Monthly Archives: March 2019

　東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい1原発げんぱつ事故じこで全ぜん町まち避難ひなんが続つづく福島ふくしま県けん大熊おおくま町まち。人影ひとかげがなくなった町まちの見守みまもりに率先そっせんして取とり組くんできた人ひとたちがいる。町まち職員しょくいんOB有志ゆうしらによる「じじい部隊ぶたい」。リーダーで町まち臨時りんじ職員しょくいんの鈴木すずき久ひさ友ともさん（66）が神戸新聞社こうべしんぶんしゃの取材しゅざいに答こたえた。「やっと役目やくめを終おえられる」。5月には建設けんせつ中ちゅうの役場やくば新しん庁舎ちょうしゃに職員しょくいんが戻もどってくる。「残のこる期間きかんをやり遂とげたい」と頬ほおを緩ゆるませた。 鈴木すずきさんは当時とうじ、同町どうちょう総務そうむ課長かちょう。「町まちにいつ戻もどれるのか」と怒いかりに駆かられる住民じゅうみんの対応たいおうに昼夜ちゅうや追おわれた。2年ねん後ごに退職たいしょくしたが、「若者わかものを放射線ほうしゃせん量りょうの高たかい場所ばしょに行いかせられない」と職員しょくいんOBの有志ゆうし5人にんと町内ちょうないの見回みまわり活動かつどうを志願しがんした。 　放射線ほうしゃせん量りょうが高たかい「帰還きかん困難こんなん区域くいき」への立たち入いり許可きょかを得えて、無人むじんと化かした町まちの防犯ぼうはんパトロールや草刈くさかり、桜さくらの名所めいしょの手入ていれなどに毎日まいにちのように汗あせを流ながした。自宅じたくの様子ようすを気きにする町民ちょうみんの依頼いらいで家いえの写真しゃしんも撮とった。 　地元じもとでは信頼しんらいを込こめて「じじい部隊ぶたい」と呼よばれた鈴木すずきさんたち。「町民ちょうみんが帰還きかんする日ひまでとの一心いっしんだった。新あたらしい役場やくばが戻もどったら本ほん当とうの退職たいしょくだ」と目めを細ほそめる。「原発げんぱつで町まちが発展はってんしたのは紛まぎれもない事実じじつ。元もとに戻もどる戻もどらないを問とわず、行政ぎょうせいは町民ちょうみん一いち人にん一人ひとりのことを考かんがえた町まちをつくってほしい」と期待きたいした。 […] ただ、事故じこ前まえに9割わり以上いじょうの町民ちょうみんが暮くらした地域ちいきは帰還きかん困難こんなん区域くいきのまま。国くには居住きょじゅう開始かいしの時期じきを依然いぜんとして示しめしていない。同町どうちょう復興ふっこう事業じぎょう課かの志賀しが秀しげる陽ひ課長かちょう（59）は「避難ひなん先さきで暮くらしの基盤きばんができ、町まちに戻もどらないと決きめた町民ちょうみんも多おおい」と話はなす。町民ちょうみんの主おもな職業しょくぎょうは兼業けんぎょう農家のうかと原発げんぱつ作業さぎょう員いんだった。農地のうちの活用かつよう策さく、企業きぎょう誘致ゆうちなど、産業さんぎょうの創出そうしゅつに向むけた課題かだいは大おおきい。志賀しが課長かちょうは「町まちの青写真あおじゃしんを描えがくのはまだ難むずかしいが、町民ちょうみんが戻もどりたいと思おもえるまちづくりに知恵ちえを絞しぼりたい」と前まえを向むいた。 全文ぜんぶん

５日にち、福島ふくしま県けんいわき市しの応急おうきゅう仮設かせつ住宅じゅうたく。同どう県けん大熊おおくま町まちから避難ひなんした男性だんせい（６０）は、ある「うわさ」が気きになっていた。「オリンピックが終おわったら、俺おれたちも支援しえんを切きられっぺって」 「戻もどれるとしても４０年ねん後ご、俺おれは１００歳さい」 政府せいふは来年らいねんの東京とうきょう五輪ごりんを「復興ふっこうを世界せかいにアピールする好機こうき」と位置付いちづけ、福島ふくしま県けんは２０２０年度ねんどまでに「避難ひなん者しゃゼロ」を実現じつげんする目標もくひょうを掲かかげる。呼応こおうするように、避難ひなん指示しじが出でていない地域ちいきからの「自主じしゅ避難ひなん者しゃ」に向むけた家賃やちん補助ほじょや、既すでに解除かいじょされた地域ちいきの住民じゅうみんを対象たいしょうにした仮設かせつ住宅じゅうたくの無償むしょう提供ていきょうが終了しゅうりょうする。 「ここも閉鎖へいさされっかもしれない」。男性だんせいは不安ふあんに駆かられ、いわき市内しないの公営こうえい住宅じゅうたくに応募おうぼした。大熊おおくま町まちの自宅じたくは福島ふくしま第だい１原発げんぱつから３キロ。行政ぎょうせいの担当たんとう者しゃは「戻もどれるとしても４０年ねん後ごでしょう」と告つげた。「帰かえりたいけど、そのとき俺おれは１００歳さい。意味いみねえよ」と笑わらう。 造成ぞうせい急きゅうピッチ…住民じゅうみん「戻もどらない」が過半数かはんすう 福島ふくしま第だい１原発げんぱつが立地りっちする大熊おおくま町まちは高たかい放射線ほうしゃせん量りょうが長引ながびき、全ぜん町まち避難ひなんが続つづいた。ようやく、南部なんぶの大川原おおかわら地区ちくなどが近ちかく解除かいじょされる。 広大こうだいな造成ぞうせい地ちでうなりを上あげる無数むすうの重機じゅうき。鉄筋てっきんを肩かたに動うごき回まわる作業さぎょう員いん。大川原おおかわら地区ちくに入はいると、新あたらしい役場やくばと公営こうえい住宅じゅうたく５０戸この建設けんせつが急きゅうピッチで進すすんでいた。公営こうえい住宅じゅうたくには６０世帯せたいの応募おうぼがあり、既すでに抽選ちゅうせんを終おえたという。町まち復興ふっこう事業じぎょう課かの志賀しが秀しげる陽ひ課長かちょう（５９）は「復興ふっこうの第一歩だいいっぽ」と喜よろこぶ。 ただ、町まちが１月がつに取とったアンケートで「戻もどらないと決きめている」と答こたえた住民じゅうみんは５５％に上のぼり、「戻もどりたい」は１４％にとどまった。原発げんぱつ事故じこの日ひの朝あさ、町まちには７４４人にんの児童じどうがいたが、今回こんかい、公営こうえい住宅じゅうたくに入居にゅうきょする児童じどうはわずか１人ひとりだ。 「好すきで古里ふるさとを離はなれたわけじゃない」 […] ６日にち、埼玉さいたま県けん春日部かすかべ市しであった同どう県けんへの避難ひなん者しゃの交流こうりゅう会かい。「建物たてものだけを新あたらしくして『復興ふっこうした』と言いわれても、帰かえりたいのは原発げんぱつ事故じこ前まえの故郷こきょう」。福島ふくしま県けん楢葉ならは町まちの村上むらかみ秀雄ひでおさん（７７）が発言はつげんすると、十じゅう数すう人にんの参加さんか者しゃが一様いちようにうなずいた。 大熊おおくま町まちの渡部わたなべまゆみさん（６２）もその一人ひとりだ。昨年さくねん、除染じょせんで出でた土どを保管ほかんする中なか間あいだ貯蔵ちょぞう施設しせつの用地ようちを国くにに求もとめられ「大熊おおくまのために役立やくだつなら」と同町どうちょうの自宅じたくを手放てばなした。３０年ねん近ちかく勤つとめた町内ちょうないのラーメン店てんも１月がつ、中間ちゅうかん貯蔵ちょぞうを広報こうほうする発信はっしん拠点きょてんに様変さまがわりした。性急せいきゅうな「復興ふっこう」には違和感いわかんもある。「避難ひなん者しゃが古里ふるさとを好すきで離はなれたわけじゃないことは、忘わすれないでほしい」 […] 全文ぜんぶん

１９７９年ねん３月がつに起おきた米べいペンシルベニア州しゅうのスリーマイル島原しまばら発はつ事故じこから４０年ねんがたち、州しゅう内ないでは事故じこの教訓きょうくんを学まなぶ集会しゅうかいが行おこなわれている。若者わかものを中心ちゅうしんに事故じこへの関心かんしんが薄うすれているとの懸念けねんもあり、関係かんけい者しゃは「風化ふうかを防ふせがなくては」と危機きき感かんを募つのらせる。（米べい東部とうぶペンシルベニア州しゅうハリスバーグ　船越ふなこし翔しょう、写真しゃしんも） 今月こんげつ２３日にち、市民しみん団体だんたいによるシンポジウムが州都しゅうとハリスバーグで開ひらかれ、地元じもと住民じゅうみんや専門せんもん家かが当時とうじの状況じょうきょうや避難ひなんの課題かだいなどを報告ほうこくした。主催しゅさい者しゃのエリック・フェイジックさん（４７）も自身じしんの経験けいけんを語かたった。原発げんぱつから約やく１５キロ離はなれた小学校しょうがっこうに通かよっていたフェイジックさんは地元じもと住民じゅうみんへの避難ひなん勧告かんこくが出でた事故じこ３日にち目めに、教師きょうしから急きゅうに帰宅きたくを指示しじされた。教師きょうしたちは取とり乱みだし、何なにを尋たずねても「今いますぐ帰かえるんだ」と繰くり返かえすだけだった。フェイジックさんは「事故じこの混乱こんらんの記憶きおくを共有きょうゆうすることは大切たいせつだ」と強調きょうちょうする。 （略りゃく） 別べつの市民しみん団体だんたいの代表だいひょうを務つとめるエリック・エプスタインさん（５９）も「４０年ねんがたち、事故じこへの関心かんしんが薄うすれてきている」と訴うったえる。かつて１０００人にん超ちょうだった団体だんたいの会員かいいんも半分はんぶん以下いかに減へり、大半たいはんは５０歳さい以上いじょうだという。 エプスタインさんは、スリーマイル島とう事故じこと２０１１年ねん３月がつに起おきた東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつ事故じこは、企業きぎょうの情報じょうほう公開こうかいの遅おくれなどが共通きょうつうしていると指摘してきした上うえで、「事故じこには多おおくの教訓きょうくんがあり、政府せいふや自治体じちたいは若わかい人ひとにも関心かんしんを持もってもらうよう努力どりょくすべきだ」と語かたる。 スリーマイル島とう近ちかくにあるペンシルベニア州立しゅうりつ大だいハリスバーグ校こうは、学生がくせいらに関心かんしんを持もってもらおうと、今月こんげつ２６日にちから大学だいがく内ないの図書館としょかんで当時とうじの新聞しんぶんや関連かんれん著作ちょさくなどの特別とくべつ展示てんじを始はじめた。収集しゅうしゅうした原発げんぱつ事故じこの報告ほうこく書しょや議事ぎじ録ろくなど９０点てん以上いじょうをインターネット上じょうにも公開こうかいしている。 全文ぜんぶんは「スリーマイル」薄うすれる記憶きおく　原発げんぱつ事故じこ４０年ねん…教訓きょうくん次代じだいへ　動うごく市民しみん

女川おながわ原発げんぱつの再さい稼働かどうの是非ぜひを問とう住民じゅうみん投票とうひょうの直接ちょくせつ請求せいきゅうを、宮城みやぎ県議会けんぎかいが否決ひけつした。原発げんぱつを抱かかえる静岡しずおかや新潟にいがた県けんでも「国策こくさくになじまない」などとして、議会ぎかいに退しりぞけられている。なぜ“声こえ”が届とどかない。 地方ちほう自治じち法ほうの規定きていでは、有権者ゆうけんしゃの五ご十じゅう分ぶんの一いち以上いじょうの署名しょめいをもって、自治体じちたいの長ちょうに住民じゅうみん投票とうひょう条例じょうれいの制定せいていを請求せいきゅうできる。 年内ねんないにも原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいの審査しんさに通とおるとされる東北電力とうほくでんりょく女川おながわ原発げんぱつ２号機ごうき。その再さい稼働かどうの是非ぜひを問といたいと、十じゅう一いち万まんを超こえる署名しょめいが集あつまった。法定ほうていの約やく三さん倍ばいだ。それでも県議会けんぎかいは「多様たような意思いしを正ただしく反映はんえいできない」などとして、条例じょうれい案あんを否決ひけつし請求せいきゅうを退しりぞけた。 （略りゃく） 原発げんぱつ事故じこの放射ほうしゃ性せい物質ぶっしつは広ひろい範囲はんいに降ふり注そそぐ。宮城みやぎ県内けんないでも今いま現げんに、水産物すいさんぶつの輸出ゆしゅつ禁止きんしや汚染おせん廃棄はいき物ぶつの処理しょり問題もんだいなど、福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの影響えいきょうが続つづいている。 女川おながわ原発げんぱつの三さん十じゅうキロ圏内けんないでは、七ななつの市町しちょうに二に十じゅう一いち万まん人にんが暮くらしていて、避難ひなん計画けいかくの策定さくていを国くにから義務付ぎむづけられている。過酷かこく事故じこの大だい混乱こんらんの中なか、果はたしてスムーズに避難ひなんなどできるのか。住民じゅうみんの多おおくは避難ひなん計画けいかくそのものに懐疑かいぎ的てきだ。 （略りゃく） 宮城みやぎ県けんだけのことではない。国民こくみんの過半かはんが原発げんぱつ再さい稼働かどうに反対はんたいし、大半たいはんが再さい稼働かどうへの同意どうい権けんを持もっていない。それなのに３・１１後ご、五ごカ所かしょ九きゅう基きがすでに、立地りっち自治体じちたいの同意どういの下したに再ふたたび動うごき始はじめている。 原発げんぱつ再さい稼働かどうに不安ふあんを覚おぼえる住民じゅうみんと「国くにに任まかせろ」という議会ぎかいや首長しゅちょう。この温度おんど差さは、なぜ起おきてしまうのか。統一とういつ地方ちほう選せん真まっただ中なかで、私わたしたちも思おもいを巡めぐらせたい。 全文ぜんぶんは【社説しゃせつ】原発げんぱつと民意みんい　なぜ“声こえ”は届とどかない

東京電力とうきょうでんりょくが、廃はい炉ろ作業さぎょうが進すすむ福島ふくしま第だい1原発げんぱつで昨年さくねん秋あき、社員しゃいんを除のぞく全ぜん作業さぎょう員いん約やく5千せん人にんを対象たいしょうに実施じっししたアンケートで、4割わりが第だい1原発げんぱつで働はたらくことに「不安ふあんを感かんじている」と回答かいとうした。理由りゆうとして、このうち45％が「先さきの工事こうじ量りょうが見みえないため、いつまで働はたらけるか分わからない」を挙あげ、「被ひばくによる健康けんこうへの影響えいきょう」が40％、「安定あんてい的てきな収入しゅうにゅうが保証ほしょうされない」が36％と続つづいた。 （略りゃく） 今回こんかいは18年ねん9月がつに行おこない、対象たいしょう者しゃの94％に当あたる5031人にんから結果けっかを回収かいしゅうした。年代ねんだい別べつでは、40代だいが最もっとも多おおく29％で、10代も8人にんいた。（共同きょうどう） 全文ぜんぶんは福島ふくしま第だい1原発げんぱつの作業さぎょう員いん、4割わりが不安ふあん　「いつまで働はたらけるか」「被ひばくによる健康けんこうへの影響えいきょう」

原発げんぱつ事故じこが発生はっせいしたら、国くには住民じゅうみんに「避難ひなんする権利けんり」を認みとめよ－－。東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい１原発げんぱつ事故じこの被災ひさい者しゃや、各地かくちの原発げんぱつ周辺しゅうへんの住民じゅうみんにとって、当然とうぜんの主張しゅちょうのように聞きこえるが、チェルノブイリ原発げんぱつ事故じこが起おきた旧きゅうソ連それんと異ことなり、日本にっぽんには「避難ひなんの権利けんり」がない。なぜだろうか。【沢田さわだ石せき洋史ひろし】 「日本にっぽん史上しじょう最悪さいあくのいじめ」というドキリとする言葉ことばが飛とび出だした。東京とうきょう都と港みなと区くのホールで１７日にちに開ひらかれた講演こうえん・交流こうりゅう会かい。福島ふくしま県けんからの避難ひなん者しゃら約やく１００人にんを前まえに、マイクを握にぎった弁護士べんごし、柳原やなぎはら敏夫としおさん（６７）は避難ひなん者しゃらの声こえを代弁だいべんした。 「加害かがい責任せきにんを負おう日本にっぽん政府せいふは避難ひなん者しゃや残留ざんりゅう者しゃの『命いのちの復興ふっこう』ではなく、経済けいざい復興ふっこうに突つき進すすんでいる。原発げんぱつ事故じこの被害ひがい者しゃは『助たすけてくれ』という声こえすら上あげられず、経済けいざい復興ふっこうの妨害ぼうがい者しゃにさせられています。『３・１１ショック』のどさくさ紛まぎれの中なかで、『全すべてがアベコベ』の世界せかいが出現しゅつげんしたのです」 避難ひなん者しゃが直面ちょくめんしているのは「住すまい」の問題もんだいだ。福島ふくしま市しや福島ふくしま県けん郡山こおりやま市しといった避難ひなん区域くいき外がいから逃のがれた約やく１万まん２０００世帯せたいへの住宅じゅうたく無償むしょう提供ていきょうは２０１７年ねん３月がつ末まつで打うち切きられた。福島ふくしま県けんが民間みんかん賃貸ちんたい住宅じゅうたくに住すみ続つづける世帯せたいに一定いっていの条件下じょうけんかで交付こうふしてきた家賃やちん補助ほじょ（最大さいだいで月つき２万まん円えん）は今月こんげつでなくなる。これにより、自主じしゅ避難ひなん者しゃへの経済けいざい的てき支援しえん策さくは終了しゅうりょうする。 （略りゃく） 住すまいを失うしなった福島ふくしまの人々ひとびとを国くにがいじめているような場面ばめんが昨年さくねん１０月がつ、参院さんいん議員ぎいん会館かいかんで繰くり広ひろげられた。国家こっか公務員こうむいん宿舎しゅくしゃの家賃やちん問題もんだいを巡めぐり、所管しょかんする国くに（財務省ざいむしょう）と避難ひなん者しゃ側がわとのやり取とりだ。 避難ひなん者しゃ側がわ　（住すみ続つづけるのに）「２倍ばい」の根拠こんきょはなんですか。 国くに側がわ　（住宅じゅうたくの）使用しよう料りょうを２倍ばいにするのではなく、あくまで損害そんがい金きんという形かたちで設定せっていさせていただきました。 避難ひなん者しゃ側がわ　２倍ばいは解ほぐせない。 国くに側がわ　本来ほんらいなら損害そんがい金きんは実じつ損そんを算定さんていする形かたちになりますが、そこをあえて月額げつがく使用しよう料りょうの２倍ばいに。 避難ひなん者しゃ側がわ　大変たいへん失礼しつれいですよ。被災ひさい者しゃは公務員こうむいん住宅じゅうたくに損害そんがいを与あたえているんですか。 国くに側がわ　福島ふくしま県けんから（４月がつ以降いこうの住宅じゅうたく使用しよう継続けいぞくの）提案ていあんがないので。 避難ひなん者しゃ側がわ　（居住きょじゅう者しゃの暮くらしぶりの）実態じったい調査ちょうさをしたら、２倍ばいの請求せいきゅうはできないはずだ。僕ぼくらは人間にんげんとして（このような対応たいおうが許ゆるされるのかという）話はなしをしているんだ。 （略りゃく） 避難ひなん者しゃに対たいする冷つめたい姿勢しせいは、今村いまむら雅弘まさひろ復興ふっこう相しょう（当時とうじ）が１７年ねん４月がつの記者きしゃ会見かいけんで、住宅じゅうたく無償むしょう提供ていきょうが打うち切きられた自主じしゅ避難ひなん者しゃについて「本人ほんにんの責任せきにん、判断はんだんだ」と突つき放はなしたことに通つうじるようだ。釈明しゃくめいを求もとめる記者きしゃに「出でて行いきなさい！」「うるさい！」と激高げっこうした場面ばめんも記憶きおくに新あたらしい。 震災しんさいから８年ねん。南みなみ相馬そうま市しや飯舘いいたて村むらなど、かつて避難ひなん区域くいきだった地域ちいきも次々つぎつぎと避難ひなん指示しじが解除かいじょされ、帰還きかんしない住民じゅうみんは「自主じしゅ避難ひなん者しゃ」扱あつかいとなり、支援しえんは先細さきほそっていくとみられる。 避難ひなん者しゃの支援しえんに立たち上あがり、冒頭ぼうとうの講演こうえん・交流こうりゅう会かいを開ひらいたのは「市民しみんが育そだてる『チェルノブイリ法ほう日本にっぽん版ばん』の会かい」など３団体だんたい。柳原やなぎはらさんは同どう会かいの共同きょうどう代表だいひょうを務つとめる。何なにを目指めざしているのか。 チェルノブイリ原発げんぱつ事故じこから５年ねんたった１９９１年ねん、旧きゅうソ連それんのウクライナ、ベラルーシ、ロシアでチェルノブイリ法ほうが制定せいていされました。事故じこに対たいする国家こっかの責任せきにんを明確めいかくにするとともに、誰だれにどのような権利けんりがあるかを定さだめたのです。チェルノブイリ法ほうは、原子力げんしりょく災害さいがいから住民じゅうみんの『命いのち』『健康けんこう』『暮くらし』を守まもる世界せかい初はつの『人権じんけん宣言せんげん』です。この日本にっぽん版ばんの制定せいていを目指めざしています。福島ふくしまからの避難ひなん者しゃをボランティアで支援しえんしてきた三重みえ県けん伊勢いせ市民しみんの呼よび掛かけを機きに、１年ねん前まえに会かいを結成けっせいしました」 チェルノブイリ法ほうは、追加ついか被ひばく線量せんりょうが年とし５ミリシーベルト超ちょうの地域ちいきは移住いじゅうが義務付ぎむづけられ、年とし１ミリシーベルト超ちょうの住民じゅうみんには「移住いじゅうの権利けんり」を保障ほしょうする。つまり、住民じゅうみんは移住いじゅうを選択せんたくするか、それとも現在げんざいの居住きょじゅう地ちにとどまるか自分じぶんで決きめることができる。また、移住いじゅう先さきの住居じゅうきょや、生涯しょうがいにわたる無料むりょうの健康けんこう診断しんだんが保障ほしょうされる。低てい線量せんりょう被ひばくが健康けんこうに与あたえる影響えいきょうについて科学かがく的てきな定説ていせつがないことに加くわえ、健康けんこう被害ひがいが長期間ちょうきかん続つづくことを想定そうていして制定せいていされた。 翻ひるがえって日本にっぽんは－－。 国際こくさい放射線ほうしゃせん防護ぼうご委員いいん会かいは、平常へいじょう時じに一般人いっぱんじんの被ひばくは年とし１ミリシーベルト以下いかとするよう基準きじゅんを示しめしているが、政府せいふは１１年ねん４月がつ、「緊急きんきゅう時じ」であることを理由りゆうに避難ひなん基準きじゅんを年とし１ミリシーベルトから２０ミリシーベルトに引ひき上あげた。避難ひなん指示しじの解除かいじょ基準きじゅんも２０ミリシーベルト。これが、チェルノブイリ原発げんぱつ事故じことの大おおきな違ちがいだ。国くにによる一方いっぽう的てきな線引せんひきにより、精神せいしん的てき賠償ばいしょう（１人ひとり当あたり月がつ１０万まん円えん）の有無うむが決きまり、地域ちいき社会しゃかいに分断ぶんだんをもたらしたのだ。避難ひなん区域くいき外がいから逃のがれた自主じしゅ避難ひなん者しゃは現在げんざい、統計とうけい上じょう「避難ひなん者しゃ」に含ふくまれず、多おおくの被災ひさい者しゃ支援しえん制度せいどの対象たいしょう外がいになっている。 条例じょうれい制定せいていへ草くさの根ねの動うごき　このような現状げんじょうを避難ひなん者しゃはどう受うけ止とめているのか。郡山こおりやま市しから川崎かわさき市しに避難ひなんしている松本まつもと徳子とくこさん（５７）は「国策こくさくとして原子力げんしりょくを推進すいしんし、事故じこを起おこしたら、避難ひなんは自己じこ責任せきにんにさせられる。『この国くにはそういう国くにだったのか』と知しったことが一番いちばんのショックでした」と話はなす。前出ぜんしゅつの政府せいふ交渉こうしょうに参加さんかし、国くにの「棄民政策せいさく」に抗議こうぎするデモに参加さんかするなど、柳原やなぎはらさんと行動こうどうを共ともにしてきた。 （略りゃく） この間あいだの政府せいふの対応たいおうを振ふり返かえろう。事故じこ直後ちょくごの対応たいおうは混迷こんめいを極きわめており、松本まつもとさんの行動こうどうは決けっして「自己じこ責任せきにん」ではないだろう。 まず、ＳＰＥＥＤＩ（緊急きんきゅう時じ迅速じんそく放射能ほうしゃのう影響えいきょう予測よそくネットワークシステム）に基もとづく避難ひなん誘導ゆうどうは行おこなわれず、多おおくの人ひとが無用むような被ひばくを強しいられた。「レベル７」の最悪さいあくの事故じこであることを国くにが認みとめたのは、１カ月かげつも経過けいかした４月がつ１２日にち。後手ごて後手ごての対応たいおうの揚あげ句く、避難ひなん基準きじゅんは２０ミリシーベルトに引ひき上あげられ、政府せいふが「直ただちに健康けんこうに影響えいきょうはない」とアピールしても信頼しんらいできない状況じょうきょうだった。 （略りゃく） 一ひとつは、東京とうきょう都とが６９年ねんに制定せいていした都と公害こうがい防止ぼうし条例じょうれいだ。この条例じょうれいは公害こうがい対策たいさくの機運きうんを高たかめ、対策たいさくに消極しょうきょく的てきだった国くにを動うごかした。７０年ねんの「公害こうがい国会こっかい」で公害こうがい対策たいさく基本きほん法ほうが改正かいせいされるなど、抜本ばっぽん的てきな規制きせい強化きょうかをもたらした。もう一ひとつ、８２年ねんに山形やまがた県けん金山かなやま町まちで制定せいていされた情報じょうほう公開こうかい条例じょうれいは全国ぜんこくの自治体じちたいに広ひろがり、９９年ねんについに国くにレベルの情報じょうほう公開こうかい法ほうが成立せいりつ、０１年ねんから施行しこうされた。 「自治体じちたいレベルで条例じょうれいを積つみ重かさねれば、大おおきなうねりになる。アベコベの世界せかいを、市民しみん主導しゅどうで変かえていくしかありません」と柳原やなぎはらさん。モデルとなる「条例じょうれい案あん」を示しめし、全国ぜんこく各地かくちで勉強べんきょう会かいを重かさねている。「前文ぜんぶん」ではこう宣言せんげんする。 ＜国くには、放射能ほうしゃのう災害さいがいに対たいして無条件むじょうけんで加害かがい責任せきにんを免まぬかれず、住民じゅうみんが受うけた被害ひがいを補償ほしょうする責任せきにんのみならず住民じゅうみんの「移住いじゅうの権利けんり」を履行りこうする責任せきにんを有ゆうすると確信かくしんする。その結果けっか、この条例じょうれいの施行しこうにより、○○市しが出費しゅっぴする経費けいひは本来ほんらい国こくが負担ふたんすべきものであり、国くには法ほう改正かいせいを行おこなう責務せきむを有ゆうすると確信かくしんする＞（抜粋ばっすい） そして、第だい１１条じょうではチェルノブイリ法ほうを参考さんこうに「移住いじゅう」を選択せんたくした住民じゅうみんに「引ひっ越こし費用ひようの支給しきゅう」「移住いじゅう先さきでの住宅じゅうたく確保かくほ・就労しゅうろう支援しえん」「健康けんこう診断しんだん・保養ほよう費用ひようの７割わり支給しきゅう」など七ななつの権利けんりを保障ほしょう。第だい１５条じょうでは自治体じちたいが出費しゅっぴする経費けいひは全額ぜんがく、原発げんぱつの設置せっち者しゃと国くにに求償きゅうしょうできると定さだめる。 条例じょうれい制定せいていには、賛同さんどうする議員ぎいんを増ふやすか、有権者ゆうけんしゃの５０分ぶんの１以上いじょうの署名しょめいを集あつめて首長しゅちょうに直接ちょくせつ請求せいきゅうする方法ほうほうがある。制定せいていに向むけた勉強べんきょう会かいは、これまで１１都道とどう県けんの２０カ所かしょで開ひらかれてきた。まだまだ小ちいさい動うごきだが、いつの日ひか条例じょうれい第だい１号ごうが誕生たんじょうするかもしれない。 全文ぜんぶんは福島ふくしま原発げんぱつ事故じこの「自主じしゅ」避難ひなん者しゃら「アベコベの世界せかい」に憤いきどおり　避難ひなんの権利けんり、確立かくりつを