Daily Archives: 2019/08/12

[…] この点てんに関かんして、津波つなみの規模きぼが「予見よけん可能かのうだったか、想定そうてい外がいだったか」という議論ぎろんがなされてきた。しかし双方そうほうとも「津波つなみが事故じこ原因げんいん」という点てんでは一致いっちし、多おおくの国民こくみんもそう理解りかいしている。 　ところが、「津波つなみが原因げんいん」ではなかったのだ。 　福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつは、津波つなみの襲来しゅうらい前まえに、地震動じしんどうで壊こわれたのであって、事故じこ原因げんいんは「津波つなみ」ではなく「地震じしん」だった――“執念しゅうねん”とも言いえる莫大ばくだいな労力ろうりょくを費ついやして、そのことを明あきらかにしたのは、元もと東電とうでん「炉心ろしん専門せんもん家か」の木村きむら俊雄としお氏し（55）だ。 […] 東電とうでん社内しゃないでも数少かずすくない炉心ろしんのエキスパートだった木村きむら氏しは、東電とうでんに未み公開こうかいだった「炉心ろしん流量りゅうりょう（炉心ろしん内ないの水みずの流ながれ）」に関かんするデータの開示かいじを求もとめ、膨大ぼうだいな関連かんれんデータや資料しりょうを読よみ込こみ、事故じこ原因げんいんは「津波つなみ」ではなく「地震じしん」だったことを突つき止とめた。 「事故じこを受うけて、『国会こっかい事故じこ調ちょう』『政府せいふ事故じこ調ちょう』『民間みんかん事故じこ調ちょう』『東電とうでん事故じこ調ちょう』と4つもの事故じこ調査ちょうさ委員いいん会かいが設置せっちされ、それぞれ報告ほうこく書しょを出だしましたが、いずれも『事故じこ原因げんいんの究明きゅうめい』として不十分ふじゅうぶんなものでした。メルトダウンのような事故じこを検証けんしょうするには、『炉心ろしんの状態じょうたい』を示しめすデータが不可欠ふかけつとなるのに、4つの事故じこ調ちょうは、いずれもこうしたデータにもとづいた検証けんしょうを行おこなっていないのです。 ただ、それもそのはず。そもそも東電とうでんが調査ちょうさ委員いいん会かいに、そうしたデータを開示かいじしていなかったからです。そこで私わたしは東電とうでんにデータの開示かいじを求もとめました。これを分析ぶんせきして、驚おどろきました。実じつは『津波つなみ』が来くる前まえからすでに、『地震動じしんどう』により福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの原子げんし炉ろは危機きき的てき状況じょうきょうに陥おちいっていたことが分わかったのです」 　7基きもの原発げんぱつが稼働かどう中ちゅうの現在げんざい、このことは重大じゅうだいな意味いみをもつ。「津波つなみが原因げんいん」なら、「津波つなみ対策たいさくを施ほどこせば、安全あんぜんに再さい稼働かどうできる」ことになるが、そうではないのだ。 　木村きむら俊雄としお氏しが事故じこ原因げんいんを徹底てってい究明きゅうめいした「福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつは津波つなみの前まえに壊こわれた」の全文ぜんぶんは、「文藝春秋ぶんげいしゅんじゅう」9月がつ号ごうに掲載けいさいされている。 全文ぜんぶん

東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつ事故じこ後ごの原発げんぱつの安全あんぜん対策たいさく費ひが、電力でんりょく１１社しゃの合計ごうけいで５兆ちょう円えんを超こえることが朝日新聞あさひしんぶんの調しらべでわかった。建設けんせつが遅おくれているテロ対策たいさく施設しせつの費用ひようは、当初とうしょの想定そうていの２～５倍ばいに膨ふくらんでいる。まだ織おり込こめていない原発げんぱつも多おおく、安全あんぜん対策たいさく費ひが今後こんごさらに増ふえるのは確実かくじつだ。電源でんげん別べつで原発げんぱつの発電はつでんコストを「最さい安やす」とした政府せいふの評価ひょうかの前提ぜんていが揺ゆらぎつつある。 朝日新聞あさひしんぶんは２０１３年ねんから、新しん規制きせい基準きじゅんで義務ぎむづけられた地震じしんや津波つなみ、火災かさい、過酷かこく事故じこなどの対策たいさくにかかる費用ひようの最新さいしんの見積みつもり額がくを電力でんりょく各社かくしゃに尋たずね、集計しゅうけいしてきた。建設けんせつ中ちゅうを含ふくめて原発げんぱつをもつ１１社しゃの今年ことし７月がつ時点じてんの総額そうがくは、少すくなくとも５兆ちょう７４４億おく円えんとなり、１年ねん前まえより約やく６６００億おく円えん増ふえた。 （略りゃく） 今回こんかい新あらたに、テロ対策たいさく施設しせつの審査しんさを原子力げんしりょく規制きせい委員いいん会かいに申請しんせいした時点じてんで想定そうていしていた建設けんせつ費ひと、最新さいしんの見積みつもり額がくを尋たずねた。九州電力きゅうしゅうでんりょく川内せんだい１、２号機ごうき（鹿児島かごしま県けん）は４３０億おく円えんから２２００億おく円えんと約やく５倍ばいに。関電かんでん高だか浜はま３、４号機ごうき（福井ふくい県けん）は６９１億おく円えんから１２５７億おく円えん、四国電力しこくでんりょく伊方いかた３号機ごうき（愛媛えひめ県けん）は３２０億おく円えんから５５０億おく円えんと２倍ばい近ちかくになっていた。１４～１６年ねんの申請しんせい時じから、審査しんさを経へて設計せっけいや工法こうほうが変かわったためという。東電とうでんも当初とうしょ、柏崎かしわざき刈羽かりわ１、６、７号機ごうきで計けい５５０億おく円えんと想定そうていしていたが、増大ぞうだいしているという（最新さいしんの額がくは非ひ公表こうひょう）。 中部電力ちゅうぶでんりょくなど６社しゃはテロ対策たいさく施設しせつの費用ひようを安全あんぜん対策たいさく費ひに含ふくめていない。 １基きあたりの安全あんぜん対策たいさく費ひは、再さい稼働かどうした５原発げんぱつ９基きで１３００億おく～２３００億おく円えんの計算けいさんになる。中国電力ちゅうごくでんりょく島根しまね（島根しまね県けん）や東北電力とうほくでんりょく女川おながわ（宮城みやぎ県けん）、日本原子力発電にほんげんしりょくはつでん東海とうかい第だい二に（茨城いばらき県けん）は、テロ対策たいさく施設しせつの費用ひようが加くわわれば３千せん億おく円えんを超こえそうだ。　政府せいふは１５年ねんに、３０年ねん時点じてんの電源でんげん別べつの発電はつでんコストを検証けんしょう。原発げんぱつは１キロワット時きろわっとじあたり「１０・３円えん以上いじょう」で、水力すいりょく（１１・０円えん）や石炭せきたん火力かりょく（１２・９円えん）より安やすいと評価ひょうかした。この際さい、安全あんぜん対策たいさく費ひは１基き約やく１千せん億おく円えんと想定そうていし、１千せん億おく円えん増ふえれば０・６円えん高たかくなるとして算出さんしゅつしている。安全あんぜん対策たいさく費ひの増大ぞうだいは、原発げんぱつを発電はつでんコストの安やすい重要じゅうような安定あんてい電源でんげんと位置いちづけてきたエネルギー政策せいさくにも影響えいきょうを及およぼす可能かのう性せいがある。 （略りゃく） さらに追加ついか計上けいじょうの可能かのう性せいも　今回こんかいの調査ちょうさで、中国電力ちゅうごくでんりょくと北海道電力ほっかいどうでんりょくがテロ対策たいさく施設しせつの費用ひようとして当初とうしょ、島根しまね２号機ごうき（島根しまね県けん）で９４５億おく円えん、泊はく３号機ごうき（北海道ほっかいどう）で４７０億おく円えん近ちかくを見込みこんでいたこともわかった。両社りょうしゃはこの費用ひようを安全あんぜん対策たいさく費ひに含ふくめていない。規制きせい委いの審査しんさで設計せっけいが変かわる可能かのう性せいがあり「意味いみの無ない数字すうじ」などと説明せつめいするが、今後こんご、大おおきく増ふえた額がくが追加ついか計上けいじょうされる可能かのう性せいがある。 全文ぜんぶんは原発げんぱつ安全あんぜん対策たいさく費ひ、５兆ちょう円えん超ちょうに　政府せいふの「最さい安やす」評価ひょうか揺ゆらぐ