず、どんなに小ちいさな可能かのう性せいだとしても、対処たいしょすることが必要ひつようだ。東電とうでんは福島ふくしま第だい１原発げんぱつの防潮ぼうちょう堤つつみかさ上あげまでは決断けつだんできなかったとしても、原子げんし炉ろを冷ひやすための非ひ常用じょうよう電源でんげんをより高たかい場所ばしょに設置せっちするなどの次善じぜんの策さくがあったはずだ。結局けっきょく何なにもしておらず、安全あんぜん神話しんわに毒どくされていたと思おもう。（弁護士べんごしとして原発げんぱつ裁判さいばんを続つづけているのは）経験けいけんも知識ちしきもある者ものとして、果はたすべき責任せきにんがある。あれだけの事故じこがあったのに原発げんぱつにしがみつく国くにの姿勢しせいは変かわらない。経済けいざい的てきな合理ごうり性せいから見みても、原発げんぱつに未来みらいはなく、直ただちに脱だつ原発げんぱつに向むかわなければならない。司法しほうへの期待きたいを捨すてず、やれることをやろうと思おもう」と話はなしている。  […]  　原子げんし炉ろ施設しせつを止とめた、もんじゅ訴訟そしょう控訴こうそ審しんの川崎かわさきさん、志賀しが２号機ごうき訴訟そしょうの井戸いどさん、大飯おおめし３、４号機ごうき訴訟そしょうの樋口ひぐちさんの３人にんには、最高裁さいこうさい事務じむ総局そうきょくで裁判所さいばんしょの管理かんり・運営うんえいなど「司法しほう行政ぎょうせい」を担当たんとうしたことがないという共通きょうつう点てんがある。井戸いどさんと樋口ひぐちさんは東京とうきょう勤務きんむが一いち度どもなかった。（続つづく） 全文ぜんぶん